アイザック・アシモフ

SF界では「ロボット三原則」の生みの親(のひとり)としてつとに知られているアシモフ。最初バリバリのSF作家としての顔しか知らず、ユーモア溢れるもうひとつの一面を知ったのはずっと後でした。
アシモフは多彩。ロボットものとファウンデーションシリーズがSF作品の大きな流れで、日本での翻訳もフィクションはSF関係が多いのですが、彼の著作の大部分は科学解説書などのノンフィクションです。
・・・余談ですが実を言うとアシモフではなく、「アモフ」というのが正確な発音に近いそうです。でももう、日本ではアシモフで定着してしまっているようで・・・(^^;;  アシモフ、でないとピンと来ないのでこのままの表記にします。




銀河帝国の興亡 1・2・3 ★★★★★
(創元SF文庫)

一万二千年の長きにわたって栄華を誇った銀河帝国。その繁栄はいつまでも続くかのようだった。だが滅びの日は近い。自ら創始した心理歴史学(サイコ・ヒストリー)によって、そのことを予見した心理歴史学者ハリ・セルダンは、せめてうち続く暗黒時代から人類を救おうと決心する。かくして人類の希望の灯火となる、二つのファウンデーションが建設された・・・。  この上ないスケールと歴史的観点で描く、SF史上不朽の名作。

これはSFオールタイムを選ぶとすれば、必ず入る名作です。何度読み返しても、実に優れたストーリーだなぁと思っています。タイトルはハヤカワ文庫のほうが原題に近いのですが、最初にこちらから入った私には何が何でも銀河帝国の興亡としか考えられません(^^)
何世代にも及ぶ物語なので各エピソードごとに主人公は違いますが、全く気にならず、かえってタイムスケールの大きさを感じさせます。
ちなみに「1」は、ハリ・セルダンの計画に従って力をつけていく第一ファウンデーションを、「」は予想外の因子によってくつがえされそうになる計画の危機を、「」は再び軌道に乗りはじめながらも、自らの道を歩もうとする第一ファウンデーションと第二ファウンデーションの対立を描いています。


ファウンデーションの彼方へ(上下) ★★★★(ハヤカワ文庫)

第一ファウンデーション建設より498年。第二ファウンデーションをも圧倒し、着実にセルダン計画は進んでゆく。が、第一ファウンデーションにも第二ファウンデーションにも、真実は隠されていると考える人々がおり、彼らは自らのために運命をつかみ取ろうとしていた。銀河系、人類のためにあるべき未来とは何か?全ては真相を知った第一ファウンデーションの青年議員ゴラン・トレヴィスにかかっていた・・・   32年後に書かれた続編。

続編であるこの作品は、同時にアシモフのさまざまな作品群をひとつの未来史にまとめる役割ももっています。かなりの力業でまとめられ、なるほどと思わせる反面、字数が足らず説明不足気味なところもあり(他の作品群を読んでいれば思わずニヤリともしますが)、それは次回作へともちこまれています。



ファウンデーションと地球(上下) ★★★★(ハヤカワ文庫)

未来への決断を下したトレヴィス。しかしそれは本当に人類にとって良かったのだろうか?伝説の地球にその答えがあると直感した彼は地球探索の旅に出る。コンポレロン、オーロラ、ソラリア・・地球。そこで彼が見い出したものとは・・・。

ここでアシモフはもうひとつの代表作・ロボットシリーズとの融合を試みています。ロボットシリーズを読んだかたなら、思わず結末でうなることでしょう。見事に統一された二つの作品群。しかしラストのほのめかしにもかかわらず、この続きが書かれることはなく、アシモフは世を去りました・・・。



ファウンデーションへの序曲(上下) ★★★★★(ハヤカワ文庫)

はじめは単なる数学上の理論にしか過ぎなかった心理歴史学(サイコ・ヒストリー)。しかしこれは政治的に使えると権力者達が考えた時から、ハリ・セルダンの運命は変わった。皇帝と、その反対勢力の両方から追われ、逃げ回る羽目になった彼はトランター上をさまよう。そこで彼が得たものは・・・。

ここでは若き日のハリ・セルダンが描かれています。シリーズ当初の年老いた姿しか知らなかった私には、若き日のセルダンはとても楽しく読めました。また思いがけない人物も再び登場し、未来史統合のさらなる説明ともなっています。この続きはさらにあり、それは次回作「ファウンデーションの誕生」となりました。



ファウンデーションの誕生(上下) ★★★★★(ハヤカワ文庫)

