後藤の部屋

No.75「変形性膝関節症の予防」

 だいぶ暖かくなり、散歩にちょうどよい季節になりました。

 少し足を延ばして歩いていると、前のほうにご高齢の男性がゆっくり歩いていました。膝は外に向いた、いわゆる「がに股」です。ふと立ち止まり、膝をさすりながら「痛えんだよなぁ」とつぶやかれました。
 その横を通り過ぎながら、これも何かの縁だと思い、変形性膝関節症の予防について書いてみました。

 外来には、変形性膝関節症の患者さんが多く来られます。多くは高齢の方で、膝が外に開いた「O脚(内反)」の状態になっています。まずリハビリ、重くなってくると、お薬や注射、最後は手術と症状に合わせて治療します。当院でも膝の人工関節置換術は多数実施しています。
 膝の形は、成長とともに変化します。生まれたばかりの頃はO脚、成長すると、X脚になり、大人になるとまっすぐになります。そして年齢を重ねると、再びO脚、つまりがに股になる傾向があります。

 たとえば杖も、まっすぐなら安定してつけますが、曲がっているとぐらつきます。膝も同じで、曲がっていると力がうまく支えられません。

 子どものうちは問題になりにくいのですが、高齢になると関節が硬くなり、衝撃をそのまま受けやすくなります。さらに、曲がった膝に体重がかかると、変形がいっそう進んでしまいます。

 対策として大切なのは、膝をできるだけまっすぐに保って歩くことです。そのためには、膝を伸ばす筋肉を鍛えるのが効果的です。
 太ももの前にある大腿四頭筋は膝を伸ばす働きがあるため、椅子に座って足を持ち上げて伸ばす運動がよく行われます。足首に軽い重りをつけると、より効果的です。また、膝の間にボールを挟んで軽く押し合う運動も、膝をまっすぐに保つ助けになります。

 歩き方も重要です。足をまっすぐ前に出すことを意識するだけでも、膝への負担は変わります。
 私自身は、足の裏全体でバランスよく着地できているか、衝撃をやわらかく受け止められているかを確かめながら歩くようにしています。そのため、自然とゆっくりした歩き方になります。

 以前は「歩くのが遅いと寿命が短い」という説もあり、できるだけ速く歩くようにしていました。確かに速歩きは心肺機能の維持には有効です。
しかし、膝に痛みが出てくると、無理に速く歩くことはできません。ときどき早足も取り入れますが、基本は膝をいたわりながら、元気な方に追い抜かれても、心穏やかにゆっくり足底を感じながら歩くように心がけています。



2026年04月20日

No.74「タバコかよ!」

 先日、旅行先のホテルに泊まっていました。チェックアウトのためエレベーターに乗っていると、慌てた様子の中年男性が乗り込んできました。出発の時間が迫っているのか、それとも誰かを待たせているのかと考えているうちに1階に到着。私は「お先にどうぞ」と譲りました。男性は「すみません」と言って小走りで出ていきました。
 どこへ向かうのかと思って見ていると、なんと喫煙所でした。思わず「タバコかよ!」と口に出てしまいました。

 外来でも、タバコのにおいがする方に「病気のためにも禁煙した方がいいですよ」とお伝えしますが、「なかなかやめられなくて」と言われることが多いです。中には「吸うと気分が落ち着くんです」と話す方もいます。しかし、先ほどのように慌てて喫煙所へ向かう姿を見ると、とても落ち着いているようには見えません。
 健康に悪く、お金もかかり、火事の原因にもなる。それを分かっていてもやめられないのは、ご自身としてもつらいことだと思います。

 私の父もヘビースモーカーでした。子どもの頃からよく咳き込み、つらそうにしていました。何度も禁煙を試みましたが、なかなかやめられませんでした。しかし50代で肺に影が見つかり、強い不安を感じたのでしょう、その時きっぱりとタバコをやめました。
 その後いくつか病気はありましたが、80歳を過ぎるまで生きることができました。この経験からはっきり言えることがあります。タバコは吸い始めないのが一番です。そして、吸っている方はできるだけ早くやめた方がいいです。

 大相撲が終わりました。横綱を期待された安青錦は負け越し、対策を立てられて思うように勝てませんでした。
 私が一番印象に残ったのは、その安青錦と平戸海の一番です。解説は平戸海の親方。平戸海が四つに組み、見事に安青錦に投げられた場面で、「四つに組んで勝てるなら大関になってないんだよ!」と大声で怒鳴りました。
 横で見ていた家人は「がらが悪いねえ」と言っていましたが、そういう見方もあるでしょう。しかし私にとっては、勝負の厳しさと相撲の番付の重さを強く感じさせる一言でした。


2026年03月23日

No.73「春になりました」

 諸事に追われているうちに、あっという間に冬が過ぎ、春になりました。
朝の連続ドラマも、舞台が“サムイジゴク”の松江から熊本に移り、子どもも生まれて、これからの展開が楽しみです。

 冬の間は、冷えと乾燥が主な問題でした。
 これからしばらくは過ごしやすい季節になりますが、温暖化が止まる気配もなく、夏に向けては暑さと湿気が気になってきます。春は気持ちよい季節ですが、季節の変わり目は寒暖差が大きく、体調を崩しやすい時期でもあります。
 よく眠ること、適度に体を動かすこと、甘いものを食べ過ぎないこと、冷たいものでお腹を冷やさないことなど、日々の養生を心がけることが大切です。

 特に歳を重ねると、毎日の生活にあまり波風を立てないことが大事になってくるように思います。インド医学では「ディナチャリア」といいますが、健康的な生活習慣を毎日繰り返し、乱さないようにするという考え方です。

 日本にも長生きの秘訣として
「転ぶな、風邪をひくな、義理を欠け」
という言葉があります。
 この最後の「義理を欠け」とは、さまざまな付き合いに振り回されて、日常生活のリズムを乱さない方がよい、という意味でしょう。
 私も以前親孝行のつもりで旅行に連れて行こうかと提案したところ、
「もう見聞は広めんでよか」
と断られました。
 平凡に思える日常生活こそが一番よい、ということだったのだと思います。
 若い頃にはそのことがよくわからず、高齢の患者さんに無理なことを勧めてしまったこともあったのではないかと、今になって反省しています。

 さて、もう4年になりますが、北京で冬季オリンピックが閉幕した後、ロシアがウクライナに侵攻しました。
 その戦争の終わりも見えない中、ミラノなどでの次の冬季オリンピックが、閉幕したところ、今度はアメリカとイスラエルがイランを攻撃しました。
 ペルシャ湾は、日本にとって石油輸送の重要なルートです。備蓄は8か月分あるといわれていますが、戦争が長期化すればどうなるのか心配になります。
 ウクライナの戦争を逃れて日本に来た若者が、相撲の世界で横綱を目指しています。
 母国のことは何も語りませんが、きっとさまざまな思いがあるのだろうと考えながら、相撲中継を見ています。
 戦火が1日も早く治り、平和な世界が戻ってきますように。



2026年03月09日
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