五六年前、毎日毎日一ヶ月も二ヶ月も続けて山の中へいって見たことがある。それでも一枚の写生もしなかった。木の葉をつんで座席をつくり、一週間も二週間も続けて山と雲と松風の音を聴きにいったことがあった。松籟といふと籟(ふえ)という字をかくが,実際微妙な笛のやうな音を発することがあるのだ。 村上崋岳
峰の色谷の響きも皆ながら吾が釈迦牟尼の声と姿と 道元