涼しい映画館2007年度バックナンバー

 

ゾディアック デヴィッド・フィンチャー監督作品。この監督もマニアックだ。ついに実話の映画化に乗り出した。デキはさすがで、見ごたえ十分。その時代、時代(60年代〜90年代の話)の雰囲気がもう最高で、音楽のセンスもグッド。70年代に入って、マービン・ゲイが流れたときはカッコよくて鳥肌が立った/犯罪がどうというより、主人公をはじめ、被害者、捜査官を通して、観客に人生というものを考えさせるに至る、フィンチャー入魂の秀作だ。


アポカリプト メル・ギブソン監督作品。ほんと題材選びがマニアックだな、メル・ギブソン。キリストの次はマヤ文明だ/しかし、クライマックスとして扱うべき、マヤ文明の中心地の描き方が物足りないのと、登場人物たちに魅力がないのとで、スケールが非常に小さいものになってしまっている。主人公の逃亡がほとんどクライマックスになってしまっているので、いったい何をテーマとして作っているのかが不明である。主人公の村と首都との地理的関係が分からないのも緊迫感を殺してしまっていると思う。映像は面白いが、何も残らないという感じだ。


狂っちゃいないぜ オープニングタイトルからセンスあり、DVDパッケージには「スカイパニック」などと書かれているが、これは一人の現代人が生きることへのバランスを崩して、どう克服するかの物語である。そういう意味では、ハンピーエンドな『アメリカン・ビューティー』とも、主人公よりも年配で”生きる術”を知っているビリー・ボブ・ソーントンをジャック・バランスと置き換えれば、『シティ・スリッカーズ』とも通じるものがある。しかし、この映画の面白いところは、その精神バランスの極地とも言うべき、空港管制室を舞台にしてしまったところだ。”しまった”というのは、これがこの映画の欠点でもあるわけで、この設定の為、エンターテイメントな展開で楽しめるのだが、「アメリカン・ビューティー」のように何でもないごく普通の中流家庭を舞台にして描いたならば、キリリと渋い「社会派」になっていただろう/エンターテイメントということでは、ジョン・キューザック、ソーントン、ケイト・ブランシェット、そしてアンジェリーナ・ジョリーという今では主役級の4人が競演しているのがすごい。特にアンジェリーナがまだカワイイ!/本筋とは関係ないが、ラストシーンで、NYのツインタワーの横をジャンボジェットが通過する俯瞰映像が出てくるが、このアングルは今となっては刺激的で、思わず見入ってしまった。 (旧作)


龍が如く 劇場版 三池崇史監督作品。北村一輝、岸谷五朗とこの2人が競演では期待せずにはいられない。しかし、北村は最初から最後まで真面目一本。『新・仁義の墓場』で映画史に残るヤクザを演じた岸谷はちょっとオーバー気味な(ほとんどギャグ)演技で、ダブル肩透かしといったところ。主役を新人にして、岸谷の役を北村一輝がクレージーに演じたほうが面白かったのではないか。それでも、荒川良々、田口トモロヲ、遠藤憲一といった脇役陣は最高だったし、サエコと塩谷瞬のエピソードも良かった。


アルゼンチンババア 吉本ばなな原作。予告編を観て期待したが、なんともテンポが遅い、演出が古めかしい/さすがに掘北真希は抜群にいいが、鈴木京香も負けておらず、はや大女優の風格で見入ってしまった。


夫婦善哉 小説を読んで感動し、さっそく映画を借りてきた。素晴らしい。何も古いところは無い。全てが新しかった。1955年作品。 (旧作)


秒速5センチメートル 新海誠監督作品。これはマイッタ。心臓ドキドキ、血圧上昇w べつに話の内容にドキドキするのではなく、この絵だ、この背景だ。オレは濃密な絵に出会うと、心拍数が上がるのだ。漫画なら、水木しげると大友克洋、映画だったら、ロード・オブ・ザ・リングとか(小説なら織田作之助、野坂昭如…濃密な文章もくる)/この美術はスゴイ。恐れいった。カット割もすげぇ細かいし、もう観ていて疲れた。ーいや、もう一度観ようか。


