実務の友   消費者金融等に関する判例集
最新更新日2002.07.14-2006.08.10
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◇◇ 索   引 ◇◇

第1 金銭消費貸借と利息制限法を巡る諸問題
  ◎ 利息制限法に関する判例法理(最高裁判決)
  1 金銭消費貸借と公序良俗違反
  2 消費貸借における利息の発生時期
  3 利息制限法の適用の有無
  4 利息制限法違反の利息を目的とした準消費貸借契約の効力
  5 利息制限法超過の利息の定めはあるが遅延損害金の特約のない場合の遅延損害金の率
  6 年数回組入れの重利の予約と利息制限法の関係
  7 金銭貸与の方法として手形を交付した場合と消費貸借の成立する金額
  8 利息の円未満の端数計算は,四捨五入か切捨てか
  9 代理人が本人名義で自動契約機により金員を借り受けた場合と民法110条の類推適用
 10 他の連帯債務者に対する利息制限法超過分の求償の可否
 11 「毎月X日」と定めた契約の返済日
 12 割賦金の支払を遅滞した場合と期限の利益の喪失
 13 弁済期の自動延長と民法146条
 14 消滅時効期間,時効完成後の一部弁済又は債務承認と時効援用権
 15 金銭消費貸借に関する立証責任
 16 利息制限法3条所定のみなし利息に当たるとされた事例
第2 貸金業法を巡る諸問題
 17 利息の天引・前払いと貸金業法43条の適用
 18 貸金業法法17条(契約)書面の交付と同法43条の適用
 19 貸金業法43条の「任意に支払った」とは?
 20 貸金業法18条(受領)書面の交付と同法43条の適用
 21 一部に貸金業法43条の適用が認められない場合とその後の同条の適用の可否
 22 金銭の貸付けを繰り返した場合の法律関係
 23 取引経過開示義務と文書提出命令
第3 与信,取立に関する諸問題
 24 過剰与信債務と債務額減額の判決
 25 違法な債権取立て等と慰謝料請求認容例
 26 裁判外の和解成立と不当利得返還請求
第4 その他の諸問題
 27 署名代理と名義貸し
 28 カードの不正使用
 29 破産免責制度の趣旨と免責の当否
 30 超高利の貸付けと元本返還の要否



○ 利息制限法に関する判例法理(最高裁判決)

   別紙「利息制限法に関する判例法理」のとおり


1 金銭消費貸借と公序良俗違反

   別紙「金銭消費貸借と公序良俗違反」のとおり


2 消費貸借における利息の発生時期
 ○ 最高裁大判昭和33.6.6民集12巻9号1373頁,判例解説民事篇昭和33年度147頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 「消費貸借における利息は,元本利用の対価であり,借主は元本を受け取った日からこれを利用しうるのであるから,特約のない限り,消費貸借成立の日から利息を支払うべき義務がある。」

 ○ 東京高裁判平成12.9.27金融・商事判例1116号43頁
(判決要旨)
 「金銭消費貸借において,利息は元本利用の対価であり,貸主は貸付日当日から元本が利用できるのであるから,特約のない限り,貸主は貸付日当日から利息を請求でき,このことは民法140条(初日不算入の原則)あるいは利息制限法の制限利息とは無関係で,なんらこれらの規定に反するものではない。」


3 利息制限法適用の有無
 ○ 東京地裁判昭和46.12.16判例時報673号55頁
   利息制限法適用の有無をめぐって金銭消費貸借か住宅購入代金立替契約かが争われたが,後者であって利息制限法の適用がないとされた事例
(判決理由抜粋)
 「不動産の所有者が当該不動産を売却する場合,買主において被告の住宅会員となり,一定期間売買代金の3分の1相当額までを被告の指定する金融機関に定期預金をなしたうえ,その額が3分の1に達すると,買主は右預金債権を被告に対して譲渡し,被告は右金融機関より売買代金相当額を借り入れ,これを買主に代わって売主に立替払をなし,(略)手数料相当額の支払を受ける方法によってなされていたこと(略)
 右認定のような被告の業務内容,原告らが被告との間で契約をなすに至るまでの経過,原告和子が被告と契約をなす際にとった手続,その契約の内容を総合して勘案すると,原告和子と被告との間で昭和40年8月28日に成立した前認定のような契約はとうてい金銭消費貸借契約と目することはできず,むしろ住宅購入代金立替契約と解するのが相当である。(略)
 なお,原告らは右契約が住宅購入代金立替契約であるとしても,利息制限法の適用においては,一般の貸金とは実質上同一であり,もし同法の適用外とするならば,割賦販売の名のもとに同法の適用は潜脱される旨主張するが,前認定のような契約が実質上金銭消費貸借契約と同一であるということはできず,特に右契約が割賦販売名下に利息制限法を潜脱するためになされたものと断ずることもできない。(略)そうすると,右契約については利息制限法の適用はないものというべきである。」

 ○ 東京地裁判平成4.4.9金融法務事情1351号37頁
   ゴルフ会員権購入者のために購入代金の立替払いをした業者の購入者に対する立替金,手数料等の支払請求と利息制限法の適用(消極)
(判決要旨)
 ゴルフ会員権の購入に際し,業者が購入者のために購入代金を立替払いし,購入者が業者に右立替金と手数料等を分割弁済する立替払契約は,単なる金銭を目的とする消費貸借とは認められず,業者の購入者に対する立替金,手数料等の支払請求については,利息制限法は適用されない。
(判決理由抜粋)
 「被告は,本件契約は金銭を目的とする消費貸借契約であるから,利息制限法の適用を受ける旨主張するので,これについて検討する。
 なるほど,本件契約をゴルフ会員権購入者から見れば,経済的には購入代金の融資を受けるという金融の手段としての面を有することは否定できない。
 しかし,前記各証拠によれば,本件契約は,立替払業者(以下「業者」という)と提携したゴルフ会員権販売店からゴルフ会員権を購入する際に,立替払を希望した購入予定者のうち業者が信用調査をして承認した購入予定者について,そのゴルフ会員権購入代金を業者が一括して販売店に支払い,その後購入者が業者に右購入代金相当額に手数料を加算した額を割賦で支払うことを内容とする,販売店と業者との加盟店契約,販売店と購入者との売買契約及び業者と購入者との立替払委託契約からなるものである。
 したがって,本件契約における分割手数料は,立替金に対する金利のみならず,立替払委託に対する報酬,信用調査等事務処理に伴う費用等も含むものであり,本件契約を単なる金銭を目的とする消費貸借と認めることは相当でないから,利息制限法は適用されないと解するのが相当である。」

 ○ 東京地裁判平成11.1.19判例タイムズ1049号256頁
   ダイビング器材購入者のために購入代金の立替払いをした業者の購入者に対する立替金,手数料の支払請求については,利息制限法は適用されないとされた事例
(判決理由抜粋)
 「本件立替払契約は,割賦購入あっせん等の業者である原告が,提携した販売店であるエグザスダイブカレッジ大森から被告がダイビング器材を購入する際に,右購入代金を一括して販売店に支払い,その後,被告が原告に対し,右購入代金相当額に本件手数料を加算した額を割賦で返済することを内容とするもので,原告と販売店間の契約及び被告と販売店間のダイビング器材の売買契約と一体をなすものであり,ダイビング器材の購入者である被告から見ると,経済的には原告から購入代金の融資を受けるという金融の手段としての面を有することは否定できない。そして,金融による対価という側面からすると,本件手数料に利息に類する部分が含まれうるというべきである。
 しかし,本件手数料は,一方で,立替払いに対する報酬,諸経費等を含むというべきであり,また,割賦販売法30条の3第2項により,割賦購入あっせんに係わる各回ごとの支払義務が履行されない場合の遅延損害金については法定利率(年6パーセント)を超えることができないと制限されていることも衡量すると,本件立替払契約については,利息制限法の適用あるいは類推適用の余地はないと解すべきである。」


4 利息制限法違反の利息を目的とした準消費貸借契約の効力
 ○ 最高裁一小判昭和55.1.24判例時報956号53頁
(判決要旨)
 「利息制限法所定の制限利率を超過する利息部分を目的とした準消費貸借契約は,その効力を生じない。」
(判決理由抜粋)
 「原審が適法に確定したところによると,右の準消費貸借契約の目的となった旧債務は,上告人側が被上告人八島から借り受けた元本800万円に対する月5分の割合による昭和44年6月分及び7月分の利息合計80万円を含む総計338万9100円にのぼる上告人側の被上告人八島に対する債務のうちの300万円であるというのであるが,右に挙げた元本800万円の消費貸借上の債務に対する利息制限法所定の利息の最高限度額は1か月につき10万円であることが計数上明らかであるから,右80万円のうち昭和44年6月分及び7月分の利息合計20万円を超える60万円については利息制限法1条に違反する約定によるものとして利息債権は存在しないといわなければならず,したがって,準消費貸借上の債権も右の限度で存在しないこととなるから,右準消費貸借上の債権を自働債権とする相殺の抗弁を認容した原判決は不存在の右債権額の限度で違法であり,右違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから,論旨は理由がある。」


5 利息制限法超過の利息の定めはあるが,遅延損害金の特約のない場合の遅延損害金の率
 ○ 最高裁大判昭和43.7.17民集22巻7号1505頁,判例解説民事篇昭和43年度上537頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 「利息制限法所定の制限を超える利息の定めのある金銭消費貸借において遅延損害金について特約のない場合には,遅延損害金は,同法第1条第1項所定の利率まで減縮されると解するのが相当である。」(反対意見がある)。


6 年数回組入れの重利の予約と利息制限法
 ○ 最高裁三小判昭和45.4.21民集24巻4号298頁,判例解説民事篇昭和45年度上207頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 「年数回の組入れを約する重利の予約は,毎期における組入れ利息とこれに対する利息との合算額が,本来の元本額に対する関係において,1年につき利息制限法所定の制限利率により計算した額を超えない限度においてのみ有効である。」


7 金銭貸与の方法として手形を交付した場合と消費貸借の成立する金額
 ○ 最高裁一小判昭和39.7.7民集18巻6号1049頁,判例解説民事篇昭和39年度208頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 「金銭の消費貸借にあたり,貸主が借主に対し金銭交付の方法として約束手形を振り出した場合において,右約束手形が満期に全額支払われたときは,たとえ借主が右約束手形を他で割り引き,手形金額に満たない金額を入手するにとどまっても,右手形金額相当額について消費貸借が成立する。」


8 利息の円未満の端数計算は,四捨五入か切捨てか
○ 神戸地裁姫路支部判平成16.1.15判例タイムズ1159号285頁
(判決理由抜粋)
 「被告は,端数計算につき,利息制限法所定の制限利率による引き直し計算をする場合であっても,通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律3条1項を根拠として四捨五入によるべきであると主張するが,これによると,端数を切り上げたとき利息制限法の制限利率を超えることになるから,適当でないと解される。よって,端数計算は,切捨てによることとする。」


9 代理人が自動契約機により金員を借り受けた場合と民法110条の類推適用
 ○ 札幌地裁判平成12.3.17判例タイムズ1089号172頁
(判決理由抜粋)
 「1 代理人が本人の名義を用いて代理権を越える法律行為をした場合において,行為の相手方がその行為を本人自身の行為であると信頼したときには,その信頼を取引上保護すべきことは,代理行為を代理権の範囲内の行為であると信頼したときと異なるところはないから,行為の相手方がその行為を本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由がある場合には,民法110条の規定を類推適用して,本人が代理人の行為の責に任ずるものと解するのが相当である(被控訴人は,本人が行為者に対してその行為を行うことを承諾したような外観が存在することが必要である旨主張するが,民法110条においても右のような要件は要求されておらず,右は正当な理由の判断において考慮すれば足りると考えられるから,被控訴人の右主張は採用することができない。)
 これを本件について見るに,前記第二の一3のとおり,被控訴人は,池田に対し,平成10年4月ころ,被控訴人名義であった携帯電話の契約名義を池田に変更ることを承諾し,この変更手続について被控訴人を代理する権限を与え,本件保険証を貸与したのであるから,被控訴人は池田に対し,代理権を与えたものと認めることができる。(略)
 そして,(略)池田が,控訴人に対し,本件保険証及び本件キャッシュカードを提示して,被控訴人の名義を用いたため,控訴人は,池田を被控訴人本人であると信じて,本件基本契約及び本件貸付けを行ったものと認めることができる。
 2 進んで,控訴人が右のように信じたことに正当な理由があるか否かについて判断する。
 一般に,保険証は,自動車運転免許証や旅券などを所持しない者であっても利用することができる身分証明書類として,広く用いられていることは公知の事実である。(略)
 しかしながら,一般に,本人と称する者が本人の名の記載された保険証を所持している場合に,それが本人確認の資料として,取引上強い証明力を有していると考えられる登録印鑑や印鑑証明の所持の場合と比べて,同程度の証明力を有するものであると認識されているとまでは認め難いところであり,また,近時,他人名義の保険証を用い,保険証の名義人を装って消費者金融会社から金員を借り入れるといった保険証を悪用した信用取引の事例が増加していることは公知の事実である。したがって,こうした事情に鑑みれば,保険証やキャッシュカードのような関係者の写真が貼付されていない書類を身分証明書類として提示され,金員の借入れを申し込まれた場合には,少なくとも貸金を業とする消費者金融会社としては,登録印鑑及び印鑑証明その他提示された身分証明書類を用いただけでは容易に入手できないような別個の身分証明書類の提出を求め,また,借入れ申込人本人や家族の生年月日等,本人であれば即座に答えられるような質問をしてその言動に不審な点がないかどうかを確認したり,借入れ申込人の自宅や就業場所に電話をして本人が不在であることを確認するなどの本人確認のための補充的方法を尽くし,借入れ申込人が身分証明書類の関係者本人であることの確実性を高めるように努めた場合に初めて,その者が本人であると信じるについて正当な理由があると解することができるというべきである(なお,右のように解すると,本件のような機械を用いた金員貸付けの方法による場合には,本人確認の方法が限局される結果,表見代理の適用を受けることが困難となる事態が増加することも考えられるが,それは,専ら貸付側の営業方法に由来するものであって,それによる危険は貸付側が負担すべきものとしても,不当とはいい難いものというべきである。)。
 これを本件について見るに,前記第二の一4のとおり,控訴人は消費者金融会社であるところ,甲第6号証及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,本件基本契約締結及び金員交付に際し,その従業員が自動契約機に付けられたカメラを介して池田の顔を確認し,池田が提示した本件保険証及び本件キャッシュカードと契約締結申込書類の照合をしたものの,それ以上の本人確認の措置を講じていないことが認められる。したがって,控訴人が,右の本人確認のみをもって,池田を控訴人本人であると信じたことには正当な理由があるということはできない。」


10 他の連帯債務者に対する利息制限法超過分の求償の可否
 ○ 最高裁三小判昭和43.10.29民集22巻10号2257頁,判例解説民事篇昭和43年度(下)788頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 「連帯債務者の一人が利息制限法所定の制限を超える利息を支払っても,他の連帯債務者に対して上記制限を超える利息相当金を求償することはできない。」


11 「毎月X日」と定めた契約の返済日
 [1] 広島高裁平成9.12.2判例タイムズ1008号258頁
(判決要旨)
  分割金の支払期限として「毎月5日」と記載のある契約書面は,返済期日が休日の場合の扱いにつき不明確であり,貸金業法17条所定の書面には該当しない。」
(判決理由抜粋)
 「消費貸借契約における返済期日が休日の場合に,返済期日をその前日とするのか,その翌日とするのかは当該契約条項の解釈に委ねられるものであって,契約書面にその旨の記載がない場合に,当然そのいずれかに解されるものでもない。そうすると,被控訴人の交付した右契約書面は,その書面の記載自体において,返済期日が休日の場合の扱いにつき不明確であり,法17条1項8号,規則13条1項1号チの「各回の返済期日及び返済金額」の記載として不十分なものであるというべきである。」

 [2] 最高裁一小判平成11.3.11民集53竄R号451頁,判例タイムズ1013号106頁,金融法務事情1549号24頁 判例解説民事篇平成11年度(上)213頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
1 毎月1回ずつの分割払によって元利金を返済する約定の消費貸借契約において,返済期日を単に「毎月X日」と定めただけで,その日が日曜日その他の一般の休日に当たる場合の取扱いが明定されなかった場合には,特段の事情がない限り,契約当事者間にX日が右休日であるときはその翌営業日を返済期日とする旨の黙示の合意があったことが推認される。
2 毎月1回ずつの分割払によって元利金を返済する約定の消費貸借契約において,返済期日を単に「毎月X日」と定めただけで,その日が日曜日その他の一般の休日に当たる場合の取扱いが明定されなかった場合において,契約当事者間にX日が右休日であるときはその翌営業日を返済期日とする旨の黙示の合意があったと認められるときは,貸金業の規制等に関する法律17条に規定する書面によって明らかにすべき「各回の返済期日」としては,明示の約定によって定められた「毎月X日」という日が記載されていれば足りる。」
(判決理由抜粋)
 「1 毎月一回ずつの分割払によって元利金を返済する約定の消費貸借契約において,返済期日を単に「毎月X日」と定めただけで,その日が日曜日その他の一般の休日に当たる場合の取扱いが明定されなかった場合には,その地方においては別異の慣習があるなどの特段の事情がない限り,契約当事者間にX日が右休日であるときはその翌営業日を返済期日とする旨の黙示の合意があったことが推認されるものというべきである。現代社会においてはそれが一般的な取引の慣習になっていると考えられるからである(民法142条参照)。
 そして,右黙示の合意があったと認められる場合においては,17条書面によって明らかにすべき「各回の返済期日」としては,明示の約定によって定められた「毎月X日」という日が記載されていれば足りると解するのが相当である。けだし,契約当事者間に右黙示の合意がある場合には,17条書面にX日が右休日に当たる場合の取扱いについて記載されていなくても,契約の内容が不明確であることにより債務者や保証人が不利益を被るとはいえず,法が17条書面に「各回の返済期日」を記載することを要求した趣旨に反しないからである。
2 これを本件について見ると,上告人が珍坂及び被上告人らに交付した各貸付契約説明書には,返済期日として「毎月25日」又は「毎月3日」と記載されるにとどまり,これらの日が右休日に当たる場合の取扱いについての記載はなかったのであるが,前記の推認を否定すべき特段の事情があったことの主張立証はないから,上告人と珍坂及び被上告人らとの間に25日又は3日が右休日に当たる場合にはその翌営業日を返済期日とする旨の黙示の合意があったことが推認されるものというべきである。したがって,右各貸付契約説明書は,「各回の返済期日」の記載に欠けるところはなく,法17条の要件を満たすものということができる。
四 そうすると,原判決中,これと異なる判断の下に,17条書面が交付されたとはいえないことを理由に法43条の適用を否定し,被上告人らの請求の全部又は一部を認容すべきものとした部分には,法令の解釈適用を誤った違法があり,この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点をいう論旨は理由があり,その余の論旨について判断するまでもなく,原判決中の右部分は破棄を免れない。」


12 割賦金の支払を遅滞した場合と期限の利益の喪失
 [1] 大審院連合部判決判昭和15.3.13民集19.544
(判決要旨)
 「割賦払いの債務について,債務者が1回でもその弁済を怠ったときは,債務者は,割賦払いによる期限の利益を喪失し,一時に全額を払うべき旨を特約した場合でも,債権者が全額について一時の支払いを求め,期限の利益を喪失させる旨の意思表示をしないときは,債務者は,依然として期限の利益を保有する。」

 [2] 東京高裁判昭和44.11.21判例速報568号19頁
(判決要旨)
 債権者と債務者との間に,債権者に対して負担する一切の債務のうちその一でも履行を怠ったときは,債務者の債権者に負担する一切の債務につき期限の利益を失ったものとされても異議がない旨の特約がなされており,債務者が月賦金の支払を1日遅滞した事実があっても,債権者が弁済期の翌日異議なく月賦金を受領しているときは,債権者は,右1日遅滞のため,全債務について期限の利益を失わせたものと認めることはできない。
(判決理由抜粋)
 「被告金庫は,第2回の月賦金支払期である昭和43年3月末日を徒過したことにより,訴外会社は期限の利益を喪失し,残額190万円について弁済期が到来したと主張するが,成立に争いのない乙第1号証の第5条には「貴金庫に対して負担する一切の債務のうちその一でも履行を怠ったとき」は「私の貴金庫に対する一切の債務につき期限の利益を失ったものとされても異議ありません」と記載されており,翌4月1日に被告金庫が異議なく(異議を止めたことの主張・立証はない。)10万円を受領しているところからみれば,被告金庫は,右1日の遅滞のため,全債務について期限の利益を失わせたものと認めることはできないから,被告金庫のこの主張は理由がない。」

