・概要
  昔のキャブレター式のクルマの場合,吸気が流れるときのベンチュリー効果による負圧で燃料を吸い上げていたが,
  現代のインジェクション仕様のエンジンは,ポンプで燃料を加圧して,インジェクターから燃料を噴射するようにできている.
  従ってインジェクション車の場合,このポンプが故障すれば燃料を噴射することができず,エンジンは回らなくなってしまう.
  このポンプはエンジンが回っている間,常に働いているわけだが,たいてい内部を通るガソリンで冷却するような作りになっている.
  なので,何回かガス欠をやらかすと寿命が縮む,という話を聞いたことがある.そう滅多に故障することはないらしいが,
  これまで3回ほどガス欠したことがあるのと,すでに15年,25万kmくらい走っているので,念のため交換することにした.
 
・準備品
たいていの国産車では,ポンプの騒音などを考慮して,ポンプは燃料タンク内に設置されている.
  車種によっては燃料タンクがトランク内に剥き出しだったり,サービスホールがあって簡単に交換できるようになっているらしいが,
  X80の場合はそのようなものはなく,ポンプの交換にはまず燃料タンクを降ろす必要がある.
  ここで作業を開始する前に注意することは,できるだけ燃料タンクをカラにしておく
  ことである.タンクが軽いほど,あとの作業がやりやすくなるので,燃料警告灯が点いたくらいに作業を始めるのがよいだろう.
 
今回の交換部品
 
  | 品名 | 品番 | 個数 | 価格
   |  | フューエルポンプブラケットガスケット | 77169-14010 | 1 | ¥190
   |  | フューエルポンプホース | 23239-63010 | 1 | ¥580
   |  |  ↑ホースクリップ | 90467-13054 | 2 | ¥80
   |  | フューエルポンプASSY | 23221-46010 | 1 | ¥22,300
   |  | フューエルポンプフィルタ | 23217-46011 | 1 | ¥---
   |  |  ↑クリップ | 23229-16010 | 1 | ¥---
   |  | フューエルポンプクッションラバー | 23249-74610 | 1 | ¥620
   |  | フューエルポンプチューブ | 23091-70040 | 1 | ¥3,510
   |  | フューエルリターンチューブホースNo.2 | 77419-22040 | 1 | ¥380
   |  |  ↑ホースクリップ | 90467-13001 | 2 | ¥130
   |  | フューエルタンクツウキャニスタチューブホースNo.2 | 77259-22080 | 2 | ¥400
   |  |  ↑ホースクリップ | 90467-12039 | 2 | ¥100
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  | ↑青字は,今回,準備し忘れて交換していない部品
   |  | ↑紫字は,普通は交換しなくてもよい部品 |   
・作業の実際
通常はインジェクター交換に書いてある,燃料流出防止作業をするところだが,
  実際にはタンクを降ろすためにチューブ類を切り離すと,エンジンとの間のチューブ内に残ったガソリンがどうしても出てきてしまうので,
  あまり意味がないようである.というわけで,この作業は行わずにコネクタ類を取り外している.
  
  
  まずトランクのカーペットをめくる.
    
  ここで黒いプラスチックでできた配線保護カバーを留めているクリップ(橙色の○)と,
  サービスホールカバーを留めているビス3本(赤色の○)をはずしてやると,燃料ポンプのコネクタが現れる(下の写真左).
   
    
  橙色の円で囲んだ部分が燃料ポンプのコネクタで,もう一つのコネクタは燃料の残量を伝えるためのコネクタである.
  今回は両方とも抜いてしまう(上写真右).
  
  
  次に,給油口のフタを開けて給油キャップを外し,給油口の周囲を覆っている部品(フィラーパイプシールド)
  を取り外す.
   
  上の4カ所のビス(○内)を抜けばいいように見えるが,
  実際には→で示すフューエルリッドロックを先に取り外しておかないと抜けない.
  このためには,表から見えるナットを緩めたあと,下の写真のようにトランク右サイドの内張をめくって,
  裏側からロック本体を引き出してやる必要がある.
   
