喫茶店「けやき通り」

2003年10月


2003.9
2003.11
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ピアノの音色に誘われて


ピアノの話を又、
といっても、今回はピアニストから。


「素顔のリヒテル」。
毎月一回吉田秀和さんが朝日新聞に書かれている音楽展望は、
今月このタイトルで、
「リヒテルと私」河島みどり著 草思社
を紹介しています。
2003年10月21日付朝日新聞25面


ヤマハピアノに触れている後半からが、吉田さんならではの文章。
リヒテルの不安がひしひしが伝わってくる辺りは、
ちょっとゾクッと来ました。


ピアノを弾く技巧については、素人なのでなにも知りません。(^^ゞ
「この一瞬の響きに」齋藤富佐子著を読んでも、チンプンカンプン。
〈それでも、読み進むのって、我ながらすごいと思う(笑)〉
こんな基本をマスターしても、まだまだなんですね。


先日のテレビドラマ「フジ子ヘミングの奇跡」を見ても、そう感じました。
ただ弾くだけでは、まだ。
弾く人の心が加味されて、曲が、演奏が、人々に聴かれるようになっていく。


演奏の際、リヒテルほどの名手でも、不安にさいなまれる…。
吉田秀和さんは次のように書かれています。
「この人たちがそんな思いをしてまで演奏家であり続けたのはなぜだろう。
演奏の後にどんなことが待っていたのだろう」
「楽譜そのものもピアノを超えた彼方から見えてくる何かから彼を守るために置かれていたかのように、私には、思われた」


話が、私の手に負えないところまで行ってしまいました。(^^ゞ
ピアノを弾くどころか、全然と言っていい程分かっていないのに、
何故、ピアノについて書くのか?
そもそもの初めに帰りましょう。


今思い出せる限り、初めてピアノに魅せられた曲は、
映画「スティング」の“The Entertainer”だったような気がします。
後に、ヘンリーマンシーニのオリジナル・アルバムで聴いた、
同じ“The Entertainer”で決定的になる。
映画で流れていたスコット・ジョプリンのピアノよりも、
ちょっと暖かく柔らかい、ヘンリーマンシーニの演奏、
そのピアノの音色に、目を廻したのでした。


わぁ〜、面白い!
このとき初めて気付きました。
同じピアノ曲でも、ピアノと演奏者が違えば、こんなに違う。
それから、機会があるごとに、ピアノの音色、ピアノの音楽というものに、
耳をすませてみると、どんどん世界が広がっていく。


心が遠くへ運ばれるようなジョージ・ウィンストンの世界。
鍵盤の上のタップダンスかと見間違うようなジャスピアノ。
深みのあるクラッシクは、意外に多彩。
可憐なリチャード・クレーダーマン。
武満徹さんにかかれば、現代音楽の磨ぎ覚まされた感覚もくっきり立ち現れる。


こんな素敵な世界、知らない人に教えたい!
そう思って、書いているのです。


後は、あなたのお耳次第で、
更にその先は、
私よりもっともっと詳しい方へバトンタッチ♪

2003.10.30 記


ラグビーワールドカップ2003を振り返って


ラグビーワールドカップ・ジャパン編が、終る。
やっぱり、と思われた方が多いでしょう。(笑)
でも、私は、ン年前南アフリカでのワールドカップに比べ、
ズーッと見応えがあって、楽しめました。
何よりディフェンスがしっかりしてきていると思う。
個々の弱さは如何ともしがたいので、
戦術的な幅と言うか柔軟性が欲しかった。
フィジーやアメリカなどのように、
接戦時に自分のスタイルを押し通せるのは、
強みになると愚考するのです。


あの頃のジャパンより強くなっていますが、
世界がそれ以上にハイレベルになっている印象を受けました。
ジャパンは、今のチームが三つくらい出来るほど層が厚くならないと、
ワールドカップで、勝てないと痛感する。
フィジー戦で多発したミスと試合の流れを見てそう思いました。
中3日でも、初戦のように戦えるチームでありたい。
ニュージランドやフランス等の予選での人選は、当然なんです。
一勝を目指して参加するなら、
宿沢さんが「テストマッチ」で書かれたような戦術を取らないといけないんだろう。


