§第6章 本放送、そしてその後§

昭和50年4月7日
「ガンバの冒険」第1話が放映された日である。放送は、毎週月曜日・夜7時から。
(もっとも、ネット局によっては放送日や時間、時期にズレがあったものと思われる)
こうして、スタッフ・キャスト共に「絶妙の組み合わせ」と言える「名作」が、世に送り出されたわけだが…
ここで、しばしば話題になってくるのが「打ち切り」のうわさである。その「発端」と言える事例を挙げてみよう。

1.後に「ロマンアルバム」が出版された時、掲載された当時の企画書には「52話連続」と記されていた。
2.「最後の戦い 大うずまき」のタイトルには「最終回」ではなく「第26話」と出ている。
  (一方で、第25回の予告ナレーションでは「最終回」と言っている)また、最後に「おわり」の文字が出てこない。
3.当時、東京ムービーが制作していた作品には後年ブレイクするなど、その時点では時代が追いつかなかった
  いわゆる「早すぎた名作」(ルパン三世・旧などが好例)や「原作の展開を追い越してしまいそうなので」打ち切られた作品
  (エースをねらえ!・旧)が目立ち、ガンバもそのカテゴリーに数えられてしまった。

しかし、これについて出崎氏は「初めから26話の予定だった」と言っている。
出崎氏が用意したと思われる初期のストーリー展開の一覧も26話分で完結している。〔→第3章 ガンバの冒険製作変遷リストを参照〕
また、スタッフのインタビューなどを読むと芝山氏が「もし、7匹のうち誰かを殺すとしたら、ボーボだね」などと話をしていたが
その後「もしかして(番組が)延長されるかもしれない、と言う話が出てきて」結局、誰も殺さないことにしたと、おっしゃっている。
そこで改めて、放送された全26話のストーリー展開を追ってみると…その流れや、展開は26話で完結させることを念頭に置いた
組み立てになっていると思われる。そこには無駄も、端折りもないように感じられる。


“IF”の考察
仮に、この番組が「52話」で制作されていたとしたら…どのような展開になっていただろうか。
私的見解であるが、対ノロイの戦いだけで52話分のストーリーを組み立てるのは、困難だと思われる。
26話では、描ききれなかった「物語」もあるかもしれないが倍の52話となると、冗長な展開に陥るのが関の山だっただろう。
そこで、もし52話分の放送枠が用意されていたとしたらどうだったか、考察してみたい。

「原作」の内容は、限られている。ちなみに、この時続編である「ガンバとカワウソの冒険」は、上梓されていない。
従って、前半の26話を「ノロイ編」後半の26話を「カワウソ編」として展開することは、不可能だ。
そこで原作にない、原作の流れを追っていない「オリジナルの展開」を加えることになる。それが、前述の通り数話ならまだしも
20話に及ぶ展開となると、かなり無理が生じると思われるし、それらのストーリー展開を用意できても、冗長な感じを受けてしまうだろう。
また、もし途中で「延長」となった場合はストーリーの組み立ても何もできないまま、打ち切りよりも悲惨になったのではないだろうか。
私は、26話で物語を展開させたのは「妥当」だったと考える。

が、しかし…

好奇心と想像力が旺盛なのは生まれつき(笑)なので、我流の展開を考えてみよう。
(最初から、52話分の枠があり打ち切りなしで放送されると言う前提で)
注目したのは第3章で挙げた「当初のストーリー展開」である。ガンバは、忠太を介抱するため船乗りネズミ・ヨイショの縄張りを荒らし
ヨイショ達に追われる…とある。この展開を生かして、またガンバが海へ出る「きっかけ」となる話も膨らませれば港を出るまでに2〜3話分
追加ができるのではないか。
続いて、前半の漂流中の軍艦島や潜水艦の話に1〜2話分の追加は可能だと思われる。例えば…?例えばですよ…ねえ。ハハハハ。
さて、ザクリ島編も4話くらいに展開を広げて、本編第10話のようなエピソードも外せません。
陸に上がった後、カラス岳を舞台にした場面では二手に分かれたガンバ達をもう少し細かくしたりして、それぞれのストーリーを追ってみる。
これで、3〜4話分の追加。ノロイ島上陸への経緯はあんなものかな…ノロイに追い詰められ、最後の砦を守るための戦いでイタチの群れに
飛び込んで、撹乱作戦を展開するなどのストーリーにして2〜3話増やすとする。これでええと…12〜14話程度?
あら、計算間違えましたな。(しまった…これじゃ、ガクシャが自慢げに主張する「知力」とほぼ同レベルじゃないか)


その後の「ガンバ」
本放送がどの程度の「視聴率」を出していたのか、今となっては知る由もないが
(仮にネット上で、このようなことが「検索」できるにしても、無理にそれを知りたいとは思わない)
現在でも、根強いファンがいてビデオはもとよりLD・DVDも揃っているなど、ソフト面でも入手・視聴が容易である。
これらの点から、決して「爆発的」とは言えないにせよそれなりの人気と、インパクトを持った作品と言えるのではないだろうか。

その後、この作品は映画化されている。1984年、テレビシリーズの再編集版として 映画「冒険者たちガンバと7匹の仲間」が制作された。
ストーリー展開は、第1話・第2話・第10話・第20話以降を中心に編集され、ザクリ島編・カラス岳編などはカットされている。
そのため、イカサマが初めから「ノロイ島へ一緒に行く」と言ったり(しかし、使われているのは、テレビ版では「ご一緒する気は毛頭ござんせん」
というシーンなので、妙な違和感を覚える)ツブリ達の登場も、若干唐突な感じを覚える。
それでも、テレビ放映時のキャストが全員揃って再度アフレコをしているのは今となっては嬉しいことだ。
余談だが、夜の港でガンバががなる「唄」も84年当時のヒット曲になっている。(ガンバ役、野沢雅子さんのアドリブ)
なお、映画化という点では三部作のひとつ「グリックの冒険」が1981年で、最も早い。
しかし、この作品は東京ムービー制作ではなかったので版権の関係で、テレビシリーズのようなキャラクターが使用できなかったのだ。
この作品にもガンバが登場するのは周知の事実だし、椛島氏がキャラクターデザインやレイアウトなどに携わっていられるのだから、残念である。
また、ソフトもLDのみで現在では、中古市場やネットオークションでも見かけないのは、残念だ。
1991年、再び当時のキャストが集結する。映画「ガンバとカワウソの冒険」の録りの時だ。
なお、このストーリーには忠太は出てこないので、実質6名の仲間たちが終結。また全編オリジナルだったが、集まった方々は違和感なく
「仲間たち」を演じてアフレコはスムースだったと言います。
特に、ボーボ役の故・水城蘭子さんは声優と言うより、女優としてドラマや舞台の脇役で活躍されているのが中心だったため、
ブランクが心配されたものの、いざとなると身体が「ボーボ」のリズムを覚えていてすんなり溶け込んできたと、野沢さんが回想されています。
その後、あの時の声優陣の多くが鬼籍に入られてしまい…あのメンバーが声を揃えて「しっぽを立てろー」と唱和することはなくなりました。

個人的には、ガンバについては無理に「新編」を制作してほしくないと思います。
特に、キャスティングについては「あの7人」が揃って初めて「冒険者たち」となるのであって、一部・全部に関わらず、キャスティングを変えてまで
制作をしてほしくない…というのが本音です。
特に、製作者側の安っぽいノスタルジーでリメイクしてほしくはないと思っています。

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