 [3] 佐世保簡裁判昭和60.8.28判例タイムズ582号78頁
(判決要旨)
 金銭消費貸借において,割賦返済を約し,支払遅滞による期限の利益喪失約款があるにかかわらず,支払を遅滞しながら期限の利益を喪失しなかったものと認められた事例
(判決理由抜粋)
 「被告は,原告が31日以内に支払うべき利息の支払を怠った後も,依然として元本の利用を継続させており,その返済を求めた形跡も認められない。そればかりでなく,より高率な損害金の約定があったのにそれによることなく約定利息額を受領し続け,領収書にも「御利息」と表示していること,更に,それから31日目を「次回支払期限」と指定した「残高確認書」を交付し,場合によっては,いわゆる釣り銭を「預かり金」名義で預かったうえで次回の支払に充当していることが認められる。
 これらの各事実は,期限の利益を喪失し,元本に損害金を付して直ちに返還すべき義務を生じた債務者に対しては考えられないことと云わなければならず,一方原告は,時に1,2日遅れることはあっても借受以来ずっと約定利息を払い続けていたことと考え合せると,被告は,原告の場合には期限の利益を喪失させ,直ちにその返済を求める「その必要あり」とまでは,いまだ認めるには至らず,その措置には出なかったものと解するほかはなく,原告が期限の利益を失ったとは認められない。」

 [4] 佐世保簡裁判昭和60.9.24判例タイムズ577号56頁
(判決要旨)
 支払いを遅滞したときは期限の利益を失う旨の約定がある割賦返済約定の金銭消費貸借において,割賦支払いを遅滞した後も,貸主が元金全額と遅延損害金の請求をしたことはなく利息の支払いを請求し,これを受領していた事実から黙示の合意により期限の利益を再度付与したものと認められた事例
(判決理由抜粋)
 「(分割弁済期日を)経過した後も,期限の利益を喪失したとして元金の一括返済と遅延損害金の請求をしたことはなく,むしろ,利息の支払いを請求し続けてこれを受領していることが認められ,(略),右事実によると,被告は,いったん喪失した期限の利益を黙示の合意により再度付与して,元金の利用を許容し遅延損害金の請求を一時放棄したものと認めるのが相当である。」

 [5] 仙台地裁気仙沼支判昭和62.2.3判例タイムズ645号184頁
(判決要旨)
 借受金債務につき,約定確定期限後も,利息の支払を前提に,期限の猶予があったとされた事例
 「(略)期限が到来した後においても,被告は原告に対し,元金全額と遅延損害金の請求をしたことはなく,むしろ利息の支払いを請求し,これを受領し続け,その受領に際しては,受領金額につき利息ないし通利などと記載した領収証ないし計算書などを交付している。すなわち,もし原告が弁済期限を徒過したならば,被告としては元本及び利率が徒過前の利率より高率となる遅延損害金の支払を請求できることになるが,被告は右期限後も元本の利用を原告に許容し,その返済を求めず,利息より高額である遅延損害金の支払を求めることもなく,利息相当額で受領し続けていたのである。  期限を猶予するか否かは被告の自由に属し,期限が到来しても,なお貸し倒れの危険等がない限り,原告に対し元本の利用を認め,利息の支払いを受けていることの方が,あるいは被告にとって得策である場合もあろうかと推察されることからすれば,元本や遅延損害金の支払いを求めず,利息を受領していた被告の右行為については,(略)被告は,利息の支払を受ける以上,何ら期限の条項を適用する意思がなく,利息の支払いを前提に,期限の猶予をしたとみるのが相当である。」

 [6] 昭和63年3月民事裁判資料第177号93頁 【151】
(協議問題)
 「サラ金訴訟において,支払方法につき元利均等36回の分割払いの約定があり,このうち3回目の支払が3日遅れたとの理由で,以後の支払が毎月きちんと履行されているのに,「約定の支払を1回でも怠ったときは期限の利益を失う」旨の遅滞約款に基づいて最初の遅滞日以降の遅延損害金を年3割6分で請求することは契約上当然の効力として認容すべきか。(61仙台)」
(協議結果)
 「まず,3回目の支払分については,3日分の遅滞損害金が生じていることは疑いがないところであるが,本問のように,その後の支払が約定どおり行われており,債権者も3日分の遅延損害金を請求していないときには,この損害金債務を免除しているとみる余地が十分にあろう。  次に期限の利益の喪失の点であるが,わずか1回分の支払について3日の遅滞がある場合に,当然に全体について期限の利益を喪失させることは,債務者に酷となる場合があろう。  本件のように,わずか3日後に支払債権者が何らの留保もなく受領していたり,以後の支払について各回の支払分としての領収書を交付しているときには,債権者が既に発生した遅滞の効果を免責したものと推認したり,いったん期限の利益を喪失した後に,従来どおりの約定で支払うとの新たな黙示の合意が,当事者間に成立したと認定する余地が十分ある。また,場合によっては,信義則の適用ということも考えられよう。」

 [7] 大阪地裁判平成5.10.13判例時報1514号119頁
 控訴人は,争点の1つとして,「期限の利益喪失の合意がなされたとしても,右合意は,借主を返済を1回でも怠った場合は当然に期限の利益を喪失するという貸主に一方的に有利な不公正な内容であるから,信義則により無効である。(略)即ち,控訴人は平成3年末まで履行期日を各1回遅滞しているのみである。単なる遅滞は,「1回でも怠ったとき」には該当しないと解すべきであるから,控訴人は,平成3年末までは期限の利益を喪失していない。」と主張したが,次のとおり判示した。
(判決理由抜粋)
 「履行期日を1日遅滞した場合でも「返済を1回でも怠ったとき」には該当するものと解されるので,被控訴人は平成3年10月29日の経過をもって期限の利益を喪失したものといえる。」

 [8] 東京高裁判平成13.1.25判例時報1756号85頁,金融・商事判例1128号41頁
(判決要旨)
 「金銭消費貸借契約証書上,利息の支払が1回でも期限に遅れると当然に期限の利益を喪失する旨記載されていても,利息の支払の遅滞があった後も債権者が遅延損害金の請求をしたり,残元金の返済を求めるなどしなかった場合は,期限の利益の喪失に当たる事由があってもこれを宥恕していたものと認められるから,このような場合は,債権者があらためて期限の利益を喪失させる旨の意思表示をしない限り遅延損害金は発生しないとみるのが相当である。」

 [9] 東京地裁判平成13.2.27金融法務事情1629号64頁
(判決理由抜粋)
 「期限の利益の喪失の有無は,債務者に残債務の一括弁済義務を生じさせるとともに,消滅時効の起算点が基準となるものであるから,その有無の判定は,債権者の債権管理手続の過程など,当事者一方の内部的事情に左右されるのではなく,できるだけ契約書の文言などの客観的な資料に基づいて行うことが望ましく,これが解釈の基本的方向となる。
 個人ローン契約書5条1項1号所定の期限の利益を喪失させる前提となる督促のための「書面」には文言上の限定はないのであるから,上記認定のとおり,原告が,被告に対し,平成6年2月23日付けで債務の支払を催告し,その支払がないときは,ローン残高と一括して返済してもらうことになる旨が記載された「ご入金のお願い」と題する書面を送付したことも,同項記載の書面による督促と認めるのを妨げないと解するのが相当である。
 以上によれば,もっとも遅くみても,平成6年2月23日の次の支払日である同年3月12日の経過をもって,消滅時効が進行が始まるというべきである。」(時効の起算点をめぐる争いで,期限の利益を喪失させるための督促は,必ずしも内容証明郵便によらなくてもよいとした判例であるが,期限の利益喪失の有無の判定基準を明示した点でも注目される。)

 [10] さいたま地判平成13.5.29金融商事判例1127号55頁
(判決要旨)
 「毎月に支払うべき約定利息の支払いを1回でも怠るときは,当然に期限の利益を失い,元利金を一括して返済する旨の特約がある金銭消費貸借契約につき,借主が利息制限法所定の制限を超える約定利息の支払いを懈怠した後にもなお約定利息の支払いが続けられた場合において,その支払いが3年9か月余にわたり,その支払額も借り入れた元金の額を超えていて,その間に,貸主において元利金の一括返済を求めていれば,その時点で約定利息の支払いが中止され,それまで支払われた利息制限法の制限超過利息の元本充当計算が行われたと認められる事情のもとにおいては,貸主において,借主が最初に約定利息の支払いを懈怠した時点で期限の利益を喪失していたことを前提に,その後の支払利息を約定損害金として受領したとして,その残額を元本に充当するのは,信義則に反し,その権利を濫用するものとして,許されない。」

 [11] 神戸地裁姫路支部判平成16.1.15判例タイムズ1159号285頁
(判決理由抜粋)
 「原告Aが分割金の支払を怠った後も,被告が元利金の一括返還及び遅延損害金の請求をしたことはなく,約定の分割による元利金の支払を請求し,これを受領し続けていたことは,当事者間において争いがない。この事実に照らすと,被告は,同原告に対し,黙示の意思表示により,期限の利益を再度付与し,上記カードの利用を許容していたものと認められ,この認定を覆すに足りる的確な証拠はない。そうすると,期限の利益を喪失した時期は,同原告が最後に弁済した月の翌月の支払期日である平成14年1月27日が経過したときということになる。」


13 弁済期の自動延長と民法146条
 ○ 消費貸借契約において,借主が弁済期に履行しない場合には,これを自動的に延長する旨の特約が民法146条の趣旨に反し,無効であると解された事例
 [1] 東京地裁判平成5.4.13判例時報1480号84頁
(判決要旨)
「支払い出来なかった場合には,元本並びに期限後の違約損害金の支払い期限を猶予し」,その弁済期を自動的に延長して,右弁済期より「5カ年後を弁済期限とし,尚かつ完済できなかった場合は,さらにその後の5カ年間支払いを猶予し延長した期限が最終弁済期限に自動的になる」旨の特約
 「本件特約は,本件貸金債権の弁済期を延長するというよりも,その消滅時効の起算時である「権利ヲ行使スルコトヲ得ル時」(民法166条1項)を繰り下げ,時効の完成を困難にするという効果のみを目的とする特約であり,実質的にみると,控訴人に時効の利益を放棄させるものと選ぶところがなく,民法146条の趣旨に反し,無効である。」

 [2] 東京高裁判平成10.8.31判例タイムズ1000号288頁
   *上記と同一の貸主が当事者,特約も同旨
(判決要旨)
 「(本件)特約は,(略)貸金取立ての実態にかんがみても,各貸金債権の弁済期を延長するというよりも,債務者から残元金とともに膨れ上がらせた高利を取得するため,その消滅時効の起算時を繰り下げ,消滅時効の完成を意図的に後らせるという効果のみを目的とする特約であり,実質的にみると,控訴人に時効の利益を放棄させ,あるいは消滅時効の期間を伸長するものに外ならないから,民法146条の規定の趣旨に反し,無効であるといわなければならない。」


14 消滅時効期間,時効完成後の一部弁済又は債務承認と時効援用権

   別紙「消滅時効期間,時効完成後の一部弁済又は債務承認と時効援用権」のとおり


15 金銭消費貸借に関する立証責任
 [1] 最高裁二小判昭和43.2.16民集22竄Q号217頁,判例解説民事篇昭和43年度上263頁
   準消費貸借契約における旧債務の存否に関する立証責任
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 「準消費貸借契約は,目的とされた旧債務が存在しない以上その効力を有しないものではあるが,右旧債務の存否については,準消費貸借契約の効力を主張する者が旧債務の存在について立証責任を負うものではなく,旧債務の不存在を事由に準消費貸借契約の効力を争う者においてその事実の立証責任を負うものと解するを相当とする」

 [2] 最高裁三小判平成3.11.19民集45巻8号1209頁,判例タイムズ772号126頁,ジュリスト995号104頁,判例解説民事篇平成3年度443頁
  金銭の不当利得の利益が存しないことの主張・立証責任
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 「1 金銭の交付によって生じた不当利得の利益が存しないことについては,不当利得返還請求権の消滅を主張する者が主張・立証すべきである。
2 不当利得をした者が利得に法律上の原因がないことを認識した後の利益の消滅は,返還義務の範囲を減少させない。」


16 利息制限法3条所定のみなし利息に当たるとされた事例
 ○ 最高裁二小判平成15年07月18日(最高裁Webサイト「最近の最高裁判例」)
  信用保証会社の受ける保証料及び事務手数料が貸金業者の受ける利息制限法3条所定のみなし利息に当たるとされた事例
(最高裁HP該当判例)
 ○ 最高裁一小判平成15年09年11日,最高裁三小判平成15年09月16日(いずれも最高裁Webサイト「最近の最高裁判例」)も,同種事案で,同一判旨
(判決理由抜粋)
 「1審被告の受ける利息等とD信用保証株式会社の受ける保証料等の合計額が法所定の制限利率により計算した利息の額を超えていること,前記第1の1(8)記載のD信用保証株式会社の設立経緯,保証料等の割合,業務の内容及び実態並びにその組織の体制等によれば,1審被告は,法を潜脱し,100%子会社であるD信用保証株式会社に保証料等を取得させ,最終的には同社から受ける株式への配当等を通じて保証料等を自らに還流させる目的で,借主をしてD信用保証株式会社に対する保証委託をさせていたということができるから,D信用保証株式会社の受ける保証料等は,法3条所定のみなし利息に当たるというべきである。」


17 利息の天引・前払いと貸金業法43条の適用(消極)
 [1] 神戸地裁判昭和44.2.6判例時報568号69頁
(判決理由抜粋)
 「利息制限法2条の規定は利息の天引きについて元本の支払いに充当することとした場合の計算方法を定めているところ,利息の天引きはすなわち利息の前払いにほかならないのであるから,同規定は金銭消費貸借の成立の当初における利息の天引きについて適用するだけではなく,その後における利息の前払いについてもこれを準用するのを相当とする。」

 [2] 札幌地裁判昭和50.7.7判例タイムズ332号339頁
(判決理由抜粋)
「利息の天引は,それが期限の利益の放棄または特約によって行われるのであるが,いずれにしても利息の前払であることにその本質が存する。法2条は,利息の天引が行われた場合において天引額が同条所定の方法によって計算した金額をこえるときはその超過部分が元本に充当されたものとみなすのであるが,その法意は,高利金融市場において経済的弱者の立場にある借主保護の目的から前払利息のうち一定の限度をこえる部分については利息の支払とは認めず元本充当として取扱うことが至当であり,そしてその一定の限度の金額の求め方としては同条に定める方法によることが政策的見地から適切妥当であり,これによって計算された一定の限度の金額をもって貸主に帰属させるべき適正利潤とするにあるものと解する。  そうであるとすれば,同条は金銭消費貸借成立時になされる利息の前払についてのみ適用されるとする理由はなく,本件のように弁済期限の変更(延伸)の際に授受される利息の前払についても準用されると解するのが相当である。」

 [3] 東京地裁判平成2.12.10判例タイムズ748号169頁
(判決要旨)
 「利息の天引きについては,それが合意の上であっても,貸金業法43条の適用を受けることはできないと解するのが相当である。」

 [4] 名古屋地裁判平成7.5.30判例タイムズ897号2134頁
(判決要旨)
 「(証書貸付において)合意により利息の天引きが行われたとしても,それは「利息としての支払」には当たらないから,右利息金については貸金業法43条の適用の余地はない。」
(判決理由抜粋)
 「まず,平成4年7月27日から同年9月24日までの60日分の利息金120万円については,前記のとおり,利息の天引が行われたものであるところ,合意により利息の天引が行われたとしても,それは「利息としての支払」には当たらないから,右利息金については貸金業法43条の適用の余地はないというべきである。
 次に,本件各利息の支払につき,貸金業法43条(いわゆるみなし弁済金規定)が適用されるか否かについて判断する。
 貸金業法上,貸金業者が右みなし弁済金規定の適用を受けるためには,同法18条1項所定の受取証書を支払の都度直ちに交付しなければならないとされているところ(貸金業法43条),本件各利息の支払につき,原告が,被告に対し,右受取証書を交付または送付していないことは当事者間に争いがなく,本件のように利息金の支払が銀行振込の方法でされた場合も,貸金業者が右規定の適用を受けるためには,右振込を受ける都度,直ちに右受取証書を交付または送付しなければならないというべきであるから,本件各利息の支払につき右規定は適用されないというほかない。」

 [5] 大阪地裁判平成11.3.30判例タイムズ1027号278頁,判例時報1700号84頁
(判決要旨)
 「(手形貸付において)天引利息について,貸金業の規制等に関する法律43条の適用はない。」
(判決理由抜粋)
 「1 そもそも,貸金業法43条1項においては,貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息(利息制限法(昭和29年法律第百号)第3条の規定により利息とされるものを含む。)の契約に基づき,債務者が利息として任意に支払った金銭について,一定の要件を満たす場合に,利息制限法1条1項の規定にかかわらず有効な利息の支払いとみなすものとし,貸金業法43条3項において賠償額の予定につき同条1項を準用するにとどまり,右各条項の文言上,貸金業法43条1項は利息制限法1条1項及び4条1項の特則ではあるが,同法2条(利息の天引)に対する特則とはされていない。これは,貸金業法43条における「利息として支払った」との文言にも,基本的には金銭の現実の交付を要する趣旨をくみ取れることとも符号するうえ,利息の天引は貸付の条件とされていることが一般的であって任意の支払とは評価しがたいことに根拠があるものと考えられる。
 2 そうだとすれば,利息を天引している本件では債務者であるアウクは,利息に相当する金額の元本を当初から受領しておらず,被告に対し利息金として金員を交付したことがないことから,貸金業法43条の適用を受けることはなく,とりわけ,被告が元金を約束手形を決済する方法により支払いを受けることになっている本件においては,その後の元本の支払いもこれを怠れば銀行取引停止処分を受ける危険性を背景としたものであって任意のものといえるかどうかにつき疑問もあり,貸金業法43条の適用の余地はない。
 3 これに対し,天引でも,その経済的な効果をみれば金員を現実に交付したのと同視しうるものともいえ,この点供託あるいは債務者の側からなす相殺は任意に支払ったものと評価する余地があるとしても,貸金業法に(マ)趣旨に鑑みれば,貸金業者から金銭を借受けた債務者が利息金をそれと明確に認識することが必要であって,天引ではかかる時点で利息金が具体的請求権としては発生しておらず,これを利息として支払ったことと同視することは妥当でないと解される。
 ([3]のコメント抜粋)
 「本判決の判断には異論がないところであるが,天引方式による利息の支払に貸金業法43条1項の適用がないという結論に対して理論的な根拠を示したところに意義があるとともに,約束手形による支払方法の特殊性にまで着目した初めての判断として注目される。」

 [6] 東京高裁判平成12.7.24判例タイムズ1071号197頁,判例時報1747号104頁
(要旨)
  利息が天引された場合には貸金業法43条1項は適用されない。
(判決理由抜粋)
 「一 利息天引の場合と本条項
 本条項は,貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約に基づき,債務者が利息として任意に支払った金銭の額が,利息制限法1条1項に定める利息の制限額を超える場合において,一定の条件のもとで当該超過部分の支払を有効な利息の債務の弁済とみなす旨を規定するが,利息を天引された場合には本条の適用はなく,利息制限法2条が適用されると解するのが相当である。すなわち,利息天引の約定で消費貸借契約が締結される場合,債務者は天引を承認しなければ貸付けを受けることができないのが通常であるから,これを債務者が利息として任意に支払ったということは困難であり,本条項は利息天引のこのような問題点を考慮して利息制限法2条に触れることなく,天引の場合を適用の対象としなかったものと解される。
 なお,被控訴人は,本条項の適用除外を定める貸金業法43条2項に利息の天引があげられていないこと,利息制限法2条は利息天引の場合の同法1条1項適用上の効果を明らかにした立法にすぎないことをあげて,利息天引の場合も本条項の適用がある旨を主張している。しかし,利息天引に本条項の適用があるか否かは,本条項自体の解釈の問題であって,貸金業法43条2項が利息天引の場合を規定していないからといって,当然に利息天引の場合にも本条項が適用されることにはならないし,利息制限法2条が,利息天引の場合の1条1項の適用の仕方を明らかにしたものであるとしても,本条項が利息天引の場合に触れるところがない以上,これが当然に利息天引の場合にも適用されるということはできない。」

 [7] 東京高裁判平成13.4.19判例タイムズ1072号152頁
(要旨)
 1 手形貸付の方法による貸付について利息が天引された場合に当たるとされた事例
 2 利息が天引された場合の貸金業法43条1項のみなし弁済の規定の適用の可否(消極)
(判決理由抜粋)
 「被控訴人の富士プリントに対する平成10年6月22日までの各貸付は,いずれも手形額面金額から制限超過利息(手数料名義のものを含む。)を天引し,支払期日に手形を決済する方法による手形貸付である。これに対し,被控訴人は,手渡金額(に消費税を加えた金額)を貸付元本額として,これに実質年利による制限超過利息を加えた額面金額の返済を受けるものであるので,利息天引でなく,後払いであると主張するが,各貸付に際して被控訴人が富士プリントに交付した貸付金明細書には,その後の各貸付で記載されている貸付元金(手渡金額に消費税を加えた金額)の記載はなく,その利息額の計算も年利率及び支払期日までの貸付日数を適用して算出されたものであり(実質年利による計算関係は不明である。),これと手数料等を額面金額から控除したものを貸し渡していたのであるから,被控訴人主張のように解することはできず,手渡金額は,額面金額を貸付元本額として計算した制限超過利息(手数料等名義のものを含む。)を控除,天引した金額であるというほかない。
 ところで,貸金業法43条1項が利息制限法1条1項及び4条1項の特則とされ,同法2条(利息の天引)に対する特則とされていないことは,規定上明らかであるから,利息が天引された場合には,貸金業法43条1項の適用はない(利息制限法2条が適用される。)と解される。これは,貸金業法43条1項の「債務者が利息として・・・支払った」との文言に,基本的には金銭の現実の交付を要する趣旨を汲み取ることができ,利息の天引はこれに当たらないものである上,利息の天引は貸付の条件とされていることが一般的であって,利息を先払いするのでなければ貸付を受けられない状況で債務者が支払うのは,「任意に支払った」とはいえないことに根拠があるものと解される。
 したがって,上記平成10年6月22日までの各貸付について,貸金業法43条1項のみなし弁済の規定を適用することはできない。」