層を厚くするのは、ちょっと気が遠くなるけど、
早稲田の清宮監督が企てている大学ラグビーの構造改革が進むと、底が上がるし、
海外に向けて意識を持つのみならず行動を起こしている選手が、
順次増えている事も、好材料です。
今の日本のラグビーを見るには、この全体的な動きを追いながら、
個々のチーム・試合を楽しむのが何より。


私は地上波しか見られないので、ワールドカップは此処まで。
後は、来月に入っての大学ラグビーの中継を待つのみ。
どんな選手が出てくるかが、毎シーズンの楽しみです。
そして、関東学院と早稲田以外にどのチームが一泡吹かせてくれるか?(笑)


社会人のトップリーグをも楽しみたいのですが、
中継を見られないものは、身が入りません。


ラグビー、そんなに面白いか?
時折聞かれます。
何度も聞かれている内に、
見入るようになったシーズンが好機だったのかもしれない、
と思うようになりました。
元木が明治のキャプテンで、伊藤がいた法政にリベンジを果たしたあのシーズンです。
今思い返しても、あんなドラマチックなシーズンはそう無い。
ラグビーというゲームだけでなく、そこでプレーしている選手に魅せられて、
込みで好きになる方が、見続けられるでしょう。

2003.10.28 記


ベートーヴェンのピアノソナタ


音楽記事で一つ心覚え。
読売オンラインの、エンタメ〉スペシャルで、
「ベートーベン・ピアノ・ソナタ 全32曲演奏、録音 挑戦急増 」
という記事を読みました。


私が働き出して、ちょっぴりお金が自由になった時、
LPレコードをせっせと買いました。
その中に、グルダによるベートーヴェンピアノソナタ全集があります。
ブレンデルによる第4番を聞いて、ベートーベンのピアノソナタに惹かれたのがきっかけです。
なぜ、ブレンデルでなく、グルダかというと、
全集での廉価盤がグルダしかなかったから…(^^ゞ


〉90年代後半から、若手を中心に挑戦者が増えた。
〉ピアノ曲に詳しい音楽評論家の百瀬喬氏は、…
〉ベートーベンのソナタ全曲に挑戦することで、「音楽の本質的な内容を読み取る力が増す。
作品の構造分析と、感情表現のコントロールを結びつける意味でも重要」
と、奏者にとっての意義も指摘している。


もっぱら聞くほうしか関心が無かったので、興味津々でした。
しばらく前に「パリ左岸のピアノ工房」という本を読みました。
そこで、ベートーヴェンのピアノ史における位置を知る。
だから、児玉麻里さんの次のコメントが頷ける。


〉彼のソナタを追うと、作曲法の成長に加え、ピアノの進化で表現の可能性が広がったことが分かる。


単にピアノの進化のみならず、ベートーヴェンならでは、という指摘を、
園田高弘さんが、されています。


〉モーツァルト、ハイドンの作品が図式的には単純なのに比べ、
新たな創作への意気込みが強く伝わってくる
〉初期の作品では、モーツァルトらの延長に奏者の腕を試す工夫が加わり、
さらに中期で劇的な要素と構築性が増す。
ピアノの特性を追求し、曲を構成する上で頂点に達したのは第23番『熱情』でしょう。
〉晩年の作、例えば第29番『ハンマークラビア』の緩徐楽章には、
ピアノでしか語れない深い内面性がある。


柄にもなく、深遠な音楽談義を、借り物で組み立てました。
秋、という事で、御容赦くださいまし(笑)

2003.10.26 記


只今、延々と読書中(笑)