皇帝の援助を受け、心理歴史学の研究にいそしむハリ・セルダン。だが研究すべき事はあまりにも多く、時は無情にも過ぎていく。現実の出来事は研究を進める時間もろくにあたえず、彼をさいなんでいた。研究に行き詰まり、愛する家族をも失った彼が見いだしたひとすじの光明とは・・・。

シリーズ最後の執筆作。ここでのセルダンは苦悩に満ちていて、セルダンファンとしては少々セルダンをいじめすぎなのでは? と、思わないこともないのですが、物語的にはOKです。また第二ファウンデーション設立秘話も盛られていて、全ての謎にアシモフが答えたという感じもします。長いこと気になってたので解き明かされて満足。



わたしはロボット ★★★★★(創元SF文庫)

ロボットものの初期短編集。「単純」な子守ロボット:ロビーから、人類を守護する頭脳:マシーンにまで成長していったロボット。その時代の変遷を、ロボット心理学者:スーザン・カルヴィン博士が思い出ともに語る形式で、ひとつにまとめたもの。

ロボットの登場する作品群は長編・短編ともにありますが、私は短編のほうが好きです。 なぜなら、私の大好きなスーザン・カルヴィン博士が登場するから。 冷ややかで厳しいけど、心からロボットたちを愛する彼女は、とても魅力的な女性です♪
実はタイトルはハヤカワ文庫の『われはロボット』、のほうが気に入ってます。でも訳は、最初にこちらから入ったためもう逃れられません(笑) 



ロボットの時代 ★★★★★(ハヤカワ文庫)

おなじくロボットものの初期短編集。「われはロボット」のようにまとめることを意図して作られていないので、全体の流れはないが、そのぶんバラエティに富んでいるともいえる。「お気に召すことうけあい」がおすすめ♪

この短編集もスーザン・カルヴィン博士が登場する作品があるので好きです。こっちはアシモフ自身が、ひとつひとつの作品に解説を書いていて(アシモフの短編集はそういう形式が多い)、それがまた魅力です。 



聖者の行進 ★★★★★(創元SF文庫)

アシモフが再び精力的にSFを書き始めた1970年代の短編集。ロボットものばかりではないのだけれども、中核をなす作品に「バイセンテニアル・マン」などのロボットテーマの傑作があるため、流れとしてこちらに。

私はSFマガジンで「二百周年をむかえた男」として「バイセンテニアル・マン」を読みました。そのときの感動はいまも忘れていません。センチメンタルに書かれているようで、実にこのテーマは深い。(個人的に)ロボットテーマ短編のベスト1です。 



鋼鉄都市 ★★★★★(ハヤカワ文庫)

人口増加にあえぎ、かろうじて巨大なドームシティ群に閉じこもって生きていかねばならない地球人類。 狭い居住空間で、人工的な生活を送る彼らが嫌悪するのは自然憎悪するのはかつて地球から飛び出していき、いまは支配者となって君臨する移民たちの子孫「宇宙人(スペーサー)」。 そのひとりが殺された! ニューヨーク・シティの刑事、イライジャ・ベイリは事件の担当を命ぜられるが、同時に引き合わされたパートナーの名は R・ダニール。スペーサーから強制され、人間から仕事を奪う存在として憎まれるロボットのひとりだった・・・。

SFの設定で推理小説、というのは意外と合います。すべての手がかりはちゃんと提示されていなくてはならず、設定内から飛躍した論理は許されない。アシモフはそのあたりがたいへん巧く、この種の古典ともいうべき作品です。鋭い文明批評と同時に、未来への希望をあわせもつラストが魅力的。



はだかの太陽 ★★★★★(ハヤカワ文庫)

あの事件から数ヶ月。 ワシントンからの即時出頭呼び出しにいやな予感を覚えたベイリを待っていたのは、宇宙国家ソラリアで起きた殺人事件を捜査せよというものだった。宇宙に旅立ったベイリは、パートナーのR・ダニールと再会し、慣れない地での捜査に乗り出す。しかし技術が進み、ほとんどロボットばかりのソラリアで一体誰が殺人を犯したのか?すべてを見ていたのはロボットだけ。「ロボット三原則」が破られただろうのか・・・?

