「んー・・・・・・」

 歩きながら鏡を擦って、呻く。

「今度は何だ」

「汚れてるなぁって」

「仕方ないだろう。毒沼にあったんだから」

 呆れて言うと、そうじゃなくてーと歯切れの悪い返事が返った。

「魔力品なのになって思って。拭けば綺麗になると思ってたのに・・・・・・ね、ここの所腐食してない?」

「・・・・・・・・・問題あるのか?」

 あったらどうしよう。効果が無かったりするのだろうか。

「さぁ?まぁ魔力は感じるから使えない事はないと・・・・・・思う。多分」

 曖昧な返答が不安だ。

 魔力云々は羽鳥に任せるしかないのが益々もどかしい。

 

「ところで、行き先は教会か?」

「うん、そう。神父様に頼んどいたから」

「ということは、やはりあの犬・・・・・・ガァか。そっちは確証があるのか」

「あ、そっか。説明してなかったね。ガァは蝶子の精神獣なんだよ」

「前に言いかけた事だな。精神獣とは?」

「その名の通り、術者の精神力を獣に形作ったもの。魔力が余ってるからこその芸当だよねぇ」

 同意を求められても、いまいち想像が付き辛い。しかし、そういう事なら、

「・・・・・・・・・ああ、だからガァの無事と蝶子の無事が無関係じゃないって」

「そゆこと。へぇ、初めて聞く話の割には順応性高いね。王家筋でも信じない奴結構いるのにさ」

 感心された。・・・・・・王家筋とはローレシアの事だろうか。そういえば頭の固い一族ではある。

 しかし多分、自分は魔力について詳しくないからこそだろう。

「ま、ガァじゃないだろうけどさあの犬。角も無かったし声も出たし。

 けど、もし呪いによって人じゃなくなるとしたら、分身であるガァの姿に酷似するのは不思議じゃない」

「そうだな。可能性は高い」

 結論が出たあたりで調度教会に着いた。

 

 

 

 

 

 

 逸る胸を押さえて、鏡を構えた。

 鏡面を覗きこむと、そこには目の前の青い犬ではなく、金の髪の美しい少女が・・・・・・

 

「お・・・い・・・・・・?」

「アレ・・・・・・?」

「ほ?」

 一番上が飛鳥、二番目が羽鳥の声である。

 ・・・・・・三番目の間抜けな声を認めたくない。

 

 カッ!

 

 と思っていたら光が迸り、鏡が砕けた。

 逃げ場が無くなり、恐る恐る振り返ると、そこには鏡に映ったのと同じ姿の少女が佇んでいた。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・えっと、女性は若く見える方が良いよね」

「・・・・・・・・・そういう問題か」

「直接会うのは10年振りくらいだけど、変わらないなぁ」

「変わらなさ過ぎだ!!」

 騒ぎの中心は、飛鳥の叫びにパチクリと目を瞬かせる少女。いや、幼女。

 どう見ても14歳には見えない。せいぜい4,5歳か。

「僕に怒鳴られてもねぇ・・・・・・。やっぱ錆びてたからかな?」

「解呪が半端だったと?」

「ん、あるいは本人が受け入れるのが怖いのか」

 その言葉にハッとした。

 そうだ、あのムーンブルクの惨状。それも無理のない事な気がした。

 

「どちらにしろ、これ以上は僕らにはどうもできない。・・・・・・・・・帰ろうか」

「何?」

「父さ・・・王に報告と、城の司教様とかに聞いてみよう。サマルトリアはムーンブルクほど魔法国家じゃないけど、神格系には力を入れてる。いい話聞けるかも」

 それでいい?と聞かれたので頷いた。

 反対する理由はない。

 

「じゃ、行こっか。・・・・・・っと、その前に」

 羽鳥は頷いて、しゃがみ込んで王女の目線に合わせた。

「久し振り、ちょーこ。僕の事わかる?」

「ほ?」

 ちょーこはキョトンと首を傾げた。

「サマルトリアの、羽鳥。覚えてないかな、ガァも一緒に何度か遊んだんだけど」

 傾げた首が、ピンと起きた。

「はどり?おはなくれた?」

「そうそれ。覚えててくれたんだ」

「何ぃ!?」

「10年前の話で殺気立たないでよ・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

蝶子がやっとちょーこになりました。元のゲームから最高に離れた部分ですね。

大人バージョンでもいいんですけど、チョコビパロディと言っているからにはこうじゃないと詐欺でしょう(笑)

この話書いてる間、パソが2回もブラックアウトしやがりました。おかげでまた台詞ばっか・・・・・・