新潮社版「南総里見八犬伝」は、全12巻で、
今月10月に、6巻が刊行され、半ばに達します。


私の読書は、8月にまったくと言っていい程進まず、遅れているものの、
読書に最適の時候となり、目下遅れを奪取中。


毎年秋に行われる市立図書館の整理休館が開けて赴けば、
新刊の棚に5巻があり、早速手にする。
で、カウンター前に立つと、予約の4巻を手渡されました。


それには、黄色い紙が添えられて、
既に次の予約者がいる由。
刊行に遅れじと追っかけているつもりが、
いつの間にか、他の同志から追われている!(笑)


3巻では、犬田小文吾がメインキャストでしたが、
4巻は、冒頭から、犬飼現八が主人公として活躍します。
3巻の後書で書かれていましたが、
馬琴は、主登場人物である犬士達の活躍場面を均等にするよう配慮もしているようです。
すごい余裕です、ネ。


4巻では妖怪が出てきましたよ。
まだまだ、新たな犬士を登場させる段階で、先が楽しみ♪


信乃の独り立ちに至るまでの退屈さは、もう無く、
サクサクと読め、楽しんでいます。


とは言っても、この頃の言葉遣いとは違う文章なので、
ちょっと落ち着いた気持ちになり、
まとまった時間が無いと読めません。
会社の昼休みとか、家庭が平安な時しか読めないのがつらい。(^^ゞ




ダルジール警視シリーズ
死者との対話



ダルジール・チームとは、ほぼ二年ぶりの再会。
しかし、ノヴェロが、いない!
「武器と女たち」での負傷による休暇中!
まだ、治らないわけ?(笑)
代わりに、ハット・ボウラーという新米刑事が、
ダルジールの餌食になっています。


今回もダルジールをてこずらせる事件で、
捜査と共に犯行も進行している。
犯罪に対する配慮も行き届いて、ヒルさん、読ませてくれます。
登場人物が多く錯綜しても、レギュラーメンバーの魅力をきちんとサービスしてくれる技は、健在でした。
読み惜しみしながらも、後、もう100頁余となってしまう。


今事件は、言葉遊びがキーになっており、
訳者泣かせだったのではないでしょうか?
翻って申せば、英国人として読みたかったー!
登場人物が、その筋の専門家だらけというのも、
ヒルの気合が感じられます。


ネットでのきちんとした感想は、
まだ、片手で数えられるほどしかないが、楽しいものが殆ど♪
本当に好きな人は好きだなぁ〜(笑)
でも、もっともっと、好きな人が一杯いていい、と思うんだけどな。


関係者諸兄、引き続き宜しくお願いします!
あちらでは去年出ている次作「Death's Jest」は、是非来年に。


読みたい本が他にも山ほど、いや連峰ほどあるのに、
このシリーズを読み返したい気持ちもむらむらと立ちあがって、いけません。(^^ゞ

2003.10.25 記


ラグビー、フジ子・ヘミング、それから


18日、ジャパンはフランスに挑みました。
試合が始まり直ぐに、フランスはスコットよりは強い、と分かる。


しかし、ジャパンはスコットランド戦に劣らず善戦し、まさかの点差で折り返しました。
前の試合のジャパンより強い。
4点差に詰め寄った一瞬、勝てるかもと不遜に思い、(笑)
力が入り、見終えて疲れがどっと出る。


後半、フランスは本気になってましたね。
見所の多い試合でした。


ラック周辺で後から全力疾走してきた選手にクロスパスを繋げるプレーは、
サインであっても、芸術を見たかのよう。
ウイングの「金髪のロムー」というクレジットは笑えましたが、
いい体と身体能力を兼ね備えているのに、ため息が出ます。


フランス相手に攻めて2トライをもぎ取ったのですから、
後の二試合、ますます楽しみです♪




週刊文春に、
「阿川佐和子のこの人に会いたい」
という連載があって、
最近の二人は読み応えしました。


10月16日号は、 義家弘介。
10月23日号は、 トニー・レオン。


義家弘介さんは、ヤンキー先生と言ったらお分かりの方多いと思う。
ただの熱血先生ではなく、ヘーゲルを読み取る面も持ち合わせ、
授業を生き生きと真っ当にしているのに好感を持ちました。


