摂食指導日記   2003年はこちら


2001.11.5

 隣村の介護支援センターのケアマネさんから、摂食指導の依頼を受けた。69歳の交代性片麻痺の患者さん。顔面麻痺あり。脳幹部の病変ということで球麻痺の可能性あり。そうなると手におえないけれど、木曜日2回目の訪問でもう少し詳しく診査の予定。

 患者さんを良く紹介してくださった精神科のドクターが、一ヶ月前に出張先でくも膜下出血で倒れられた。その先生が、長岡のリハビリの施設に入院のため戻られたとの事。そこは、なんと私が毎月、摂食指導に行っている重症児の施設の隣にある。今度の指導日にお見舞いに行こう。そして、口腔ケアもしてこよう。(歯科の主治医は私です)


2001.11.7

 やけに冷えるなと思って窓を開けると、八海山のいただきが真っ白になっていた。これから寒暖を繰り返しながら、里にも雪が振るようになる。豪雪地帯といっても雪にふりこめられるのは、2ヶ月強。でもその2ヶ月が長いんだ。東京生まれ東京育ちが何を好き好んでこんなところにと地元の人に尋ねられる。そんな時、東京もこちらも何の違いもないよと答える。でも東京の人ってプライド高いよね。田舎もんが集まっている都市なのに。逆にこちらの人たちはもうちょっとプライドを持ってもいいと思う。特に食物自給ができるというのはいざというとき強いですよ。根無し草の身だけれど、こちらの生活が気に入ってる。

 あしたは往診で摂食指導に行く。シュミレーションをしてスッタフに指示を出しておいた。どうなることやら。


 2001.11.8

  スカッとしたいい天気。里の山は今紅葉の真っ盛り。昼休みに往診に行ってきました。なんといっても訓練がうまくいくかどうかのキーパーソンは介護者です。このケースでは、ご主人が熱心で救われます。奥さんは70歳前ということで比較的元気で、麻痺性構音障害がありながら、コミュニケーションは問題がありません。診査の結果、球麻痺ではない事がわかり、ほっと一安心。口腔ケアやアイスマッサージをおこなった後、ゼリーを食べてもらいました。経管が続いていたので、ゼリー5口ぐらいで疲労が出てきて経口摂取を中止しました。しかし、少しづつでも継続することによって筋力も増しもう少しいけるようになるのではないかと、口には出さないけれど、ひそかな期待をしています。


2001.11.10

 「たべること」=「摂食」は、一般的にはまだまだ認知度が低いようです。

  昨晩「one love」さんのサイトを訪れて楽しい経験をしてきました。言葉は一字違っただけでまったく違う意味合いになるといういい例でした。掲示板をのぞいてみてください。

 今日、半年振りにMちゃんがお母さんと摂食指導に診療所に訪れた。口の機能は準備オーケー。手づかみ食べの時期です。(スプーンを使わせていますが、まだ早いんです)汚したり、散らかしたりなど気にしないでさせれば、たった5分ですごく上手になりました。でも母親としては、そういうことって気になるんでしょうね。能力のある子供には、おとなが下手な口を出したり手を出さない事。これが鉄則です。摂食指導の成否は、その子の持っている潜在的な能力を見つけ、いかに引き出すお手伝いができるか、です。

 子供の摂食指導は、発見の連続。


  2001.11.15

 一昨日は、保健所主催の講演会で、口腔ケアと嚥下の話をしてきた。この分野をわかりやすく説明するには相当な準備が必要。昨日は、某県の障害者歯科センターの先生方と懇談会で新潟に泊まり。午前中診療所で診療後、N療育園へ、摂食指導に。寝不足で、のべ200キロの車の移動はさすがにこたえた。でも、患者さんや付き添いのおかあさん、スタッフとのひとときは、あたらしい発見の連続で、疲れも眠気も一変に吹き飛ぶ。みんなにこのホームページの宣伝をしてきた。

