「薬草ひとつか。所詮はギャンブルだな」

「たかが福引でギャンブルって・・・・・・」

 景品を掲げて呟くと、苦笑が返ってきた。

「当たっただけ良いじゃん、手持ちに空きがあるなら持ってた方がいいものだし」

「いざとなれば売れるしな」

「宿屋に泊まれる目処がついて良かったよね」

「しかし、だったら券のまま売った方が・・・・・・」

「その分夢を買ったんだよ」

「安価な夢だな」

 段々所帯じみてきました王子様。1人は元々庶民派だけど。

 

 何しろ、防具を買ったら宿代すら危うい経済状況になってしまったのだからしょうがない。

 魔物というものは概ね光物を好む傾向にあり、倒せば奴らが集めていたらしい換金性の高いものが手に入る。

 強い魔物ほど、人や他の魔物から強奪してきたらしきゴールドその他多く所持しているので、ローレシア周辺をうろついていた頃よりも経済状況は潤うのだが(入手経路を考えると嫌な潤い方だ)、そういう地域は物価も高く、差し引きは結局とんとんだ。

 

「この辺敵強いよねぇ。ムーンブルクまで持つかなぁ?」

 折角増えた魔力容量を早々に使い果たした羽鳥が零す。

「泣き言言うな」

 とはいえ飛鳥も疲れた色を隠せない。

 城を出るときからの銅の剣では、そろそろ苦しい。

 

「ってもねぇ、無茶して全滅してもなんだし、多少ここいらで腕を磨く方が賢明・・・・・・わぁ!?」

「何だ!?」

 街中で何事かと振り向くと、羽鳥の足元に小さな青い動物がじゃれていた。

「なんだ、犬か」

「っくりしたー。・・・・・・あ?」

「どうし・・・・・・・・・ガァ?」

「あ、やっぱそう思う?」

 改めて仔犬を見て、顔を見合わせる。

 ガァというのは蝶子王女が飼っていた犬で、守るようにいつも彼女の傍に居た。

 その、ガァか・・・・・?

 

「だとしたら・・・・・・ガァ、君の主の元に案内して」

 そう、蝶子の生死に希望が持てるという事にならないか?

 逸る心臓を宥めつつ、じっと見詰めているけれど、青い毛並みは離れようとしない。

 

「クゥーン」

 どこか悲しげに一鳴き。おやと思う。

「あれ?ガァは鳴けない筈なのに」

 羽鳥も同じ事を思ったようだ。

「それに、角もないね」

 ガァの外見的最大の特徴である角が跡形も無い。

「違う犬みたいだな。青い犬というのは確かに珍しいが、絶対じゃない」

「そんな事ないと思うけど。昔の事だから自信ないけど、蝶子の気配だと思うよ」

 気配?

 妙な言い回しをする奴だ。

「仮にガァだったにしても、蝶子の無事に直接の関係はないだろう」

 そう言うと、羽鳥は意外そうに瞬いた。

 

「・・・・・あれ?ムーンブルク王族が連れてる護衛獣について、知らない?」

「片時も離れず主を守るとは聞いているが、所詮は獣だろう?」

「いや正確には精神獣って言って・・・・・・・・・いや、やめとこ」

「何だ途中で」

「これでガァじゃなかったらショック大きいから、確信持ってからにしとくよ」

 腑に落ちなかったが、多分これ以上は聞けなさそうなので黙った。

 

 それより、その犬を抱き上げた羽鳥が何処へ行くのかの方が問題だ。

「まさか、連れて行く気か?」

「いやいや。教会に相談してみようかと思ってさ」

「何のだ」

「だから、確証持てたら言うってば」

 言い合っている内に着いた。

 

 

 

「神父様、この犬どう思われます?」

 不躾だな、おい。

 突然そんな事を言われた当人は、じっと犬を眺め、申し訳無さそうに言った。

「私では御力になれないようです」

 だから、なんの話だ。

「そうですか」

「しかし貴方がたには強い加護を感じます。そうですね、まるで・・・・・・ロトの王族なみに。

 諦めなければルビス様は必ずや道を示してくれるでしょう。よろしければ祈りを」

 眼力は確かそうだね。羽鳥がぼそりと呟き、頭を下げた。

「ありがとうございます。是非ともお願いします」

 そう言って、十字を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

正確にはムーンペタのセーブの爺さんは神父様ではなく、教会の横手に居た気がしますが。

ルビス教がどんなもんだか知りませんが、十字なんですよね。

ところで装備品は、王子二人の武器、ムーンの防具、サマルの防具、ローレの防具、ムーンの武器という順に揃えます。武器の方がはっきり効果が現れて楽しいので。

でもムーンペタでは鉄の槍の次は鋼の剣よりサマルの防具を優先。打たれ弱さが怖いので。

どうでもいいけどムーンペタ長いなぁ・・・・・・。確かに鋼の剣買うまで粘った思い出はあるけどさ。