  ここまで準備ができたら,いよいよクルマのリヤをジャッキアップして燃料タンクを降ろす作業に入る.
  最初に,右リヤホイールアーチ後ろのマッドガードを取り外しておく.
  次に燃料タンクを覆っているプロテクタを取り外す.ボルト3本とナット1個で留まっている.
  それから燃料タンク前側の奥に見える燃料パイプを切り離しておく.エンジンへ向かうチューブは圧がかかるため,
  フレアナットで接続されており,このため取り外しにはフレアナットレンチが必要になる.
  リターンホース(インジェクターから噴射されなかった燃料をタンクへ戻すための管)とキャニスタホース
  (燃料タンクから蒸発した気化ガスをチャコールキャニスタへ送るための管)は,普通の差し込みのホースなので,
  クリップを外してから回転させながら引き抜けばよい.
  あと燃料タンク自体は,2本のバンドで吊されている形になっている.前側はボルトで留まっており,
  後方はピンで留まっている.ピンには抜け防止の小さいピンが通してあるので最初にこれを引き抜き,
  そちら側から大きいピンを叩き出して全体を引き抜く.前側のボルトは普通に緩めて抜けばよい.
  なお,これが済むと燃料タンクが落ちてくる恐れがあるので,上の作業で前側のボルトをある程度,緩めた段階で,
  タンクをジャッキなどを用いて下から支えてやるようにするとよい.
   
  あとは,タンクが傾いて落下しないように気をつけながらジャッキを下げて,タンクを車体から引き出す.
   
  タンクは,あくまで車外にあるため,上面には泥などの汚れが付着している.タンク内に砂などが入らないように,
  ポンプの取り出しの前にエアブローなどを用いて上面のゴミを吹き飛ばしておくとよい.
   
  上の写真のAがフューエルポンプブラケットで,左側のパイプがインジェクターへ向かう燃料パイプ,
  中央がインジェクターからのリターン,右側は給油時のエア抜きパイプで給油口につながっている.
  Bは,温度変化で燃料タンク内の圧力が変化したときの空気を出し入れするパイプの接続口で,
  チャコールキャニスタを通して外気とつながっている.Cは燃料の残量を知らせる部分である.
  
  
  今回は,もちろんAだけを取り外す.ボルト7本で留まっているので,緩めて引っ張り上げると,
  フューエルポンプが姿を現す(下写真左).
   
   
  ポンプ本体は固定されていないので,ホースクリップを緩めてホースを引き抜けば,ポンプ本体がはずれる(下写真).
  あとは分解図の通りに新品のポンプを組み立てて,
  元と同じように取り付ければOKである(上写真右).ゴミよけフィルタの形状が変わっていることに注意.
   
  ポンプの取り付けが完了すれば,ブラケットを元通りに燃料タンクに取り付け,燃料タンクをジャッキで持ち上げながら車体に取り付ける.
  ホース3本を確実に接続できたら,フューエルタンクプロテクタと右後輪のマッドガードを取り付けて作業完了となる.
  
  
  このあと通常はエンジンを始動して燃料漏れのチェックを行うのだが,燃料ラインのガソリンが抜けているのを利用して,
  今回は続けてフューエルフィルター交換を行ったため,
  燃料漏れのチェックは,そちらの作業が完了してからにしている.
 
・交換後の結果
  ちゃんと動作している限り,特に車の性能には関係しないので,当然ながら交換したからといって何も変化は感じられない.
  あくまで安心のための定期交換部品という位置づけである.まぁ,これであと20万kmくらいは安心して走れるのではないだろうか.
  ただ,燃料タンクにつながるホースを新品にするのを忘れているので,これは近いうちに交換しておきたい.
  (作業日:2005年12月29日) 
 
・謝辞
最後に,今回も部品の手配と作業の大部分を手助けしていただいた,しの4さんに,この場を借りて深くお礼申し上げます.
 
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