 明日は、在宅の方への嚥下の訪問指導2件。土曜日は、燕市でケアマネさん対象のシンポジウムにシンポジストとして出席する。


2001.11.16

 Oさん宅に少し不安な気持ちでの訪問。なんと、前回教えてあげた牛乳ゼリーを一日3回むせずに食べているという。見せてもらったが本当だ。姿勢と、介助法とゼリー食を教えてあげただけなのに。2年間の経管栄養は何だったんだろう。脳幹の障害であるにもかかわらず、でき過ぎだ。多分、年齢が比較的低いことと高次脳機能が、障害されていないからだろう。もう一人のI さんの方は、高度の失語症や感情失禁があるためうまくいかない。同じ脳障害でも、部位によりこれほどもまでに違うものか。


2001.11.17

 講演疲れた。でも、素敵な言語聴覚士、管理栄養士さんと会えて大収穫。摂食指導依頼のメールがきてた。6歳の女の子、脳萎縮ってどんな状態なんだろう?もう寝ます。

 我が家のパグです。暑がり寒がりで、夏は近くの川に行って水浴びするのが日課です。)

 


2001.11.22

 Oさん宅に4回目の訪問。むせも少なく順調に摂取しているという。しかし、相変わらず介助者のペースは速く、食事の後半から、声が変わってくる。心配なので嚥下造影の話をして検査の了解をとる。顔面麻痺の部分を氷でマッサージすると気持ちが良いという。知覚はないのに不思議だ。あしたは、娘の合唱部が全国大会に出るため郡山まで応援に。


2001.11.28

 今日は午後からセンターへ摂食指導に。新患1名。手づかみ食べのところでつまずいていた。機能的にはかなりのところまで獲得しているのですが、食環境や食形態が適切に与えられていなかったので、本人が混乱してしまった。離乳期での相談指導の大事さを痛切に感じた。帰り、大学に寄り、お互いのケースを出し合って、症例検討。この分野は独り善がりではだめ。いろいろな人と交流を深め、情報を仕入れ、自分を高めていくことが大事。


2001.12.5

 午後からセンターでの摂食指導。予定では3件だったけれど、2件キャンセル。摂食指導を受ける子供達は、体調の急変は良くあることで、こういうことには慣れている。しかし、一般開業医院では死活問題。こういった指導は、公的なバックアップのあるところでないと運営は難しい。摂食指導は、脱落者が多い。訓練でも調理でも、家でやることは結構負担が増えるからだと思う。でも、早いうちに少しずつでもかかわっていないと、年齢が高くなるにつれ、取り返しのつかないことになってしまうのだが。

 明日から、沖縄に。日本障害者歯科学会出席のため。2題に演題のうち、1題はわたしの担当。準備は早くからしてあったので、余裕。でも、せっかくの沖縄だけれど観光は出来そうもない。


2001.12.9

 障害者歯科学会も無事終了。沖縄は、海風が気持ちよくちょうどいい熱さ?新潟は、さぶー!

 ところで障害者歯科学会での摂食嚥下部門は、摂食リハ学会に比べ、やや取り組みが甘い感じであった。特に重症児に関しては、かかわっている先生が極めて少ないせいもあって、新しい取り組みは見られなかった。壁にぶつかっているのかな。施設での指導も発想を転換して望む必要がありそうです。


 2001.12.26

 指導をしていたОさんのうちの方から、熱を出したと言う事で、往診のキャンセルがあった。誤嚥性肺炎の可能性があるので、禁食にしてもらった。介助のペースがはやく、かねてから心配をしていた。Оさんも文句を言えば良さそうなのに、夫に気兼ね?

