「我等が世界の母 いにしえの慣例の下 汝が使徒の迷いを鎮め この身に滞りし穢れを祓え」
キアリー と最後に締めると柔らかな光が収束し、重かった体が嘘のように軽くなった。 「・・・・・・はい終わり。どう、まだ気分悪い?」 「いや。解毒使えたのか?」 「ん、昨日から。バブルスライムうろついてんのに毒消し切れたらヤバイかと思って、気合入れて思い出してみた。 成功すんのは例によって初めて」 ・・・・・・もう深く考えまい。 「そうか。ところでお前も相当顔色悪いぞ」 「空気悪いから。元々血見て貧血起こす方だし。情けない事にこの光景は限界なんだよね」 「まぁ・・・・・・何とも無い方が異常だな」 些かうんざりとした口調で飛鳥は辺りを見渡した。
建物は半壊し、外堀の水も完全に腐り毒気を発し、死体に血痕等至る所に殺戮の痕を残すこの地では。 肉と水の腐臭、腐肉を喰らう獣の臭い。そして襲ってきたそれらを返り討ちにした際の血臭。
これが、邪教の神官ハーゴンの行った事。 ここが、あの魔法大国と謳われたムーンブルクの跡地。
・・・・・・美しい国だったのに。 ぐっ、と掌を強く握っていた自分に気付く。だけど気付いた後も力を抜く事が出来ない。 いや、きっと、その方がいい。この怒りこそがきっと・・・・・・
「っ・・・・・・」 呻きが聞こえてはっとした。 「羽鳥?だい・・・・・・限界か?」 大丈夫じゃないのは確認済みなので言い直す。 歩けないようならここに置いて、一人で探索するしかない。
「・・・・・・行くよ。僕らは、見なきゃいけないんだと思うから」 とはいえ足取りは覚束ない。 ぐら付いたのを見かねて、手を伸ばした。 「へ?」 「行くぞ」 「ちょ、ちょっと待った、魔物も出るってのに!」 振り払うよう腕を振るが、指と指をしっかり絡ませておいたので簡単には離れない。 「お前、利き手右だろ」 「飛鳥ちゃんも!!」 「俺は左も使えるんだ」 「ほーそりゃすごい。でも・・・・・・・・・!」 抗議は途中で途切れた。 だけど離れた手と手は、それが聞き届けられたからではない。 視界の端で瓦礫が崩れたからだ。 蠢く何かに油断なく剣を構え、 「・・・・・・!」 二人して息を飲んだ。
変色した皮膚や、腐り溶けた目玉を引き摺るそれは、だけども確かに人間の形を残していた。 「し、死体・・・?」 「リビングデッド!瘴気に反応しちゃったんだ・・・・・」 痛ましげに羽鳥が叫ぶ。 きっとこの城で暮らしていたであろう人物、その事を考えてしまい飛鳥の反応が一瞬遅れた。
気が付いた時には魔力の霧に囲まれていた。 何体もの、動く死体。生前の面影を宿したそれに剣を向ける事に躊躇いを消せない。 だけども、魔物だ。今は魔物。 倒すしか、ない。そう、殺すしか・・・・・・
切り裂いた人影には手応えが無かった。幻術だ。 それが分かっていても、当たるまでは何度でも切り付けるしかない。 人の姿をした、その影を。何体も。・・・・・・何人も。
「大気に宿る火の精霊よ 我が声に応えて御身の力をここに示せ 灼熱の焔と化して 彼のものを灰燼と成せ!――――――ギラ!!」
朗々たる声が響いた。 もう何度も聞いた、詠うような響き。羽鳥だ。
熱気が引いた時には霧も晴れていた。
「魔力は温存しとく筈だったんだけど」 「いや、助かった」 続けて礼を言おうとしたら、首を振って止められた。 「ううん。あんまし、君には戦わせたくない相手だったからね」 「・・・・・どういう意味だ」 「さぁ?どうせ僕も逃げたしね。本当なら切らなきゃいけなかったんだろうけど」 時折、わからない事を言う。
「俺としては、焼いた方が浄化されそうな気がするけどな」 「・・・・・・ああ、それはそうだね」 緊張していた表情が、ふっと崩れた。 くすくすと笑って、羽鳥は手を差し伸べた。
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・・・・・・ICO? 何かあのゲームの煽り文句が浮かびました。「この人の手を離さない、僕の魂まで・・・・・・」ってやつ。
当サイトの彼らは手を繋ぐのが基本ですね。でもまさかDQパロででも繋ぐとは私も思っていなかったです。
資料はFC版のものなのですが、2箇所ほどローレが左手に武器持ってるので、元々「どっちか左利きにしたい!」という夢を持ってた私としては嬉々として利用。
リビングデッドのマヌーサで、レベルはあったのに全滅するかと思いました。何とか勝ったけど。
冒頭のキアリーは思音さんが考えました。正確には考えさせました。
ほら、共同管理人であるからには、恥も共有すべきでしょう?これで共犯さ〜
後半のギラは私が適当に並べたものですが・・・・・・・・・なんだこの温度差。明らかに別人が書いたと分かる頭の悪そうな詠唱ですね・・・・・・orz