■2010年4月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●北米事情
●米農務省、GMアルファルファの栽培再開目指す

 米国農務省が、除草剤耐性アルファルファの栽培再開に向けて、新たな環境影響評価を発表し、パブリックコメントを求めている。GMアルファルファは5年前に承認され、いったん栽培が行われたものの、裁判所が栽培差し止めを求めたため現在は中止されている。これに対して20万人を超えるNGO、農家、消費者、有機食品業者が3月3日、GMアルファルファの禁止を求めて、コメントを発表した。 〔The Center for Food Safety 2010/3/3〕 

●米国で非GMテンサイ種子が不足

 米国農務省開催の農業展望フォーラムで、米国テンサイ生産者協会副会長のルター・マルクワルトが、2010年の栽培用非GMテンサイ種子が不足している、と述べた。GMテンサイ栽培の増加を見込んでいたが、裁判所の差し止め命令でGM種子が使えなくなったためだとしている。 〔Nasdaq 2010/2/19〕

●メキシコのGMトウモロコシ栽培開始に提訴

 メキシコ農業省は2月10日、同国でGMトウモロコシの栽培が始まった、と発表した。それに対して農家の団体と環境保護団体は共同で、先住民や女性等の権利を扱うインターアメリカ地域人権委員会に提訴した。いったん栽培が始まれば、違法栽培を止めることができず、原生種へのGM汚染をもたらし、先住民等の生活を脅かす、というのがその理由である。 〔Forbes 2010/2/3〕

●カナダのベンチャー企業、GM作物開発研究所を閉鎖

 カナダのベンチャー企業パフォーマンス・プラント社は、旱魃耐性作物の開発が挫折したため、米国ニューヨーク州にある研究所を閉鎖した。この施設は、GM作物開発を専門に行ってきた研究所で、旱魃耐性以外にも収量増や耐霜性の作物を開発していた。〔The Whig Standard 2010/2/16〕

●26カ国233団体がGM小麦商業化反対の声明

 2月9日、カナダ・バイオテクノロジー行動ネットワークは、26カ国233の農民や消費者団体とともに、GM小麦の商業化反対の声明を発表した。声明では、2004年に国際的な連帯によって、モンサント社の除草剤耐性小麦を撤退に追い込んだ連携は今も健在である、と述べられている。折しもカナダでは、GM亜麻の種子汚染が起きており、GMO汚染が避けられないことにもふれられている。 〔Canadian Biotechnology Action Network 2010/2/9〕

●遺伝子組み換え作物
●2倍の油脂分を含むミント

 米国ワシントン州立大学の生物学者ロブ・クロトーが、2倍の油脂分を含むGMミントを開発した。「このスーパーミントによって、米国の生産者はインドや中国の生産者と対抗できるようになる」とクロトーは述べている。〔Capital Press 2010/1/22〕

●ラウンドアップが土壌を貧困にさせる

 米国パデュー大学名誉教授ドン・ヒューバーが、除草剤耐性作物の拡大でラウンドアップ(主成分グリホサート)の使用量が増え、それが作物の収穫減をもたらす、と警告を発した。ヒューバーが2006年に大学を退職する直前に行った研究で、グリホサートがマンガン、亜鉛など植物の栄養素と結合し土壌を貧困にするため、作物の収量減をもたらすことがわかった。また、グリホサートの使用が、小麦のフザリウム菌穂枯れ病を高い確率で引き起こすとも指摘している。 〔Better Farming 2010/3/1〕

●新たな除草剤耐性雑草見つかる

 米国カンザス州立大学の植物学者フィル・スタールマンらが、カンザス州西部でラウンドアップに耐性をもつ新たな雑草を発見した。発見されたのはアカザ科のコキアで、焼け跡雑草とも呼ばれる旱魃に強い性質を持つ雑草である。スタールマンは、他の除草剤使用によるコストアップを懸念している。 〔ロイター 2010/3/1〕
 
●遺伝子組み換え動物
●GM豚、カナダ環境省の影響評価をクリア

 カナダ・ゲルフ大学の研究者が開発したGM豚が、カナダ環境省によって環境への影響はないと評価された。この豚は、遺伝子組み換えによって糞に含まれるリンを少なくしたヨークシャー豚である。この後、食品として安全と評価されれば、市場に出回ることになる。 〔The Star Phoenix 2010/2/19〕

●遺伝子治療
●癌研、遺伝子治療の患者1名死亡

 2月18日、厚労省の科学技術部会が開かれ、財団法人癌研究会有明病院から提出された重大事態等報告書が公表された。同病院においては、進行性の乳がん患者に対して多剤耐性遺伝子(MDR1)を使用し、大量の抗がん剤投与への耐性を高めようとする遺伝子治療が行われている。ベクター(遺伝子の運び屋)にはレトロウイルスが用いられている。2009年6月12日、遺伝子治療を受けた患者1名が脳にがんが転移して死亡したという。報告書では、患者の死亡はがんの進行によるものであり、「遺伝子治療との因果関係はない」としているが、末期患者に対するベクターの安全性確認のための人体実験という遺伝子治療の負の側面が、また改めて裏付けられた。



●GMO承認情報
表5 GM作物野外栽培承認(第1種使用規定)一覧

生物多様性影響評価検討会総合検討会
作物 性質 申請(開発者) 名称 認可日*
ワタ 除草剤グリホサート及びグルホシネート耐性ワタ バイエルクロップサイエンス株式会社 GHB614×LLCotton25, OECD UI: BCS-GH002-5×ACS-GH001-3 2010年2月25日
ダイズ 除草剤ジカンバ耐性ダイズ 日本モンサント株式会社 MON87708, OECD UI: MON87708-9 2010年2月25日
トウモロコシ 除草剤グリホサート誘発性雄性不稔及び除草剤グリホサート耐性トウモロコシ 日本モンサント株式会社 MON87427, OECD UI: MON-87427-7 2010年2月25日

*正式にはパブリックコメントの後に認可される。