 [8] さいたま地裁判平成13.11.30金融・商事判例1136号32頁,判例タイムズ1092号283頁
(判決要旨)
  貸金業者の行う金銭の貸付について利息の天引きないし前払いがされる場合と貸金業法43条のみなし弁済規定の適否(積極)
(判決理由抜粋)
 (詳細な理由は省略)
 「以上要するに,利息の天引きないし前払いが行われた場合であっても,貸金業法43条の規定する要件が具備する限り,利息制限法の適用が排除されるものとして,その支払を有効な利息の債務の支払とみなして,金銭消費貸借の帰すうが判断されるべきものといわなければならない。」

 [9] 東京地裁判平成13.12.3金融・商事判例1142号40頁
(判決要旨)
  貸金業者の行う金銭の貸付について利息の天引きないし前払いがされる場合と貸金業法43条のみなし弁済規定の適否(消極)
(判決要旨)
 貸金業者の行う金銭の貸付について利息の天引きがされる場合には,債務者が自己の自由な意思によって利息として支払ったと評価することは困難であって,貸金業法43条も,利息の天引きを同条の適用の対象としなかったと解されるところであるから,また,利息の前払いがされる場合には,利息の天引き以上に債務者が自己の自由な意思によって利息として支払ったと評価することは困難であるから,いずれの場合にも同条のみなし弁済規定の適用はない。

 [10] 東京高裁判平成15.7.31最高裁Webサイト「下級裁主要判決情報」から取得,判例時報1826号63頁
(判決要旨)
1 金銭消費貸借に関し,貸金業者が借主から支払を受ける抵当土地の調査費用が,利息制限法3条所定のみなし利息に当たるとされた事例
2 天引利息及び前払利息には,貸金業の規制等に関する法律43条の適用がない。
(判決理由抜粋)
 「2 調査料と契約締結費用
 控訴人は,貸付に当たり,被控訴人から調査料を徴収しており,控訴人は,これを契約締結の費用であると主張する。しかし,控訴人のいう調査料とは,債権者が契約を締結するかどうかを検討するに当たって,必要な情報を取得するために費やす費用であり,契約の締結そのものの費用ではない。
 利息制限法3条は,「消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は,礼金,割引金,手数料,調査料その他何らの名義をもってするを問わず,利息とみなす。但し,契約の締結及び債務の弁済の費用は,この限りではない。」と規定している。この文言からして,同条は,契約締結そのものの費用のみを例外とし,それ以外の契約の締結に当たって支出される可能性のある費用を,例外扱いしていないものと解される。そうすると,契約の締結そのものの費用に該当しない調査料は,たとえこれが支出された場合でも,利息制限法3条の例外に当たらず,同条により利息とみなされるべきものである。
 3 みなし利息と利息の天引及び前払い
(略)
 これらの差し引かれた金額は,利息制限法3条の規定により,利息とみなされる。そうすると,控訴人は,これらの差引きによって,利息を天引きしたこととなる。
(略)
 4 天引利息及び前払い利息と貸金業法43条
(1) 文言解釈
 控訴人は,天引利息にも,貸金業法43条の適用があり,適法有効な弁済があったものとみなされる旨主張する。  しかし,貸金業法43条の文言上,利息制限法2条は排除されておらず,利息天引の場合には,貸金業法43条の適用はないものと解する。(文言解釈)
(2) 利息制限法2条の立法趣旨
 利息制限法2条は,借主の受領し利用できる金額について,利息を発生させること(利息の後払いではそのようになる。)は許容できるが,受領せず利用できない金額について,高利を発生させること(利息の天引や前払いではそのようになる。)は許容できない,すなわち高利金融の場合は,発生しない高利の利息の受領を許容できないとしたものである。同条は,当事者が合意してそのように約束していても,許容できないとしたものであり,そのことは,利息制限法1条の利率の制限について,任意の支払の場合の除外規定があるのに,利息制限法2条には任意の支払の除外規定がないことに現れている。
 当事者間で合意してそのように約束する際に,貸主が強迫したり,騙したりしてはいない場合,その約束は,言葉の形式的な意味では,借主の任意の判断によるものであるといえる。しかし,利息制限法2条は,そのような言葉の形式的な意味での任意の合意であっても,その合意の効力を否定しており,この点についての同条の解釈には,全く異論を聞かない。
(3) 貸金業法43条の下での利息の天引
 利息制限法の上記の立法趣旨は,貸金業法43条の下では,これを変更すべき理由があり,変更されたのかが,ここでの問題である。結論を先に述べれば,変更すべき理由はなく,変更されていないと考えられる。
 ア 貸金業法43条の守備範囲
 貸金業法43条は,利息制限法1条の制限利率について,任意の支払の場合に,適用を制限する趣旨の規定であり,利息制限法1条自体にあった任意の支払の場合の適用制限規定を実質上復活したものである。すなわち,最高裁判決によって,利息制限法1条2項の明文にかかわらず,任意の支払の場合でも,制限利率が適用される結果となっているのを,厳しい条件付ではあるが,適用を制限したものである。貸金業法の立法趣旨は,このように利息制限法1条の例外規定を実質上復活することにあって,利息制限法の他の条文について,貸金業者に有利な変更を加えようとしたものではない。このように貸金業法のいわば守備範囲が,利息制限法1条の例外規定を実質上改廃した最高裁判決の是正にあって,利息制限法自体の改変にあるのでない以上,利息制限法2条は,貸金業法43条の制定後もそのまま適用されるものと解するのが相当である。
 イ 問題の実質的側面
 そして,貸金業法43条が適用される条件である契約書面の交付や受取証書の交付の事実があるから,利息制限法2条の許容していない発生しない高利の受領が例外的に許容できる,というような価値判断をすることも,利率の制限と発生しない高利の受領とは,本質的に異なる事柄であることからして困難である。
 すなわち,高利金融の下での利息の天引は,利息を制限利率内でのみ天引きするなどということが,現実には存在しないように,借主に意思選択の自由がない状況下で行われるのが実態である。だからこそ,高利が発生してもいないのに,発生したかのようにしてこれを受領するという,理に合わない不自然なことでも,貸金業者の圧力の下で実現するのである。
 また,利息の天引は,貸主が借主から利息の支払を受けるのではなく,貸金から計算上の利息分を差し引くものである。このような差引きは,貸主からする相殺に類似する。貸主からする相殺は,貸金業法43条の下でも,支払には該当しない(最高裁事務総局「貸金業関係事件執務資料」40頁)。その結果,43条の適用は否定されるのであるが,利息の天引には,そのような貸主側からの一方的な行為であるという要素もある。
 これら二つの点,すなわち,内容が理に合わず不自然なことであって,借主が任意に応じたとはいえないことや,貸金業者の相殺のように一方的であることは,貸金業者が契約書面や受取証書を交付したからといって,変わるわけではない。そのような契約書面の交付などの条件を満たしたところで,実質上問題点は解消されずに残るのである。それでもなお,高利の利息の天引を許容するというのでは,とても説得的な説明をしたものとはいえない。
 ウ 立法の経過
 以上のように,問題の実質的側面イや貸金業法43条の守備範囲の問題アとして,困難なことでも,国会が,貸金業者を保護するために,法律により実現するということができないことではない。
 しかし,そのように国会が行動したというのであれば,国会の審議の経過にその点が明らかにされるであろうが,国会の議事録にはそのような記載はない。かえって,立法の関係者の著作(大森政輔「貸金業規制法第四三条についてー利息制限法の特則性とその限界」判例時報1080号16頁)には,利息制限法2条については,なんらの改正もないことが明言されている。
(4) 前払い利息
 前払い利息は,利息の天引と同じく発生しない利息を支払わせるものであり,高利の金融におけるその弊害は,利息の天引に等しい。貸金業法43条の下でも,発生しない高利を支払わせることは許容できないとする利息制限法2条の立法趣旨は,変更されておらず,天引利息について,貸金業法43条の適用はないのであるから,前払い利息についても,同条の適用がないものと解するのが相当である。

 [11] 最高裁小二判平成16.2.20平成15年(オ)第386号,平成15年(受)第390号 不当利得返還請求事件(最高裁HP)
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 1 貸金業者との間の金銭消費貸借上の約定に基づく天引利息については,貸金業法43条1項の適用はない
(判決理由抜粋)
 「(1) 利息制限法2条は,貸主が利息を天引きした場合には,その利息が制限利率以下の利率によるものであっても,現実の受領額を元本として同法1条1項所定の利率で計算した金額を超える場合には,その超過部分を元本の支払に充てたものとみなす旨を定めている。そして,法43条1項の規定が利息制限法1条1項についての特則規定であることは,その文言上から明らかであるけれども,上記の同法2条の規定の趣旨からみて,法43条1項の規定は利息制限法2条の特則規定ではないと解するのが相当である。
 したがって,貸金業者との間の金銭消費貸借上の約定に基づき利息の天引きがされた場合における天引利息については,法43条1項の規定の適用はないと解すべきである。これと異なる原審の前記3(1)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。 」

 [12] 最高裁小二判平成16.7.9平成16年(オ)第424号、平成16年(受)第425号 債務不存在確認,貸金等請求事件(最高裁HP)
(判決要旨)
 1 貸金業者との間の金銭消費貸借上の約定に基づく天引利息については,貸金業法43条1項の適用はない
(判決理由抜粋)
 「(1) 貸金業者との間の金銭消費貸借上の約定に基づき利息の天引きがされた場合における天引利息については,法43条1項の規定の適用はないと解するのが相当である(最高裁平成15年(オ)第386号,同年(受)第390号同16年2月20日第二小法廷判決・民集58巻2号475頁参照)。したがって,貸付け1から30までについては,法43条1項の規定の適用要件を欠くものというべきである。これと異なる原審の前記3(1)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」

 利息の天引・前払いと貸金業法43条の適用(積極)
 [1] 神戸地裁判昭和44.2.6判例時報568号69頁
(判決要旨)
  利息の天引きがされた場合に,貸金業法43条のみなし弁済規定の適用が否定されると解釈することはできず,利息の前払いを含め,利息の天引きないし前払いに一般的に任意性がないとして同条の適用を否定されるということもできない。

 [2] 東京地裁判平成14.12.26判例時報1824号65頁
(判決要旨)
  利息の天引きないし前払いが行われた場合と貸金業法43条のみなし弁済規定の適否(積極)
(判決理由抜粋)
 「利息の天引きないし前払いとみなし弁済規定の適用の有無について
(1) 原告らは,みなし弁済規定の適用は,利息の支払の任意性を要件としているところ,利息の天引きは,利息の前払いも含め,個別的・具体的な事情のいかんを問うまでもなく,一般的に任意性がないから,利息の天引きないし前払いについてはみなし弁済規定の適用がない旨主張する。しかし,利息の支払の任意性は,利息制限法の下においても問題となるところ,同法2条は,一定の場合に天引利息の元本充当を認めているが,かかる規定が設けられているということは,むしろ,利息の天引きそれ自体につき,任意性がないとはいえないことを前提にしているはずであって,原告の主張は理由がない。
(2) 原告は,貸金業法が利息制限法2条の適用の有無について規定していないことをもって,貸金業法の下では,天引利息についてみなし弁済規定の適用がない旨主張するが,貸金業法が利息制限法2条の適用の有無について言及していないのは,利息が天引きされた場合にも金銭消費貸借契約がその名目額を元本として成立することを前提に,貸金業法43条により,みなし弁済規定の要件を具備する場合には,利息制限法1条1項の適用が排除されることに伴い,同項による制限を前提とする同法2条の適用が問題にならないからであると解され,この点に関する原告の主張は採用し得ない。
(3) また,原告らは,利息の前払いに任意性がないとして縷々主張するが,借主が利息の支払を怠った場合,期限の利益を失い,貸主から直ちに貸金の返済を求められる危険が生じることは,利息の前払いの場合とそうでない場合とで差異があるわけではないから,原告らが指摘する事実は,他人から金員を借り受けた者が通常受ける不利益ないし負担にとどまり,これにより利息支払の任意性が失われるとは解し難く,したがって,利息の前払いがあるがゆえに利息の支払に任意性がないということもできない。
(4) さらに,みなし弁済規定における任意性とは,債務者において,契約に基づく利息に充当されることを認識することが必要であるが,他方,債務者において,契約に基づく利息の支払に際して超過利息に充当する旨の指定は必要ないと解されるから,債務者の充当権限の有無は,任意性の判断に直結するものではなく,債務者に充当指定権がないことをもって任意性に欠けるとはいえない。
(5) 以上要するに,利息の天引きないし前払いが行われた場合であっても,貸金業法43条の規定する要件を具備する限り,利息制限法1条1項の適用が排除されるものとして,その支払を有効な利息の支払とみなして,金銭消費貸借契約の帰すうが判断されるべきものといわなければならない。


18 貸金業法17条(契約)書面の交付と同法43条の適用
(1) 一部の記載を欠く書面の交付と43条の適否
 [1] 酒田簡裁判昭和61.9.29 昭和62年民事裁判資料第17号消費者信用関係事件に関する執務資料(その二)226頁
(判決要旨)
 「契約書面に「契約の相手方の氏名及び住所」(規則13条1項ロ)の記載を欠く場合には,43条1項の適用はない。」

 [2] 浜松簡裁判昭和61.12.2 昭和62年民事裁判資料第17号消費者信用関係事件に関する執務資料(その二)173頁
(判決要旨)
 「契約書面に「返済を受ける場所」(規則13条1項ト)の記載がないときは,43条1項は適用されない。」

 [3] 京都地裁昭和63.8.19判例時報1318号106頁
(判決理由抜粋)
 「貸金業者が貸金業の規制等に関する法律第43条の適用を受けるためには,同法17条に定める各記載事項(省令事項を含む)をすべて記載した契約書面を貸付の相手方に交付しておかねばならないと解されるところ,(略)その記載がないことが認められる。そうすると,まずこの点において,前記支払について,同法第43条の適用はないというべきである。」

 [4] 東京地裁判平成10.1.21金融・商事判例1052号49頁,判例タイムズ1016号231頁
(判決理由抜粋)
 「貸金業者が貸金業法43条1項の適用を受けるためには,相手方に対し,同法17条1項に規定する各記載事項のすべてを記載した書面を交付する必要があり,しかも,一通の書面において右記載事項のすべてが記載されていなければならず,他の書面によって記載漏れの事項を補ったり,書面外の事情をもって記載漏れの事項を補うことは,許されないと解すべきである。なぜなら,次の理由から,同法の解釈に当たっては,厳格な態度が要請されるからである。
 (1) 同法43条は,資金需要者等の弁済者の利益保護実現の立場から記載事項を法定したものであるところ(同法1条参照),同法は,49条3項により右法定記載事項(省令記載事項を含む。)を記載しなかった貸主に対しては刑事罰を科するという厳格な態度をとっている。
 (2) 同法は,17条1項の記載事項につき何らの除外事由を定めていない。
 (3) 同法43条1項は本来利息制限法上無効な弁済につき,貸金業法の定める厳格な要件を満たした書面を交付している優良な貸金業者に対してのみ,例外的に有効な弁済と認める特典を与えたものである。
 (4) 同法17条1項に定める事項は多岐にわたるとはいえ,貸金業者であれば,これらの記載は容易にできるものであるから,同項につき厳格な解釈論を採用しても,貸金業者に酷とは言い難い。
(三) 本件の場合,被告が原告野中に対して交付した書面は,次のとおり,記載事項に欠けるところがあるから,同法43条1項1号,17条1項にいう書面には該当しないというべきである。
 (1) 平成6年7月19日の貸付の際に被告が交付した別紙二の連帯借用証書には,同法17条1項に定められた,貸金業者の住所,契約年月日,貸付の利率,返済の方式並びに返済期間及び返済回数の記載がない。そして,同時に交付された別紙一及び三の各書面も,右記載事項のすべてを記載したものではない。
 (2) 平成6年7月22日貸付の際に被告が交付した別紙四の領収書は,受取証書としての体裁を有しているだけであって,これが貸金業法17条1項に定める事項の大半について記載がない。そして,同年8月8日の貸付の際に被告が交付した書面も,別紙三及び四と同一の書式の書面である以上,全く同様の問題がある。
 (3) 平成7年8月24日の貸付の際に被告が交付した別紙六の連帯借用証書に,は,同項に定められた,貸金業者の氏名及び住所,貸付の利率(実質年率),返済の方式並びに返済期間及び返済回数の記載がない。そして,同時に交付された別紙五及び七の各書面も,右記載事項のすべてを記載したものではない。
(四) したがって,抗弁1の各貸付の際に交付された書面は,いずれも貸金業法17条1項の書面に該当しないので,再抗弁1の弁済については同法43条1項の適用はないと解するのが相当である。」

 [5] 大阪地裁判平成11.3.20判例タイムズ1027号278頁(14Bの判例)
(判決理由抜粋)
 「借用証書の上部に印刷された受取証書の返済日(支払期日)の欄に記載されている日付は,先取りする利息を計算する期間の終期を意味するにすぎず,真の弁済期を意味するものではないものと認められる。そうすると,原告らが貸付の際に交付した書面には貸金業法17条1項6号で記載すべきものとされている「返済期間」の記載がないものといわざるをえない。・・貸金業法43条の適用を受けることはできない。」

 [6] 札幌高裁判平成14.2.28金融・商事判例1142号23頁
 (要旨)
  貸金業者が貸金業法17条所定の契約書面として債務者に交付した借用証書に同条所定の要件の記載がないということはできないとされた事例
(判決要旨)
  貸金業者が貸金業の規制等に関する法律17条所定の契約書面として債務者に交付した借用証書には,「返済期間及び返済回数」として元金の一括返済が記載されているのに,実際には,債務者において,利息を支払うことで返済期が順延され,取引が反復・継続されていた場合であっても,貸金業者と債務者との間で,別途,貸付契約の延長に関する約定があって,債務者において,その約定を選択した結果であり,また,貸付の実質年利が39.45パーセントと記載されているのに日歩8銭と記載され,利息の支払期限の前に債務者に送付した請求書等には,実質年利として38.4パーセントと記載されていた場合であっても,この利率は借用証書に記載された利率よりも低く,その誤差の程度もわずかであるから,当該借用証書に同条所定の要件の記載がないということはできない。

 [7] 札幌高裁判平成14.11.20判例時報1815号105頁
 (要旨)
  貸金業者が交付した「計算書兼借用証書・委任状」が貸金業法17条書面に該当しないとされた事例
(判決理由抜粋)
  「その記載内容をみるに,本件借用証書は,「本書写し(貸金業務17・18条書面)を正に受領しました。」との記載があり,17条書面に関する被控訴人の認識が窺えるところ,これらには法17条1項2号所定の「契約年月日」が明記されていない(発行日及び取引日の記載はあるが,甲8では両日付が一致しておらず,いずれが契約年月日に当たるのか判然としない。)し,規則13条1項所定の事項についても,ロ号の債務者の住所,ハ号の貸付に関し貸金業者が受け取る書面の内容,二号の債務者が負担すべき元本及び利息以外の金銭に関する事項,ヘ号の利息の計算の方法,ト号の返済の方法及び返済を受ける場所,リ号の期限の利益の喪失の定めがあるときはその旨及びその内容の諸点についても,明確な記載を欠いている。したがって,本件借用証書には17条書面としての必要十分な記載があるとはいえず,これによって債務者が契約内容を明確に理解できるものともいえないから,その交付によって17条書面の交付があるとすることはできない。」
*「受取証書の交付時期と貸金業法43条の適否」の項に,同一判例あり