ブレイブ・ワン 二−ル・ジョーダン監督。ニューヨークの復讐劇。9.11後の代表作と見るか、70年代なら『狼よさらば』が同じような話だが、その社会的背景は違う。そういえば、『タクシードライバ−』はどんな社会的背景だったっけか。娼婦を救うところなんか似てるよなぁ(「タクシードライバ−」ではジョディ(12歳)自身が娼婦役だった) (劇場)


バベル アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作品。前作『21グラム』で好評を得たのか、今回もメキシコ・日本・モロッコと3場所が交互に映し出される演出。そこから題名を思いついたのか/面白いことは面白いのだが、見終えたあと、ぜんぜんスッキリとしない。それは話が暗いからではなく、うまくまとまっていないからだと思う。菊地凛子は凄演、役所広司はほぼ見せ場なし、日本のクラブシーンのテクノがかっこよかった。


ドレスデン 第二次世界大戦末期のイギリス軍から受けた「ドレスデン大空襲」をクライマックスにおいたドイツ製作のTV映画。ベタなメロドラマだが、見応えあった。同じ空襲でも木造の日本と、レンガ・石の建築物であるヨーロッパでは逃げ方も避難場所も違うなぁと思った。


ダイハード4.0 近年はリアリティ重視なアクションが多いなか、さすがに大都会ド派手アクションの元祖、見せてくれる。こういうお金をかけた漫画的なノリは大好きだ。ちょっと寂しかったのが、ブルース・ウィルスにいつものノリやキレがあまり感じられなかったこと。前作『16ブロック』での彼のほうがいい味だしてた。


茄子 スーツケースの渡り鳥 『茄子 アンダルシアの夏』の続編。スピード感あふれる美麗なCGが気持ちいい/アクションは漫画っぽくなっているが、内容はよりスピリチュアルな面を描き出していて感動的。レーサーの精神的な苦悩を高めて描きたいが為に、バランスとして、笑える要素を取り入れているのだろう。


クイーン


アンテナ (旧作)


ラストキング・オブ・スコットランド


黄色い涙


ロッキー・ザ・ファイナル


スナッチ (旧作)


スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ


バブルへGO!!/タイムマシンはドラム式


ザ・シューター 極大射程


フリージア


カオス (旧作)


スモーキンエース


世界最速のインディアン


巨乳をビジネスにした男


ポイント45


松ヶ根乱射事件


ブラッド・ダイヤモンド


ブラックブック


ゴーストライダー


叫(さけび)


デジャヴ


子連れ狼 冥府魔道 (旧作)


ナイルの娘 (旧作)


鉄コン筋クリート


青春☆金属バット


ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌 (旧作)


タラデガ・ナイト オーバルの狼


紙屋悦子の青春


穂を揺らす風


サイレンサー


ドリームガールズ


パッチギ! (旧作)


アート・オブ・ウォー (旧作)


フラガール 久々に泣いた、泣いた。俺は一昔前の日本を舞台にしたものに弱い。この作品は昭和40年の福井県が舞台で、ここに出ている蒼井優ら演じる村の若い衆がちょうど俺の両親の年齢と同じくらいだ。そういうところで感動してしまう/蒼井優ももちろんよかったが、なんといっても松雪泰子の魅力が大きい。白鳥麗子のイメージしかなかったが、ずいぶんスケールの大きい演技をするので驚いた。他にはベテラン・富司純子の母親もすごかった。この2人に泣かされたといってもいい/この作品、数々の賞を獲ったが、ちょっと面白いのが主演女優賞と助演女優賞が定まっていないところだ。ある映画祭では蒼井優が主演、他の映画祭では松雪泰子が主演と、これは見る人の年齢によって変わってくるのかもしれない/一番好きなシーンは、蒼井優の親友が夕張炭鉱へ引っ越してしまう場面。話はまだ中盤なのだが、ほんとに泣けた/特典DISKが2枚付いてるスペシャルBOXを思わず購入しちゃったよ。


