チタンをセラミック化させる技術によって生まれた、パネライの新しい素材Ti-Ceramitech™に関する詳細インタヴュー
レーザー3Dプリンターによって切削では不可能な一体構造の軽量なケースの精製や、金属ガラス(リキッドメタル)、カーボンコンポジットをPEEKで改善して研磨可能にするなど様々な素材に対する試みを行っているパネライ。ブランドのパワーをバックグラウンドに様々な試み(研究開発)を行う姿勢は個人的に応援するところです。
また、品質管理(QC)にも力を入れており、「作っただけ」ではなく、ちゃんと「検証」を行っている姿勢も素晴らしいと思います。
今年のパネライはヨットレースチーム、ルナ・ロッサ プラダ ピレリとのコラボレーションによる作品を多数発表しました。
今年のWatches&Wondersのパネライブースは、ヨットレースのテントのようなインテリア
その中でも過酷な環境で使われるボート用部品の表面加工技術からインスピレーションを得た新しい素材Ti-Ceramitech™が開発され、それを搭載したサブマーシブル クアランタクアトロ ルナ・ロッサ Ti-Ceramitech™が発表されました、チタンをセラミック化させる技術により、ノーマルのチタンよりも高い耐蝕性と傷に対する耐久性を備え、特徴的な藍色のような深いブルーの色を備えています。
今回、この技術について、パネライコピーn級品 激安の研究開発ディレクター、アンソニー・サーブリー氏に詳細なインタビューを行うことができましたのでレポートします。
アンソニー・サーブリー(Anthony Serpry)氏
スイスのヌーシャテルを拠点とするパネライの研究開発ディレクター。
2003年から2006年にかけて物理学と応用数学のエンジニアの学位を取得。2006年から2008年までスタンフォード大学で応用物理学の理学修士号を取得。その後、高級時計製造業界でいくつかの重要な職務を歴任してきたアンソニー氏は、研究と革新における専門知識を一貫して発揮。パネライに入社する前、アンソニーはリシュモンに10年近く在籍。リシュモンのリサーチ&イノベーション部門でさまざまな役職を歴任し、素材製造プロセスや最適化に関する新技術の開発に注力した。2022年3月より現職。
この技術はボート用部品で金属部品の表面に機能を持つ薄膜を作って機能を向上させる表面改質技術からインスパイアされていますが、既存のボート用技術をそのまま使ったというものではなく、時計に求められる機能・美観を実現するためにほとんどゼロから開発されたものだそうです。
そのため、この技術はルナ・ロッサやヨット業界のものではなくパネライ独自で、基本的な技術特許も現在パネライ側で申請中とのこと。
Ti-Ceramitech™の一般的な技術としての名前はプラズマ電界酸化(Plasma Electro Oxidetion:PEO)という電気化学プロセスになり、アルミニウムのアルマイトで知られる陽極酸化に似た方法です。
陽極酸化との違いは、より高い電位(数百ボルト以上)を使うこと、これにより加工表面に微小な放電が発生し、局所的に発生するプラズマにより最大で1万℃にも到達する高温環境が発生し、その結果より表面の酸化チタンの組成が変化し、緻密な結晶構造を持つセラミック質が生成され、単純な酸化チタンよりも硬度と靭性のバランスが取れた表面となります。
加工条件を洗い出し、最適な条件で薄膜を積層することで表面硬度と靭性を高いレベルで両立させることができたそうです。
別物質を物理的に積層するPVDや化学的に積層するCVD、ダイヤモンドに近いカーボン膜を生成するDLCと言った他の技法との最大の違いは積層膜の厚みで、PVDが0.1マイクロメートル単位、CVDやDLCで精々1マイクロメートルに対し、PEOでは30マイクロメートルの膜を生成することができます。
また、母材の上に別の機能膜が張り付いていて、明確な境界面が存在する、と言う構造ではなく母材のチタンが徐々に連続的に参加しながらセラミックに変化する、と言う構造のため剥離にも強いそうです。
この「剥離」問題については開発の大きな目標で、様々な加工条件と耐久試験を繰り返し、良好な密着性を生み出す条件を求めました。
光の当たり方によって、ブルーにも藍色にもグレーにも見える独特の質感。
チタンはよく使われるグレード5チタンではなく、Ti-Ceramitech™の母材用に開発された専用のチタンで、チタン86%をベースに、アルミニウム・スズ・ジルコニウム・モリブデンなどをそれぞれ配合して作られ、この金属とPEOの加工条件が組み合わさることで特徴的なブルーを生み出すことができるそうです。
意地悪く、PEOの電圧を変化させるなどの方法でブルー以外の色も作れるのか?と聞いたところ、色の発生には電圧以上に母材の微小な添加金属の影響が大きく、何より今回と同じようなクオリティを安定して作ることは簡単ではないため、「難しい」という回答でした。
深いブルーは別に染めているわけではなく、薄膜そのものの結晶構造から光学的に生み出される色であり、色褪せもしにくいと考えられます。
新素材や新技法の開発と言った、うまくいくか分からない基礎研究レベルに投資が行えることや、作るだけではなく、「長期間使用したらどうなるのか?」といった品質保証の考えまでキチンと考えている、というのはやはり大手ブランドの成せる業である、と再認識しました。
アンソニー・サーブリー氏、ブース前でのフォトセッション
非常に興味深いお話を聞くことができました。
ありがとうございました!
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また、インタヴューのために訪れたパネライブースですが、今年の展示で興味深かったのは、レーシングヨットや時計そのものだけの展示でだけではなく、普通の展示会ではあまり見せない品質保証用の数々の機器も展示していたことです。
私は大好物なので、簡単に紹介しましょう。
これは…?
ストラップにかかる力を再現して耐久度を検証するための機械。
手首のねじれによる小さなねじれから、とこかに引っ掛けて引っ張った時の強い力までを繰り返し再現してストラップがどのように劣化するかを検証します。
時間送り、カレンダー送り、クロノグラフ動作などを検証するマシン。
ぞれぞれの治具が組み替えやすくなっていて様々な条件に対応出そうと考えられます。
ピンボケ気味の一見するとただの防水検査機ですが…
何と防水と同時に精度も測る「オールインワン」マシン。
本日の本題である、Ti-Ceramitech™のケースの製造プロセスも展示されていました!
【お問合せ】
オフィチーネ パネライ
0120-18-7110
[Panerai]
パネライは1860年、時計工房兼時計店、そして時計学校としてフィレンツェに創業し、長い間イタリア海軍の納入業者として、特に特殊潜水部隊のための高度精密機器を納入していました。ルミノール、ラジオミールをはじめとする当時パネライが開発したウォッチは、何年もの間軍事機密扱いとされてきましたが、1997年にリシュモン グループの傘下に入った後、国際市場に参入しました。
今日、パネライはスイス、ヌーシャテルにある自社工房マニュファクチュールで自社製ムーブメントとウォッチを開発・製造しています。イタリアのデザインと歴史をスイスの時計製造技術と見事に融合させています。パネライウォッチは、独自の流通ネットワークおよびパネライ直営ブティックを通じて世界中で販売されています。