 [8] 最高裁小二判平成16.2.20平成15年(オ)第386号,平成15年(受)第390号 不当利得返還請求事件(最高裁HP)
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
2 貸金業法43条1項の適用要件である債務者に交付すべき同法17条1項に規定する書面に該当するためには,当該書面に同項所定の事項のすべてが記載されていなければならない。
(判決理由抜粋)
 「(2) 法43条1項は,貸金業者が業として行う金銭消費貸借上の利息の契約に基づき,債務者が利息として任意に支払った金銭の額が利息の制限額を超え,利息制限法上,その超過部分につき,その契約が無効とされる場合において,貸金業者が,貸金業に係る業務規制として定められた法17条1項及び18条1項所定の各要件を具備した各書面を交付する義務を遵守したときには,利息制限法1条1項の規定にかかわらず,その支払を有効な利息の債務の弁済とみなす旨を定めている。貸金業者の業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として,貸金業に対する必要な規制等を定める法の趣旨,目的(法1条)と,上記業務規制に違反した場合の罰則(平成15年法律第136号による改正前の法49条3号)が設けられていること等にかんがみると,法43条1項の規定の適用要件については,これを厳格に解釈すべきものである。
 法43条1項の規定の適用要件として,法17条1項所定の事項を記載した書面(以下「17条書面」という。)をその相手方に交付しなければならないものとされているが,17条書面には,法17条1項所定の事項のすべてが記載されていることを要するものであり,その一部が記載されていないときは,法43条1項適用の要件を欠くというべきであって,有効な利息の債務の弁済とみなすことはできない。
 上告人は,原審において,平成7年5月19日に被上告人との間で本件基本契約を締結した際に,被上告人に対し,根抵当権設定に必要な書類を提出した旨の主張をしており,仮に,この主張事実が認められる場合には,その担保の内容及び提出を受けた書面の内容を17条書面に記載しなければならず(平成12年法律第112号による改正前の法17条1項8号,平成12年総理府令・大蔵省令第25号による改正前の貸金業の規制等に関する法律施行規則13条1項1号ハ,ヌ),これが記載されていないときには,法17条1項所定の事項の一部についての記載がされていないこととなる。ところが,原審は,上記主張事実についての認定判断をしないで,本件各承諾書写し,本件各借用証書控え,本件各債務弁済契約証書写し及び本件金銭消費貸借契約証書写しの交付により,本件各貸付けにつき法17条1項所定の要件を具備した書面の交付があったと判断したものであって,原審の前記3(2)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」


(2) 複数の書面による場合と43条の適否
 [1] 東京地裁判平成11.10.28判例タイムズ1079号297頁
(判決要旨)
1 分割払による貸金の弁済期日等につき,「貸付の日より2年内自由弁済」との定めがある一方で,貸主の第三者に対する債務不履行を借主の右貸金債務の期限の利益喪失事由とする旨の約定がされている場合,かかる約定を記載した書面は貸金業法17条1項の要件を満たす書面に該当しない。
2 貸金業法43条のみなし弁済の適用が否定された事例
(判決理由抜粋)
 「債務者としては,次の返済期日に向けて短期的な返済計画を立てるとともに,残り何回でどれだけの金額を返済すれば最終的に自己の債務が消滅するのかを認識することによって,長期的な返済計画を立てるのが通常であり,この返済期間,返済回数,各回の返済期日及び返済金額について正確な情報が与えられていなければ,法17条1項の趣旨は没却されることになるので,法17条1項で交付が義務づけられている書面の記載事項は,債務者が右のような短期的あるいは長期的な返済計画を立てることができる程度に一義的で明確なものでなければならないというべきである。(略)
 本件各貸付の契約書である本件基本契約書及び本件約定書には,弁済期等として「貸付の日より2年内自由返済」との記載があるが,併せて本件期限の利益喪失条項の記載もあるため,例え原告が自己の返済計画に従って返済期日,返済金額を決め,返済を継続していたとしても,被告の訴外組合に対する債務不履行によって,ある日突然自己の期限の利益を喪失し,債務全額について返済期日が到来することになるので,原告が貸付時あるいはその後において正確な返済計画を立てることは困難であるといわざるを得ない。
 したがって,本件基本契約書及び本件約定書の弁済期等の記載は,本件期限の利益喪失条項の記載と合わせると,原告が短期的・長期的な返済計画を立てることができる程度に返済期間,返済回数,返済期日及び返済金額が一義的で明確なものであるとはいえない。 (略)
 したがって,本件基本契約書及び本件約定書は,法17条1項の要求を満たす書面とは認められず,原告の本件各弁済のうち,利息制限法1条1項の利息の制限を超える部分は,法43条による有効な弁済とみなすことはできず,被告の不当利得となる。(略)
 しかし,結果的に貸金業者の行為が法43条の要件を欠き,利息制限法1条1項の利益の制限を超える部分が過払となる場合でも,当然には初めて過払が生じた時点以降貸金業者が悪意の受益者であったと認めることはできず,民法704条に基づく請求をする者は,貸金業者が悪意の受益者であったことをうかがわせる何らかの特別な事情を主張立証する必要がある。  2 本件の場合,原告は右特別事情を何ら主張,立証しないし,(略)
 3 したがって,民法704条に基づく法定利息の請求は理由がなく,原告は,過払金に対し,訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができるにとどまる。」

 [2] 東京高裁判平成13.1.25判例時報1756号85頁,判例タイムズ1085号228頁,金融・商事判例1128号41頁
(判決要旨)
 「貸金業法43条1項の適用を受けるためには,原則として,同法17条1項所定の事項をすべて記載した1通の書面を交付する必要があるが,複数の書面による場合は,基礎となる書面に記載のない貸金業法17条1項所定の事項が他のいかなる書面によって補完されるのかが明確にされていなければならない。」
(判決理由抜粋)
 「貸金業法17条1項は,貸付にかかる契約を締結したときは,成立した契約内容を書面に記載して,これを契約の相手方に交付することを義務づけている。これは,契約締結の際にその契約内容を明確にし,債務者にこれを正確に認識させ,貸付金額や弁済の充当関係等につき,後日紛争が生ずるのを防止することを目的とするものである。そして,17条書面に記載すべき事項が多数の書面に分散していて,どの書面が17条書面であるのかが不明瞭であったのでは,債務者に対し正確な認識を得させるという貸金業法17条1項の趣旨を損なうことになりかねない。そうすると,17条書面は,一審判決の指摘するとおり,原則として,1通の書面によって貸金業法17条1項所定の事項のすべてが記載されてあるべきものである。ただ,複数の書面に記載のない貸金業法17条1項所定の事項が他のいかなる書面によって補完されるのかが明確にされていれば,例外的に複数の書面を総合することによって17条書面の交付があったものと認めるのが相当である。
 これを本件について見るに,控訴人は,乙1号証(金銭消費貸借契約証書)を基本的な書面として,これに乙2号証(根抵当権設定契約書),乙4号証(返済表),乙5号証(受領証),乙12号証(「ご案内」と題する書面)を合わせることによって貸金業法17条1項を実質的に充足する旨主張する。しかし,原審記録によれば,貸金業法17条1項所定の事項のうち「返済の方法及び返済を受ける場所(大蔵省令で記載すべきとされた事項)の記載について,控訴人は,被控訴人からこれを記載した書面がない旨の指摘を受けた後,乙12号証(「ご案内」と題する書面)を法廷に提出して,これを補完しようとしたことが認められる。そうすると,仮に右の「ご案内」と題する書面が本件貸付に当たり,どの書面によって,貸金業法17条1項所定の事項を明確にするのかという認識さえ有していなかったことが窺わる。そして,控訴人の提出した右各書面の記載からしても,相互の補完関係が明らかになっているとはいい難い。このような状況では,債務者にとってはどの書面が17条書面であるかはなはだ不明瞭であり,法の趣旨目的が満たされていないといわざるをえない。」

 [3] さいたま地裁判平成13.11.30金融・商事判例1136号32頁,判例タイムズ1092号283頁
(判決要旨)
 「貸金業者が債務者に取引承諾書,借用証書ないし弁済契約証書など数通の書類を交付した場合に,その一部については,当該数通の書面が補完しあって契約書面として交付されるものであることを債務者が了解しうる状況で交付されたものではなく,その残部については,返済方法が変更されているのに,これに符合する記載がないときは,貸金業法17条所定の契約書面の交付があったとはいえず,同法43条のみなし弁済規定を適用することはできない。」
(判決理由抜粋)
 「被告は,取引承諾書と借用証書ないし弁済契証書とが補完し合って契約書面を構成すると主張するところ,(略)しかし,数通の書面が補完し合って契約書面を構成する場合を認め得るとしても,当該数通の書面が補完し合って契約書面として交付されるものであることを債務者が了解し得る状況で交付されていることを必要とするというべきであって,たまたま数通の書面が交付され,その記載内容を合わせれば,17条所定の事項の記載に欠けることがなかったという場合にも,契約書面の交付があったというのでは,債務者の保護として十分ではない。したがって,数通の書類が同時に債務者に交付された場合には,その数通が相まって契約書面となることを明らかにしたうえ,現に,それぞれの記載事項を合わせると,17条所定の事項に記載漏れがないこと,また,時を異にして交付された場合には,先に交付された書面には,当該書面のみでは,17条所定の事項の全部を記載されているわけではなく,次に交付することが予定されている書面があって,かつ,当該書面で,17条所定の残余の事項が記載されることを予め明らかにしたうえ,次に交付された書面には,先に交付された書面を受け,残余の事項が記載されていることを必要とするというべきである。」

 [4] 東京地裁判平成14.12.26判例時報1824号65頁
(判決要旨)
  貸金業法17条所定の要件を具備する契約書面の交付がないとして同法43条のみなし弁済規定の適用が否定された事例
(判決理由抜粋)
 二 本件各取引における17条書面の交付の有無について
(1) そこで,本件各取引につき,17条書面の交付があったといえるか否かについて検討すると,貸金業法17条が17条書面の交付を義務づけた趣旨は,貸金業者から利息制限法の制限を超える利息ないし損害金の支払を約して金銭を借り入れた債務者に対し,その支払うべき利息ないし損害金の額,あるいは,支払った利息ないし損害金がどのように元本に充当され,その結果としてその後に支払うべき利息あるいは損害金ないし残元本の額が明らかになる資料を提出させることにより債務者の保護を図ると同時に,貸金業者に対し,いわばその見返りとして,利息制限法の制限を超える利息ないし損害金の支払を受け得ることができるとしたものであるから,17条書面の交付があったといえるか否かを判断するに当たっても,この見地から検討する必要がある。
(2) そして,17条書面の交付があったといえるか否かを前記の見地から検討するときには,必ずしも1通の書面でなくても,数通の書面がそれぞれ補完し合って貸金業法17条所定の事項を記載しているときには,当該数通の書面が補完し合って17条書面として交付されるものであることを債務者が了解し得る状況で交付されている限りは,格別の書面であることだけを理由として,17条書面に当たらないというのは相当でない。
(3) (略)
(4) しかしながら,貸金業法が17条書面の交付を義務づけた前記の趣旨からすれば,このように当事者双方ともに弁済期限延長を当然のこととして予期していた場合には,弁済期限延長の場合の契約内容について,同条及び施行規則13条1項1号に定める,返済方式,返済期間及び返済回数,利息の計算方法,各回の返済期限及び返済金額をも明示する必要があるといわなければならず,これを欠く書面は,17条書面とは認められないというべきである。しかるところ,本件各取引においては,取引承諾書と借用証書をもってしてもこれらの事項は明示されているとはいえないから,17条書面の交付があったということはできない。

 [5] 大阪地裁判平成15.9.30判例タイムズ1146号283頁
(判決要旨)
  貸金業法17条所定の書面の交付として複数の書面によるものが有効とされた事例
(判決理由抜粋)
 「貸金業法は,貸金業者の事業に対し必要な規制を行うことにより,その業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図るための措置として,貸金業者に17条書面及び受取証書の交付を義務づけ,債務者が貸付けの内容又はこれに基づく支払の充当関係が不明確であることなどによって不利益を被ることがないようにしている。
 かかる貸金業法の趣旨にかんがみれば,債務者が貸金業者に対してした制限超過部分の支払いが貸金業法43条1項又は3項によって有効な利息又は損害金の債務の弁済とみなされるためには,17条書面の記載は,貸金業法の趣旨に合致するものでなければならず,具体的には,債務者が自己の債務の内容を正確に認識し,弁済計画の参考としうる程度の一義的,具体的,明確なものでなければならない。
 そして,17条書面に記載すべき事項が多数の書面に分散していて,どの書面が17条書面であるのかが不明瞭であったのでは,貸金業法の上記趣旨を損なうことになりかねないから,17条書面といえるためには,原則として1通の書面に貸金業法17条1項所定事項のすべてが記載されていなければならない。しかし,本件のように包括契約を締結してこれに定めた条件により個々の貸付けを行う契約においては,包括契約を締結する際に,貸金業法17条1項所定の事項中当該包括契約で特定しうる事項を記載した基礎となる書面を交付するとともに,個々の貸付けを行う際に,貸付けの金額,年月日及び包括契約の契約番号を記載した書面を交付し,これらの書面の記載を合わせて上記のような記載がなされており,かつ,基礎となる書面に記載のない貸金業法17条1項所定の事項が他の書面によって補完されていることが明確である場合には,貸金業法の上記趣旨が損なわれるとはいえないから,例外的に複数の書面を総合することによって17条書面の交付があったものと認めてよいと解される。


(3) 包括契約の場合と43条の適否
 [1] 秋田地裁判昭和63.3.14判例時報1290号131頁
(判決要旨)
  反復継続して貸付けを行うことが予定されている包括契約についての交付書面に,有効期間2年間,毎月の元本充当額5000円以上と記載されているにすぎない場合には,貸金業法17条1項6号にいう「返済期間及び返済回数」の記載がないと解すべきであり,同法43条のみなし弁済規定の適用を否定すべきであるとした事例
(判決理由抜粋)
 「包括契約において特定しうる事項とは,包括契約締結時には論理上記載不能なもの((略)貸付けの金額及び貸付けの年月日)を除く,法17条及び羈束3条が要求するすべての事項(略)を指すというべきであり,これを欠く書面は法及び規則の要件を充たさないといわなければならない。(略)
 そもそも法17条が返済期間及び返済回数についてその契約の内容を明らかにする書面の交付を要求し,規則13条もこれを受けて,各回の返済期日及び返済回数の記載を要求した趣旨は,(略)返済期間や返済回数,返済金額が弁済計画に深い関係があり,弁済の充当計算にもかかわるものであって,契約の重要な内容であり,これについて一義的かつ明確な定めをさせ,これを書面に記載させることにより後日の紛争を防止しようというのであるから,一方で毎月末日までの元本充当額が5000円以上であれば足りるかのような記載をしながら,片方で契約当事者(貸主)の一方的な申入れにより,借受人が予期しない時期に残額の一括返済を迫られる事態が生じるような定めをすることは,右立法の趣旨に反し許されないといわなければならない。」

 [2] 名古屋高裁判平成8.10.23金融法務事情1473号32頁,判例時報1600号103頁
(判決要旨)
1 貸付限度額その他貸付けの具体的条件を定めて反復継続して貸付けを行う旨の包括的な融資契約を締結した上で個々の貸付けを行う契約形態において,貸金業者が貸金業法43条1項,3項の適用を受けるために,同法17条1項により相手型に交付しなければならない契約書面の要件
2 貸付限度額その他貸付けの具体的条件を定めて反復継続して貸付けを行う旨の包括的な融資契約を締結した上で個々の貸付けを行う契約形態において,貸金業者が個々の契約の際に交付した契約書面が貸金業法17条の要求する内容を満たしていないとされた事例
(判決理由抜粋)
 「法は,貸金業者の事業に対し必要な規制を行うことにより,その業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図るための措置として,貸金業者は,貸付けに係る契約を締結したときは,遅滞なく,貸付けの利率,賠償額の予定に関する定めの内容等,法17条1項各号に掲げる事項についてその契約の内容を明らかにする書面(以下「契約書面」という。)をその相手方に交付しなければならないものとし(法17条1項),さらに,その貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは,その都度,直ちに受領金額及びその利息,賠償額の予定に基づく賠償金又は元本への充当額等,法18条1項各号に掲げる事項を記載した書面を当該弁済をした者に交付しなければならないものとして(法18条1項),債務者が貸付契約の内容又はこれに基づく支払の充当関係が不明確であることなどによって不利益を被ることがないよう貸金業者に契約書面及び受取証書の交付を義務づける反面,その義務が遵守された場合には,債務者が利息又は賠償として任意に支払った金銭の額が利息制限法1条1項又は4条1項に定める利息又は賠償額の予定の制限額を超えるときにおいても,これを有効な利息又は賠償金の債務の弁済とみなすこととしている(法43条1項,3項)。したがって,このような法の趣旨からすると,契約書面の記載事項は,債務者が自己の債務の内容を正確に認識し,弁済契約の参考としうる程度の一義的,具体的,明確なものでなければならないと解される。そして,貸付限度額その他貸付けの具体的条件を定めて反復継続して貸付けを行う旨の包括的な融資契約を締結した上,これに基づき個々の貸付けを行う契約形態において,包括的貸付契約及び個別的貸付契約の際にそれぞれ貸付契約に関する書面を交付するときには,少なくとも両書面を併せてみるときしれが法17条の要件を充足した書面(契約書面)である必要があるというべきである。
 そこで,本件についてみるに,本件包括契約書面では,前記一2の記載があるところ,包括契約を締結した上で,それに基づいて個々の貸付けが実行されるという契約形態が許容される以上,その記載内容はある程度包括的・抽象的になることは避けられないから,本件包括契約書の記載自体は法17条1項の趣旨に反するものとは直ちにいえないと解される。そこで,前記一3の個々の貸付契約の際に,被上告人から上告人に交付した前記一4の本件領収書につきみるに,同書面には,前記の各記載欄があり適宜記載されているところ,貸付金額が具体化した個々の貸付契約の段階において貸金業者から交付すべき契約書面には,右具体的な貸金額に基づく返済期間及び返済回数,各回の返済期日及び返済金額,弁済の充当関係などの記載が一義的,具体的,明確に行われる必要があるというべきであるが,契約書面である本件領収書の前記各記載は,本件包括契約書と併せてみても,到底右の記載の程度を充たしているということはできず,したがって,本件包括契約書及び本件領収書の記載により,債務者である上告人が,弁済計画を考えるための自己の債務内容を正確に認識することは困難であるというほかない。被上告人は,本件包括契約書と本件領収書の記載によれば,通常の理解能力のある借主であれば,個々の貸付けの際に,今後の具体的返済金額と各回の返済期日及び返済金額を理解することに何ら支障が生じることはないと主張するが,前示の法17条1項の趣旨に照らすと,債務者がその交付を受けた契約書面の記載につき,具体的借入金を当てはめ,その返済期間及び返済金額,並びに弁済充当関係などを時間をかけて計算しなければ理解できない程度の記載がされている前記契約書面は,法17条1項が要求する内容を満たしているとはいえないというべきである。」

 [3] 富山地裁判平成4.10.15判例時報1463号144頁
(判例理由抜粋)
 「貸付限度額その他貸付けの具体的条件を定めて反復継続して貸付けを行う旨の融資契約(包括契約)を締結し,この契約に定めた条件により個々の貸付けを行う契約形態においては,右包括契約を締結する際に,又は,個々の貸付けを行う際に,それぞれいかなる内容の書面を交付すべきかを法は明文では定めていないが,前記(注,貸金業法17,18,43条)立法趣旨に照らせば,少なくとも,包括契約を締結する際に,法17条1項所定の事項中当該包括契約で特定しうる事項をすべて記載した書面を交付し,個々の貸付けを行う際には貸付けの金額,貸付けの年月日及び包括契約の契約番号を記載した書面を交付するとともに,その両書面を併せて17条の要件を充足する必要があると言うべきである。
 (略) 法17条1項6号に定める返済期間とは,前記法の趣旨から考えると,抽象的な記載ではなく具体的な期間を教示することを要求しているものと解すべきである。なぜならば,法は,消費者保護の立場から,契約書面,受取書面として記載すべき事項を法定しているのであり,(略)記載しなかった貸主には法49条3号で30万円以下の罰金を科することとし,さらに法17条1項8号によれば大蔵省令に定める事項はすべて記載しなければならない旨規定しており,そこには何ら除外事由を設けていないことから,法は厳格に記載することを要求しているものと解されるし,実際にも返済期間は,債務者の返済計画に関連する事項であり,弁済の充当計算にもかかわるものであるから,これを一義的に定める必要があるからである。」
(本件では,基本契約書の記載と領収書の記載から返済期間が明確であるとはいえないとし,「法17条1項の要求する契約書面の交付があったとは認められない」とした。)


(4) 借換えの場合の17条書面と43条の適否
 [1] 簡易裁判所判事会同における消費者信用関係事件の処理に関する問題及び協議結果(消費者信用関係事件に関する執務資料(その2)143頁)
(協議問題) [44]
 借換えの際交付する法17条書面に,貸金業者が,(1)旧債務の元本・利息の別を明示せずこれを一括して貸付けの金額(法17条1項3号)を記載した場合や,(2)旧債務額と新たな貸付金額との合計額を一括して記載した場合に,法17条書面を交付したとして法43条1項の適用を認めてよいか。(58仙台,59高松)
(協議結果) 多数の意見は,次のとおりであった。
 法17条の趣旨は,契約が成立した場合に契約内容が書面で明らかにされ,かつ,相手方に交付されていないと後日になって当事者間に紛争が生じる可能性が大きいので,消費者保護の見地から業者に書面の作成・交付を義務づけることにあり,法43条1項において,業者が右の義務を尽くした場合に限り本来無効な制限超過利息の支払を有効とみなしているものである。そして,この法律の趣旨を受けて,貸金業者の監督官庁である大蔵省は局長通達のなかで「借換え等従前の貸付けの契約に基づく債務の残高を貸付けの金額とする契約を締結したときに交付する書面には,その債務の残高の内訳(元本・利息・賠償金の別)及び従前の貸付けの契約を特定するに足る事項を併記しなければならない」としている(通達第2の4,(2),ニ)。
 これらのことを前提にすれば,法17条書面には「貸付けの金額」として借換え前の元本充当関係の経過を明らかにする手掛かりを与える記載をすることを要するとするのが立法の趣旨に沿う。
 したがって,借換えがあった場合には,「貸付けの金額」として,借換えの金額(準消費貸借の額面額)の記載だけでは足りず,局長通達で定める旧債務の残高の内訳(元本・利息・賠償金の別)を記載する必要があると解すべきである。このように解すると,貸金業者が交付した法17条書面に右の記載が欠ける場合には,「貸付けの金額」の明示がないことになり,契約の内容を明らかにした書面を交付したことにならず,法43条1項の適用もない。