非常に好評だった鋼鉄都市の続編。ここで描き出されたソラリアの姿は、いっそう技術偏重を戒める文明批評になっています。しかし、まあ、理屈なんかこねず(笑)単に推理小説として楽しんでもOK。ここでのヒロイン、グレディアはのちにシリーズで重要な役を演じるようになります。



夜明けのロボット(上下) ★★★★(ハヤカワ文庫)

さらに数年後。 いまやベイリは、地球人類は再び宇宙に進出すべきだと考え、そのための運動を行っていた。 その運動を理解し、支えてくれようとする宇宙人は少なかったが、数少ない中には、2つの事件を通じてベイリの手腕を認めた宇宙国家オーロラの有力者、ハン・ファストルフ博士のような人物もいる。 が、そのファストルフ博士がスキャンダルに巻き込まれ、苦境に立たされているという。ベイリは彼を救うべく、再びダニールとコンビを組んだ・・・。

はだかの太陽からかなり後になって書かれた作品。主要なキャラクターはいっしょですが、年月と共に、昔では書かれなかった(書けなかった)人間模様もプラスされています。このあたりになるとファウンデーションシリーズとの融合を意識しているので、過去のロボットシリーズエピソード(短編群)の解釈なども面白いです。



ロボットと帝国(上下) ★★★★★(ハヤカワ文庫)

二百年後。 ベイリの望んだ宇宙進出はかなえられ、いまや地球を母体とした植民国家連合(セツラー・ワールズ)の勢力は、宇宙国家連合(スペーサー・ワールズ)をしのぐほどになっていた。危機感をいだき、再び地球を敵視する機運がたかまる宇宙国家連合。そんななか、もっともロボット技術が進んだ宇宙国家ソラリアから忽然と人々が残らず消えてしまった。これは一体何を意味するのか? かつてベイリと親交のあったスペーサー、グレディアは、R・ダニールたちをともなってこの謎を解明すべく調査に乗り出した・・・。

ファウンデーションシリーズとをつなぐミッシング・リング。後期のファウンデーションシリーズとの融合がここで果たされています。しかしあのキャラクターがここまで重要な役に成長するとは・・! かつてのヒロイン、グレディアの演説など見どころがいっぱい。



神々自身 ★★★★★(ハヤカワ文庫)

エレクトロン・ポンプ・・・それは我々の世界と、異なる物理法則をもつパラレルワールド(平行世界)との物質交換を可能にし、無公害で安価なエネルギーを人類にもたらすものだった。しかし、本当にそうだろうか? だがこのことに疑念をいだく人々は、エレクトロン・ポンプの父と言われるハラム博士の激怒を買い、失脚させられてしまう。 それでもなお危機感をいだく者たちはいた。こちら、そしてあちら側にも・・・。

サイエンスライターとして忙しく、しばらくSFから遠ざかり気味だったアシモフが返り咲いたということで話題となり、賞を取った作品。動機のひとつに、異星人とSEXが苦手だという評判を打破すべく書いた(異星人はともかく、SEXはその昔SF界ではタブーだった)というあたりが御愛敬。



永遠の終わり ★★★(ハヤカワ文庫)

時間旅行は危険な因子を秘めている。過去に干渉すれば未来が揺らぐ。だが、【永遠(エターニティ)】は、未来の平和と安定のためにあえてそれを行う機関だった。 そこで働くハーランは、美しい女性・ノイエスに出合い恋をした。だが、彼女は彼の担当世紀で、消える宿命の人だった・・・。

初期の頃の長編のひとつで、ファウンデーションにもつながる未来史系の話。オーソドックスな時間SFだが、明るい冒険ものでは決してない。ちょっと暗いかも。



宇宙気流 ★★★(ハヤカワ文庫)

夢のような繊維カートは、莫大な利益を上げる、惑星フロリナの特産品だった。カートはその美しさでもって、フロリナの上部地区に住む貴族たちではなく、銀河系に住むあまたの貴族たちを彩る。 だが、そのカートを産む惑星フロリナでひとりの男が失踪した。彼はフロリナ消滅に関する重大な秘密を握っていたという。いったい彼に、起きたのか・・・?

これまた初期の頃の長編で、未来史系に属してます。いまとなっては太陽のノヴァ化理論など科学的にやや難がなくもないが、書かれたのが遙か昔なのでそのへんは仕方ないでしょう・・・。



停滞空間 ★★★★(ハヤカワ文庫)

短編集。ロボットものは別として、短編集はクラークと同じくさまざまな作品が収められているため、原則として最高★4つとします。この短編集でのお気に入りは表題作の「停滞空間」のほか「プロフェッション」。皮肉な話から泣かせる話まで、バラエティに富んでます。



火星人の方法 ★★★★(ハヤカワ文庫)

短編集というより、中編集に近い長さの作品で構成されています。われわれの地球は、現在人類のだした多大な宇宙のゴミに囲まれていますが、将来「火星人の方法」にでてくる掃空員のような人々は、はたして現れるでしょうか??