トニー・レオン、あの「インファナル・アフェア」についても言及。
どの場面の撮影が一番大変だったか?
これは、ちょっと当てられないでしょう。(笑)




TVドラマ「フジ子・ヘミングの軌跡」を見る。
フジ子に扮したのは菅野美穂さん、
その母親を十朱幸代さんが演じていました。
年代表示が全てフジ子・ヘミングの年齢である事が示すように、
彼女の心に即したストーリー・演出です。


難聴、中途失聴者には、見てて身につまされるシーンがあるものの、
ピアノ(架空も含め)に向うシーンがふんだんにあって、
ピアニストとしての人生を描ききり、いい作品だと思いました。
聞こえなくなり、貧窮した時、彼女の人生は大きく転換し、
己の人生を受け入れた時道が開けたという、彼女の人生観が見取れる。


他にも、母親との葛藤など、細部でいろいろ考え感じられるところあり、
押しつけがましくなかったも良く、
優れた資質に恵まれているだけでは、幸福は約束されないし、
幸運だけで人生が開けるものでもないことなど、
伝わってきました。

2003.10.19 記


ラグビー、ワールド・カップ、始まる!


秋の中旬、連休明けの火曜日に、冷たい雨が降る。
この秋、初めて寒いと感じた。


先日見た月は、大きく間近だったのに、
今は、空のはるかな高みにある。


柿の実がなっていた。


この秋のメインイベント、ラグビーワールドカップが始まりました。
ジャパンの初戦相手は、スコットランド。
一時、4点差で、期待が膨らみましたが、
後半の後半に相次ぐトライを奪われて点差が開き、ア〜ァ…。


ゲーム展開は、良かったです。
勝てたかもしれない。


ジャパンに試合開始後直ぐノックオンのミスが出てオイオイ…。
しかし、相手スコットは意外に手強くない。
ジャパンのディフェンスがいいのか?


箕内キャプテンの表情が普段通りで驚く。
今まで追い詰められたような、切羽詰った表情のキャプテンを見てきただけに心強く、
彼を始め海外チームに所属した経験を持つ者が何人かいる、というのも大きいと思う。
プロ化のシステムが機能しているのでしょうね。


今までのジャパンとは全然違っています!
私がラグビーを見始めて、最高のジャパン。
残り3試合、どんな試合をしてくれるのか、大いに楽しみになりました。


地上波で見られるのはいいけど、途中のCMは、とんでもないです。
はっきり、スポンサーがイメージダウンしてるとしか言いようがない。(笑)

2003.10.15 記


「人生は、時々晴れ」&「アダプテーション」


人生は、時々晴れ

マイク・リー 監督作品として期待して見に行き、満足しました。
「秘密と嘘」を見ての期待を裏切らない仕上がりです。


どうしてこんなに作中人物の心の襞に、見る人を引き込めるのだろう?
この人の作品を見た後では、
現実の人と人との何気ないコミュニケーションがことごとくドラマじみて見え、
ドラマの中のコミュニケーションが計算尽くしに見えてくる。


色褪せた日常にウンザリしている三家族の人々が主人公。
彼等の暮らしに、一つ一つ事件が起き、
澱んでいた家族関係が動き出します。
それぞれの日々の暮らしの中の歯がゆさや苛立ち、物憂さが、
見る人に伝わってくるものですから、
自然に感情移入してしまい、恰も家族の一員になったような気がしないでもない。
描かれている人は賢いとは言えないけど、いとおしく思える。
監督の人間観が透けて見えるようでもあります。


見終えて、毎日一緒に暮らしている人のことを思う。
止むを得ないこともあるけど、もっと心は寄り添えるのでは?