 [2] 札幌簡裁判昭和61.10.1 昭和62年民事裁判資料第17号消費者信用関係事件に関する執務資料(その二)212頁
(判決要旨)
 「いわゆる借換えの場合,現実に交付した金額のほかに従前の貸付契約の特定及びその残高の内訳を記載しなければ,17条1項3号の「貸付けの金額」を明らかにしたとは言えず,43条1項は適用されない。」

 [3] 大阪地裁判平成2.1.19判例タイムズ738号160頁
(判例理由抜粋)
 「いわゆる借換契約において,右借換の事実が記載されていない書面を交付した場合にも貸金業法43条1項の適用の要件としての同法17条1項所定の書面の交付があったといえるかどうかが問題となるが,この点については,借換の事実が記載されていない書面の交付では,同法17条1項所定の書面の交付があったとは認められないと解するのが相当である。即ち,
 まず,貸金業法17条及びこれを受けた規則13条が,契約内容を明らかにする書面の交付を要求しているのは,契約締結時に契約内容を明確にしてそれを書面に記載し,これを債務者に交付することによって,債務者がその契約内容,とりわけ自己の債務の内容を正確に認識できるようにして,債務者を保護し,また,貸金額や弁済の充当関係を明らかにして後日の紛争の発生を防止するためであると解される。更に,同法43条1項は,右書面が交付されたことを要件として,利息制限法の例外としてみなし弁済を定めているのであるから,その適用要件としての契約書面の内容については,厳格に解釈されなければならない。そして,いわゆる借換契約がなされた場合において,これによって発生する債務のうち準消費貸借契約に基づく部分の原因債務の金額及びその発生原因事実は,本件においても明らかなように,特に弁済の充当計算に関して問題となり,契約時において債務者の負担する債務の額に密接に関連する重要な事項であるといえる。また,借換契約において現実に交付された金額(消費貸借契約に基づく部分)も,債務者を保護し,後日の紛争を防止するためには,契約書面に明確に記載されなければならないものといえる。そして,昭和58年9月30日付大蔵省銀行局長通達「貸金業者の業務運営に関する基本事項について」第二の四(2)ニにも,借換契約の場合,契約書面に従前の貸付契約を特定するに足る事項を記載すべきこととしており,右通達は,前記の理由に鑑みると,貸金業法17条1項,規則13条の解釈,運用として妥当性を有するものといえる。」

 [4] 東京高裁判平成14.3.26判例時報1780号98頁,金融・商事判例1148号16頁,判例タイムズ1094号278頁
(判決要旨)
  借換えについて交付される貸金業法17条書面に,借換えの対象である利息債権の額の記載がないとして,貸金業法43条のみなし弁済の適用が適用が否定された事例
(判決理由抜粋)
 「控訴人は,被控訴人に対し,本件各貸付けにつき,17条書面を交付している旨主張する。しかし,原判決も指摘するとおり,貸金業法施行規則13条1項1号カによれば,従前の貸付に基づく債務の残高を貸付金額とする貸付について,17条書面には「従前の貸付けの契約に基づく債務の残高の内訳」を記載するよう求めているが,本件貸付取引のように,従前の貸付の残債務と現実に交付された金員の合計が貸借の目的とされる場合,これが,従前の債務の残高とその内訳(元本,利息,賠償金の別)及び現実の交付額をもってする借換えである旨の記載がなければ,貸金業法17条1項3号の「貸付けの金額」を明らかにしたとはいえないと解すべきである。本件では,控訴人は,借換えの対象である元本・利息を含めた従前の債務の残高とその内訳を記載していないものと認められるので,17条書面を交付したとはいえない。」


19 貸金業法43条の「任意に支払った」の意義
 [1] 最高裁二小判平成2.1.22民集44巻1号332頁,判例解説民事篇平成2年度44頁,判例タイムズ736号105頁,判例時報1349号58頁,別冊ジュリスト「消費者取引判例百選」bP35・158頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 貸金業の規制等に関する法律の「法の趣旨にかんがみれば,債務者が貸金業者に対してした金銭の支払が法43条1項又は3項によって有効な利息又は賠償金の債務の弁済とみなされるには,契約書面及び受取証書の記載が法の趣旨に合致するものでなければならないことはいうまでもないが,法43条1項にいう「債務者が利息として任意に支払った」及び同条3項にいう「債務者が賠償として任意に支払った」とは,債務者が利息の契約に基づく利息又は賠償額の予定に基づく賠償金の支払に充当されることを認識した上,自己の自由な意思によってこれらを支払ったことをいい,債務者において,その支払った金銭の額が利息制限法1条1項又は4条1項に定める利息又は賠償額の予定の制限額を超えていることあるいは当該超過部分の契約が無効であることまで認識していることを要しないと解するのが相当である。」

 [2] 福岡地裁小倉支部判平成10.2.26判例時報1657号102頁
(判決要旨)
 貸金業者が年金証書担保で貸し付け右年金から弁済を受け利息制限法超過の利息に充当した場合,債務者が「任意に支払った」とはいえない。
(判決理由抜粋)
 「2 (略)貸金業の規制等に関する法律43条1項にいう債務者が任意に支払ったこととは,利息制限法1条1項及び4条の制限額を超える利息又は賠償金の支払いを,有効な利息又は賠償金債務の弁済とみなすための要件の一つであって,債務者が利息の契約に基づく利息又は賠償額の予定に基づく賠償金の支払いに充当されることを認識した上,自己の自由な意思によってこれらを支払ったことをいうべきものである(最判平成2年1月22日民集44巻1号332頁)。
 「前記1の認定事実を踏まえると,原告は被告に年金証書等を預けた以後は,年金を自由に受領できず,被告がこれを自由に受領し,そのうちどれだけの金額を本件貸付金の元金,利息等のいずれに充当するかも被告が自由に行っていたものと認められるのであって,本件貸付金の利息及び損害金の弁済を,原告が任意に行っていたものとは認められない。
 3 したがって,原告の被告に対する本件貸付金の返済については,貸金業の規制等に関する法律43条1項及び3項は適用されず,原告の支払った弁済額は,利息制限法による規制の限度で利息及び損害金に充当され,その余は元金に充当されることとなる。」


20 貸金業法18条(受領)書面の交付と同法43条の適用

(1) 貸金業法18条2項(口座振込)の場合
 [1] 大阪簡裁判昭和61.5.19 昭和62年民事裁判資料第17号消費者信用関係事件に関する執務資料(その二)166頁
(判決要旨)
 「43条1項の適用を受けるためには,預金口座振込の場合においても(債務者から受取証書の交付は不要である旨申出があったとしても)18条1項の受取証書の交付を要する。」

 [2] 酒田簡裁判昭和61.10.13 昭和62年民事裁判資料第17号消費者信用関係事件に関する執務資料(その二)161頁
(判決要旨)
 「43条1項の適用を受けるためには,銀行振込の場合においても18条1項の受取証書の交付を要する。」

 [3] 武生簡裁判昭和61.11.26 昭和62年民事裁判資料第17号消費者信用関係事件に関する執務資料(その二)178頁
(判決要旨)
  前同旨

 [4] 京都地裁判昭和63.8.19判例時報1318号106頁
(判決要旨)
 「貸金業の規制等に関する法律第43条(いわゆる「みなし弁済」)の適用を受けるためには,その要件として債務者が預金口座振込の方法により弁済する場合(同法第18条第2項)においても貸金業者が同法第18条第1項所定の受取証書を交付することを要するものと解するのが相当である。」

 [5] 大阪高裁判平成元.3.14判例タイムズ705号175頁
(判決要旨)
1 貸金業法18条2項の貸主の預金口座に対する払込み方法による利息制限法の制限額を超過する利息の支払いがなされたときも,貸金業法43条1項2号により同法のみなし弁済の効力を受けるためには同法18条1項所定の受取証書の交付を必須の要件とする。
2 貸金業法18条2項の方法による利息,損害金の支払いにつき,貸金業者と借主との間で銀行作成発行の振込金受取証をもって同法18条所定の受取証書に代える旨の合意がなされたとしても,現実に右受取証書の交付がないので,同法43条のみなし弁済の効力を享有しなえないとされた事例
(判決理由抜粋)
 「控訴人は,本件貸付を行った際,両者間に,その債務の返済方法として,控訴人指定の銀行預金口座に,被控訴人が振り込んで支払うこととして,18条書面に代える旨の合意がなされたと主張する。しかしながら,貸金業法43条1項の規定の趣旨を考えるに,同法は,消費者保護の立場から,契約書面,受取書面として記載すべき事項を法定しているのであって,右法定の記載事項を記載しなかった貸主には同法49条3号で罰金を課するという態度をとっている。しかも,同法17条1項7号,18条1項6号によれば,右法定記載事項には大蔵省令に定める事項もすべて記載しなければならない旨規定されていて,そこにはいかなる除外事由も設けられていない。同法は,このように貸金業者に貸付における厳格な手続の履践を要求したうえで,右厳格な手続を履践した業者につき,同法43条1項の要件を具備することにより,本来あくまでも利息制限法上は無効な弁済を,例外的に有効な弁済とみなすという特典を与えたものと解することができる。そのように解さないかぎり,貸金業者は,貸付時の優越的地位を利用して,一層簡易な書面の作成交付等の方法を18条書面の作成交付に代える旨の合意を強要することが可能となり,同条が規定された意義は失われてしまうと言うべきである。さらに,同法18条が受取証書の作成交付を要求する理由は,債務者が支払を行ったことを証明する書面の交付を目的とすることに止まらず,債務者に対して,いかなる債務のいかなる費目に当該支払分が充当されるかを明確に認識させることにあることは,同条所定の記載事項から明らかである。このように解するとき43条1項は強行法規と証すべく,また,文理上の18条2項の場合にふれていない。そうすると,同法43条1項はあくまでも同条所定の要件をすべて厳格に履践することによって初めて適用されると解すべきであって,18条書面の作成交付は同法43条1項適用の必須要件であると言うべく,したがって,控訴人主張の振込金受取証は,単に当該支払分の支払の事実を証するにすぎず,18条書面の作成交付に代わり得ず,また同法18条2項の規定は,同法43条の適用について,同法18条2項による弁済がなされたときに,18条書面の交付を擬制するものではないと言うべきである。以上の諸点を考慮すると控訴人主張の合意は仮に成立していたとしても,右合意によって,前記Cの要件の欠缺を救済することはできない。」

 [6] 名古屋地裁判平成7.5.30判例タイムズ897号2134頁(14Aの判例)
(判決要旨)
 「利息の支払が銀行振込の方法でされた場合であっても,振込を受ける都度,直ちに受取証書を交付しなければ,貸金業法43条は適用されない。」
(判決理由抜粋)
 「貸金業法上,貸金業者が右みなし弁済金規定の適用を受けるためには,同法18条1項所定の受取証書を支払の都度直ちに交付しなければならないとされているところ(貸金業法43条),本件各利息の支払につき,原告が被告に対し,右受取証書を交付または送付していないことは当事者間に争いがなく,本件のように利息金の支払が銀行振込の方法でされた場合も,貸金業者が右規定の適用を受けるためには,右振込を受ける都度,直ちに右受取証書を交付または送付しなければならないというべきであるから,本件各利息の支払につき右規定は適用されないというほかない。」

 [7] 釧路地裁判平成8.5.14判例時報1620号132頁
(判決要旨)
 「クレジットカード利用契約に基づくキャッシング取引について貸金業法18条2項所定の書面の交付を欠いた以上同法43条の適用はない。」
(判決理由抜粋)
 「貸金業法18条所定の受取証書の交付は,その記載事項からみて,単に債務者の支払を証明するためのみならず,いかなる債務のいかなる費目に当該支払分が充当されるかを債務者に明確に認識させることを目的とするものであるから,利息制限法上は本来無効な弁済をあくまでも例外的に有効な弁済とみなす同法43条の適用については,同法及び同条項の前記性格を考慮すると,その要件を厳格に解すべきであり,文理上も同法18条2項の場合について,同条の書面の交付を必要としない旨の明確な規定を置いていない以上,同法43条の適用の要件としては,同法18条2項の場合においても,同条の書面の交付を要すると解すべきである。」

 [8] 東京高裁判平成9.11.13判例タイムズ995号171頁,金融法務事情1544号66頁
(判決要旨)
 受取証書の送付を要しない旨の申出がされたため,これを交付しなかったにすぎない場合には,同法43条1項の適用の余地はない。
(判決理由抜粋)
 「1 貸金業法43条1項は,債務者が利息として任意に支払った金員の額が利息制限法に定める利息の制限額を超える場合において,その支払が,利息制限法の規定にかかわらず,有効な利息の債務の弁済とみなされる場合を,同法18条1項の規定により同項に規定する書面を交付した場合における支払に限定しており,特に除外事由をもうけていないところ,その趣旨は,貸金業法が,貸金業者に貸付における厳格な手続の履践を要求した上で,右厳格な手続を履践した業者につき,同法43条1項所定の要件を具備することにより,本来あくまでも利息制限法上無効な弁済を,例外的に有効な弁済とみなすという特典を与えたものであり,また,同法18条1項所定の書面を要求した趣旨も,単なる弁済の事実のみならず,弁済額の元利への充当関係までも明らかにすることを目的とするものであると解されることからすると,同法43条1項は,同条所定の要件をすべて厳格に履践することによって初めて適用されると解すべきである。
 したがって,本件のように弁済が銀行振込みの方法によりされた場合にも,貸金業者が同法43条1項の適用を受けるためには,振込みの都度,直ちに同法18条1項所定の書面を弁済した者に交付することを要すると解するのが相当である。そうすると,本件においては,鈴木の弁済について,同法43条1項の適用はないというべきである。
 2 これに対し,控訴人は,同法18条2項は,銀行振込みの場合等には,弁済者の請求があった場合に限って,同法18条1項の規定を適用すると定めており,弁済者である鈴木から同項所定の書面の交付請求がない本件においては,同項の適用はそもそもなく,同項所定の書面の交付がなくとも,同法43条1項の適用があると主張する。
 しかしながら,同法18条2項は,同条1項所定の書面を弁済者が請求しない限り,これを交付しなくても貸金業者は刑罰を科されないことを定めているにすぎず,同条1項所定の書面の交付がなくても,同法43条1項の規定が適用されることまでを定めているものではなく,同法43条1項も同法18条2項については触れていないのであって,同法43条1項の趣旨が前記のとおりであることを併せ考慮すると,控訴人の右主張は採用できないというべきである。
 3 また,控訴人は,鈴木は予め受取証書の送付を要しない旨を申し出ており,このように債務者が受取証書の交付を積極的に拒否していた場合にも,貸金業法18条1項所定の書面を交付する必要があるとすれば,貸金業者がみなし弁済の適用を受けるための措置を講じる余地がなくなり,また債務者の意思に反する受取証書の交付義務を負うことにもなって不当であると主張する。
 しかしながら,同法43条1項の趣旨は前記のとおりであり,同法43条1項は,同条所定の要件をすべて厳格に履践することによって初めて適用されるものであって,当事者の合意やその一方の申出により,この要件を緩和することはできないと解すべきである。そのように解さないと,貸金業者は,貸付時の優越的地位を利用して,債務者に,一層簡易な書面の作成交付等の方法を同法18条1項所定の書面の作成交付に代える旨の合意や,右書面の受領拒絶の申出を強要することが可能となり,同条が規定された意義は失われてしまうことになる。
 したがって,債務者の申出に合理的な理由があり,その申入れが真摯な意思に基づく場合で,貸金業者も同法18条1項所定の書面の交付のために尽くすべき手段を尽くしたにもかかわらず,これを交付できなかった等の場合であれば格別,本件のように,単に鈴木から予め受取証書の送付を要しない旨の申出がされたため,これを交付しなかったにすぎない場合には,同法43条1項の適用の余地はないというべきであるから,控訴人の右主張は採用できない。」

 [9] 最高裁一小判決平成11.1.21民集53.1.98,判例解説民事篇平成11年度39頁,金融法務事情1544号62頁,金融・商事判例1064号11頁,判例時報1667号68頁,判例タイムズ995号71頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 「貸金業の規制等に関する法律43条1項によるみなし弁済の効果を生じるためには,債務者の利息の支払が貸金業者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってされた場合であっても,特段の事情のない限り,貸金業者は,右の払込みを受けたことを確認した都度,直ちに,同法18条1項に規定する書面を債務者に交付しなければならない。」
(判決理由抜粋)
 「貸金業者との間の金銭消費貸借上の利息の契約に基づき,債務者が利息として任意に支払った金銭の額が,利息制限法1条1項に定める制限額を超える場合において,右超過部分の支払が貸金業の規制等に関する法律43条1項によって有効な利息の債務の弁済とみなされるためには,右の支払が貸金業者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってされたときであっても,特段の事情のない限り,貸金業者は,右の払込みを受けたことを確認した都度,直ちに,同法18条1項に規定する書面(以下「受取証書」という。)を債務者に交付しなければならないと解するのが相当である。けだし,同法43条1項2号は,受取証書の交付について何らの除外事由を設けておらず,また,債務者は,受取証書の交付を受けることによって,払い込んだ金銭の利息,元本等への充当関係を初めて具体的に把握することができるからである。右と同旨の原審の判断は,正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。」

 [10] 東京地裁判平成13.9.27判例タイムズ1116号160頁
(判決理由抜粋)
 「貸金業法43条1項が適用されるためには,(1)貸金業者が,消費貸借契約締結の際,債務者に対し,17条書面を交付していること,(2)債務者が,貸金業者に対し,契約に基づき債務の弁済をする際,貸金業者が,債務者に対し,直ちに,18条受取証書を交付していること,(3)債務者が,利息として任意に支払っていることが必要である。そして,18条受取証書については,利息支払が貸金業者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってなされたときでも,特段の事情のない限り,貸金業者は,払込みを受けたことを確認した都度,直ちに18条受取証書を債務者に交付しなければならない(最判平成11年1月21日民集53巻1号98頁)。なぜなら,債務者は,18条受取証書の交付を受けることによってはじめて払い込んだ金銭の利息,元本等への充当関係を具体的に把握することができるからである。また,貸金業法は,貸付等における厳格な手続を履践した貸金業者につき,本来利息制限法上無効である弁済を例外的に有効な弁済とみなすとの特典を与えたものと解するべきであるから,当事者の合意やその一方の申出により要件を緩和することはできないと解するのが相当である。」
*21(2)に同一判例あり

 [11] 大阪地裁判平成15.9.30判例タイムズ1146号283頁
(判決要旨)
 貸金業法18条所定の書面の交付がなくとも,利息制限法所定の制限を超える部分の支払が貸金業法43条によって有効な債務の弁済とみなされる特段の事情の有無について判断した事例
(判決理由抜粋)
 「貸金業法43条1項2号は受取証書の交付について何らの除外事由を設けていないこと及び債務者は受取証書の交付を受けることによって,振り替えられた金銭の元利金等への充当関係を初めて具体的に把握することができることからすれば,貸金業者との間の金銭消費貸借上の利息等の契約に基づき,債務者が利息等として任意に支払った金銭の額が,利息制限法所定の制限額を超える場合において,制限超過部分の支払が貸金業法43条によって有効な利息等の債務の弁済とみなされるためには,上記の支払が債務者の預金又は貯金の口座から振替えによってされたときであっても,特段の事情のない限り,貸金業者は,上記の振替えを受けたことを確認した都度,直ちに,受取証書を債務者に交付しなければならないと解される(最判平成11年1月21日民集53巻1号98頁参照)。
 (略)
 もっとも,前記特段の事情が認められるときには,受取証書の交付がなくても,貸金業法43条が例外的に適用される余地があるが,同条の適用は,前記のとおり,厳格な要件を満たす場合に限定されるべきであるから,前記特段の事情も,貸金業者が受取証書の交付のために尽くすべき手段をすべて尽くしている場合及びこれに類する場合に限られるものというべきである。
 本件において,被告は,原告名義の預金口座から口座振替を受けたことを確認した都度,直ちに,受取証書を交付しておらず,受取証書の交付のために尽くすべき手段をすべて尽くしているわけでもないから,前記特段の事情も認められない。」

