「そうですよ、ぐずぐずしていたら…」
「イエナは囮だ。おびき寄せて皆殺しにするための罠だ。かわいそうだが、イエナのことは忘れよう。逃げるんだ…
今までと同じように!そして、ザクリの怒りが解けるのを待つんだ」
「クリークさん、しかし…」
「黙れ!俺はリーダーだ。リーダーには、みんなの命を守る責任がある!俺の言うことが聞けない奴は、前へ出ろっ!」
クリークの剣幕に、リス達は沈黙。だが、ついにガンバの怒りが爆発した。脱兎のごとくクリークに駆け寄ると、力任せに彼を殴り倒した。
「イ…イ…イエナは、おまえの妹だぞ!それでもまだ、ザクリから逃げ回るのかよ!?」
「おまえ達には関係のないことだ。さっさと島を出ろ!」
「ちきしょー、出ていかあ!おまえみたいな意気地なしのいる島、頼まれたっていたかねえや!きしょう!」
クリークの態度に腹を立てたガンバは、呆然とする仲間をよそに、その場を去った。
「ちきしょー、バーロー、オタンコナス…出てってやるよ、こんな島!ふざけやがって…もう知るかい。チキショー、こんにゃろー…」
ガンバは、独りいかだを海に運ぼうとしていたが、いかだは言うことを聞かない。しまいには引いていた綱がちぎれてしまう。
「ちきしょう…」
思わず、悔し涙を流すガンバ。
「おい、ひねくれガンバよ…」
そんなガンバの背中を、ヨイショがポンと叩く。
「いつまでもスネてる暇はねえぜ」
振りかえると、仲間達がいかだを壊している。
「あ…いかだを?」
「当分の間、海には出れねぇ。なあ?」
「そう、クリークはクリーク。我々は我々。」
「ボーボの恋人をほっとくって手はねえぜ。なあ、ボーボ?」
「おお、ザクリ許すまじ!」
「ザクリを倒して、ノロイに行こう!」
みんな、その気になっている。
「へへ、とまあそういうわけだが、ガンバおめえどうする?」
「決まってらい、バーロー!やるぞお!」
彼らは、夜の森へと向かっていった。すると、頭上の木の上を移動する影が…
「クリーク…?」
ガンバがそれに気づき、足を止めるとクリークも木の上に立った。
「やいクリーク!どこ行くのか知らねえが、こんなとこをウロウロしてると危ねえぞ!隠れ家で小さくなって寝てた方がいいぜ!」
ガンバが怒鳴りつけると、クリークはにやりと笑って
「心配はいらないよ。多分、行く先はおまえ達と一緒だ」
「えっ…?」
驚くガンバ達の前に、クリークは降り立った。
「仲間を安全な場所に移すには、ああ言うしかなかった」
「えっ、じゃあ、おめえははじめっからひとりでやる気で…?」
「イエナはかわいい妹だ。俺の命なんか、惜しくはない」
「クリーク…」
思わず、ガンバは手を差し伸べた。クリークもその手を取って、握手を交わした。
「さっきは、ちょっと痛かったぜ。ガンバ…」
「え?へへ…悪い、悪かった。そんなこととは知らなかったからよ…」
ガンバが照れ笑いを浮かべていると、周りからカチカチと音が響いてきた。いつの間にかリス達の仲間が集まり、クルミの実を鳴らしていたのだ。
「クリークさん、リーダーのくせに抜け駆けは良くないよ」
「死ぬ時は、みんな一緒ですよ」
仲間たちの言葉に、クリークは思わず涙ぐむ。
「み、みんな…すまない。ありがとう…」
「ハハハ、決まった!すげえや、こいつはすげえや!リスとネズミの連合軍だい!これでこそリスよ、ネズミよ。お互いシッポのある仲間同士よ!」
ガンバの言葉に、戦いへの意気が上がる彼ら。いよいよ、決戦だ!
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