近藤英隆 コラム 飯田覚士選手が世界チャンピオンになったとき


心と腰痛の関係~なぜ腰は痛むのか?~

5 急性腰痛

組織的な損傷が原因の腰痛の治療はどうすれば早く治るのか?「ぎっくり腰」は前日に前かがみの作業をしていた人がほとんどです。日常生活で重いもの持ち上げる動作を行った時や腰を不意に捻った時などに腰痛が出現すのは少なく、椅子から立ち上がった時やくしゃみをした時などなんでもないような動作で「ぎっくり腰」になっていることが多いです。腰部周囲筋のスパズム(筋肉の緊張)が亢進しており体を動かすと痛みが増強します。急性腰痛では2種類の症状がみられます。腰部周囲筋にスパズムと明らかな炎症を伴うものと明らかな炎症が無いが腰部周囲筋のスパズムが亢進しているものです。

腰部周囲筋に炎症が存在するものは、年齢に関係なく治療に時間を要する人が多いです。歩行やベッドからの起き上がり動作でも激しい痛みがあり一度横になるとなかなか動けない状態になります。炎症が痛みの原因であり、それでも、当院では、動ける範囲はなるべく努力して動くという事を勧めています。安静にした人と、痛みがあっても歯を食いしばって日常生活レベルで出来ることをした人と、痛みが発症してから完全に治るまでの期間を比較すると、驚いたことに、安静にしていた人の方が動いていた人に比べ治癒までの日数が長引いていることが多いことが分かったのです。

明らかな炎症のない急性腰痛の場合は、腰深部筋の微細な損傷により反射が亢進した結果、筋肉の緊張が発生して痛みが出ているので、筋肉の緊張を手技療法にて軽減することで痛みが軽減します。

つまり、明らかな炎症を伴わない「ぎっくり腰」は、腰部周囲筋における一過性の筋肉の緊張であり手技療法で痛みが軽減するので、1回の施術である程度の痛みが軽減出来るはずで、何度(発症から2週間以内)も通い詰める必要はありません。

酷い炎症を伴う場合(椎間板ヘルニア・腰椎椎体の圧迫骨折など)は、病院に対診してMRIなどの検査をして頂いております。

「ぎっくり腰」は患者さまが間違った知識により初期対処法を、よく間違える疾患でもあります。若田接骨院に来院される患者さまの中には、「ぎっくり腰」になって来院されると、どこかでずれている骨のずれを治せば、「劇的」に直ぐに治ると思っている?患者様が多く見えます。1回の治療で治ることを期待されて来院されている方が多いです。整体行ったら「1発で治った!」とか?カイロに行ったら「1発で治った!」とか?患者さんから、聞くことがあります。当然若田接骨院でも「劇的」なことが起こることを期待されて患者さんが来院されているのですが・・・

若田接骨院に来院されている「ぎっくり腰」の患者さんが、1回の治療で治るような「ぎっくり腰」もあります。もちろん一回の治療で治せることが理想だと思っています。原因がわかっている腰痛であれば1回で治るのか?そうではありません!原因が解っても直ぐには(1回の治療で)治せない場合の方が多いのです。

 共通して腰痛治療に効果的であるとされたのが、

(1) 腰痛に関する教育的な情報を与える
私がコラムで書いたものを読んでいただくことが、腰痛の治療になると考えてください。

(2) 急性腰痛時の安静期間の排除、通常活動の継続
不用意な安静臥床の継続は、循環不全による疼痛の悪循環、廃用の進行、精神的・心理的因子の助長をまねくため、安静臥床の可及的排除と疼痛憎悪のない程度の活動継続が推奨されています。若田接骨院にみえた「ぎっくり腰」の患者さんには、歯を食いしばってでも動ける範囲で動いたほうが早く治りますよと伝えています。ただ、動くことで痛みが増してしまうような患者さんには安静を勧めています。おそらく、本物の椎間板ヘルニアです。病院に入院して治療することを勧めることが多いです。

(3) 急性腰痛に対する脊柱マニピュレーションの短期効果
脊柱のマニピュレーションはマッサージとは違います。脊柱マニピュレーションの定義は、 「関節の徒手的他動伸張運動による治療行為」と定義されています。しかし多くの成書をみても手技内容についての統一見解はなく,「徒手による医療」のすべての手技を含むとするものや、「関節へすばやい推力を加え関節包を伸張させる手技」,「熟練した関節の他動的な運動」など、さまざまな表現が存在しています。エビデンスが示された米国では,腰痛治療として施される徒手治療は,いわゆる脊椎マニピュレーションと同義と考えてよい.手技の施行者としては、本邦ではカイロプラクティックを修めたものが行う場合が多いですが,我々柔道整復師が行うこともあります。ドイツ、スイスなど欧州の一部では,保険医療にも含まれるため,一部ではあるが医師によっても行われています。手技療法を好む整形外科医も稀にいますが、徒手での治療を整形外科で行うのは理学療法士多く、最近では理学療法士向けのセミナーが多く行われているのが現状です。私も腰痛治療のセミナーは同業者向けに行っております。

(4) 急性から慢性腰痛に対する運動療法
若田接骨院では、トレーニングジムでトレーニングを指導をすることもあります。
定期的に集団での体操教室も行っております。

以上の4つの治療に効果がある!と言うエビデンスに基づいて治療をしています。

一般に「ぎっくり腰」の場合は、腹部ではなく背中よりの内臓疾患、椎間板を含む筋や骨の障害、帯状疱疹、椎間関節の捻挫などが考えられます。内科的な疾患が原因の場合は重篤な場合が多く、腰痛の患者を見たらまずは内科的な疾患を除外する必要があります。目安として視診で異常がない帯状疱疹はほとんどありません。内臓疾患が原因の場合は安静時痛であり、体動で痛みが軽減しない(例外が膵炎で丸まったほうが楽になる)のが特徴です。

筋骨格系に問題がある場合は運動痛が愁訴であり、我々の接骨院に腰痛を主訴に受診をする患者さんです。しかし発症時の症状が強烈な割に予後が良好であり1週間以内では約半数が、2週間から1か月で約9割が回復してしまうのが特徴です。内臓疾患が原因の場合は、一般の整形外科を受診した急性腰痛患者の1%以下であったという統計があります。

可能性が低いとはいえ、重大疾患を初診時に見落とすわけにはいかないので赤旗徴候(red flags)となります。筋骨格系の問題がある場合には、痛くなったきっかけとなるエピソードを探すのが基本になります。エピソードのはっきりとしたものは、筋骨格系の問題のみ疑って痛みが軽減するようにしばらく治療します。もし、症状の経過が思わしくない場合は赤旗徴候に基づいて再評価します。他の病気が疑われるような場合には専門医に紹介します。

赤旗徴候としては以下のものが知られています。

 1. 1か月以上続く腰痛
 2. 夜間の安静時痛(寝返り時は除く)
 3. 50歳以上は癌、70歳以上は圧迫骨折の頻度が高い
 4. 癌の既往
 5. 体重減少
 6. 脊椎の叩打痛
 7. 発熱、細菌感染
 8. 外傷の既往
 9. 馬尾神経圧迫症状(膀胱直腸障害)
 10. ステロイドの使用

これらの徴候が見られた場合は、さらなる精査が必要になります。該当がなければ画像診断なども不要と考えられています。いきなり内臓疾患を疑うのではなく、一月経過して疼痛が持続したら精査を行うという形で十分とされています。





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