地震・防災関連用語集

カテゴリ:地質年代と地層

酸素同位体比による年代

酸素には3 種類の同位体が存在ますが、海水(H2O)としての酸素は16O(軽い水)と少量の18O(重い水)で構成されています。海水が蒸発し、積雪によって氷床に取り込まれ易いのは重い水よりも軽い水であるので、結果として軽い水が氷床に選択的に取り込まれていきます。そのため、氷床が拡大する氷期の海水は相対的に重い水が多くなり、逆に氷床が縮小する間氷期の海水は軽い水が多くなります。海水中を漂う石灰質有孔虫は海水を使って石灰質の殻を作りますが、この殻には水温が低いほど、重い海水が多いほど多くの18O が取り込まれるので、酸素同位体比18O/16O は氷期に大きく間氷期に小さくなります。

気候変動

過去5百万年間の酸素同位体比が示す気候変動
(青い文字と矢印を加筆)

図・説明文とも増田富士夫 環境理学 第3章 長い時間から見た現在の気候環境の成立 古今書院

A:アフリカ西岸沖の大西洋のコアの底生有孔虫化石の分析値。3百万年前(a)に急激な寒冷化が認められる。これ以後、寒冷期の出現で寒暖の大きな気候となる。Tiedemann et al.,(1994)。B:過去70万年間の変動。世界各地の同位体変動をまとめたもの。10万年周期の氷期・間氷期の気候変動が顕著になる。Imbrie at al.(1982)


出版社古今書院http://www.kokon.co.jp/

深海堆積物の掘削により得られた連続的な酸素同位体比カーブにはミランコビッチサイクル(周期)と同じ周期が卓越していることが判明したことにより、堆積時間が一定ではない実際の堆積物(地層)に天体の運行という正確なミランコビッチ周期を割り当てる方法で正確な時間が設定され、同時に酸素同位体比が示す当時の気候環境が推定されました。右の図はこのようにして推定された長期間の気候変動です。

ミランコビッチ周期は地球軌道要素変動の周期であることからこれを軌道要素年代学と呼ばれ、新第三紀以降はこの方法で地質年代が与えられています。

ミランコビッチ周期とは2.3 万年周期の歳差運動、4.1 万年周期の地軸傾きの変化、10 万年周期の離心率の変化の3 つの働きによって、地球が受ける日射量が周期的に変化し、地球が受ける日射量の極小期と極大期が氷期と間氷期に当たるとされていますが、離心率の変化は気候変動に影響を与えないほど僅かと考えられるのに対して、実際の気候変動には右の図のように10 万年周期が明瞭であるなど未解決の問題は多いとされています。

*1 図中の数字の後ろにある記号MaはMega ageの略で、1Maは百万年を表します。