郡国五銖銭は、前118年〜前113年(元狩5年〜元鼎4年)に鋳工された貨幣で、半両銭
の鋳工をやめた後の最初の貨幣です。郡国五銖銭は、朝廷で基準となる形(大きさ、重さ等)を
決めたものの、統一した規範の鋳型がなかった為、民間での私鋳が横行していたと伝えられて
います。また、郡国でも五銖銭を鋳工する為の銅原料不足により、他金属を混ぜる様になったり
したため、半両銭よりは均一であったものの、個々の銭径、重量の差は後に鋳工される五銖銭に
比べ大きい傾向にあります。前113年(元鼎4年)赤側五銖銭と共に廃止されました。
郡国五銖銭は、五字により基本型(下記T型〜V型の三種類)、発展型(下記W型)、特殊銭
(下記X型、六型)の六種類に分類されます。また、穿上下に各種符号を鋳出されたものが多く
存在します。
T型(基本型)
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五字直交
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五字竪画の交筆部分が斜直するもの
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五字弧曲
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五字竪画の交筆部分が僅かに弧直するもの
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U型(基本型)
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五字緩曲
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五字竪画の交筆部分が緩曲するもの
赤側五銖銭、三官五銖銭に受け継がれる書体
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V型(基本型)
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五字湾曲
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五字竪画の交筆部分が湾曲するもの
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W型(発展型)
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五字偏体
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五字が上下に偏体したもの
(穿孔よりも字が短い)
V型の発展型
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X型(特殊銭)
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五字変型
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五字竪画交筆部分の湾曲が著しいもの
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Y型(特殊銭)
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長頭銖
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銖字の朱竪画が特に長いもの
※赤側五銖銭
現存する五銖銭中、存在量が少なく、容易に
区別する事が可能な五銖銭 |
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面
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背
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面(穿上一横)
(称:上横文)
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背
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郡国五銖(T型、五字直交)[光]
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郡国五銖(T型、五字弧曲)[光]
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面(穿下一横)
(称:下横文)
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背
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面(四角決文)
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背
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郡国五銖(T型、五字直交)[光]
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郡国五銖(T型、五字弧曲)[光]
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面(穿上三角)
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背
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面(穿上三角)
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背
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郡国五銖(T型、五字弧曲)[光]
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郡国五銖(T型、五字弧曲)
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面
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背
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面(四角決文)
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背
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郡国五銖(U型)[光]
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郡国五銖(U型)[光]
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面(穿上三角)
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背
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郡国五銖(U型)[光]
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面
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背
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面(穿上三角)
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背
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郡国五銖(V型)[光]
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郡国五銖(V型)[光]
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面(穿上月紋)
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背
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面(穿上月紋)
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背
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郡国五銖(V型)[光]
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郡国五銖(V型)
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面
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背
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面(穿上半月)
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背
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郡国五銖(W型)[光]
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郡国五銖(W型)
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面(四角決文)
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背
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面(穿下半月)
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背
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郡国五銖(X型)[光]
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郡国五銖(X型)[光]
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面(伝形)
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背
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郡国五銖(X型)[光]
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面(穿上月紋)
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背
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郡国五銖(郡国鋳、未仕立品)
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従来日本では、未仕立品の五銖銭を郡国五銖銭とし、輪側仕上げをしたものを赤側五銖銭として
分類していましたが、中国での各地の発掘に携わった「蒋若是」氏によると、鋳放しの五銖銭は
半完成品、との説を述べています。(秦漢銭幣研究による)
郡国五銖銭、鋳銭前の半両銭(文帝、武帝半両、武帝三銖銭)については、基本的には輪側の
仕上げを施し、私鋳原料となる余分な部分(鋳バリや鋳口等)を削ってから流通させていました。
半両銭に続いて鋳銭された郡国五銖銭は、半両銭より更に盗銅が出来ない様にする為に輪側と
背に内郭が付与されたと考えられています。
従って、わざわざ輪側や内郭を付与させ、盗銅させない様にした形状としたのに、余分な部分を
残したまま流通させる事は、矛盾を生じる事になります。
実際に埋葬品として出土する郡国五銖銭(官鋳として流通していたものと考えられる五銖銭)に
ついては、全てが輪側仕上げを行っている(未仕立品は出土していない)との報告もあります。
仮に輪側仕上げを行ったのが赤側五銖銭とした場合、輪側仕上げの行われた五銖銭の登場が鋳工
初期より見られる為、赤側五銖銭の鋳工が同時に行われた事になってしまい、史実と一致しません。
以上より、旧来の説「未仕立五銖銭=郡国五銖銭、輪側仕上げ=赤側五銖銭」は、鋳工時代の
情勢や流れから見ても、蒋氏の説「未仕立五銖銭=半完成品五銖銭」の方が合っている様に
思います。
なお、未仕立品の五銖銭は、地方(郡国)での出土や、鋳銭廃棄品として出土します。特に最後
に掲載した「郡国鋳」としたタイプの五銖銭は、他の郡国五銖銭よりも重く大きく、製作も劣り、
このまま輪側仕上げを行っても、他の郡国五銖銭とは全く異なる事が容易に予想できますので、
官鋳ではなく地方での鋳銭(郡国鋳)と考えます。
本ページ中の、[光]と記載されている古銭は、光華蔵品を示します。
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