木星買います ★★★★(ハヤカワ文庫)

短編集。作家はあとがき以外、あまり解説とか注釈などに顔をださぬもののようですが、アシモフはちがいます。あちらにもこちらにも顔をだしまくるそのスタイルはたいへん個性的で抱腹絶倒。慣れて中毒に(笑)なってしまうと、むしろ無いほうが物足らなくなります(ホント)。



夜来る ★★★★(ハヤカワ文庫)

短編集。エマーソンの詩を下敷きにした表題作の「夜来る」は、アシモフの短編代表作と言われ、しばしばオールタイムベストにも選ばれる作品です。アシモフ自身の解説付。



サリーはわが恋人 ★★★★(ハヤカワ文庫)

短編集。私のお気に入りは表題作よりもむしろ「こんなにいい日なんだから」。この作品の持つさりげないメッセージが大好きなのです。アシモフの解説付。



地球は空地でいっぱい ★★★★(ハヤカワ文庫)

短編集。ここでのお気に入りはなんといっても「お気に召すことうけあい」と「いつの日にか」。特に「お気に召すことうけあい」では好きなキャラクター、スーザン・カルヴィン博士がでてくるので、アシモフの解説が珍しく(?)なくとも満足です。



変化の風 ★★★★(創元SF文庫)

短編集。やはりアシモフの解説がなくては・・という人向き(?) 一番のお気に入りは「美食の哀しみ」。私は食にはあまりこだわらない方ですが、ちょっと皮肉で反省したくなる作品です。



カリストの脅威 ★★★(ハヤカワ文庫)

初期短編集その1。特筆すべきは、アシモフの解説で作品の背景が事細かに語られ、若き日の半自伝的要素をそなえていることです。古きよき時代の作品ゆえ、科学的にはややご愛敬のものも。お気に入りは「混血児」です。



ガニメデのクリスマス ★★★(ハヤカワ文庫)

初期短編集その2。おなじく若き日々の記憶とともにつづられています。年代順で編まれているので、新人だった「カリストの脅威」より後、人気作家として知られるようになった頃の作品が主。おもわずくすくす笑ってしまう表題作は、Xmasシーズンに読むと一層楽しいかも♪



母なる地球 ★★★(ハヤカワ文庫)

初期短編集その3。ここまでを、アシモフは一応の区切りとしています。鋼鉄都市のもととなった表題作を始め、「再昇華チオチモリンの吸時性」などバラエティに富んだ作品がそろっています。



アシモフのミステリ世界 ★★★★(ハヤカワ文庫)

短編集。SF+ミステリを得意とするアシモフの、その手の作品がおさめられています(なかにはやや毛色がことなるものも)。もちろんアシモフの解説付。



ゴールド−黄金− ★★★(ハヤカワ文庫)

アシモフ最後の短編集。表題作は、神々自身をもじった楽屋落ち的作品ながら、傑作に仕上がっていてヒューゴー賞受賞。ファンに愛されてますねえ(^^) アシモフ自身の作品解説はついていないのがさみしいけれど、エッセイが収録されているのでまあ満足。



黒後家蜘蛛の会(1〜5) ★★★★(創元推理文庫)

この世で最高のもてなしは女性のおしゃべりがないことだそうだ(笑)。この信条のもとに親睦を深めるささやかな倶楽部がある。その名を「黒後家蜘蛛の会(ブラックウィドワーズ)」。メンバーの楽しみは月に一度レストランに集まり、ゲストを招いて他愛のない会話を楽しむことである。だが、なぜか招かれたゲストはちょっとした謎に悩んでいることが多く、メンバーたちはなんとか謎を解こうと努力するのだが、あらゆる可能性を論じてもこれぞという答えがでない。最後に正解が出せるのは、決まって給仕人のヘンリーだった・・・。

SFではなく、純然たるミステリーの短編集(アシモフの解説付♪)。ミステリーといっても派手な事件ではなく、ほんとうにささやかな謎ばかりです。幅広い知識を縦横に駆使しての解決法&洒落た落ちばかりで実に楽しく、殺伐としたハードボイルドに飽き飽きした方にお勧めです♪



ユニオン・クラブ綺談 ★★★(創元推理文庫)

黒後家蜘蛛の会につづく、アシモフのミステリー短編集(ショートショート形式)。クラブでの会話をきっかけに謎が出され、解答は最後にあかされるというスタイルはほぼ同じですが、解答の前に空白が挿入されていて、読者への謎解き挑戦となっています。



小悪魔アザゼル18の物語 ★★★(新潮文庫)

