ジュネーブウォッチデイズでの新作も聞こえてくるLEDERER(レデラー)。
新作…の前に、Watches & Wondersの会期中に拝見できたCICの新バリエーション、39mmケースのCIC39とアップサイドダウン構造のInVertoについてオフ会で報告はしたものの、WMOのブログとしてレポートしていなかったことに気が付いたのでレポートします。
3本立て、向かって左からCIC39、InVerto、ノーマルのCIC。
有機的なケース形状、極めてショートなラグ、と言ったデザイン要素によってノーマルのCICは「44mm」という数値よりも小さい、と感じますが、どうしても数字が先行してしまい大きい、と思われてしまう事も多そうです。
それに対して、39mmは数字の上でもリーズナブルなケースサイズになり、44mm同様のケース造形の工夫によりよりフィットするサイズ感を実現した、と言えそうです。
2つの香箱からほぼ対称の輪列を経て一つのテンワを両方向から独立に駆動する、ダウブロ スーパーコピーニエルズの両方向独立駆動脱進機の特徴を踏襲したCIC(Central Impulse Chronometer)脱進機の構造はそのままに、主にルモントワール周りを変更することでムーブメントとケースサイズを5mm削減しました。
こちらは44mm、エネルギー源である香箱、共振を司るテンワとひげゼンマイは「ほぼ同じ」スペックだそうで、パッケージングによって5mmのサイズの低減を行いました。
44mmでは4番車に取り付けられたルーローの三角形型のカムが1回転(60秒)に3往復のブロックレバーの往復運動を作り、そのレバーが3番ルモントワール入力歯車から加速されたレバーを停止・解除することでルモントワールの脱進制御を行っていました。
3番ルモントワール入力歯車と出力歯車はトルク蓄積スプリングで繋がっており、入力歯車の停止が解除された時にエネルギーを注入、その後はそのエネルギーだけで動き続けることで「定力化」を実現します。
39mmでは場所を取るルーローの三角形カムとブロックレバーを排し、ルモントワール出力歯車に設けられた30個の突起がレバーを直接ブロックする構造に変更し、省スペース化を行いました。
突起が30個と多いのは3番車の回転が4番車に対して遅いためで、脱進タイミングはルーローの三角形型カム同様に10秒に1回解除になるようにしてあり、また2つの輪列のルモントワール脱進タイミングが同時にならないように工夫されており、より誤差を散らす工夫がなされています。
44mmでは開口部からカムが見えます。
39mmではルモントワール機構が3番車位置に集約され、4番車にはシンプルな歯車が見えるだけです。
以前の記事でモザイクをかけていたCAD図面はこのCIC39のルモントワールの変更点を伺ったことです。
さて、CIC39mmの記事で二つのスモールセコンドの針が同じ位置を通る高さにセットされていること、トルク低下時の脱進ミスなどでぶつかる可能性があるのでは?という事を「別の工夫」で避けているということを書きました。
それを実現しているのが「ルモントワール連動ストップセコンド機構」です(名前は私が命名した仮のもの)。
実は以前の写真でも見えていました。
どこでしょう?
下側のルモントワールと上側のルモントワール、なんか違いませんか…?
これです。
ルモントワールとテンワがほぼ同じレイヤーにある、という事から実現した機構です。
ルモントワールは、脱進のタイミングで上流の主ゼンマイのトルクでルモントワール用のひげゼンマイを押し込むことでエネルギーを注入しますが、主ゼンマイが解けてトルクが低下し、主ゼンマイのトルク<ルモントワールスプリングの予備テンションになると押し込むことができなくなり、ルモントワール脱進を行わず通常の3番歯車のように連続して動くようになります。
これは裏を返せば、ルモントワール脱進が行われているか?を何らかの方法で測定すれば、輪列のトルクを条件にした処理が行えることになります。
赤で囲ったピンはルモントワール入力歯車と出力歯車の位相の差によって出っ張ったり引っ込んだりします、主ゼンマイのトルクが充分で、ルモントワールスプリングが押し込まれている際は引っ込んでいて特に何も行いません、トルクが低下して押し込めなくなるとこのピンが出っ張り、やがてテンワにタッチしてストップセコンドとして働き、時計全体を停止させます。
この機構が片側にしかないのは、この機構がついている側が時分針の駆動を行っている側で、そもそもトルクが反対側より少ないことを前提にしているからです。
ルモントワール機構をうまく生かしたスマートな解決策だと思います。
(ルモ自体の改善はオンリーウォッチの時の記事もご覧ください、こっちにも似たような機構はありました)
そして、オンリーウォッチに出品したユニークピースのレギュラー仕様、InVerto(ドイツ語で反転の意味)。
CICの特徴である2つの輪列が同じ速度で逆回転する、というメリットを活かし、アップサイドダウン構造にするための追加部品をほとんどなく反転構造にしています。
ルモントワール部分が非対称になっていることが分かります。
またスプリングもイメージに合わせる為かブラックに染められています。
DLCコーティングのステンレスケースで軽いし、構造も常に見えて個人的には一番好みかも。
ケースバックには機構を意匠化したイメージと、ディスク状のスモールセコンド。
表から見た図と組み合わせると、こっちが「針駆動側」という事のようです。
「数字だけではない」と思いますが、44mmというサイズ感でちょっと…と思っていた方にも見ていただきたいと思える作品だったと思います!
ホテルでのミーティングでは、
ウブロ コピー「思い出」もあったり…
フライト直前のギックリ腰で死にかけていたので、「これ以上悪いことが無いよう」と信頼と実績のザ・シチズン キャリバー0100で行ったのですが、「文字盤が和紙」という事にレデラー本人が興味をもって写真を撮る、の図…