開門岳と知覧

高校の頃から、多くの小説やドラマ等の舞台になった知覧、開門岳に行って
みたいと思っていた。九州の南端、薩摩半島の知覧は鹿児島市からも山を
登り思った以上の時間がかかるドライブだった。
　知覧町は戦時中に陸軍特攻機地のあった町で、薩摩藩の美しい武家屋敷
と裏腹に物悲しいイメージがある。実際、飛行場の跡地にある特攻平和記念
館へ足を運んでみると、悲しみとともに５５年前の遺品など生き証人が強烈に
何かを語りかけてくる。遺品を見つめる多くの人たちが目頭を押さえながら押
し黙っていた。
　自分の車で九州までドライブし、グルメと温泉を楽しむ観光ができる平和が
多くの犠牲のうえに成り立っていることを、知覧でも痛切に感じた。４、５年前
に武田鉄矢、和久井映見のドラマで舞台になったり、昨年は高倉健の映画
「ホタル」で話題になった。鹿児島で恋人や仲間とグルメ、温泉、観光もいいが
多くの人が知覧で平和記念館に足を運んで欲しいと思った。
　何時の日か、広島の原爆ドーム、沖縄のひめゆりの塔等とともに、知覧も
自分の子供を連れて訪れたいと思う。教科書、映画以上に知覧の町が強く
平和の尊さを教えてくれるはず。

　薩摩半島の最南端に海に面して開門岳がある。円錐形の本当に美しい山だ。
近くには砂風呂で有名な指宿温泉や数年前に謎の恐竜「イッシー」で話題になっ
た池田湖もある。
　武田鉄矢が映画やドラマで紹介していたが、開門岳の周辺には「特攻花」が
咲くらしい。知覧などの特攻基地から沖縄を目指し出撃した若きパイロットが
今生の別れに貰った花束を、日本本土の見収めである開門岳に向け投げ去って
それが今でも芽を出して花を咲かせるというもの。あまりにもショックは話であると
ともに、強い生への執着を伝えるエピソードだ。
　南国でもまだ肌寒い２月の下旬、開門岳裾野の野原に立った。「特攻花」かは
わからないが、菜の花や多くの野花が風に揺れていた。しばらく開門岳の美しい
山の形に見とれていると、突然のにわか雨が降り出し、南からの温かい雨は春の
香りを運んでいた・・・・・。