何か、おかしい。

 

「なぁ・・・・・・」

「どしたの?」

 確認のため、手を離してみる。・・・・・・・・・治まる。

 繋ぎ直す・・・・・・・・・・・・・・・やはり。

 

「何か、聞こえないか」

「ハーゴンが攻めてきた、助けてくれ  って?」

 あっさりと肯定された。

 最初は耳鳴りかと思った。

 ほとんど雑音なそれは、雑音の混じった人の声。

「あの人、だね」

 視線で促すに従って示された方向を見ると、その一角が僅かに揺らいだ。

 気のせいで済ませられるように微かに、辺りを浮き上がらせていた。

「発光している・・・・・・炎か?」

 それにしてはいろいろおかしいが。魔力の篭った物だろうか。

「所謂人魂って奴だね」

「ひとだ・・・・・・」

 実在するのか。今まで見えた事などなかった。

「お前は、いつもこんな・・・・・・」

 きっと、感応力の強い羽鳥の影響なのだろう。

「でもないけど。この城は恨みが強いから特別。

 いつもこうならやってらんないって。ああでも、だからこそ話が聞けるってものかな」

「話・・・・・・」

 聞けるとは思えなかった。

 どの声も、悲哀と怨嗟に満ちている。

「もっと奥から、もう少し理性の残ってる声が僅かにだけど聞こえる。多分・・・・・・王の間から」

「ムーンブルク王か」

「わかんないけど、そうだねロト王家直系なら魔的抵抗値も精神力も強いとされてるから、その可能性が高いかな」

 言いながら王の間に続く扉を押し開けた。

 微かに声がする方向には、やはり青白い炎が揺れていた。

 

「・・・しは・・・・・・ムー・・・おう・・・・・しい・・・・・・・・」

「やっぱり、王・・・・・・」

 飛鳥よりもクリアに聞こえているのだろう羽鳥が痛まし気に断じた。

「王は何と?」

「まだ何とも。話してみよう」

 羽鳥は炎の前まで寄ると、手を翳した。

「ローレシア並びにサマルトリア両国、ロト王家の盟約により参りました。

 ムーンブルク王、何が起こったかお教えください」

 目を閉じ二、三問いかけをして、飛鳥には聞こえぬ謁見は終わったらしい。

 

 

 

「王女が逃げ込んだ地下道は・・・・・あれか。うわ、崩れちゃてる」

 羽鳥の言葉通り、地下へと続く階段は、見えてはいるもののそこへ至る道が瓦礫で埋もれてしまっている。

「外から回れそうだな」

「あの紫で泡吹いてる堀に入るの?うー・・・」

「放っておけないだろ」

「そうだけど」

「埋葬、してやらないと・・・」

「へ?」

「え?」

 予想外な反応をされて、しばし顔を見合わせた。

「あ・・・あーごめん、王の話聞こえなかったんだ?」

「何と言ったんだ?」

「王女は呪いを掛けられたって。解いてやってくれって」

「え・・・あ、なら・・・・・」

 過剰に期待はするな、どんな呪いなのかもわからないのだから。

 

「生きてるよ。大丈夫、彼女は生きてる。何処に居るかも多分知ってる」

「そう、か・・・・・・」

 そう返すだけでやっとだった。

 それからじわじわと、嬉しさが込み上げてい来る。

 勇者ロトを思い出す。

 精霊ルビスに掛けられた石化の呪いを解いたという。

「あの先に王女がいるのか?それとも解呪のアイテムか?」

「王女は僕の考えが間違ってなければムーンペタ。解呪の方の情報が欲しいね。

 ムーンブルクにその手の秘宝あったと思うんだけど、さっき宝物庫らしき所見た限りではその手の魔力品なさげだったし」

「わかった、行くか」

「それっきゃないか」

 

 毒水に入るくらいなんだと言うのか。

 

 

 生きているなら、助けられる。助けてみせる。

 決意新たに一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

語り手ってのは鈍かったり頭悪そうに見えるものとはいえ、何か羽鳥が優秀すぎる気がしてどうかと自分でも思ってます。飛鳥ちゃんが世間知らずなのは譲れませんが。

羽鳥もサマくんも好きキャラだから贔屓はしちゃうだろうけど、あからさまには嫌です。

そのうち羽鳥視点も入れれば解消されるかなー。でも当分先の話なんですよね。だって策略系だから(笑)