 [12] 最高裁二小判平成16.2.20平成14年(受)第912号 不当利得金返還請求事件(最高裁HP)判例タイムズ1147号107頁,金融法務事情1707号98頁,判例時報1853号28頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 貸金業者が,貸金の弁済を受ける前に,振込用紙と一体となった貸金業法18条1項所定の事項が記載されている書面を債務者に交付し,債務者が同書面を利用して利息の払込みをしたとしても,同法43条1項の適用要件である同法18条1項所定の要件を具備した書面の交付があったということはできない。
(判決理由抜粋)
 「法43条1項は,貸金業者が業として行う金銭消費貸借上の利息の契約に基づき,債務者が利息として任意に支払った金銭の額が,利息の制限額を超え,利息制限法上,その超過部分につき,その契約が無効とされる場合において,貸金業者が,貸金業に係る業務規制として定められた法17条1項及び18条1項所定の各要件を具備した各書面を交付する義務を遵守しているときには,利息制限法1条1項の規定にかかわらず,その支払を有効な利息の債務の弁済とみなす旨を定めている。貸金業者の業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として,貸金業に対する必要な規制等を定める法の趣旨,目的(法1条)と,上記業務規制に違反した場合の罰則(平成15年法律第136号による改正前の法49条3号)が設けられていること等にかんがみると,法43条1項の規定の適用要件については,これを厳格に解釈すべきものである。
 また,利息の制限額を超える金銭の支払が貸金業者の預金口座に対する払込みによってされたときであっても,特段の事情のない限り,法18条1項の規定に従い,貸金業者は,この払込みを受けたことを確認した都度,直ちに,18条書面を債務者に交付しなければならないと解すべきである(最高裁平成8年(オ)第250号同11年1月21日第一小法廷判決・民集53巻1号98頁参照)。
 そして,18条書面は,弁済を受けた都度,直ちに交付することが義務付けられていることに照らすと,貸金業者が弁済を受ける前にその弁済があった場合の法18条1項所定の事項が記載されている書面を債務者に交付したとしても,これをもって法18条1項所定の要件を具備した書面の交付があったということはできない。したがって,本件各請求書のように,その返済期日の弁済があった場合の法18条1項所定の事項が記載されている書面で貸金業者の銀行口座への振込用紙と一体となったものが返済期日前に債務者に交付され,債務者がこの書面を利用して貸金業者の銀行口座に対する払込みの方法によって利息の支払をしたとしても,法18条1項所定の要件を具備した書面の交付があって法43条1項の規定の適用要件を満たすものということはできないし,同項の適用を肯定すべき特段の事情があるということもできない。
 そうすると,これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。 」

 [13] 最高裁二小判平成16.2.20平成15年(オ)第386号,平成15年(受)第390号 不当利得返還請求事件(最高裁HP)判例タイムズ1147号101頁,金融法務事情1707号98頁,判例時報1853号32頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
3 貸金業法43条1項の適用要件である同法18条1項所定の事項を記載した書面の債務者に対する交付は,弁済の直後にしなければならない。
(判決理由抜粋)
 「(3) 法18条1項は,貸金業者が,貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは,その都度,直ちに,同項所定の事項を記載した書面(以下「18条書面」という。)をその弁済をした者に交付しなければならない旨を定めている。  本件各弁済は銀行振込みの方法によってされているが,利息の制限額を超える金銭の支払が貸金業者の預金口座に対する払込みによってされたときであっても,特段の事情のない限り,法18条1項の規定に従い,貸金業者は,この払込みを受けたことを確認した都度,直ちに,18条書面を債務者に交付しなければならないと解すべきである(最高裁平成8年(オ)第250号同11年1月21日第一小法廷判決・民集53巻1号98頁参照)。
 そして,17条書面の交付の場合とは異なり,18条書面は弁済の都度,直ちに交付することを義務付けられているのであるから,18条書面の交付は弁済の直後にしなければならないものと解すべきである。
 前記のとおり,上告人による本件各弁済の日から20日余り経過した後に,被上告人から上告人に送付された本件各取引明細書には,前回の支払についての充当関係が記載されているものがあるが,このような,支払がされてから20日余り経過した後にされた本件各取引明細書の交付をもって,弁済の直後に18条書面の交付がされたものとみることはできない(なお,前記事実関係によれば,本件において,その支払について法43条1項の規定の適用を肯定するに足りる特段の事情が存するということはできない。)。これと異なる原審の前記3(3)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」

 [14] 最高裁二小判平成16.7.9平成16年(オ)第424号、平成16年(受)第425号 債務不存在確認,貸金等請求事件(最高裁HP)
(判決要旨)
2 貸金業法18条書面の交付は弁済の直後にしなければならず,弁済を受けてから7ないし10日以上後に領収書が交付された場合,弁済の直後に18条書面を交付したものとみることはできない。
(判決理由抜粋)
 「(2) 法18条1項は,貸金業者が,貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは,その都度,直ちに,18条書面をその弁済をした者に交付しなければならない旨を定めている。
 そして,17条書面の交付の場合とは異なり,18条書面は弁済の都度,直ちに交付することが義務付けられているのであるから,18条書面の交付は弁済の直後にしなければならないものと解すべきである(前掲最高裁平成16年2月20日第二小法廷判決参照)。
 前記のとおり,被上告人は,前記各弁済を受けてから7ないし10日以上後に上告人株式会社Y1に対して本件各領収書を交付しているが,これをもって,上記各弁済の直後に18条書面を交付したものとみることはできない(なお,前記事実関係によれば,本件において,上記各弁済について法43条1項の規定の適用を肯定するに足りる特段の事情が存するということはできない。)。したがって,貸付け31から33までについても,法43条1項の規定の適用要件を欠くものというべきである。これと異なる原審の前記3(2)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。 」


(2)ATM(現金自動貸付返済機)を利用して返済した場合
(1) 消極
 [1] 東京地裁判平成9.2.21判例タイムズ953号280頁
,判例時報1624号116頁
(判決要旨)
 「1 (略)「利息として」又は「賠償として」の支払については,債務者が利息の契約に基づく利息又は賠償額の予定に基づく賠償金の支払に充当されることを認識していることを要するが,右認識があれば,「利息として」又は「賠償として」支払ったと認め得るのであって,債務者においてその支払った金額が利息制限法所定の利率又は賠償額の予定の制限を超過していることや当該超過部分の契約が無効であることまでを認識している必要はないと解すべきである(最高裁判所平成2年1月22日判決)。
 2 ところで,(略)ATMを利用した返済については,利用者が任意の金員をATMに投入し,ATMに収納された後で「ATMご利用明細書(領収書)」と題する書面が印字されて発行される。この書面中には,右支払において充当された利息,損害金及び元金の金額が各別に印字され,これにより当該ATM利用者が当該支払金が利息,損害金及び元金にどのように充当されたかが認識できるようになっている。しかし,ATM利用者は,金員の投入を完了し,ATMによって収受された後まで,当該支払によって利息,損害金及び元金に充当される具体的金額を示されることはないのである。
 右のようなATMによる返済の状況によれば,原告らは,被告に対して支払をする際に,利息や損害金の具体的な額を知ることができないままに支払を完了してしまい,利息又は損害金への現実の充当額は事後的に認識し得るにとどまるのであるから,これをもって,原告らの支払金が,利息や損害金に充当されることについての認識があったと認めることはできない。(略)
 貸金業者の店頭において債務者が返済を行う際には,実際上,債務者の金員の交付と同法18条所定の書面の交付がほぼ同時に行われると考えられる(民法486条。貸金業法18条は,右による受取証書の引換給付を受ける権利を否定したものとは解し得ない)し,債務者は,その際,貸金業者に対し,充当されるべき利息,損害金及び元金の金額を尋ねることも容易である。したがって,返済行為の終了までに債務者がその利息等への充当額に納得できない場合,直ちに異議を申し出てその支払を拒絶ないし撤回することも可能であるから,債務者による当該支払金が約定による利息又は損害金に充当されることを認識してされたとみる余地があるということができる。これに対し,ATMによる返済の場合,その利用者は,通常の方法によっては事前に約定による利息や損害金の金額を知ることはできず,また,いったん金員が収納されて利用明細書が発行された段階では,通常の方法では返済を撤回するなどして投入した金員を回収することができないのである。そうすると,ATMによる返済の場合,店頭での返済の場合と異なり,債務者が約定による利息や損害金の具体的金額を認識して支払ったと見る余地はないといわざるを得ないのである。
 (三) また,本件のように,貸金業者が最初に包括的な融資契約書を作成している場合,当初の包括契約書には,具体的な貸付についてその支払方法,利息及び損害金の割合,支払方法等についての計算式が明示されている(本件でも同様である)から,債務者としては,ATMを利用して支払う金員が,約定による利息や損害金として具体的にどのくらい充当されるかを算出することは一応可能であるということができる。  しかし,貸付限度額を決め,その範囲内で何回でも貸付をしたり,支払を受けたりする貸付形態の場合,貸付金額がその都度変動することも合って,右包括契約書の記載から具体的な利息,損害金及び元金に対する充当額を算出するのは相当に困難であり,残元金及び前回支払日を明らかにした上,複雑な計算を要することになる。とりわけ,本件のようないわゆるリボルビング払いの場合には,困難さが増すということができる。前述のとおり,債務者が店頭において返済をする場合には,支払とほぼ同時に充当されるべき利息,損害金及び元金の金額を知ることができ,その場で支払の拒絶ないし撤回をする余地があるのと異なり,ATMを利用した場合においては,その場で利息又は損害金の額を問い質すことができず,いったん金員が収納されて利用明細書が発行された段階では,返済を撤回することはできないのであるから,債務者自身が,そのような計算をして,あらかじめ当該支払金に占める約定による利息や損害金の額を認識しておく必要があるが,それを要求するのは,債務者に酷であって相当ではない(他方,貸金業者においては,右計算は当然行っていることであり,ATMによる処理においても,債務者に対し,投入される(又は投入された)金員が利息,損害金及び元金に充当される額を,当該取引が終了する前に明示することは十分に可能であると考えられる)。
 4 以上によれば,原告らがATMによってした返済については,その支払を行った際,当該支払金を約定の利息や損害金として支払う認識があったとはいえず,利息の支払が任意であったと認めることはできないというべきである。」

 [2] 東京高裁判平成9.11.17金融・商事判例1047号3頁(上記[1]の判決の控訴審判決で,控訴棄却,確定),金融法務事情1544号67頁
(判決理由抜粋)
 「控訴人は,控訴人の設置しているATMによる返済の場合には返済後に受取証書を確認して直ちに返済の撤回を申し出ることが可能な態勢になっていたから,店頭窓口において返済し受取証書を受領した場合と同様に利息や損害金の具体的金額を認識して支払ったものと言うべきであると主張するので,この点について判断する。
 前示のように「利息として」又は「賠償として」支払ったと言うためには,債務者が利息の契約に基づく利息又は賠償額の予定に基づく損害金の支払に充当されることを認識した上で支払うことを要するものであり,そのように認識した上で支払ったと言うためには,債務者において,ATMにより返済をすれば約定に従い機械的に利息,損害金,元金に充当されるという抽象的な認識を有するのみでは足りず,具体的に一定の利息,損害金,元金に充当されるという認識を有することが必要である。その意味で,控訴人の採用しているATMのように支払前に利息,損害金,元本への充当予定額が示されず,支払完了後に受取証書が機械的に発行されるという場合には,その受取証書において充当額が記載されているとしても,それは支払完了後に控訴人が債務者に対して行った充当関係の告知であって,債務者がそれに対して異議を述べなかったとしても,それだけでは債務者において「利息として」又は「賠償として」支払ったとすることはできないのであって,「利息として」又は「賠償として」支払ったと言うためには,受取証書に記載される利息,損害金の金額が債務者の返済行為完了前に債務者において充当予定額として認識できるようになっていなければならない。
2 次に,控訴人は,控訴人の設置しているATMによる返済の場合には返済後に受取証書を確認して直ちに返済の撤回を申し出ることが可能な態勢になっていたから,店頭窓口において返済をし受取証書を受領した場合と同様に利息や損害金の具体的金額を認識して支払ったものと言うべきであると主張するので,この点について判断する。
 前示のように利息又は損害金として支払ったと言うためには,返済行為の完了前に債務者において利息,損害金の充当予定額を認識していなければならないのであるが,店頭窓口において担当従業員に支払金を交付すると同時にその者から受取証書の交付を受ける場合にはその現金が当該担当者の手元にあっても未だ完全な占有移転が行われていない状態にあるといえるから,その場で即座に返済の撤回を申し出て交付した金員の全部又は一部の返還を受け,あるいは充当の指定をするということも可能であり,したがって右のような状態で受取証書の交付を受けた場合には債務者において返済行為の完了前に充当予定の利息,損害金の額を認識したと見ることもでき,担当従業員が受領した金員の収納手続をした後であっても,当該担当従業員と債務者がその場に残っていてほぼ同様の撤回が可能な場合には,同じく返済行為完了前に利息,損害金の額を認識して支払ったと見る余地があると言えよう。
 しかし,控訴人の設置しているATMの場合には,それが有人店舗に置かれ,かつ,店頭窓口の利用が可能な場合であっても,債務者が返済による充当処理の結果を明示した受取証書が機械的に発行されるのであるから,受取証書が発行された時点で返済金の占有は完全に控訴人に移転し返済行為は完了しているというべきであり,発行された受取証書を見た後即座に店頭窓口に移行して返済の撤回を求め,あるいはインターホンで担当従業員を呼び出して対応を求めても,その場合には当該担当者が返済の撤回を求める者からその者が実際に返済をしたかどうか等について新たに事情を聴取する等して対応しなければならないことになるから,店頭窓口における返済と同視することはできない。
 また,控訴人は控訴人のATMについては返済の撤回申出に適切に対応できる態勢になっていたと主張するが,仮に控訴人において債務者からATMによる返済の撤回の申入れがあった場合にその申入れどおりの撤回に応ずる態勢をとっていたとしても,控訴人においてそのことをATMの利用者に知らしめるべき措置をとっていたことについては何ら主張立証がないから(受取証書における「不明な点がございましたら,係員までお問い合わせ下さい。」といった記載があることによっては,返済の撤回に応じるとの表示がされているとは言えない。),実際にも,店頭窓口において返済をし受取証書を受領した場合と同視すべき状況にあったとるすことはできない。」

(2) 積極
 ○ 東京高裁判平成11.5.27判例時報1679号37頁
(原判決取消,請求認容,確定)
(判決要旨)
 「ATMを利用して毎月の支払をした際には具体的利息充当額を直ちに認識することは不可能であったとしても,本件貸金は,一回の貸付であり,交付され口頭での説明も受けた貸付契約説明書及び金銭消費貸借契約証書には,元金の分割支払に伴う利息の具体的計算方法が明記され,交付された償還表には,予定どおり分割支払をした場合の毎月の利息額が明記され,しかも,支払金額が償還表よりも多い場合は,支払超過部分が元金に充当され早期に返済が終わることについても説明を受けていたのであるから,毎月の支払によっていくらの利息を支払うことになるのかについて償還表の記載を目安として自ら計算して把握することは容易であったということができ,また,判示の事情がある場合には,自己の自由な意思によって利息の支払を行ったものということができる。」
(判決理由抜粋)
 「貸金業法43条1項にいう「債務者が利息として任意に支払った」とは,債務者が利息の契約に基づく利息の支払に充当されることを認識した上,自己の自由な意思によってこれらを支払ったことをいい,債務者において,その支払った金銭の額が利息制限法1条1項に定める利息の制限額を超えていることあるいは当該超過部分の契約が無効であることまで認識していることを要しないと解される(最高裁平成2年1月22日第2小法廷判決・民集44巻1号332頁)。
 前記1で認定した事実によれば,乙山は,本件貸金について銀行設置のATMを利用して毎月の支払をした際に,その利用明細書によっては,その支払による具体的利息充当額を直ちに認識することは不可能であった。しかし,本件貸金は,貸付金額を400万円とする一回の貸付であり,控訴人から交付され口頭での説明も受けた貸付契約説明書及び乙山自らが記載した金銭消費貸借契約証書には,400万円の元金の分割支払に伴う利息の具体的計算方法が明記され,控訴人から交付された償還表には,予定どおり分割支払をした場合の毎月の利息額が明記されていたのであって,しかも,支払金額が償還表より多い場合は,支払超過部分が元金に充当され早期に返済が終わることについても説明を受けていたのであるから,乙山としては,毎月の支払によっていくらの利息を支払うことになるのかについて償還表の記載を目安として自ら計算して把握することは容易であったということができる。そして,乙山は,毎月の支払をした間もない時期に,その都度,控訴人から,利率,利息計算の期間,利息充当額,元金充当額,弁済後の残存元金額等が明記され,「充当金額に異存のある場合は至急ご連絡ください。」との注意書きのある領収書兼利用明細書の郵送を受けていたものであり,それにもかかわらず,平成9年3月から同年12月までの間に一度も異議を述べることなく10回にわたる支払を継続したものであるから,毎月支払う額の中から利息の支払に充当される部分があることを当然に認識しながらその支払を継続したものということができる。
 そうすると,乙山としては,毎月の支払の時点で直ちに具体的利息充当額を把握できなかったとしても,その支払額の中から契約で定められた利率及び計算方法により算出される額が利息の支払に充当されることを認識しながら支払を行っていたものということができ,自己の自由な意思によって利息の支払を行ったものということができる。」


(3) 償還表により返済された場合
 ○ 東京高裁判平成14.3.26判例時報1780号98頁,判例タイムズ1094号278頁
(判決要旨)
  貸金業者が貸付けの当初に償還表を交付しているが,貸金の返済の都度貸金業法18条書面を交付していない場合と,同法43条みなし弁済の成否(消極)
(判決理由抜粋)
 「控訴人は,貸付けの際に被控訴人に交付した償還表をもって18条書面に当たる旨主張する。しかし,貸金業法18条は,弁済を受けたときはその都度書面を交付することを要件としている。償還表は,あくまで約定の返済方法に従って返済がされた場合の充当関係を明らかにしているにすぎない。したがって,上記の貸金業法18条の趣旨からすると,貸付けの当初に償還表が交付され,以後,被控訴人の弁済が銀行振込みの方法によってされていたとしても,これをもって貸金業法18条所定の要件を満たしたことにはならないというべきである。また,償還表を交付していることをもって18条書面を交付しなかったことにつき特段の事情があるということもできない。」


(4) 受取証書の交付時期と貸金業法43条の適否
 [1] 横浜地裁判平成8.2.8NBL616号52頁(判例未登載=大川雅弘「貸金業法43条(みなし弁済)の功罪とその考察(上)に掲載)
(判決要旨)
 口座振込による返済の場合,受取証書は,原則的に入金日の翌日に交付(送付)されなければ,制限超過利息のみなし弁済は認められない。
(判決理由抜粋)
 「制限超過利息のみなし弁済(貸金業法43条)がみとめられるためには,受取証書が弁済を受けて「直ちに」交付される必要があるところ,「直ちに」とは通常弁済と同時を意味するが,乙第12号証の1ないし14,第13号証の1ないし67,弁論の全趣旨によれば,右弁済はすべて銀行振込によっていることが認められるから,この場合に「直ちに」をいかに解するかが問題になる。この場合「直ちに」とは,口座への入金を知りうる時点と解される。そして口座への入金は,銀行の休業日にあたらないかぎり入金日の翌日には知りうると考えられるから,受取証書は原則的に入金日の翌日に交付(送付)されなければ,制限超過利息のみなし弁済はされないというべきである(ちなみに,弁済日と受取証書の交付日の間がもっとも短い2日間である1992年10月5日の弁済につき,同日は月曜日で翌日は銀行の休業日ではない。)。よって,本件において制限超過利息のみなし弁済の規定の適用はなく,本件消費貸借上の元本は平成5年5月6日の時点で,879万7623円であったといえる。」

 [2] 東京高裁判平成9.6.10判例タイムズ966号243頁
(判決要旨)
 銀行振込による弁済の場合,入金を通常知りうる時点で,その都度,直ちに所定の受領証書を交付ないし送付しない限り,43条1項の適用はない。
(判決理由抜粋)
 「貸金業法18条2項の規定は,口座振込の方法による弁済の場合,弁済者が同条1項の書面交付を請求しない限り,これを交付しなくとも刑罰を科されないというにとどまり,右書面を交付しなくとも,みなし弁済規定適用の利益を享受することができるとまで規定しているものではない。
 そして,同法43条1項2号は,前記書面の交付を同法43条1項適用のための積極要件として規定しており,これについて何らの除外事由を設けていない。また,弁済直後に受取証書が交付されてはじめて,債務者はこれを手掛かりに法律上負うべき債務の内容を具体的に把握することができ,債権者に対する権利主張が可能になるものであるところ,そのような機会があったにもかかわらず債務者から任意に弁済がされるところに,みなし弁済を肯定する実質的根拠があるものと考えられる。以上の事柄を考慮すると,預金口座への入金があった場合において,貸金業者が利息制限法所定の利率を超過する支払いにつき,貸金業法43条1項(3項)の規定の適用を受けるためには,預金口座への入金を通常知り得る時点で,その都度,直ちに所定の受取証書を債務者に交付ないし送付することを要するのであって,右交付等のない限り,右規定の適用を受けることはできないものと解すべきである。」
(なお,本件の判旨は,「債務整理の依頼を受けた弁護士からされた受任通知,協力依頼に誠実に対応しないまま公正証書に基づいて債務者の給料債権を差し押さえた貸金業者の行為が不法行為を構成するとされた事例」として紹介されている判決例であるが,上記のとおり理由中で銀行振込における受領証書についても判断を示した。)

