「サマルトリアの王子か」

 自分のこの問いも不躾だとは思うけど。

「げ」

 第一声がこれというのはあんまりだろう。

 

 

 そんな訳で、第一印象は頗る付きで悪かった。

「それは困るなぁ。初印象って2年続くって聞くし。

 まぁ四六時中ひっついてればもっと早く上書きされるとは思うけど」

「ひっつくな」

 懐かれた。

 噂に違わぬマイペースさに、頭痛がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局あの後、向かったサマルトリアでは会えなかった。

 まだ帰っていないと聞いて、そういえば彼の妹曰く「兄はのんびり屋」だと思い出し、今リリザに至る。

 これだけたらい回しにされればフラストレーションも溜まろうというものだ。

 それでも、時期悪かっただけで相手も自分を探していたのだし、なるべく穏便に話を進めようと思っていたのだ。生来の気質の所為でそうは聞こえなかったかもしれないが。

 宿屋にてやっとそれらしい寛いでいる後姿を目にし、初対面で声をかけるのはすこぶる苦手ながらもそうして。

 その結果は先に述べた通り。

 

 

 

「げ?」

「あ、いえ・・・・・・」

 コホンと、ひとつ咳払い。

 腰掛けていた椅子をカタンと鳴らして立ち上がり、振り返る。

 その目が一度、驚きに丸くなる。

 飛鳥も同じだ。色は違えど、鏡を見ているような気分にさせられた。

 その顔が、パァっと華やいだ。そうなると印象がガラリと変わる。

 なるほど、似ているけれど似ていない。聞いた通りだ。

「僕はサマルトリアの王子、羽鳥です。君はローレシアの飛鳥王子ですね?いやー探しましたよ。

 さぁ、力を合わせてハーゴンを倒しましょう!」

 にこやかに、爽やかに。

 どうにも芝居くさいが、騙されて握手してもいいくらいの笑顔と声音だった。

 

「『げ』とか言わなかったか?」

 これさえなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

今回は「いやー探しましたよ」を言わせたかっただけ。それでも微妙に台詞違いますが。

サマくんの「もしや君は・・・」が無ければ幼馴染みとかで行けるんですけど、初対面の台詞ですよねこれ。兄弟国なんだし交流は無かったのか?隣なんだしさぁ。

ウチの場合は、羽鳥はローレシアに行った事ありますが、周りの配慮で似過ぎだから隣に並べるのは拙いと思われたらしいです。実は全くの初対面ではないですが。