 重症児の指導していてつくづく感じるのは、かれらは、口だけに障害を持っているのではないというあたりまえのこと。重症児を診ている小児科の先生が摂食指導に意外に消極的なのは、訓練に費やすエネルギーの割に結果や、効果が今ひとつはっきりしないことを感じている(わかっている?)からなのかもしれない。

 たった5年間の重症児とのかかわりの中で、10やったことの中で成果は1もないのではないかと、反省しきり。もっともっと勉強をしなくては。


2002.1.28

 パーキンソンの方の口腔ケアの依頼があったが、土壇場で肺炎を起こしキャンセル。嚥下障害も出ている重度な方。ケアマネさんから依頼が来るようになったのは前進だが、もっと軽いうちから関わっていければといつも感じている。嚥下障害もしかり。

 Oさん宅へ今年に入って2回目の往診。口で指導しても、介護者は忘れてしまう事が多く、手順、注意事項を書いた表を作って持っていった。熱心な家庭だからできること。

 地元の自治体のホームページコンテストで優秀賞をもらった。一般的でない内容で、だめもとで出したから、受賞は意外。でも嬉しい。


2002.2.2

 長年指導に行っていた、ある施設の摂食指導をやめることにした。療育の中での摂食指導というスタンスで取り組んでいたのだが、私の非力から、うまくいかなかった。療育として関わるにはあまりにも本人、家族、訓練担当者と接する時間が少なすぎた。当然、テクニック偏重になる。うまくいくわけはない。

 しかし、重症児を取り巻く環境というものがよくわかった。自己弁護するわけではないが、うまくいっていないのは、摂食指導だけではない。重症児が抱えている現実を直視し、今の医療を含めた療育担当者は、それぞれが自分の非力を認識し、物を言えない(文句も言えない、拒否もできない、要求もできない)彼らに対し、最大の敬意を払って接するべきだと思う。学ばせてもらうという意識がなければ、彼らとの距離は永遠に縮まらないと思う。


2002.2.20

 まだ家の周りは1メートル近い積雪があるが、雪原にも春の兆しが。この感じは、雪国に住んでみないとわからないだろうな。冬は患者さんの足の便もあって摂食関係のかかわりは減る。桜の咲く頃から動き始める。今年は、アプローチの方法を少し変えてみようと思う。

 摂食とは関係ないが、最近かかわりが多いのは、自閉症の患者さん。TEACCHという、一種の療育プログラムの事を知ってから、俄然火がついた。なによりも、彼らとのコミュニケーションの可能性に道が開けたのは、大きな収穫だった。無知ほど怖いものはナイト、あらためて感じた。インターネットを通じて多くの方からアドバイスをいただいている。


2002.3.13

 飲み込みが悪いとのことで、老健施設へ往診。RSSTなどのベッドサイド検査をしてもごくんが上手にできない。なにかのどにつかえてリう感じだそう。痴呆もないし、と首をひねっていると、本人がうがいをしたいという。見ていると、上手にぶくぶくうがいをしている。そこで、その水飲んでみてくださいというと、ごくんごくんと音を立てて飲むではないか。

 依頼書を見ると、胆のうガンの肝臓転移を起こしている。こういうケースは、食道静脈瘤ががあることがある。食道を圧迫して飲み込み障害を起こす事が当然考えられる。付き添いの方にはその可能性をお話した。

 消化器科か耳鼻科での精査をすすめた。

 現在往診中のOさん。顔面麻痺による口唇麻痺の対処法として、テーピングを指導してきた。麻痺側をテープで持ち上げ閉鎖する事により、口唇からの食物のこぼれを防止できる。

 来月からは、センターでの摂食指導も始まる。


2002.3.14

 今日は県歯の障害者歯科センター主催の恒例の研修セミナー。新潟医療福祉大学新潟リハビリテーション病院の見学をしてきた。リハビリの部門は、私たちにも大いに役立つ事多し。今後、診療上でも研修上でもリンクの必要がある。ここでも摂食嚥下にはかなり関心がある模様。


2002.4.12

 障害者歯科センターで摂食指導2件。再来1名と新患1名。再来の患者さんは半年振りに来てくれた。誤嚥性肺炎を繰り返し、母親は一時経口摂取に否定的になった事もあったが、この冬は一回風邪を引いただけで入院もしなかったとのこと。久しぶりに食べさせているところを見ても調理や介助共に安定している。(ただ、私の前では優等生ですといっていた。)少し手抜きをしているらしいが、本人自覚しているので良しとした。