アダプテーション

これは、誰よりもチャーリー・カウフマンの作品です!(笑)
大変手の込んだ脚本は、一見?ですが、
見終えて思い出せば、ニヤニヤさせられる事が、続々出て来ます。
映画マニア向けとも言える。
脚本と現実、ハリウッド的…、こんな事にもやもやしている人には、ガツンと来るでしょう。(笑)


同じニコラス・ケイジが出ている「マッチスティック・メン」が直球の仕掛けなら、
こちらは変化球の仕掛けです。
あれよあれよの展開はちょっとコーエン兄弟を思わせなくも無いけど、
作風というか、作品から受ける情感は全く違います。
カウフマンの肩の温もりがちょっと感じられたかな?(笑)


前半は眠くなるかもしれないけど、そのつまらなさも計算のうちなので、
ご覧になる際は、ちょっとご辛抱を(^_-)

2003.10.13 記


ホーンブロワー・シリーズ


早川書房から、
ホーンブロワー・シリーズが全巻重版される。
このニュースを通して、
NHK-BSでTVドラマが放送されたことを知りました。
わ〜ん、見たかった(泣)
って、見ようにも我が家では衛星放送が見られないのだった…。


ならば、ビデオを見ようと思っても、日本語版は未発売。
海外版DVDを買うしかない。
そちらの情報を探せば、この13日には、第3部が発売される由。
でも、無理して買っても言葉が分からない。(号泣)
しかし、そんなこんなの前に、買うお金が無いのだった。


早川書房からこのシリーズが出だしたのは、
私が大学生の頃。
出る間隔が間遠く、
1973年から足掛け5年にわたっての翻訳出版です。
最後の方、一年に一冊。
読む方、続かなかったというか、早々にリタイアです。
あの頃、若くて、他にもいろいろ気を取られること多かった。(笑)


このシリーズの最初が出版されたのが1937年で、
最後の10巻は、1962年に出ています。
著者の死後出版された未完の11巻があるのですが、それはさて置いても、
25年も長きに渡り書き継がれた裏には、同時代の読者の強い愛着が感じられますね。


この度のチャンスを大事にしようと、
早速一巻を買って開けば、版は元のままのようで、
ぎっしり詰まった行間が、ちょっと読みづらくも懐かしい。
訳者あとがきによれば、
あのチャーチル首相も愛読した由。


30年の時を越えて心新たに向うのですが、その間に知った事が一つ。
それは、「アフリカの女王」の原作者であったこと。
キャサリン・ヘップバーンとハンフリー・ボガードとが共演した、
この映画の原作者がフォレスターだと知って、
ちょっと、驚き、ちょっぴり納得。(笑)


ホーンブロワー・シリーズについて、
TVシリーズの情報を中心に、
懇切丁寧な紹介をしているサイトは次です。


順風満帆


開設半年余りですが、
まだまだ先が長いので、
皆さん応援してくださいね(^o^)丿


どれくらい長いかというのは、
このサイトの中にある次のコメントを。


TVシリーズは、今のところ約2年毎に原作1巻分というペースで制作されています。
このペースで最後まで作られるとすると、
最終巻が映像化されるのはまだ10年以上先と言う事に。
是非とも頑張って最後まで作って欲しいものです。



このテレビシリーズが続く限り、
早川の訳本、今度は版切れになる心配は無いと思うのですが、
どうでしょう?(笑)

2003.10.12 記


映画「巌流島」と「マッチスティック・メン」


仕事の終わる定時には、もう陽は既に落ちている時候になりました。
夕焼けが次第に夕闇へと変わっていくのを見ながら、隣街のシネコンへ向う。


先週応募した「スパイキッズ3−D」の試写会が外れたものの、
応募先の放送局から全く違う映画の試写会招待状が届いたのが前日。


おそらく急遽開催される試写会の応募が少なく、
前回の試写会の外れ葉書を再抽選したものと思われます。(笑)


映画は「巌流島」。


あの名高い巌流島について宮本武蔵は、何も書き残していない。
その巌流島での決闘を境に武蔵は人が変わったと言い伝えられている。
この二点から、
実は、武蔵と小次郎とは戦っていないのではないか、
と、異説を展開した作品です。


