私は本当の都市の美しさというものは汚いものを取り捨て、定規で予定通りに新しく造り上げた処にあるものでなく、幾代も幾代もの人間の心と力と必要とが重なり重なって、古きものの上に新しきものが積み重ねられて行く処に新開地ではない処の落着きとさびがある処の、掬い切れない味ある都市の美しさが現れて行くのだと思っている。 私はそんな町を眺めながら味わいながら散歩するのが好きだ。小出楢重「めでたき風景」