地震・防災関連用語集

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風化

岩石が砂や粘土に変化することを風化といいます。

表面がざらついた感になって刻まれた文字が判読できなくなった古い石碑や目鼻のはっきりしない石地蔵を見かけるように、硬い岩石もいつかは風化して砂や粘土に変わっていきます。

崖錐

穂高岳涸沢の崖錐

上の岩盤からはがれた岩屑が落下して、きれいな直線状の斜面をつくる

写真・説明文とも『日本の山はなぜ美しい』 小泉武栄著 1993 より

出版社古今書院http://www.kokon.co.jp/

風化には物理的風化と化学的風化に分けられ、物理風化が化学風化を促進させながら同時的に進行します。

物理風化は主に温度変化による作用であり、岩石構成組織の膨張と収縮や水の凍結膨張によって亀裂の拡大と砕片化が進行します。

山岳地帯では化学的風化に対して物理的風化が目立ちます。化学風化が進行する前に物理風化(凍結破砕作用)によって生じた亀裂が分離面となり急崖から脱落します。脱落した岩片が堆積することによって崖錐斜面が形成されます。過去から現在までの物理風化の影響を強く受けることによって荒々しい岩肌とガレ場のような山岳独特の景観が生まれています。(右の写真参照)

化学風化は主に雨水や流水との接触による変質作用であり、岩石の構成組織が分解して粘土化が進行します。

なお、植物の根が岩石を破砕したり根が腐食することによって生じる炭酸や有機酸が岩石・鉱物を溶解したりすることを分けて生物的風化ということがあります。

地表部は地下に対して温度変化が大きく雨水や河川水などと接触することが多い環境であるので激しい風化作用が働いています。このため、地表には風化によって生じた風化土、あるいは風化が進行して生じたボロボロの風化岩が分布することになります。

一般に地下深部までは風化が及ぶことはほとんどありませんが、地殻変動や火山活動などに伴い、地下深い岩盤にも断層に伴う破砕帯や熱水変質作用による変質帯などが分布しています。また、花崗岩地帯では深層風化と呼ばれるように地下深くまで風化が及んでいることがあります。これらは性状としては風化作用が働いたのと似ていますが、多くは地質時代を経て形成されたものと考えられています。

ところで、風化によって刻まれた文字が判読できなくなった石碑などがある一方で、カールなど二万年前の氷河時代に形成された岩壁がほとんど風化することなく地形として残っている事実は何を意味するものでしょうか。石碑と岩壁ではスケールが違いすぎて直接的な比較は無理でしょうが、新鮮岩の風化速度は風化皮膜の形成の研究から想像するとかなり遅いようです。石碑などの加工物は、原石山からの石の切り出し・運搬・加工を経て完成するまでに目に見えない亀裂が無数に入るような現象を第一とし、最近の都市部の大気環境が風化に関与しているかもしれません。