伊豆の玄関口、沼津の町から御用邸公園前を南下すると15分程のドライブで
三津浜に至る。没落貴族を描き、太宰文学の集大成となった「斜陽」は、三津
浜の安田屋旅館で執筆された。斜陽族という流行語にもなり「人間失格」とと
もに太宰の代表作の一つだ。
安田屋旅館には昭和22年2月下旬から3月上旬まで滞在し、翌年に亡くなる
まで大きな旅行をしていないので、三津浜滞在が最後の旅行だった。旅館の
部屋からは駿河湾の海と富士山を眺めることができ、富士山を眺めながら人生
の転換期になった山梨県甲府での新婚生活や、「富嶽百景」の舞台となった
御坂峠の天下茶屋を思い出していたのかもしれない。
三津浜の辺りは、なんだか太宰の故郷であり子供の頃に家族で滞在していた
青森市の浅虫温泉の海に似ていた。三津浜に滞在した理由はまだ調べていな
いが、もしかしたら富士の眺めと浅虫温泉に似ていることが理由だったのかも
しれない・・・・・・。
静岡県沼津市
昭和7年(1932)、沼津御用邸近くの
静浦村に滞在し、左翼運動から決別し
た太宰は本格的な創作活動としての
「思い出」を書き始める。
沼津は、太宰のプロ作家としてのスター
トの地であると同時に、作家としての終焉
の地になった。