 新患の患者さんは懇意にしている小児科の先生からの紹介。呼吸の状態が機能的にも形態的にも悪く、一見したところ経口摂取は不可能に見える。しかし、鼻呼吸はできるし、口唇閉鎖もそれほど抵抗なく出来る。こういう場合、せめて唾液の嚥下ぐらいは可能にしたいと考える。過敏がひどいので脱感作を第一にすることにした。ドクターとPTの先生と一緒に進めていくことが望ましいが、新潟では都市部でも難しい。

 今回、首のすわりがなくても、口唇閉鎖と鼻呼吸ができることは摂食機能を訓練する上で非常に有利に働くということを再確認した。


2002.4.18

 本当に久しぶりに大学へ。今日は新人歓迎会。地元で介護認定審査会に出てから東京に向かったので遅刻してしまったが、かつての研修仲間の顔がちらほら見えほっと一安心。顔ぶれは大分変わったが、摂食嚥下を学ぼうとする共通の意識を持った人間がこれだけたくさん集まる場所は他にないだろう。みんな会うたびに成長している。顔で笑っているが、ライバル意識で内心はなにくそである。今年は、しっかりと大学に通うぞ!


2002.4.19

 よだれが垂れることと、かまないという主訴で、重度知的障害の若い女性が母親と来院。こういうケースで予約を取ってくるは非常に珍しい。ある大学の小児歯科の教授(わたしが障害者歯科の教えを受けた大先生)の紹介とのこと。うれしいけど責任を感じる。

 摂食指導をどのように進めればよいかは、すぐ頭に浮かぶが、彼女とのコミュニケーションをどのようにとるかが、一番の悩み。彼女のいろいろな能力をどのように最大限に発揮させるか。

 一ヶ月に一回来てくれるとのこと。そうあって欲しい。


2002.4.23

 日本摂食嚥下リハビリテーション学会の事前抄録の締め切りぎりぎりで送った。こういうことは診療中は忙しくてとても出来ないので、朝の診療前の1時間が勝負。参加することに意義があると割り切っているので、内容は?

 往診のOさん。ゼリー食なら上手に食べられるようになった。ただ、ご主人が介護疲れを訴えるようになってきた。ご主人の希望は、水を飲んでくれること。難しい課題だが、何とかこちらも頑張ってみる。あと、自食もできるはずなので、スプーンや食器の手配もした。(インターネット通販は本当に便利だ。)亀田製菓の「ふっくらおかゆ」にも挑戦してみようと思う。リハビリの意欲もあるのだが、田舎では訪問リハビリしようにも理学療法士や作業療法士がいない。うちで雇いたいぐらいだが。


2002.5.16

 本当に久しぶりに昭和大の摂食研修会に出席。(2年ぶりか)今年からはグループディスカッション形式も取り入れるということでちょっと緊張して新幹線に乗った。ここの教室ではいつも新しい発見があると共に自分の勉強不足に対して反省させられる。いつもながら向井先生の最後の締めは短い言葉の中にずしりとした重みがある。まだまだ青いなとこれも反省しきり。今年はまじめに出席するぞ!(診療所は火の車になる)


2002.5.17

 午前の診療を終え、摂食指導のためセンターへ。今日は3名だが、一人キャンセル。脳障害による重度の知的障害とSチャンは母親と養護学校の先生も一緒。摂食機能の発達の遅れと誤学習、それに調理形態の不適切と心理的影響が重なってうまくいっていなかったのだけれども、その絡み合った糸を少しずつほぐしていく作業に終始した。さらに今回は、難しい課題を母親から示された。外食の楽しみも味あわせたいのでハンバーガーとかスパゲッティ―を練習したいとのこと。これにはまいったが、意外や意外、うまく食べてくれた。(かじり取りやフォークの使い方は私より上手だった)ただ、次々に口に詰め込むので飲み込みや咀嚼が出来なくなってしまうのだ。ペースだけを母親が見守っていれば、問題は意外と速く解決しそう。

