第8話:ボーボが初めて恋をした【3】

ボーボの案内で、一行は夜の森の中へ。
「ここだよ…イエナちゃんがさらわれたの…オイラが、オイラがいけないんだ…イエナちゃんに、お別れを言おうと思ったのがいけなかったんだ…」
"イエナ…"
その時、リスの仲間が叫んだ。
「クリークさん…あれ!」
周囲の木に、生々しい爪痕が…
「ザクリの爪痕だ。そして…これは…これは、皆殺しのしるしだ!」
「ついにザクリが怒ったんだ…」
「もう戦うしかない」
「みんな、戦うんだ。俺達も…」
「おまえ達だ!おまえ達が早く島を出さえすれば!」
ガンバ達に食って掛かる仲間を、クリークが制した。そしてガンバ達に
「今夜は月夜だ、船出にはちょうどいい」
そして、仲間達にクリークは
「さあ、ここら辺は危ない。新しい隠れ家を探そう!」
この言葉に、ガンバ達はもちろんリス達もビックリ。
「クリークさん、それじゃイエナは…?」
「そうですよ、ぐずぐずしていたら…」
「イエナは囮だ。おびき寄せて皆殺しにするための罠だ。かわいそうだが、イエナのことは忘れよう。逃げるんだ…
今までと同じように!そして、ザクリの怒りが解けるのを待つんだ」
「クリークさん、しかし…」
「黙れ!俺はリーダーだ。リーダーには、みんなの命を守る責任がある!俺の言うことが聞けない奴は、前へ出ろっ!」
クリークの剣幕に、リス達は沈黙。だが、ついにガンバの怒りが爆発した。脱兎のごとくクリークに駆け寄ると、力任せに彼を殴り倒した。
「イ…イ…イエナは、おまえの妹だぞ!それでもまだ、ザクリから逃げ回るのかよ!?」
「おまえ達には関係のないことだ。さっさと島を出ろ!」
「ちきしょー、出ていかあ!おまえみたいな意気地なしのいる島、頼まれたっていたかねえや!きしょう!」
クリークの態度に腹を立てたガンバは、呆然とする仲間をよそに、その場を去った。
「ちきしょー、バーロー、オタンコナス…出てってやるよ、こんな島!ふざけやがって…もう知るかい。チキショー、こんにゃろー…」
ガンバは、独りいかだを海に運ぼうとしていたが、いかだは言うことを聞かない。しまいには引いていた綱がちぎれてしまう。
「ちきしょう…」
思わず、悔し涙を流すガンバ。
「おい、ひねくれガンバよ…」
そんなガンバの背中を、ヨイショがポンと叩く。
「いつまでもスネてる暇はねえぜ」
振りかえると、仲間達がいかだを壊している。
「あ…いかだを?」
「当分の間、海には出れねぇ。なあ?」
「そう、クリークはクリーク。我々は我々。」
「ボーボの恋人をほっとくって手はねえぜ。なあ、ボーボ?」
「おお、ザクリ許すまじ!」
「ザクリを倒して、ノロイに行こう!」
みんな、その気になっている。
「へへ、とまあそういうわけだが、ガンバおめえどうする?」
「決まってらい、バーロー!やるぞお!」

彼らは、夜の森へと向かっていった。すると、頭上の木の上を移動する影が…
「クリーク…?」
ガンバがそれに気づき、足を止めるとクリークも木の上に立った。
「やいクリーク!どこ行くのか知らねえが、こんなとこをウロウロしてると危ねえぞ!隠れ家で小さくなって寝てた方がいいぜ!」
ガンバが怒鳴りつけると、クリークはにやりと笑って
「心配はいらないよ。多分、行く先はおまえ達と一緒だ」
「えっ…?」
驚くガンバ達の前に、クリークは降り立った。
「仲間を安全な場所に移すには、ああ言うしかなかった」
「えっ、じゃあ、おめえははじめっからひとりでやる気で…?」
「イエナはかわいい妹だ。俺の命なんか、惜しくはない」
「クリーク…」
思わず、ガンバは手を差し伸べた。クリークもその手を取って、握手を交わした。
「さっきは、ちょっと痛かったぜ。ガンバ…」
「え?へへ…悪い、悪かった。そんなこととは知らなかったからよ…」
ガンバが照れ笑いを浮かべていると、周りからカチカチと音が響いてきた。いつの間にかリス達の仲間が集まり、クルミの実を鳴らしていたのだ。
「クリークさん、リーダーのくせに抜け駆けは良くないよ」
「死ぬ時は、みんな一緒ですよ」
仲間たちの言葉に、クリークは思わず涙ぐむ。
「み、みんな…すまない。ありがとう…」
「ハハハ、決まった!すげえや、こいつはすげえや!リスとネズミの連合軍だい!これでこそリスよ、ネズミよ。お互いシッポのある仲間同士よ!」
ガンバの言葉に、戦いへの意気が上がる彼ら。いよいよ、決戦だ!

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