「高い・・・・・・」

 

 ムーンペタへ辿り着いた時には、日は翳っていた。

 体力の尽きた羽鳥が先に宿を取っている間に、飛鳥は武具屋の品揃えを確認した。

 その感想は、上記の通り。

 

 

 

 

 

「ここに、俺と良く似・・・・・・」

「ああ、こちらです。どうぞ」

 宿屋に着くと、最後まで言わせて貰えなかった。

 すぐに話が通じるのは、同じ顔の利点だろうか。

 そんな事を考えている内に、着いたらしく案内人は奥の部屋をノックした。

「はーい」

「弟さんがお着きですよ」

「おと・・・・・」

「ありがとうございました」

「ごゆっくりお寛ぎください」

 ぺこりと頭を下げて、宿の者は戻って行く。

 マントその他装備品を外し、寛いだ格好の羽鳥に招かれて室内へ入るが、どうも腑に落ちない。

 

「おかえりー。同じ部屋で良かった?もう一部屋とってもいいけど?」

「それより、弟とは?」

「え?だってその方が自然じゃない?」

 顔も名前もそっくりなんだし。それは確かにそうだけど、

「お前が兄・・・・・・」

「分かりやすく不満そうだね。僕はどっちでもいいけど、でも僕の方が早く生まれてるよ」

「同じ日だろ」

「僕が生まれたのは明け方。君は夕方。違う?」

 違わない。

「そういえば暁の王子とか呼ばれてたな、お前」

 太陽に祝福された御子だとか何とか。

 その基準で行くと、飛鳥がどうにも不吉な感じになるので、ローレシアではあまり聞かないが。

「君は、太陽の代行を任される程の力を持っている御子って言われてるよね」

 ・・・・・・聞いた事がない。

「なんて前向きな国柄だ」

「だって僕を育てた国だよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 やけに納得。

 

「預言、正しかったよね。再び光翳る時、ルビスの名の元にロトの子孫闇を切り裂く。

 竜の勇者の、ひいてはロトの再来と言われる僕らのこの顔も、ルビスの加護を示してるって事かな」

「倒せると、思っているのか?魔法大国ムーンブルクを一夜で滅ぼした奴らを」

「ポジティブな国民性なんで」

「そうだったな」

 ルビスの加護か。そう思えば散々物議を醸したこの顔も、悪くないように思えてくる。

 いや。悪いとは、もう思えないだろう。羽鳥も一緒に貶める事になる。

 

「・・・・・・あ?」

「何?どしたの?」

「いや・・・・・・」

 覗きこんでくる、色の薄い同じ顔。

 だけど、自分は存外彼の事を気に入っているようだ。

「何でもない」

「そ?ならいーけど」

 

 

 

 同じ年頃で、こんなに気安く話しかけてくる者などいなかったからだろうか。

 城内に居たのは恐縮しまくった者ばかりで、誰一人としてこんな友達のような――――――

 

(僕と、友達になってくれない?)

 

「・・・・・・・・・・・・?」

 誰か、居た気がする。

 

 おそらくは、飛鳥を王子と知らなかった新入りの誰かの子供だろう。

 誰だった?どんな顔だった?

 おかしい。思い出せる顔がどうしても――――

 

「またボーっとしてる。大丈夫?疲れたならもう休む?」

「覗き込むな!また思い出せなくなるだろうが!」

「へ?」

 八つ当たりだ。

 

 

「・・・・・・悪い」

「いいけど。無理しちゃだめだよ?飛鳥ちゃん」

 

(飛鳥ちゃんって呼んでいい?)

 

「・・・・・・何だ、ちゃんって」

「街中で王子とは呼べないでしょー」

「普通に名前で呼べ!」

「えー、だってルビスの兄弟だし。妹にもこうだよ僕」

(妹呼ぶ時とおんなじ呼び方)

 

(ぼくの)

「僕流の、親愛の表現だよv」

(ぼくの、好きな人を呼ぶ呼び方なんだ)

 

 

 

 

「・・・・・・羽鳥」

「あ、やっと呼んだね。僕の名前」

「呼んでなかったか?」

「ないよ。おい、とかお前、とかだった」

「羽鳥」

「うん。仲良くしようね」

 

 

 

 

 だって、羽鳥の筈がないのに。

 あの時、自分が言った事にあの子は確かに頷いたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

オリキャラは極力出さないと言っているのだから、もう3話前からお分かりですよね。本当は幼馴染み設定好きじゃないんですけど、この二人ならそのくらいの結び付き欲しいし。

やっとお互いの名前で呼び合ってくれました。あーもどかしかった。

それにしても、サマルくんが入ってるからか、羽鳥が普段ありえなく白い気がするのは気のせいですか。羽鳥のくせに!!

・・・・・・いや別に羽鳥が黒い子とは思ってませんが。でも策略家ですよね彼。

 

あ、ローラの門から何日か経ってますよ?ただ野宿ではゆっくりお話は出来なかったのでしょう。