 もう一人の発達遅滞のMoちゃんは、実に1年ぶり。4ヶ月の弟を連れて指導を受けに来た。何と1年生に進学。言葉も2語文が話せるようになり、かじり取りや手づかみ食べも進歩が見られた。摂食機能の発達は全身の運動機能、知的機能などとの発達と密接に関連していると改めて感じた。印象的だったのは、バギーに乗った弟君が盛んに指しゃぶりをしているのを母親に指摘したら、「そう、上の子のときは、こんな事全然しなかったんですよ。こういうことをして食べる機能は発達するんですね。」といっていたのが非常に印象的だった。

 診療後、長岡で途中下車。私の送別会に出るため。今まで摂食指導に行っていた施設のST,OT,の方と、私の活動の場を与えてくださった小児神経の先生との会食。短い時間でしたが、楽しい時間を過ごせました。重心児に関係されている方、みんな目がとても優しいんですよね。皆さん、私にとって本当に印象深い方々でした。一緒に仕事が続けられないのは本当に残念。施設での指導の日々は、楽しかったが、学ぶ事ばかりで与えるものがなかったと反省している。


2002.5.21

 往診のOさん。「ふっくらおかゆ」を試す。半量だが、むせずに食べられた。「ふっくらおかゆ」は私も自信を持って薦められる優れた嚥下対応食品だと思うが、なかなか普及しない。もう一つ、水分補給ゼリーを試したが、これはダメだった。本当のゼリーでないとOさんはダメなようだった。

 ずいぶん長い間通ったが、まだ、Oさんの顔から笑いがでたことがない。このごろは、そのことが気になって仕方がない。


2002.5.22

 H村の保健婦さんからの紹介で、六ヶ月になる口蓋裂の女児の摂食指導。ミルクを嫌がって飲まないことが主訴。経管栄養中だが、きゅうてつ反射は十分ある。経口摂取は全くしていないので、過敏があるようだ。こういうケースはいずれ飲んだり食べたりするようになるので経口摂取に神経質になる必要はないと考えている。口腔感覚を正常に発達させていくためのマッサージなどを中心に進めていくつもり。ホッツ床をしているが、こと嚥下に関しては、役立っているのかどうか、少し疑問に感じる。(顎発達を促す目的なら、まめに作り変えていく必要があるのではないかな?)


2002.6.26

  学会発表の抄録をまとめるために今まで記録しておいたビデオを見直した。患者さんを前にして気がつかない変化が時間を圧縮して見るとよくわかる。映像の記録は摂食指導には必須のものだという事を改めて認識した。特に、長期間にわたる指導においては、摂食機能だけではなく患者さんの心身の発達や変化なども知ることが出来き、大変興味深い。怠け者で、テープや資料の整理などついおろそかになる。年に一度の学会発表は、わたしにとって重い腰をあげるよい機会なのだ。


2002.7.12

 センターでR君の摂食指導。私の指導法は、消去法です。問題点をやさしい順に一つ一つ解決していくのです。これの利点は、変化や効果が保護者にもつかみやすいということです。しかし、必ず壁に突き当たる。一番多いのが、水分摂取です。きちんとした嚥下や口唇閉鎖を獲得させないで、何とかごまかしてやってくると、ここで痛い目にあう。行き当たりバッタリの指導は、よくないとわかっていながら、やってしまう。これも性格か?


