kabuki index live-repo (rice stone) report

平成中村座公演

昼の部 夏祭浪速鑑 二幕六場 

 

─ 其の三 ─

配役 | 其の一 | 其の二 | 其の三



あまりの出来事に幕間のあいだも放心状態が続いてました。

心地いい陶酔感が会場全体を包んでいるよう。
「やられた、、、」というか、「参りました!」という心境。ここまで、平伏してしまったのは久々だった。
今の歌舞伎に強い危機感を持っている勘九郎さんならではの伝統、ジャンルを越えた演出。
劇場の作りから幕間の演出、そして芝居の端々に至るまで勘九郎さんの熱意が行き渡っている。
そりゃ、東京から有名人が駆けつけるだけのことはあるわ。



■二 幕 目(第一場)

団七は家で難しい顔で黙りこくっている。
その様子でお梶(扇雀)はなんとなく察しがつく。
愛嬌のあるキャラクターの勘九郎さんなだけど、シリアスな表情にも深みがある。

そこへ、弟分の徳兵衛(橋之助)がやってくる。
ことの経緯を知っていた徳兵衛(橋之助)が高飛びするよう仄めかしても、団七は部屋に篭ってしまうばかり。

すると残った徳兵衛(橋之助)が、お梶(扇雀)に言い寄ってきた。
コクーン歌舞伎の時よりも一段といい男になって、厚みと深みが増したようです。
今回彼の演技が絶賛されているのも分かります。着物を脱いでふんどし一枚になった橋之助さん、なんとまあいい体格をしていることでしょう(爆)。
ふんどし姿にも惚れ惚れ〜。(阿呆)
這い上がるようにお梶を見、下心ありありのいやらしい演技をしても、橋之助さんはやっぱり端正です。
でもそれは、二人を離縁させて妻子に類が及ぶのを食い止めようという演技でした。

怒った団七と徳兵衛は喧嘩になり、兄弟の契りを交わした互いの方袖を投げつける。
そこへ止めに入った三婦(弥十郎)が、お梶(扇雀)との離縁を勧め、ついに団七は三下り半を書いてしまう。
実は、三婦(弥十郎)と徳兵衛(橋之助)が示し合わせてのことだった。
いや、もしかしたらお梶を守るために団七も加担してのことだったかも知れない。

そこへ、役人が現れて団七の家を取り囲む。
役人を迎えた徳兵衛(橋之助)はあろうことか、団七を自分がお縄にすると言い出す。

危うし団七。



■二 幕 目(第二場)

この幕では追っ手の役人との大立ち回りが繰り広げられます。
舞台と花道縦横無尽に使って派手な見せ場。
ところが、立ち回りの詳細はほとんど霧の中で覚えてない。(とほほ)

舞台にはミニチュアな町屋が登場、町屋の影には役人が団七を待ち伏せしている。
むっくりと姿を現した役人が団七に挑みかかる。
切り伏せ、ねじ倒し、大暴れの団七。
舞台から団七が消え、屋根の上にミニチュアの人形が現れる。
しばし組み合って、下へまっさかさま。
今度は、人形に代わって本物の団七が現れるのですが、その動きはさっきの人形のよう。
場内からはどっと笑いが巻き起こる。

さて、花道から登場する役者は奥の小さなスペースで待機しているのですが、会場があまりにも小さな造りなためにほとんどベニア板一枚で隔てられているといった按配になっていた。

さて、あれは一体どの時だったろう?
花道の奥から、
「行くぞッ」 という気合に満ちた鋭い声が聞こえてきました。
席が花道の横なのでこうした声まで聞こえてくるのです。
《…… ん?》
捕り方の役者たちが先に飛び出し、それを蹴散らせるように、団七が、その後を徳兵衛が、大またで飛び出してくる。
それは紛れもなく、役者としての勘九郎の声でした。
こういうのを聞けるのは最高の喜びでしょう。
内心、「カッコええーーーー!」と叫んでしまった。
こういうのを聞けるのが何よりのご馳走だと思う。