300/スリーハンドレッド 原作は『シン・シティ』のフランク・ミラーのグラフィック・ノベル。たぶんフキダシのないアメコミのようなものだろう/「シン・シティ」と同じく、映像の作り込みがスゴい。コミックを再現したような色彩で、終わったあと、カラーだったのか白黒だったのか、少なくとも肌の色は肌色じゃなかったよな、と考えてしまった/物語がほとんどないので、一部退屈だったが、戦闘シーンだけはすさまじいので、観終えたあとは軽い興奮状態になる。(劇場)


俺は、君のためにこそ死ににいく 俺は日本の戦争映画には期待しないのだが、名シーンは期待する。この映画で良かったのは、町の上を特攻機が飛び去って行くその下で、町人が祈る場面と、窪塚洋介の出撃シーンだ。行く側の人間と見守る側の人間の最後の接点である出撃シーンはとかく感動してしまう/空中戦の映像は思いのほか良かったので、映像はお金を掛ければよいものができるのだろう(ゼロ戦の機体もいい感じだった)。あとはシナリオで、戦闘場面の後のシーンはふつうの戦争映画に戻ってしまったようで、もっと高みへと持っていって欲しかったところだ。あと、編集の散漫なところがいくつかあったのが気になった。(劇場)


カースド


パプリカ


007/カジノ・ロワイヤル


記憶の棘


タイガーランド (旧作)


ウォーターメロン (旧作)


イヌゴエ (旧作)


東京大学物語 (旧作)


ブロンドの恋 (旧作)


16ブロック


ハードキャンディ


時をかける少女


超劇場版 ケロロ軍曹 (旧作)


太陽


東京ハレンチ天国 さよならのブルース (旧作)


カポーティ


ホステル タランティーノが三池監督の『殺し屋1』『オーディション』あたりに触発されて作ったと思われる、拷問スプラッター。三池監督も特別出演していて笑える。「殺し屋1」は俺の観た映画史上最も残酷な映画だったが、どうもハリウッド映画だと安心して観てしまう。全米No1ヒットなんてのもあると、さらにドキドキ感は薄れる。異国の雰囲気はいいが、舞台になったスロバキアはいい顔しないだろうな。


ピーカン夫婦 元木隆史監督作品。主演は嫌なヤツを演じさせたら今日本一の山本剛史。山下敦弘監督も役者で出演している/ほんとに山本剛史はいい役者だ。一見マンガ的だが、意外とリアルな演技。濃すぎる存在感が諸刃の剣か。リアルなサラリーマンあたりをやらせたら、ピカ一の役者になるかもしれない。(旧作)


脱皮ワイフ 本田隆一監督作品。脱皮するワイフの設定にまったく必然性がなく(「ピーカン夫婦」もそうだが)、話にも絡んでこないのがこのシリーズの特徴か。とにかく小沢和義演じる歌手・溝呂木はじめが最高で、意外にも稀有なロック映画として成り立っているようにも思えた/この映画の中のイヤなレコード会社の社員・尾藤(山本剛史)が主人公になっているのが「ピーカン夫婦」である。面白い趣向だ。(旧作)


セクシードリンク大作戦 〜神様がくれた酒 本田隆一監督作品。脚本が『殺し屋1』『牛頭』の佐藤佐吉。神様の設定がいかんとも話しに絡んでこないのはどうしたことか。山本浩司が演じていたからまだ笑いがとれたが、なんともお粗末な話である。主演の片桐華子は初めて見たが、メイクのせいか、いかにも60年代風の容姿が面白い。千原浩史はいつもながら圧倒的な存在感。千原と漫才パートナーがTV出演を決めた後の川っぺりのシーンが一番良かった。(旧作)


今、そこにある危機 (旧作)


SAW3


テキサス・チェインソー・ビギニング


月とチェリー (旧作)


IKUSA2 戦2 /二本松の虎 (旧作)