この映画での武蔵は、意表をつく人物造型ですが、
それまでの吉岡道場の事などがこちらに前提としてあるものですから、
全然説得力を持ち得ず、呆れるばかり。
人が変わったとて、お決まりのパターンに嵌り過ぎです。
対し、小次郎の方は、或いはそうであったかもしれないと思わせ、
意外に興味津々モノでした。
見終えて、苦笑。


せっかくシネコンまで遠出をしたのですから…(笑)
シネコンのいいところは、レイトのメニュが多いことです。
うまくいけば、仕事を終えた後、梯子で二本見られます。
「巌流島」は、一時間半の尺。
というわけで、もう一本見る。(^_^)v


迷わず、始まったばかりの「マッチスティック・メン」に向う。


〈以下、ネタばれがあります〉
構わない方は文字を反転してお読みください。
未見の方は、絶対読んじゃダメですよ!



始まって間もなく、音楽が素敵〜♪
これは、全編にわたり、楽しめました。


ニコラス・ケイジは、役の当たり外れがあり、それも振幅が大きい。(笑)
これは、当たり!
潔癖症や広場恐怖症等の病的なところ、うまい。


しかし、この映画の最大の魅力は彼の相方、娘役のアリソン・ローマンです。
ものすごくチャーミングで、
父娘のシーンは、見てて、心ウキウキ、気分は最高でした。
脚本も役者も、言うこと無し。
自分にも娘がいるから、こう乗れるのかな?と一瞬思う。


細かいところ此処彼処が、よく詰められているな〜と、感服。
スパゲティを壁に投げるなんて、ネ。


アリソン・ローマンに次ぐ、この映画の見所は、
どんでん返しのストーリー。
最後の方で、ジョージ・ロイ・ヒルのあの作品を思い出す。
あれは、爽快な後味でした。
でも、これはしんみりとした後味。



父娘シーンが乗れただけ、
ちょっとショックというか、
そういうのねーだろう!と最初は拒絶反応を起こしました(笑)
しかし、落ち着けば、あの「スティング」の向こうを張るんだから、
これでも、いいか、と思えるようになる。



脇役の詰めも素敵だし、
最大のネタが割れても、見直せる魅力があって、
これは、懐の深い作品。
エンターテイメント系では、余裕で今年のベストテンに入ります。(^_^)v

2003.10.11 記


ある現代音楽作曲家の心意気


7日付朝日新聞文化欄の「J−culture−now!」によれば、
ジャズコースを新設する音楽大が増えて、
先鞭をつけた音大では、既に約200名が学んでいる由。
そこでは、一流のミュージシャンが講師です。
その一人山下洋輔さんのコメント。
「我々は全ての疑問に答え、世界中のジャズコミュニティで通用するミュージシャンを育てるメソッドを惜しみなく与える」


日本ジャズ界で若手が台頭してる背景には、このような事があるんだな、
と納得しました。


それで、思い出すのが、
ニューズウィーク日本版9.17号に載っていた、
「21世紀のクラシックはどこに」という記事です。
現代クラッシク音楽の今を紹介しています。


大人になってから武満徹さんを始めとする、
現代音楽の世界を知った時、歓喜しました。
ベートーヴェンやモーツァルトもいいけど、
バロックもいい。そして、現代音楽もいいな、と思った。
あの頃は、私にとって音楽的ビッグバン。(笑)
NHKFMで現代音楽を取り上げている番組もあって、
次々と新しい曲に出会えて喜んだものです。


しかし、マーケットとして、文化面としても、今は、余りにも寂しい。
個人的には、家族に向け自分をオープンにしているので、
じっくり現代音楽と向きあう余裕が、時間的にも金銭的にもありません。
でも、あの世界が開けていくような高揚感は、忘れ難く、
いつでも再会したい。