舞台では梯子を使った大捕り物となり、役人に追われた団七が今度は舞台から花道へと駆けてくる。
ちょうど私たちの席の真横です。(喜)
片袖だかもろ肌脱いだ格好。赤いふんどしだか下帯が見える。入れ墨も目に鮮やか。
役人に扮した役者さんが、花道から向こう正面二階席の手すりに向かってみるみる梯子を立てかける。
それを支える手、また手。早い早い! そのスピードには驚かされた。
まるで火消しの出初式のよう。
その梯子を長どすを口に加えて団七が上っていく。── 結構な高さです。

二階の客は目の前に現れた勘九郎に拍手喝采の大喜び!
そこで刀を振り上げ、大きく見得。
いやぁ、まさに千両役者!
今度はまた長どすくわえて降りてくる。下に目をやる勘九郎さん、汗だくだぁ。
目がギラギラして、高揚しているのがこっちにまで伝わってきて、観ている方も心拍数が上がってくる。

再び舞台へ戻っていく団七。
追う役人。

とうとう屋根に追い詰められて、屋根まで追ってきた徳兵衛(橋之助)に取り押さえられる。
万事窮す?
と思ったら、徳兵衛(橋之助)が団七の首にかけたのはお縄ではなくて、紐で数珠繋ぎにした銭だった。
これを路銀にしろということだった。

勢い込んで駆け出す団七。

そのとき、またもや舞台後ろが開かれた!
途端に太陽の光あふれる戸外の景色が目の前に現れる。
とたんに笑ってしまった。

外のギャラリーがえらい人数に増えている(爆)。

外はバルコニーのようになっていて、福島天満宮地社講社中の面々のにぎやかな祭囃子を演奏している。
後で分かったけど、舞台裏の荷物搬送用のデッキで演奏していました。

しばらくバルコニーで浮かれ騒いでいた勘九郎と橋之助が、広場に降りて見物人たちのいるところへ走り出した〜(笑)。
もちろん、
客席は総立ち!
駆け出す二人に手拍子が沸き起こる。
公園の敷地の中を、どこまでもどこまでも二人は走っていく。
もちろん、外のお客さんたちも大喜びで二人を迎えています。
そして、それを見ている会場は総立ちの手拍子。

勘九郎と橋之助はしばらく見物人たちのところでサービスしていたかと思ったら、休む間もなく舞台の方へ帰って来た〜!
迎える客席は異様なほどの盛り上がりよう。
いやはやまったく……
こんなんあり?!
手拍子はアンコールとなり、カーテンコールを要求。
歌舞伎でカーテンコールなんて初めてです。というよりこれほどまでの嵐のような拍手に鳥肌が立ちました。

演じ手の興奮と客席の興奮が共鳴し合い、反響しあってものすごい熱気です。
こんな芝居ができたら役者冥利に尽きるというもんでしょう。
芝居熱が高じて小屋まで作ってしまうのにも恐れ入ったけど、
普通の劇場ではできないであろうド肝を抜く演出の数々。
隅々にまで行き渡ったサービス精神と、気迫のこもった演技 ……。
生半可なことで出来る芝居じゃあない。すさまじいばかりの役者魂です。
手拍子を続けながら、これを見れて本当に幸せだと思いました。


■終演後

芝居が終わって、私はへなへなと座り込んでしまいました。
そして、出口に向かうどの顔も興奮の後が見える。
その中には筑紫さん、野口五郎さん、小沢さんの姿がありました。
狭くて歩きにくい通路を進む三人に客席のあちこりから声がかかる。
時折それに返しを入れたりして和やかな雰囲気です。

外に出ると昨日に引き続いてふるまい酒が用意されている。
どうやら毎回用意しているらしい。
私たちはというと客席でボーっとしていたため遅れをとったのでお酒は諦めて外へ出ました。

ごまっちと二人で、「あの舞台後ろに回ってみようか?」ということになり、
ぐるっと後ろへ回ってみる。
そこで初めて、「ああ、こうなってたんだぁ。」
記念に写真もパチリ。

さらに距離をおいてもう一枚(下)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


今度は、見物客がいたあたりまで歩いてみる。
相当な距離だ。(後ろに見えている建物は関西テレビ)
そう、100メートルはあったろうか?(←かなりあやしい)
そして、その位置から見た舞台もカメラに収めて、本日の観劇は終了。


こんな距離を駆け抜けたのか…… 。
これを観られて、ホンマにホンマにホンマによかったぁ。

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