          2002.8.10

 毎年恒例の向井先生をお迎えしての摂食研修会も無事終了。今回は、歯科医師会会員が症例を持ち寄っての症例検討会。(といっても参加者50人中2人だけだが)向井先生から的確なアドバイスをいただき、たいへん参考になった。終了後は慰労会も兼ねてビッグスワンの特別室でサッカー観戦。4万数千人の怒涛のような歓声に酔いしれた。


2002.10.2

 ひさしぶりに、Oさん宅へ。きょうは、ケアマネさんも来ていて、いろいろ情報交換をしてきた。他職種との連絡調整役は、彼ら以外に今のところいない。チューブ交換時に、食事をとってもらうようにお願いしてきた。筋力の弱いケースの場合、チューブの留置は、嚥下に不利になるからだ。

 麻痺による言語不明瞭は、彼女にとって大きなハンディー。今の状況では、他人と会話する機会もない(ご主人かヘルパーさんなど)。これでは気持ちも暗くなる。テープを使ったフィードバック法をすすめてきた。彼女の場合、自分の言語の不明瞭さが認識できていない。どの発音が、うまくいっていないか、歌でも何でも良いから、テープにとって聞き返して直す練習を教えてきた。彼女は、知的能力には問題がない。日がな一日天井ばかりみていても気持ちも身体も退行するばかり。何とか明るくなって欲しい。(ということで、今日は、30分ぐらい話し相手になり、嚥下指導はしなかった。)

 

 18日からの札幌の学会に向けて、ポスター作りにあわただしい。センターでの摂食障害児の症例発表です。


2002.10.8

 きょうは、某市の小学校で「ことばの教室」を担当されている先生が、生徒を連れて相談に来られた。言葉の訓練をしているのだが、口呼吸、舌の動きが悪い、唾液が嚥下できないなど言葉の発達に関係するのかという内容だった。

 確かに舌の動きが悪い。未熟児顔貌で下顎の劣成長があり、嚥下も努力性のものだった。セファロを撮ってみると、舌根が気道をふさぐような形で写っている。歯科的には、正常嚥下の獲得のための対応をしていくケース。嚥下造影も行う予定。もちろん、言語聴覚士の先生や耳鼻科(あまり相談にのって下さらないそうです)の先生と情報交換をしながら進めていくケースだと思われます。


2002.11.3

 指導には直接関係ないが、施設往診中の方が突然なくなった。死因はまだわからないが、たぶんタンの喀出がうまくいかないことによる窒息死だろう。診療中も(といっても義歯作成中だから、座って待っている時間のほうが長いのだが)、たびたびタンがつまり吸引することもあった。それ以外は全く、普通に対応できる方で、呼吸器系か嚥下に障害があったのは間違いない。(最近食欲の低下が顕著だったそうだ)変だなと思っていたのだが、患者さんは義歯の作成に強い希望があったので、請われるまま往診をしていた。

 兆候に気づきながら、ただ漫然と義歯ことだけを考え診療をしていた。専門として取り組んでいる人間として恥ずべきことだ。


2002.12.11

 センターでの摂食指導に行った。大雪の中かなり難儀して(高速道を60キロぐらいで走りつづけるのって結構大変)いった。3名の患者さんは、この大雪の中、めげずに来てくれた。少しずつだが、機能の発達変化が見られている。特に、Mちゃんに咀嚼の動きが出てきたのは、感動ものだった。3年の指導が無駄でなかったことを素直に喜びたい。なによりも母親が、根気よく通ってくれたおかげだと思う。

 来年の春まで、指導は、しばらくおやすみ。


2002.12.19

 ある介護施設で義歯を持っていない2人の方に、義歯の作製をした。検査食で、咀嚼が可能なで、嚥下にも問題のないことを確認し、久しぶりに気分よく帰っていった。そのあと、事後調査にうかがって食事内容を聞いてあきれた。以前のままのきざみ食しか与えられていなかった。なんでーと思ったが、無理のないことなのかもしれない。食事形態の処方は医師が出すことになっているが、彼らは、歯科治療がされたかどうかは、ほとんど考慮していないだろうから。入れ歯が壊れたから直す。痛みがある歯の痛みをとる。歯科医が関わっている認識は、それぐらいなのだ。義歯が入ったことで(それすら知らない場合もある)食事の形態を見直すことなんて考えも及ばないんだろうと思う。

 今回は、情報提供という事で手紙を送っておいたが、どうなっている事やら。


今年はここまで。新年は、別のページからスタートになる予定です。よいお年を!!

 

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