 [3] 東京地裁判平成10.5.28金融法務事情1544号74頁
(判決要旨)
 「受取証書が弁済の約1か月後に交付されても,判示の事情の下では,貸金業法43条の適用を認めることができる。」
(判決理由抜粋)
 「被告らは,取引明細書が弁済の約1か月後に被告会社に送付されており,弁済の都度直ちに交付されたものといえないから,本件において貸金業法43条の適用はない旨主張するので,この点について検討する。
 貸金業法18条1項4号は,貸金業者に対し,弁済をうけたときは,その都度直ちに「受領金額及びその利息,賠償額の予定に基づく賠償金又は元本への充当額を記載した書面」を交付することを義務付けており,貸金業者の店頭において債務者が弁済を行う際には,実際上,債務者の金員の交付と同法18条所定の書面の交付がほぼ同時に行われていると考えられる。しかし,本件においては,被告会社の弁済は振込送金の方法によって行われていたのであり,原告が被告会社による振込送金を確認して同法18条所定の書面を送付するまでの間,相当の日数を要することは当然予定されることである。また,同法43条の適用要件として見た場合,同法18条所定の書面を弁済の都度直ちに交付することの主たる意義は,弁済の際,債務者に支払金が約定による利息又は損害金に充当されることを認識させることにあると考えられるところ,本件においては,取引明細書に翌月5日までに支払うべき利息等の金額(計算期間,契約番号,実質年利)が予め明示されており,債務者は,利息等及び元本の充当関係を事前に認識できる。被告会社は,取引明細書により,予め利息等及び元本の充当関係を認識した上で,振込送金の方法により弁済を行っていたのであるから,取引明細書が弁済の約1か月後に被告会社に送付されていたからといって同法43条の適用上支障を来すとは考えられない。」

 [4] 札幌高裁判平成14.11.20判例時報1815号105頁
(判決要旨)
  弁済の10日以後に「お利息のご案内及びお取引明細」が交付されても貸金業法18条書面が交付されたとは認められないとされた事例
(判決理由抜粋)
 「別紙計算書番号33,42,43の各返済については,被控訴人から控訴人に対し何らかの書面が交付されたことを認めるべき証拠はない。
 また,法18条1項は,「弁済を受けたときは,その都度,直ちに」18条書面(受取証書)を交付すべきとし,かつ,規則15条とともに記載すべき事項を具体的に規定している。
 しかるに,上記のとおり,B型書面及びC型書面はいずれも請求書としての内容しか記載されておらず,これらを18条書面ということはできない(なお,これらの書面中の「振込金受取書」の下部にはいずれも「上記の金額正に受取りました。」と記載されているが,これを直ちに被控訴人が弁済を受けたことを示す文字(規則15条1項)であると解することもできない。)
 A型書面及びD型書面は,上記のとおり,前回までのお取引明細等として,それらが発行される直前の控訴人の支払について,受領年月日,弁済受領の文言,当該弁済後の残存債務の額など,法18条1項及び規則15条1項所定の事項が記載されている(ただし,A型書面である乙11の1,8,14,15にはその記載がない。)が,本件におけるA型書面は最低でも支払から10日以上後に発行されており,上記「その都度,直ちに」の要件を満たすとはいえない。」


(5) 受取証書の交付がないとして貸金業法43条の適用が否定された事例
 ○ さいたま地裁判平成13.11.30金融・商事判例1136号32頁,判例タイムズ1092号283頁
(判決要旨)
 「貸金業者が債務者に「お利息のご案内及びお取引明細書」などと題する書面を交付した場合に,その一部については,前回の請求に従った利息の支払いがあった旨の記載はあるが,その前提となる取引において契約書面の交付がなく,その残部については,前回の請求に従った利息の支払いの有無に関する記載がないときは,貸金業法18条所定の受取証書の交付があったとはいえず,同法43条のみなし弁済規定を適用することはできない。」


21 一部に貸金業法43条の適用が認められない場合とその後の同条の適用の可否

 ○ 札幌高裁判平成14.2.28金融・商事判例1142号23頁
(判決要旨)
  貸金業者に対する債務者の継続的な利息の支払の1つについて,利息の天引きなどによって貸金業法43条のみなし弁済が認められない場合であっても,それ以後の利息の支払につき,その計算根拠を含めた充当関係が記載されているときは,これに基づき債務者が正確な充当計算をすることが可能であるから,同条の適用がある。


22 金銭の貸付けを繰り返した場合の法律関係

(1) 金銭の貸付けを受け,即時その中から旧債務金の返済をした場合の法律関係
 ○ 大阪地裁判平成2.1.19判例タイムズ738号160頁
(判決要旨)
 「旧債務額を超える金銭の貸付けを受け,即時右貸金の中から旧債務金の返済をした場合,右貸金契約は,旧債務金を目的とする準消費貸借と,新たに借り受けた金額についての消費貸借との混合契約である(前記15(4)Bの判例)」

(2) 支払利息の弁済充当計算をするに当たって,数口の貸付につき一部は連続した一つの取引とし,その余は別個独立の取引とするのが相当であるとした事例
 ○ 東京地裁判平成13.9.27判例タイムズ1116号160頁
(判決理由抜粋)
  「以上の認定事実を前提に,本件貸付1ないし6を連続する1個の契約であるとみなすことができるか否かについてみてみるに,本件貸付2ないし5に関しては,従前の契約に基づく借受金の弁済を前提とした貸付が行われていると認められ,本件貸付2ないし5は,連続する一つの取引と評価するのが相当である。しかし,本件貸付2は,被控訴人が,本件貸付1に基づく借受金を全額返済した日から273日経過した後であること,また,本件貸付6は,被控訴人が本件貸付2ないし5に基づく借受金を全額弁済した日から174日が経過した後であることに照らすと,本件貸付1と本件貸付2ないし5との間及び本件貸付2ないし5と本件貸付6との間には,社会通念上,連続する一つの取引と評価する前提である社会的事実の同一性が欠けていると認めるのが相当であり,他に,これらの契約が連続する一つの取引であると認めるに足りる証拠も存在しない。
 (3) 以上によれば,被控訴人の利息金の充当計算に当たっては,本件貸付1,本件貸付2ないし5,本件貸付6の三つの契約に分けて計算するのが相当である。」
*19[2]に同一判例あり

(3) 過払金の別口債権への充当,相殺の効果
 ○ 東京高裁判平成12.7.24判例タイムズ1071号197頁,判例時報1747号104頁
(判決要旨)
  複数の貸金債務を負担する債務者の特定の債務への弁済によって過払が生じた場合は,特段の事情のない限り,過払金は別口の債権の弁済に当然充当される。
(判決理由抜粋)
 「控訴人は,数口の貸付けがある場合に,ある一口の貸付けへの弁済に利息制限法所定の制限利率を適用すれば過払金が生ずるときには,その過払金は残っている別口の債権に充当され,また,別口の債権が残っていなくとも次に新たな債権が発生した時点でその新債権の元本に当然に充当されると主張する。他方,被控訴人は,数口の貸付けがあり,ある一口の債権について利息制限法所定の制限利率を適用することによって過払が生じた場合でも,不当利得返還請求権が発生するだけで,過払金が当然に別口の債権に充当されるものではないと主張する。
 金銭の支払が,ある債権について弁済の効力を持つためには,その支払が当該債権についてされる必要があると解されるが,少なくとも本件のような貸金債権が数口ある場合に,特定の債務への弁済について利息制限法所定の制限利率を適用して計算すれば過払が生ずるとき,債務者が特段の意思を表示しない限り,民法489条,491条に基づいてその過払金は他の別口の債権に充当されると解するのが相当である。しかし,過払を生じた段階で別口の債権が存在しなければ充当の問題は発生しないと解すべきであり,新たな他の債権が発生した時点で過払金が当然に新たな債権の元本に充当されると解することはできない。
 また,控訴人は,この場合に債務者が相殺の意思表示をすれば,その遡及効によって新たな他の債権が発生した時点まで相殺の効力が遡ると主張するが,相殺の効力は相殺適状の時に遡るに過ぎないから(民法506条2項),受動債権の弁済期の到来を待たずして相殺の効力が生ずるとすることもできない。すなわち,この場合,新たな貸金債務の弁済期が到来した時点で初めて相殺の効力が生ずることとなる。」
  3 「控訴人は,本件は全体として一体の取引であり当初の貸付金額が100万円以上であるから,利息制限法を適用する場合の制限利率は一律に15パーセントになると主張し,被控訴人は個別の貸付けで交付額が100万円を下回る貸付けについてはその金額に対応する利息制限法所定の利率を適用するべきである旨を主張する。(略)
 これらの事実からすれば,本件の取引は一連の取引であって,形式的には新たな貸付けであっても実質的には従前の債務の借り増しに過ぎないものというべきであって,利息制限法所定の制限利率を定めるについて各個別の取引毎の交付額を基準とすることはできない。しかし,他方で当初の貸付額のみを基準として制限利率を定めてもいいほどの一体性があるとはいえず,結局各貸付日における残元本額と当該貸付けに係る交付額(同一日に複数の貸付けがある場合は交付額の合計額)の合計額を基準として利息制限法所定の制限利率を定めるのが相当である。」

(4) 金銭貸借が繰り返され,過払い金が生じている場合の法律関係
 ○ 東京高裁判平成12.9.27金融商事判例1116号36頁
(判決要旨)
 「金員の貸付けを受けた者が,元本,利息等を完済する前に,債権者から新たに旧債務の額を超える金員の貸付けを受け,それによって旧債務を弁済する旨の合意をした上,新たな貸付けの額から旧債務の残元本,未払利息等に相当する額を差し引いて残金の交付を受ける,いわゆる借換えは,債務者が新たな信用を得るとともに,新旧両債務を併存させることなく2つの債権債務関係を一本化しようとするものであると解されるので,これによって,法的に有効な旧債務の残額に債務者が現実に交付を受けた額を加えた合計額についての準消費貸借契約が成立したものと見るのが相当である。・・・・
 もっとも,借換えの時までに既に過払となっており,債務者が債権者に対して過払金について不当利得返還請求権を有するに至っている場合には,法的に有効な旧債務は存在しないから,そのような借換えについては準消費貸借契約と見ることはできず,過払金の返還請求権と現実に交付した新たな貸金の返還請求権とが対立併存するに至ったと解する余地がないではない。
 しかし,右のように旧債務について過払い金が生じている場合であっても,借換えをした当事者は,旧債務の貸借関係を精算することとも目的として新たな消費貸借契約を締結したものと認められるから,当事者は,旧貸付けについて貸主から借主に返還すべき過払金があるときは,それを精算する趣旨で新たな貸付金を交付したものと解するのが相当である。したがって,過払金の生じている旧債務について借換えがされた場合には,準消費貸借契約が締結されたものと見ることはできないが,新たな貸付金として借主に交付された金員のうち旧貸付けにおける過払額に達するまでの金員は。旧債務の過払金の返還として借主に交付され,その残金が新たな貸付けの元金として交付されたものと解すべきことになる。・・・・
 なお,借換えに際して受取証書が交付されていても,その時に旧債務の弁済がされたものと認めることはできないから,貸金業法のみなし弁済の規定を適用する余地はない。」

(5) 借換えの場合の過払金,遅延損害金の次の貸金への充当関係
 ○ 東京高裁判平成14.3.26判例時報1780号98頁,判例タイムズ1094号278頁
(判決要旨)
 「(1) 本件貸付取引について
(略)上記認定の本件貸付取引の実情からすると,各借換え及びその返済関係につき,これをそれぞれ独立した個別の貸付関係と見るのは相当でなく,一連の取引としてされたものと見るべきである。そして,利息制限法が同法所定の制限利率を超える利息の支払があった場合には残存元本等にこれを充当して債務を減少させることとしている趣旨や,このような借換えを繰り返す場合における当事者の合理的意思を忖度すると,借換えの際に過払いが生じている場合はこれをその時点で存在する別口の債務や,借換えにより新たに生じる債務に充当し,複数の債権債務の関係が存在することによる権利関係の複雑化を防ぐとともに,貸金の利息の利率と過払金返還請求権の利息・損害金の利率の間の大きな格差が存在することによる当事者間の不公平をできる限り是正する意思であったものと解するのが相当である。(略)
(3) 本件貸付取引における過払金の充当関係について
 上記(1)認定のとおり,本件貸付取引における各借換え及びその返済関係については,これをそれぞれ独立した個別の貸付と見るのは相当でなく,一連の貸付と見るべきである。そして,借換えに際して過払いとなっている場合には,これを新たな貸付の一部に該当する意思があるものとして充当計算するのが相当である。
 そこで,本件貸付取引につき,利息制限法所定の制限利率に引き直して利息を計算し,借換えの際,過払が生じている場合には交付額から過払金額を控除した残金が新たに貸し付けられたものとして,それぞれ充当計算すると,平成12年2月28日時点における被控訴人の過払分は,原判決別紙二の(1)記載のとおり,58万7823円(略)となる。(略)

(6) 基本契約に基づく継続的な金銭貸借の中で過払金があった場合の充当関係
 ○ 最高裁二小判平成15.7.18(最高裁Webサイト「最近の最高裁判例」)
(最高裁HP該当判例)
  最高裁一小判平成15年09年11日,最高裁三小判平成15年09月16日(いずれも最高裁Webサイト「最近の最高裁判例」)も,同種事案で,同一判旨
(判決理由抜粋)
 「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において,借主がそのうちの一つの借入金債務につき法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合,この過払金は,当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り,民法489条及び491条の規定に従って,弁済当時存在する他の借入金債務に充当され,当該他の借入金債務の利率が法所定の制限を超える場合には,貸主は充当されるべき元本に対する約定の期限までの利息を取得することができないと解するのが相当である。」

(7) 継続的な金銭貸借の中で過払金があった場合の充当関係
 ○ 大阪地裁判平成15.9.30日判例タイムズ1146号283頁
(判決理由抜粋)
 「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において,借主がそのうちの一つの借入金債務につき法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合,この過払金は,当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り,民法489条及び491条の規定に従って,弁済当時存在する他の借入金債務に充当され,当該他の借入金債務の利率が法所定の制限を超える場合には,貸主は充当されるべき元本に対する約定の期限までの利息を取得することができないと解するのが相当である。
 これに対し,過払いが発生した弁済の時点で借入金債務が存在しない場合には,そもそも弁済充当の問題は生じないところ,複数の債権債務の関係が存在することによる権利関係の複雑化を防ぐとともに,貸金の利息の利率と不当利得返還請求権の遅延損害金の利率の間の大きな格差が存在することによる当事者間の不公平をできる限り是正するという当事者の意思が合理的に推認できる場合等は格別,しからざる場合には制限超過部分は不当利得返還請求権として残存するものと解すべきである。」


23 取引経過開示義務と文書提出命令

   別紙「取引経過開示義務と文書提出命令」のとおり


24 過剰与信債務と債務額減額の判決
○ 釧路簡裁判平成6.3.16判例タイムズ842号89頁
(判決要旨)
 信販会社の主婦に対する立替金及び貸金につき過剰与信であるとして,信義則の適用により債務額を約4分の3に限定した事例
(判決理由抜粋)
 「貸金業の規制等に関する法律13条及び割賦販売法42条の3の過剰貸付け及び過剰販売(以下,過剰貸付け及び過剰販売を一括して「過剰与信」という。)の禁止についての法規制は,過剰与信の要件表現が抽象的にとどまったその規定の体裁からいって,また,その違反について罰則規定も設けられなかったことからいって,訓示規定的なものと解されている。したがって,右各規定に違反する行為がなされたからといって,それが直ちに不法行為となったり契約が無効になると解するのは困難である。しかし,法形式がそうなったのは,いろいろな形態の取引について一律に過剰与信の要件を定める立法技術上の難しさによるものであって,過剰与信自体を禁ずる国家意思が確定的なものであることは,大蔵省等の通達で基準を示したりしていることからも明らかである。したがって,この法規制に何らの法的意味がないと解することはできない。たとえ訓示規定であるとしても,これに対する違反の程度が著しい場合には,国が右過剰与信禁止規定を設けた趣旨は,信義則違反あるいは権利濫用の判断,更には公序良俗違反の判断を根拠づける重要な要素として働くと考えられる。前記過剰与信禁止規定は,事業者が営業の自由を100パーセント駆使して与信を行っている状況下では,いかに債務者の自覚を求めても過剰与信に基づく多重債務者の発生,増大を防ぐことができないことから,債務者とその家族あるいは同一家計内にある者に対する保護及び社会防衛のため,契約自由,営業の自由の制限として設けられたと考えられる。すなわち,事業により利潤を収得する者は,同時に,取引システムの維持又は健全化のため必要とされる負担を引き受けるのが相当であるとの公平原理の観点から,あるいは,取引において事業者と対立する公衆の正当な利益を保護する観点から,事業者に,社会的責任に基づく義務であるとともに取引関係上の相手方に対する信義則に基づく付随義務でもある注意義務を課したものと解する。
 被告は,「原告は,無収入の被告に対して,客観的に支払能力を超えることが明らかな契約を締結したものであり,これは,自然債務と目されるべきものであり,被告には支払能力はない。」と主張する。これは,返済能力を超える部分は過剰与信に相当し,もともと事業者において回収が困難であることを予測して行った与信とみるべきであるから,自己責任の見地からいって不利益は事業者が負担すべきものとする趣旨では相当であるが,他方,返済能力を超えることが明らかな契約を自ら承知の上で締結し,それにより経済的利益も収受した被告に,支払義務が全くないとするのは相当でない。被告は,意思自治の原則からいって当然支払義務を負うべきである。しかし,国が事業者に向けて特別の規定を設けて禁止した過剰与信が,現実に生じた場合に,債務者の返済能力を超えるかどうかについての調査や判断に重大な誤りがあった事業者が,法の力を借りて債務の全額の支払を債務者に求めるとすれば,信義誠実の原則に反し権利の濫用に当たると解すべきであり,信義則を適用して事業者の請求することのできる範囲を限定するのが相当である。その範囲を定めるについては,契約締結の態様によりいろいろな段階が考えられるであろうが,現代取引においては契約自由,意思自治が原則であり,過剰与信の法規制はこれに対する制限であるという前提に立って,信用調査システムの整備の実情や,過剰与信の法規制に対する事業者の自覚の現状などを総合して判断する必要がある。そしれ,本件事案における諸事情を考慮すると,原告が被告に対して請求することができるのは,過剰与信でないことが明らかな588号事件の取引については全請求権,その余の過剰与信と認める取引については各契約額の約4分の3の割合による範囲に限るのが相当である。」

○ 札幌簡裁判平成7.3.17判例時報1555号117頁判例タイムズ890号149頁
(判決要旨)
 貸金業者が貸金業法13条に違反する貸付金債権全額の回収を計ることが信義則上容認できないとされた事例
(判決理由抜粋)
 「貸金業法13条が,貸金業者に対し顧客の資力又は信用,借入れの状況,返済状況等について調査することを要求し,通達もその具体的方法等を示していることに照らせば,貸金業者側には,簡易ながらも相応の信用調査を行うことが求められているというべきである。
 3 貸金業法13条違反事実の契約への影響  右1及び2の点を総合すると,原告の被告に対する本件貸付が貸金業法13条に違反する違法なものであり,かつ,通達を実質的に無視する運用であって著しく妥当性を欠くものであることは明白である。
 もっとも,同条の規定形式等に鑑みると,同条は効力規定ではないといわざるを得ないから,その違反の効果として当該契約を直ちに無効ならしめるということはできず,右に関する被告の主張は,この限度では理由がない。
 三 争点2ー権利濫用の成否ないし返還義務の範囲ーについて
 1 しかしながら,確かに,一般論としては貸金業法13条は効力規定ではないと解されるものの,原告主張のように,同条は訓示規定であるから何らの意味ももたないと解することも当該規定が設けられた趣旨をないがしろにするものであって相当ではなく,特に同条を遵守しようという姿勢のみられない貸金業者が,同条の性格を楯に債権全部の回収を図るというのは信義則の観点からみて容認できない。
 すなわち,たとえ債務者について弁護士が介入した任意整理中であっても,当該弁護士から提示された和解条項に合意できず,これを拒否する形で訴えを提起すること自体は正当な権利行使ではあるが,貸金業法13条を遵守する姿勢が全く窺えない業務姿勢のもと,自ら右禁止規定に違反する貸付を敢えて実行するという責められるべき事情を有しながら,その全額の返還を求めるのは右権利の濫用形態であるというべきであるから,貸金業者側の右事情と貸付成立当時の資金需要者側の事情とを総合勘案したうえで,その請求につき,信義則上全部無効とし,あるいは,一部無効として相当な限度まで減額することができると解するのが相当である(事案を異にはするがその精神につき,最一判昭和51年7月8日民集30巻7号689頁参照)。
 (略) 本件については,遅延損害金の請求そのものが信義則の観点からみて許容されないというべきであり,右は失当として棄却を免れない。
 (二) そしてさらに,前記のとおりの原告の貸金業法13条違反の程度その他本件事案の態様等に鑑みると,残元金部分についても,相当限度まで減額すべき事由が認められるというべきであり,あるいはその請求全部を棄却すべきかにも解されるが,被告において残元金の7割相当額については支払意思を表明していることなど諸般の事情を総合して考察すると,本件については,残元金の7割を限度として認容するのが相当である。」


