地震・防災関連用語集

カテゴリ:物理探査

地震波トモグラフィー

弾性波トモグラヒィー波線図

医療分野で使用されているX線CTスキャナー法は、X線発信器とセンサーの間に人体を置き、人体を取り囲むような配置で透過X線強度を測定し、コンピュータによって人体内部のX線吸収率の断面を再構成する方法です。

地震波トモグラヒィーの測定・解析原理はX線CTスキャナー法と同じであり、地震波によって地下の状態を可視化しょうとする不可視情報の可視化技術です。探査の分類では地震探査に含まれ、地震探査が弾性波探査と呼ばれるように地震波トモグラヒィーは弾性波トモグラヒィーと呼ばれることがあります。

地震波を発生させる起振手段としてはハンマーやかけやによる打撃あるいは爆薬による爆破が用いられます。

測定は起振点(震源)から伝播する地震波を調査対象を囲むように設置した地震計(受振点)で受振し、起振点から受振点に到達する地震波の伝播時間(走時)を測定します。

一般の地質調査で実施される地震波トモグラヒィーでは右の図のように地表やボーリング孔内に起振点と受振点を配置し、波線で示すような伝播経路の数だけの走時を測定します。右の図では百数十の走時が得られることになります。

解析は初期速度モデルから出発して測定された全ての走時と合致する方向に速度モデルを逐次変更していく方法が用いられ、速度モデルが測定値を満足するまで計算を繰り返します。速度モデルから走時を計算する方向が順方向であるのに対し、計算された走時と測定された走時を比較して測定された走時に近づけるように速度モデルを変更する解析は逆方向であることから逆解析と呼ばれています。

逆解析では唯一の正しい解が得られるとは限らないこと、およびそれぞれの走時データには誤差が含まれていることから測定データと計算結果の合致度が同じか若干悪い程度ならばより単純なモデルを採用するべきであるとの考えから、実際にはいくつかの拘束条件(平滑化、固定化、平均化)を付けて解の安定性を保つようなサジ加減が必要です。

地球を対象とした地震波トモグラヒィーでは震動源として地震が用いられ、プレートが沈み込んだ状況やプレートがマントル内部に滞留しているような状況などマントル内部の構造が視覚的に捉えられています。

波線:波動の伝播経路を表した線をいう。波動は伝播経路中の速度分布に従って屈折するので、波線は一般には曲線となる。