IKUSA 戦 (旧作)


立喰師列伝 


ロード・オブ・ウォー



ワンス・アンド・フォーエバー (旧作)


グエムル 漢江の怪物


レディ・イン・ザ・ウォーター


ウルトラヴァイオレット メジャー映画でここまでショボイのはめずらしい。すごく期待していただけに、このショボさは残念。脚本・美術・小道具・CGとどれをとってもセンスがないし、知性もない。百歩譲っても、ミラ・ジョボビッチのCMみたいな映画どまり/今作でのミラジョボは、往年のシュワルツェネッガー度がさらに増し、発音もなんかヘン、まじめなセリフなのになぜか可笑しい。特に子供との掛け合いは微笑ましい。やっぱコメディに出るべき女優だ。


神の左手 悪魔の右手 楳図かずお原作のスプラッター漫画を金子修介監督が映像化。予想どおり、完全に失敗作だ。この原作を映画にするという企画自体が間違っている/田口トモロヲの顔芸はすごかった。あと音楽もけっこういい。この辺が見どころ。


スーパーマン・リターンズ 「バットマン」も「スパイダーマン」も吹っ飛ばす傑作。冒頭のシーンで、絶体絶命のロイスが窓の外に、スーパーマンが一瞬通り過ぎるのを見る。ここでもうウルウルした。泣けるほどカッコいい。最近は「バットマン」にしろ「スパイダーマン」にしろ、等身大のヒーローに食傷気味だったので、墜落するジャンボジェット機を止めるスーパーマンのパワーに感動してふるえた。ヒロインのロイス・レインが魅力的なのもいい。というのも、旧作ロイス役のマーゴット・キダーはどうもクラーク・ケントと釣り合わないなぁと子供心に思ってたから。こういうところで感情移入度って変わってくるのだ。とにかくクラークとロイス、ロイスの夫の3人がとても魅力的だった/空飛ぶオープニング・タイトル、エンディングの観客に微笑むショットと、旧作へのリスペクトで溢れている/やっぱりアメリカ人にとって、ヒーローとイエス・キリストは切っても切れない関係なんだということがよく分かる/本作には実は大きなサプライズが待っているのだが、コミック好きのブライアン・シンガー監督、もしや「ドラゴンボール」も読んでいるのでは?と思ったりした。


マイアミ・バイス 男臭い映画を撮ったら今彼の右に出るものはいない、マイケル・マン監督作品。なんと、TVシリーズの「マイアミ・バイス」は彼の製作したものだそうだ。それを映画にするのだから、まさに正統派、誰にも文句は言わせないといったところか/冒頭から、手持ちカメラと特有のアングルでシブさ爆発、ジェイミー・フォックスがおちゃらけるスキもない。銃撃戦はリアルで迫力あり。特に対物狙撃銃(バレットM82)の迫力はすごかった/ヒロイン、コン・リーとのロマンスが意外にもツボった。マイケル・マン、ラブ・ロマンスもいけるじゃん!


X-MEN : ファイナル・ディシジョン 「スーパーマン」に行ってしまったブライアン・シンガーに代わり、ブレット・ラトナーが監督。前2作に比べ、隠喩法を使ったメッセージはおとなしめ、話の流れにリアリティがないところもあるが、新展開を消化するのに大忙しといったところか。それでも色んなキャラクターが活躍するのは楽しい/ついに素顔で出ましたレベッカ・ローミン(ミスティーク)!「前は美しかったのに…」というマグニートーのセリフが笑える。重戦車ジャガーノートとキティの病院内のカケッコが最高。ジョナサン・クレイザーのCM(リーバイスだっけか?)を彷彿とさせる壁ぶっ壊しシーンは文句なく気持ちいい。ローグ役のアンナ・パキンが第1作では美少女キャラだったのに、今回は別の美少女キャラ(キティ)に取って代わられてるのが厳しい。パキンはオバさんみたいになっちゃったもんなぁ。


 

(ここより2007年)

 

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