ひょんなことでユニオン・クラブ綺談から生まれた、ファンタジー短編集。ファンタジーというよりは(科学的な)ホラ話に近く、困っている人の悩みを全身真っ赤っかで体長2cmの悪魔が、いかに解決したかというのが毎回のお話。ただし小悪魔だけに、悩みは解決したものの、かえって悲惨な目にあうというのはお約束(笑)



ABAの殺人 ★★★(創元推理文庫)

ABA(アメリカ図書販売協会)の大会に参加した、作家のダライアス・ジャストはとんだ災難に巻き込まれる。処女作を売り出すのを手伝ってやった人気作家:ジャイルズの死体第一発見者になってしまったのである。当局の見解は事故死。が、不可解な出来事が起こり、故人と親しかったジャストには、これは殺人事件だとわかった・・・。

純然たるミステリーとして書かれた長編で、推理小説としては水準作。むしろ実在するABA大会の描写のように、作家としての内幕をのぞかせた部分のほうが面白いです。



象牙の塔の殺人 ★★★(創元推理文庫)

化学の助教授ルイ・ブレイドは、実験室で実験中だったらしい学生:ラルフの死体を発見する。実験中といっても、化学を知っているものにはいささか奇妙な点がある。殺人ではないかと考えたブレイドは、昇進がからむ微妙な時期にもかかわらず真相追究に乗りだした・・・。

おなじく純然たるミステリー長編。書かれた時期が比較的若いころだったからか、やや軽い調子のABAの殺人にくらべ、真っ正面から取り組んでいるという感じがします。実際にボストン大学の生化学教授だった、アシモフならではのお話。



アシモフの科学エッセイ集 ★★★(ハヤカワ文庫)

300冊を越えるアシモフの著作の大半はノンフィクションです。 科学、数学、歴史、文学、宗教(聖書)・・・。特に科学は全般を始め、天文、物理、化学 or 生化学、地球科学、生物とまさに万能の感があります。日本でもこの種の解説書は100冊近く翻訳されているでしょうが、全部を集めることは不可能に近いので(汗)エッセイだけを集めています。
科学はますます細分化され、専門化が進んでいます。右腕のしていることを左腕が知らないような現状を、ひそかに憂えていたアシモフにとってエッセイは、いきいきと活動できる場所でした。このエッセイ集たちは、どれをとっても様々な分野からテーマを取り上げ、そこからなにを見いだすかを伝えてくれます(^^)

空想自然科学入門
地球から宇宙へ
時間と宇宙について
生命と非生命のあいだ
わが惑星、そは汝のもの
発見・また発見!
たった一兆
次元がいっぱい
未知のX
存在しなかった惑星
素粒子のモンスター
真空の海に帆をあげて
見果てぬ時空
人間への長い道のり



アシモフ自伝 ★★★★(早川書房)

●自伝1−思い出はなおも若く−(上下)
1920〜1954までを、克明な日記を元につづったもの。単なるファンから作家への道を歩みはじめ、同時に現実の生活にも苦闘し続ける若き日々。

●自伝2−喜びは今も胸に−(上下)

1954〜1978まで。作家としても、現実の生活でも成功をおさめかけたアシモフ。が、離婚、再婚、肉親の死、忍び寄る病魔・・・。著作200冊を節目に、この自伝は書かれました。

そのあまりのボリュームに2部に分けられ、さらに上下となったアシモフの自伝。 自伝というよりアメリカSF、いや現代SFの歴史の生き証人とでもいうべきでしょうか。世を去るまでSFを愛し続けたアシモフ。SFの揺籃期を知るアシモフの貴重な証言は、SFファンならたまらないエピソードに満ちあふれています。4冊そろえば枕にもなる分厚さ(笑)、でも満足。



=====番外編=====



アンドリューNDR 114 ★★★★★(創元SF文庫)

聖者の行進に所載の短編「バイセンテニアル・マン」を、ロバート・シルヴァーバーグが忠実に長編化したもの。

文字通りなので説明不要・・と言いたいところです。驚くべきことにほんとにその通り。しかも決してレベルは落ちていません。さすが、ロバート・シルヴァーバーグ。あんたはエライ!



夜来る ★★★(創元SF文庫)

名高い同名の短編、「夜来る」をロバート・シルヴァーバーグが長編化したもの。

アンドリューNDR 114と違って原作にはない部分も加筆されていて、そのあたりは賛否両論あるところ。私としては、それより主人公の最後の選択にやや違和感を覚えます。



クラークへ  ハインラインへ  TOPへ