で、この記事ですが、(笑)
最後に、現代音楽の作曲家マクミランへのインタビュー記事があります。
これが、凄くいい!
全部書き写したいくらいですが、選りすぐって紹介します。


人々は一過性のポップカルチャーに幻滅を感じはじめている。
人生や人類の歴史に関する知識をもたらす芸術を、
もっと深く楽しみたいという飢えを感じている。
この飢餓感がさらに強まり、
今は脇に追いやられている芸術がタイムリーなもの、本質的なもの、人生を高めるものとして受け入れられるときがくる。
それまで、私たちは決して仕事のレベルを下げてはいけない。


文化的なことに従事しているものとしての心意気の良さ、志の高さを見せ付けられ、
言葉を失い、唸るしかありません。

2003.10.8 記


「踊る大捜査線 THE MOVIE2」&「さよなら、クロ」


映画二作品を字幕つきで見ました。


踊る大捜査線 THE MOVIE2


年を経てますます人気が高まるのに驚かされます。
テレビ・シリースから楽しんでいるものとしては、
大いに楽しませていただきました。
しかし、一映画ファンとしては、いろいろ不満があります。


THE MOVIE2ともなれば、もうテレビドラマから一線を画し、
脚本を、編集をシャープにした方がいい。


俳優陣は、当初のシリーズに比べ、格段に存在感を増しているのに、
話があちらこちらに寄り道しすぎです。
この脚本家が本気になればもっといいのが出来る!
その著書を読み、そう確信しているので、
問題は製作者サイドですね。


この役者陣、この制作費、この脚本家、
う〜んもっと凄い映画が出来るのに…!!!
欠伸を殺し、ため息をつきました。
おもしろくて、哀しかったです。


さよなら、クロ


映画「卒業」をリアルタイムに見た高校生たちと犬とのお話。
こういう犬との付き合いは、昔はあたりまえだけど、
今にしてみれば本当にさっぱりしてて、すがしい。


映画の背景が、ここまで自分に寄っているとは思っていなくて、
見ているうちにどんどん気持ちが溶けていきました。(笑)


茨木のり子さんに教えていただいたユン・ドンジュの序詞が流れてくると、もう涙涙…。
若き日々にいいものに出会えてたんだ!
そうしみじみ思いました。


好きだのに言えない。
その歯がゆさ、苦しさ、切なさを、妻夫木聡がよく演じていたが、
相手が伊藤歩さんだと説得力が落ちる。
僕なら…(爆笑)


金井勇太君、やっぱり若いっていいわ。
器用に生きられないけど、世界が広がるんだものね。


日々の暮らしの中でささやかに琴線を振るわせるもの、
テレビなどでもっと掬い上げてもらいたい。
もう少しゆったりと見たかったので、
これは10話ぐらいに膨らましても充分味わえると思う。

2003。10.5 記


試写会「インファナル・アフェア」


試写会で見る。
見終えて、「試写会で良かった(笑)」という映画が多いのですが、
これは久々に違った。
多分、「トラフィック」以来だと思うけど、
帰りしなにバンと1000円、カウンターに置きたくなる。


50円、いや200円(毎回4枚出します)では、すまない、
と思いましたね。


この作品は、映画館のスクリーンで見るべき作品です。
手に汗を握り、身を乗り出して見ました。


言葉は要らない。
眼差しと行為とで、有り余る思いが真っ直ぐに伝わってくる。
己の力を振り絞り、そして賭けに出る主人公の二人。
運命を切り開いているのか、人生を駆け抜けているのか?


麻薬取引をする犯罪組織と警察とが、それぞれ相手にスパイを潜入させる。
その二人の活動、人生がメインです。


目が離せない展開の後に響く余韻は、
欧米の作品には無いもの。
ハリウッドがリメイク版を高額で手中にした気持ちは、分からなくもないが、
見終えて苦笑するしかありません。


映画館を後にする時、
背筋は伸ばし、肩を張り、眼光鋭く辺りを見回した。
一時間半前のだらけた自分は、捨て去っている。

2003.10.2 記