25 違法な債権取立て等に対する慰謝料等請求の認容例
(1) 債権取立て
<サラ金業者>
(1) 大阪地裁判昭和56.3.30判例時報1029号104頁
  サラ金業者の債権取立行為が社会通念上許容される範囲を逸脱し不法行為にあたるとして慰謝料の支払が命ぜられた事例
(2) 福岡地裁小倉支判昭和57.7.16判例タイムズ475号72頁,判例時報1057号117頁
  サラ金業者の借金取立方法を違法として求めた慰謝料請求を認容した事例
(3) 新潟地裁判昭和57.7.29判例時報1057号117頁
  サラ金業者の借金取立方法を違法として求めた慰謝料請求を認容した事例
(4) 四日市簡裁判昭和59.7.10判例時報1144号136頁
  債務者の親族に対するサラ金業者の保証強要行為を違法として損害賠償請求(金30万円)が認容された事例
(5) 名古屋地裁判昭和61.3.24判例タイムズ618号100頁,判例時報1204号131頁
  破産者に対する債権者の旧債務の取立の手段が暴行,強迫によるもので違法であるとして破産者からの慰謝料請求を認めた事例
(6) 小倉簡裁判昭和61.10.28判例時報1222号130頁
  金融業者の債務者に対する債権取立方法等が違法であるとして慰謝料請求を認めた事例
(7) 山口地裁判昭和59.2.2判例タイムズ526号195頁,判例時報1123号127頁
  サラ金業者の従業員の債権取立行為に違法性があるとして,債務者よりの慰謝料請求(5万円)が認容された事例
(8) 東京高裁判平成9.6.10判例タイムズ966号243頁
  債務整理の依頼を受けた弁護士からされた受任通知,協力依頼に誠実に対応しないまま公正証書に基づいて債務者の給料債権を差し押さえた貸金業者の行為が不法行為を構成するとされた事例
(9) 大阪地裁判平成10.1.29判例タイムズ974号158頁
  貸金業者の従業員が原告に対してした,原告の母の債務の返済の働きかけ及び右債務弁済のための貸付けが不法行為を構成するとして,貸金業者の使用者責任が認められた事例
 (本判決は,債権の取立行為が犯罪行為にあたらないような場合でも,取締法規違反等を考慮し,その態様いかんによって,社会的相当性を逸脱し,不法行為にあたる場合があることを示した点に意義がある。)
(10) 大阪高裁判平成11.3.12判例時報1703号144頁
  金融業者から金員を借り入れていた者が,右業者の従業員から暴行を加えられる等の違法な取立を受けたと認定して,右業者に使用者責任に基づく損害賠償義務が認められた事例
(11) 大阪高裁判平成11.10.26判例タイムズ1031号200頁
  夜間自宅から連れ出し,初対面の第三者に借金の申込みをさせた債権回収行為は,社会通念上許されるべき範囲を超えたものとして,不法行為に基づく損害 賠償請求が認められた事例
(12) 釧路地裁判決平成13.5.8判例タイムズ1114号194頁
  債務が存在しないにもかかわらず,計算根拠不明の多額の債務の存在を主張して行った取立てが,不法行為に該当するとされた事例
(判決理由抜粋)
「2 貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)第21条1項は,「人を威迫し又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により,債務者を困惑させ」る取立行為を禁じているところ,被告は,真実は原告に対する貸金債権が存在しないにもかかわらず,提訴通知書により164万8319円を,最終催告書により166万9193円を,その後の法定利息計算書により258万7266円を,という具合に,計算根拠が良く分からない多額な債務の損害を繰り返し主張し,その履行をしなければ東京の裁判所に訴え出るとまで告げて債務の弁済を強く督促している。このような取立行為(本件取立行為)は極めて悪質であり,人の私生活上の平穏を害すること甚だしく,その違法性は明らかである。
 3 本件においては,被告の担当者が,原告に対する貸金について貸金業法43条1項所定の要件の有無,利息制限法による利息計算の必要性について,どのような認識を有しているのかという事実を認めるに足りる証拠はないから,被告の担当者が,債務の不存在を認識しながら敢えて本件取立行為に及んだとまではいえないが,本件訴訟において同条項所定の要件の主張立証がされていないことに照らせば,少なくとも,本件取立行為が,原告の私生活上の平穏を理由なく侵害している点につき,被告担当者に過失があるものと考えなければならない。
 したがって,被告は,民法715条に基づき,本件取立行為によって,原告に生じた損害を賠償すべき責任を負う。」 (本判決は,不当利得返還請求は10万5542円の限度で認容し,また,慰謝料として10万円,弁護士費用として20万円を不法行為に基づく損害賠償として認めた。)
(13) 東京地裁判平成14.9.30判例時報1815号111頁
   金銭の貸付けにあたって締結された年利750パーセントの利息契約が,利息制限法所定の制限利率の範囲にとどまる部分も含め全体として無効であるとして,借主の受領額と貸主に対する支払額との差額に係る不当利得返還請求が認められ,不法行為に基づく慰謝料請求も認められた事例
(判決理由抜粋)
 「本件約定利率は,出資法5条4項の規定に従い,元本額を天引き後の交付額として計算すると,年750パーセントにも上り,平成11年法律第155号(平成12年6月1日施行)による改正前の同法5条2項に規定する利率(年40.004パーセント)の18倍を超えることとなる。そうだとすると,本件利息契約は,暴利行為として公序良俗に反するといえ,しかも,その暴利性の程度は極めて大きいといわざるを得ないから,本件利息契約は,利息制限法所定の制限利率の範囲内にとどまる部分も含め,全体として無効であると解するのが相当である。
 四 不当利得返還請求についての結論
 以上によれば,被告は,法律上の原因なく,平成12年11月27日までに合計16万2000円を利得し,原告は,これにより,同額の損失を被り,また,被告は,法律上の原因なく,同年12月11日に9620円を利得し,原告は,これにより,同額の損失を被ったということができ,更に,被告は,悪意の受益者であるということができるから,原告は,被告に対し,民法704条に基づき,不当利得金16万2000円及びこれに対する同年11月28日から支払済みまで同法所定の年5分の割合による利息並びに不当威徳金9260円及びこれに対する同年12月12日から支払済みまで同法所定の年5分の割合による利息の返還を求めることができる。
第二 不法行為に基づく損害賠償請求について
 (略) 三 請求原因(2)ウ(不法行為の成否)について
 前記第一の3において説示したとおり,本件約定利率は,平成11年法律第155号による改正前の出資法5条2項に規定する利率(年40.004パーセント)の18倍を超える年750パーセントにも上るものであるから,被告が原告との間で本件利息契約を締結し,これに基づいて,原告から別表三記載のとおり利息を受領したことは,いずれも極めて悪質な犯罪行為であるといえ,したがって,被告のこれらの行為は,私法上も,原告に対する不法行為に該当すると解するのが相当である。
 四 請求原因(2)エ(損害)について
(1) 別表三記載のとおりの取引経過によれば,原告は,被告の上記三のとおりの行為により,半年以上にわたって支払ういわれのない極めて高利の利息の支払を余儀なくされたものであり,これにより,精神的苦痛を被ったものと認められる。
(2) 上記(1)の精神的苦痛に対する慰謝料としては,10万円をもって相当であるとすべきである。」
(14) 津地裁判平成16.1.15最高裁HP
  貸金業者が,弁護士からの債務整理受任通知を受け取った後,合理的な期間を経過しない時期に給料債権の仮差押えを申し立てたことについて,不法行為が成立すると認定された事例
(15) 大阪地裁判平成16.3.5金融・商事判例1190号48頁最高裁HP
(判示事項)
  年金受給者から年金証書,通帳及び印鑑を預かり,継続して融資取引を行ってきた行為が,実質的に年金を担保とするもので不法行為に該当するとして,経済的損失の損害賠償のみならず慰謝料の請求が認められた事例
(判決要旨)
  金融業者が,債務者から年金証書や年金振込先の預金通帳及び届出印を預かり,債務者に支給される年金が振り込まれた後,自動振替等により利息制限法所定利率を超える高利の貸付金の弁済を受けることで高利の貸付取引を長期にわたって繰り返すことは,収入が限られる年金受給者に本来支払義務のない高利の利息を継続して支払うことを強いるものであって,その生活にも影響を与えることが十分予想できることであり,不法行為に該当する。


<信販会社>

(1) 札幌地裁判平成11.3.24判例タイムズ1056号224頁
  信販会社が債務者の父親に対し,事務処理上の過誤によりコンピュータ上に誤って保証人として登録し,電話照会により間違いが確認された後も,そのまま放置し,2回目の督促書面も送付したことには重大な過失があるとして,慰謝料50万円を認めた事例


(2) 仮差押え

 札幌地裁判平成10.12.18判例タイムズ1042号176頁
  貸金業者が貸金債務が消滅後,債務内容の開示を求められながら正当な理由もなくこれを開示することなく借主の連帯保証人の給料債権に対し仮差押えをしたことに対し,不法行為に該当するとして,貸金業者の損害賠償責任として,慰謝料50万円を認めた事例


26 裁判外の和解成立と不当利得返還請求
○ 東京地裁判平成11.9.28金融法務事情1574号45頁,判例タイムズ1085号232頁
(判決要旨)
 利息制限法の法条と判例の趣旨に照らすと,すでに任意の支払により本件貸金債務の元本と利息制限法の範囲に引き直した利息の支払いが済んでいて,さらに超過支払いが生じていて,これについて不当利得が被告に成立している場合に,右貸金債務に関して任意に債務弁済契約を締結する中で,利息制限法1条1項に反する過払い分の不当利得返還請求権を放棄することは,右法の趣旨にもとるものとして許されず,違法な約束といわざるを得ず,無効なものというべきである。
 本件和解契約が弁護士の資格を有する者によって締結されているものであること,本件和解契約は被告が右和解交渉にあたった原告代理人の弁護士を信頼した上でのものであることは,右結論を左右するものではない。
(判決理由抜粋)
 「そもそも利息制限法1条が制限利率をもうけて,これを超過する利息の約定を禁じていること,これに反した契約は絶対的に無効としていて,例外的に同条2項で制限超過部分の任意の支払いについての返還請求に対して裁判所が助力を与えないとしているものでる。
 そして,債務者が任意に利息制限法所定の制限を超えた利息を支払った場合においては,これを元本に充当し,計算上元利合計額が完済された後は,余剰金額を不当利得として返還請求することができるとするのが確立された判例の説くところである。
 右利息制限法の法条と判例の趣旨に照らすと,既に任意の支払いにより本件貸金債務の元本と利息制限法の範囲に引き直した利息の支払いが済んでいて,さらに超過支払いが生じていて,これについて不当利得が被告に成立している場合に,右貸金債務に関して任意に債務弁済契約を締結する中で,利息制限法1条1項に反する過払分の不当利得返還請求権を放棄することは,右法の趣旨にもとるものとして許されず,違法な約束といわざるを得ず,無効なものというべきである。
 これに対し,被告は,本件和解契約が弁護士の資格を有する者によって締結されているものであること,本件和解契約は被告が右和解交渉にあたった原告代理人の訴外A弁護士を信頼した上でのものであることを主張するが,これらの主張は,当裁判所が右に認定説示したところを左右するものではないものと考える。」


27 署名代理と名義貸し

   別紙「署名代理と名義貸し」のとおり


28 カードの不正使用

   別紙「カードの不正使用」のとおり


29 破産免責制度の趣旨と免責の当否
(1) 最高裁大決昭和36.12.13民集15巻11号2803頁,判例解説民事篇昭和36年度453頁
(最高裁HP該当判例)
(決定要旨)
 破産法の免責規定は憲法第29条に違反しない。
(理由中の判断)
「破産法における破産者の免責は,誠実な破産者に対する特典として,破産財団から弁済できなかった債権につき特定のものを除いて破産者の責任を免除するものであって,その制度の目的とするところは,破産終結後において破産債権を以て無限に責任の追求を認めるときは,破産者の経済的再起は甚だしく困難となり,引いては生活の破綻を招くおそれさえないとはいえないので,誠実な破産者を更生させるために,その障害となる債権者の追求を遮断する必要が存するからである。」
 「同法366条ノ9では,債務者に詐欺破産,過怠破産の罪に該る行為があったと認められるとき,その他同条列記の不信行為があったときは,裁判所は免責不許可の決定を為すことができると定められ,・・・また,366条ノ12では,租税,雇人の給料,その他同条列記の特殊の債権・・・を除外して,他の一般破産債権についてのみ責任を免れることに定められている」のは,「いずれも免責の効力範囲を合理的に規制したものといえる。」
 「ところで,一般債権につき,破産者の責任を免除することは,債権者に対して不利益な処遇であることは明らかであるが,他面上述のように破産者を更生させ,人間に値する生活を営む権利を保障することも必要であり,さらに,もし免責を認めないとすれば,債務者は概して資産状態の悪化を隠し,最悪の事態にまで持ち込む結果となって,却て債権者を害する場合が少なくないから,免責は債権者にとっても最悪の事態をさけるゆえんである。」

(2)  神戸地判平成元.9.7判例時報1336号116頁
(判決理由抜粋)
 「原告は本件債権を失念して債権者名簿に記載しなかったと認められるが,被告は本件債権につき調停調書作成以後昭和63年秋まで一度も請求しておらず,原告の債務不履行後免責申立の時まで既に6年が経過していたこと,原告の破産の原因となった債務は昭和57年以降の債務が殆どであり,本件債権につき免責不許可に該当する事由(破産法366条の9第2項)も見あたらないこと,破産債権者の数,債券額等からすると本件債権はほんの一部にすぎないことが認められ,免責制度が不誠実でない破産者の更生を目的として定められたものであり,免責不許可事由があっても破産裁判所の裁量によって免責が許可される場合のあること等免責制度の趣旨・目的を併せ考えると,原告が本件債権の存在を失念し,債権者名簿に記載しなかったことにつき免責の効果を認めない程の過失があったとは認められないというべきである。」

(3) 東京地裁判平成11.8.25金融・商事判例1109号55頁
(判決要旨)
 破産者が債権者名簿にその連帯保証債務に係る債権者を記載していなかった場合と当該連帯保証債務に対する免責の効果
(判決理由抜粋)
 「破産者が免責許可決定を受けるに際して破産裁判所に提出した債権者名簿にその連帯保証債務に係る債権者を記載していなかった場合には,破産裁判所から審尋を受けた際に口頭で連帯保証債務の存在を説明し,また,債権者名簿を提出した時点では連帯保証人として支払うべき債務額が確定していなかったとしても,当該連帯保証債務に対しては,破産法366条ノ12内5号本文により,免責の効果は生じない。」

(4) 最高裁三小判平成12.1.28金融・商事判例1093号15頁
(判決要旨)
 破産者のクレジットカードを利用した商品などの購入が破産法366条ノ12第2号にいう「悪意ヲ以テ加ヘタル不法行為」を構成するものとされた事例
(判決理由抜粋)
 「破産者が,月収額から生活費などを控除すると,既に負っていた借入金債務に対する月々の弁済をすることができない状況にあったにもかかわらず,クレジットカードの発行を受け,これを利用して商品などを購入したなどの本件の事実関係の下においては,破産者の右の商品などの購入は,破産法366条ノ12第2号にいう「悪意ヲ以テ加ヘタル不法行為」を構成するものと解するのが相当である。」

(5) 東京地裁判平成14.2.27金融法務事情1656号60頁
(判決要旨)
  債権者名簿に記載しなかったことにつき過失があるとして,免責の効果が認められなかった事例
(判決理由抜粋)
 「破産法366条の12第5は,「破産者が知りて債権者名簿に記載せざりし請求権」は,免責によって責任を逃れることはない旨規定するが,これは,債権者名簿に記載されなかった債権者は,破産手続の開始を知らず,債権の届出をしなかった債権者は,審尋期日を知ることができず,そうすれば,免責に対する異議申立ての機会が与えられないことから,債権者が,特に破産宣告の事実を知っていた場合を除き,免責されない債権として債権者を保護しようとしたものである。一方,破産免責制度は,不誠実でない破産者の更生を目的として定められたものであることを併せて考慮すれば,破産者が,債権の存在を知って債権者名簿に記載しなかった場合のみならず,記載しなかったことが過失に基づく場合にも免責されないと解すべきである。(略)
 (2)イ これによれば,被告Yは,原告に対する保証債務の存在を知って債権者名簿に記載しなかったとは認められない。
 (3)ア 被告Yの原告に対する保証債務の残元本は3894万円であり,同被告が破産宣告時に申し立てた債務総額2億2518万円(<証拠略>)にこれを加えた債権総額(2億6412万円)に対する原告の保証債権額は,債権総額の約15パーセントを占める金額である。
 イ 被告Yは,I社の代表取締役を辞任した平成2年7月頃,原告に対し,保証契約の解除を申し入れたが,原告がこれを拒否した(前記(3))。(略)
 ウ(オ) これによれば,原告は,被告Yに対し,平成5年1月頃から平成12年10月頃までの間に,再三にわたり,被告Yの住民票を確認し,また同被告の親族に所在を確認したり,さらに同被告の住民票上の住所地を訪問したりしたことが認められ,それにもかかわらず,原告から同被告に対し,通知書が送付されなかったのは,同被告が住民票上の住所地に居住していなかったり,そのことを原告に通知していないことに理由があると認められる。
 エ 以上の事実が認められ,これによれば,被告Yが,原告に対する保証債務を債権者名簿に記載をしなかったことは,被告Yに過失があったと認められる。そうすれば,被告Yの原告に対する保証債務は免責されないというべきである。

(6) 東京地裁平成15.6.24金融法務事情1698号102頁
(判決要旨)
 破産者が失念により債権者名簿に記載しなかった破産債権につき過失はないとして免責の効果を認めた事例
(判決理由抜粋)
 「破産法366条の12第5号は,破産者が「知リテ」債権者名簿に記載しなかった請求権を非免責債権とする旨規定しているが,この趣旨は,債権者名簿に記載されなかった債権者は,破産手続の開始を知らなかった場合,免責に対する異議申立ての機会を失うことになるから,債権者名簿に記載されなかった債権を非免責債権とし,このような債権者を保護しようとしたものである。他方,破産免責の制度が,不誠実でない破産者の更生を目的とするものであることからすれば,債権者名簿に記載されなかったことが破産者の責めに帰することのできない事由による場合にまで非免責債権とすることも相当ではない。そうすると,債権者名簿に記載されなかった債権について,債権の成立については了知していた破産者が,債権者名簿作成時に債権の存在を認識しながらこれに記載しなかった場合には免責されないことは当然であるが,債権者名簿作成時には債権の存在を失念したことにより記載しなかった場合,それについて過失の認められるときには免責されない一方,それについて過失の認められないときには免責されると解するのが相当である。(略)
 控訴人は,上記破産申立てをした平成12年当時,持病のクローン病が重度に悪化して勤務先を退職したため,住宅ローンの返済に窮するようになり,また,妻とも離婚するに至るなど,著しい苦境に陥っていた。控訴人は,そのような状況の中で上記破産の申立てをしたものであり,本件債権者名簿に記載された4社に対する合計約2500万円弱の債務のうち,そのほとんどは控訴人が破産申立てをする理由となった住宅ローンに係る債務であり,その余の少額の債務も,上記破産申立ての直前ころの生活費等に係る債務であった。その他,本件全証拠を精査しても,控訴人においてあえて本件債権者名簿に本件保証債務を記載することを躊躇するような事情が全くうかがわれないことに照らせば,控訴人は,本件保証債務の存在を認識しながらこれを債権者名簿に記載しなかったものではなく,これを失念したために記載しなかったに過ぎないものと認めるのが相当である。
 さらに,以上に説示した本件連帯保証契約締結の経緯,控訴人の破産申立て当時の状況,破産申立てに至った経緯,理由及び控訴人が被控訴人から本件保証契約締結後本件免責決定の確定に至るまで本件保証債務の履行を求められたことがなく,その間乙山とも連絡をとっていなかったという状況を前提とすれば,控訴人が免責申立ての際に本件債権者名簿に本件保証債務を記載するのを失念したとしても不自然ではないというべきであり,したがって,それについて控訴人に過失があったとは認めるには足りないものである。
 なお,被控訴人は,原審の第2回口頭弁論期日において,控訴人が免責の申立ての当時に本件保証債務が存在することを知っていた旨の発言をしたと主張するが,本件訴訟の帰趨を決するような発言が上記口頭弁論期日の調書(<証拠略>)に記載されていない以上,控訴人が上記発言をしたとは認められないというほかはない。(略)
 4 よって,被控訴人の請求を認容した原判決は失当であるから,これを取り消した上,同請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。」


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