2003年 摂食指導日記   2002年はこちら 2004年はこちら

 2003.8.9

 過ぎてみればあっという間。8ヶ月何もしていなかったわけではなく、むしろいろいろなことがありすぎました。最近、アクセス数や質問のメールが増えてきたのを不思議に思っていたら、ヤフーに紹介されていたりして。新潟の障害児専門のお医者様からお褒めをいただいたり、摂食を一緒に勉強した先生からはげましのメールをいただいたのがこの日記の再開のきっかけでした。ホームページは常に進化していなければならないというのがわたしの持論ですので、更新が止まっている時は、勉強していないか他のことに色気を出しているかどちらかだと思ってください。とりあえず再開のご挨拶でした。

2003.8.25

 今朝、診療中にY村のケアマネさんから、悲しい知らせが届いた。訪問していたOさんが急に亡くなったとのこと。2ヶ月前まで毎月訪問していたのだが、先月、体調を崩されて訪問を中止していた。連絡がないので心配していた矢先の悲報だ。

 患者さんやご家族にとってこの2年半の私の訪問をどう受け取っていたのだろうか?正直言って、最近は私の力不足と介護力という壁に突き当たって、足踏み状態だった。体調がよければ、嚥下障害は軽くなり、体調を崩せば、経口摂取はできなくなる。そうやって少しずつ弱っていく。

 在宅の重度の嚥下障害の患者さんへの介入は、大変難しい。全身的な管理をしながら対応していかなければならないが、ドクターとの連携ができていないと、患者さんが体調を崩したら撤退するしかない。

 医療と介護の狭間に置かれているのが現在の摂食嚥下障害だ。それは現在の歯科の置かれている立場そのものなのだ。

2003.8.29

 センターでの摂食指導、3ケース。いつも夫婦できてくださるRちゃんは2回目だというのに驚くほどの進歩。父親は、前回手作りの食事用の椅子を作って来院された。改良をアドバイスしたら今回は早速、直してこられた。それも的確に。保育園では彼女専用の食事を栄養士が作ってくれていて(これは最高に恵まれている!!)それを持参されていた。ここの保育園は、老健に併設されていて、嚥下食も作られているらしい。残念ながら、もとはあった機能が失われていく高齢者の摂食と発達期の摂食では考え方が全く違う、ということが認識されていなかった。そのため、調理内容には誤りが多かったので、改良点を指摘しておいた。

 もう2例は問題は多く、解決の糸口を見出すまで、観察と母親の話を根気よく聞いていなければならなかった難しいケース。いずれ経過を報告したい。

2003.9.6

 日本摂食嚥下リハビリテーション学会も無事終了。涼しい新潟から酷暑の福岡への移動は大変きつかった。毎回、いろいろな方との交流の輪が広がっていき、今回はゆっくり講演も聴く暇もないくらいだった。発表に対しても先輩の先生方から激励やご意見をいただけたことは大きな収穫だった。

 私の発表時の座長だった小児科医のT先生からは、著書までいただき感激!福岡のO先生からは発表に関して厳しいご指摘と今後の方向性に関してアドバイスをいただきました。メールでのお付き合いしかないH先生とお話できたのも収穫でした。京都のセンターの歯科衛生士Tさんをはじめとするセンター関係者とも食事をともにすることができました。

 長崎のセンター長O先生、東京のセンターで障害者歯科を一緒に学んだ沖縄のA先生など上げればきりがありません。来年は地元新潟での開催です。いっしょに行動を共にしてくださった歯科医師会のO先生、歯科衛生士Nさんご苦労様でした。

2003.9.24

 一人の在宅往診の患者さんが終わった。施設入所のためだ。喘鳴ひどく痰はすぐからまる、発熱はたびたびで入退院を繰り返している方だ。奥様が熱心な方で、口腔ケアやゼリー食の指導もすぐに実行してくださり、効果もすぐに出た。しかし、私たちが関われるのはここまで。誤嚥が明らかな現状で、入所されてどのような対応を受けるのだろうか。今後が心配な方だ。

2003.10.4

 Hさんから紹介していただいた新潟の食器メーカーK商事さんにお願いして水分摂取訓練用のスプーンの試作をしていただいている。電話で私の描いているイメージを5分ほどお話しただけなのにほぼイメージどおりの試作品が3日も経たないうちに届いた。数ヶ所の施設で試用をお願いしようと思っている。写真を載せたいが、特許のこともあるので、言葉だけにしておく。いずれレポートさせてもらいます。

