近藤英隆 コラム 飯田覚士選手が世界チャンピオンになったとき


心と腰痛の関係~なぜ腰は痛むのか?~

10 バーンアウト(燃え尽き症候群)

後から出てくる三人のボクサーの話とは違うのですが、10年ほど前に新聞記事を読んだのを期に、腰痛のメカニズムについての説明を、腰痛で苦しんでいるスポーツ選手にメッセージの意味を込めてコラムを書きました。

当時、あるプロボクサーが、夢であったはずの世界チャンピオンになることが出来たのにもかかわらず、一度も防衛戦をしないで引退を表明してしまったのです。誰が聞いても、もったいないと思いますよね。引退の理由は腰痛だと新聞には書いてありました。本当のところはどうなのか良く分かりません(私はプロボクサーを診ていましたが、この選手とは会ったこともありませんでした)

もし本当に引退する理由が、腰痛であるとすれば、どんなにひどい腰痛であったとしても、時間をかけて根本的な治療すれば治すことができたと思います。引退をしてしまったのは、腰痛はとても心理状態に左右されるため、ストレスが原因の腰痛を持っていたのではないかと思うのです。

ハードなトレーニングや減量を続けたことで、常にプレッシャーに押し潰されそうな状態の精神状態でボクシングを続け、世界チャンピオンになれた事で、バーンアウト(燃え尽き症候群)してしまったのではと思ったのです。

つまり、もしバーンアウトしてしまったと推測すれば、それが原因で治りにくく、激しい腰痛になってしまったのではないかと。

腰痛が直接的な引退のきっかけではなく、実はバーンアウトが原因で引退する事になったのではないかと疑ったのです。

引退した本人が気づいていれば、何も問題ないのですが、もし腰痛が治って復帰することを望んでいるのであれば、心理的なアプローチをしながら治療をする必要があると思ったのです。そういう治療ができる環境に無いことが引退の原因だと、この当時に感じた訳です。

バーンアウトとは「燃え尽きる」と言う意味ですが、目的や目標に向かって継続的かつ献身的に努力したが、期待された成果や報酬が得られなかった結果生じ、疲れ果てた末に意欲を失ってしまう状態になる事を言います。その目的や目標が高いほど、また期待を大きく裏切られた時等にバーンアウトしやすいようです。その結果、極端な怒り、他人の批判、罪悪感、終日続く疲労感、睡眠困難、内向傾向、腰痛等が症状として見られる。

バーンアウトはスポーツ競技者や医療・社会福祉従事者、学校の教師といった対人サービスを仕事にする人によく見られますが、不思議な事に、ここに挙げた職業の人達は最も腰痛に成りやすい人達です。

私が日常腰痛を治療している中で、治療が長引いてしまうのはこのような職業の人に対人サービスの方が比較的多いです。一般の方の中では肉体労働者に腰痛が多いと思われていますが、実際には、肉体疲労よりも精神疲労の多い方達の方が腰痛を訴えやすいということが統計的に分かっています。職業別に腰痛のランキングを見ると、1位はなんと無職の方なのです。





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