2003.10.15

 地元の新聞に口腔ケアと摂食嚥下についての連載が始まった。大変期待していたのだが、話題の取り上げ方や流れが、相変わらずのパターン。こうかかわったら、こんなに食べられるようになった式の記事は、科学的(医学的)根拠にとぼしく、摂食関係の学会では、かなり厳しく批判される。

 自然に良くなったのか、訓練や治療が効果を表した結果なのかをしっかりと解析しないと、読者に誤解を招きやすい。今後の続くようだが、以降に期待したい。

2003.10.22

 当HPで交流を持った富山県のMさんとTさんからの1年越しのえお誘いで、講演させていただいた。肢体不自由児をお持ちの親御さんの会(県肢P連)主催の勉強会だそうだ。富山県は初めての訪問で、当日は朝早くから目がさめてしまった。高速を使って3時間あまりと踏んで出発したが、2時間ほどで出口近くまできてしまった。パーキングで暇をつぶす羽目に。方向音痴のため会場近くでTさんにナビゲートを頼んだのだが、そこでも迷い、大変恥ずかしい思いをしてしまった。養護学校が会場。

 隣県からのご招待ということで、事前準備にはかなり力を入れておいた。しかし、時間の制約もあり予定の半分もできなかったのが残念だった。聴きにきてくださった方々には申し訳なかった。会場の養護学校の校長先生始め、各学校のPTA会長の皆さん、大変気さくな方ばかりで、私自身は、大変気持ちよく会場を後にできた。

 途中高速に平行して北陸新幹線の高架の工事があちこちに見られた。開通はまだ先なのだろうが、東京とつながった後、富山はいったいどう変化するのだろうか?新潟の今を考えながらハンドルを握っていた。

 この日はもうひとつ新潟のT市にある特養の栄養士さんからソフト食を作ったので試食にこないかとのお誘いがあって、帰りにこちらにも寄ってきた。大変積極的で、すぐ行動に移す方で、新潟には大変めずらしいタイプといえよう。ソフト食の概念は大変難しい。高齢者の食を総合的に把握できてはじめて完成させられると思う。せっかくでた芽を絶対つぶしたくない。これからも積極的に応援したい方の一人だ。摂食嚥下に関心のある看護士さんもいて先が楽しみな施設だ。

2003.10.31

 本日は、センターでの摂食指導。ダウン症児と脳性麻痺児。ダウン症のお子さんは、自閉的な傾向もあり、対応に苦慮している。機能的な問題というより、食べ方の問題。

2003.11.4

 本日もセンターでの摂食指導。

2003.11.25

 本年度の摂食研修会は、歯科医師会と言語聴覚士会との共催で行なう事にした。きょうは、その打ち合わせ。他職種との連携が大事なこの分野で、STの方と連携がとれることは大変心強い。ぜひ、この会を成功させたい。

2003.12.14

 同じ町のデイサービスセンターで口腔ケアの講演をしてきた。介護をされている家族の方対象なので、普通の講演と違って平易にお話しなければならないので、パワーポイントのデータ-の言葉を書き換えて簡単にした。それと共に、挿絵や写真をいれて目でみても楽しめるように工夫してみた。実技は、ビデオカメラを用意して、スクリーンに投影して、後ろの人にも見やすい工夫もしている。まるでコンサート会場のようです。お陰で、参加した方には好評であった。

 食事の試食会では、とろみのつけ方、椅子テーブルのセッティングなどの実演も出来、久しぶりに内容の濃い、充実した半日だった。

2003.12.19

 センターで摂食指導に用いる椅子とテーブルの購入準備。長崎の「SEED」さんのご紹介で、当県の業者さんにサンプルを持ってきていただいて、検討した。椅子もテーブルも各部分の高さ、奥行きが変えられる便利なもの。当センターのように不特定多数の患者さんがみえる施設には、うってつけだと思う。来年春のお目見え予定です。

2003.12.24

 今年最後の、センター摂食指導。長いお付き合いのMちゃん。口に食物を入れた後に、利き手と反対の手で、食べ物を口の中に押し込むことをどのようにやめさせるかという難しい問題。機能的な問題というより、クセの問題なので、ペアレントトレーニングの手法を用いての指導。

 療育のいろいろな場面で、使える手法。もちろん摂食指導にも応用可能。

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