■2010年9月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●中南米事情
●メキシコのGMトウモロコシ試験栽培、初収穫

 メキシコ政府が栽培禁止措置を覆して試験栽培を認めたGMトウモロコシが、6月後半に初収穫を迎えた。モンサントとダウ・アグロサイエンシス社が開発したこのGMトウモロコシは、北部の13ヘクタールで栽培され、GM汚染など、固有品種を栽培している小規模農家への影響が懸念されている。メキシコでは2001年に米国との国境から1400キロ南のオアハカ州でGMトウモロコシによる汚染が見つかり、その前年にはメキシコで作られたタコスの皮からスターリンクが検出されて問題になった。 〔China Dialogue 2010/6/17〕
●アジア事情
●GMOを推進するインド州政府への反対運動強まる

 インドのパンジャブ州首相がGMトウモロコシ推進の姿勢を打ち出し、市民や農民などによる反対運動が起きている。反対運動側は、州政府が環境や人体への有害な影響を示唆する科学研究を無視して、業界を優遇しているとして、推進を決めた経緯などについて州首相に明確な説明を求めている。〔Alliance for GM Free and Safe Foods 2010/6/18〕

●ヴェトナムでGM食品表示制度始まる

 8月10日、ヴェトナムでGM食品表示制度が施行された。すべての食品を対象に、GM作物由来の原材料を5%以上含む場合、包装に表示しなければならない。〔Thanh Nien Daily 2010/7/2〕

●オセアニア事情
●ニュージーランドでGM生物農薬開発

 ニュージーランド・オークランド大学の研究者が申請していたGM生物農薬研究にゴーサインが出された。これは殺虫毒素をもつ細菌「Yersinia entomophaga」をGM技術で改造したもので、大学のバイオセーフティ委員会で審査され、承認された。〔The New Zealand Herald 2010/7/16〕
●中東事情
●ヘブライ大学がGM技術で大容量メモリー開発

 イスラエル・ヘブライ大学の研究チームは、GMポプラから得られるタンパク質とシリコン・ナノ粒子を組み合わせた、大容量のコンピュータ・メモリーを開発した。この組み合わせを可能にするためにGM技術が使われたようである。 〔The Hebrew University of Jerusalem 2010/7/21〕
●遺伝子組み換え作物
●宮崎大学がGM綿の試験栽培

 7月20日、宮崎大学でGM綿栽培試験に関する説明会が開催された。試験は、宮崎大学とバイエル社が共同で行うもので、生物多様性影響評価を目的にし、同大学の隔離圃場で行われる。栽培されるGM綿は、独バイエルクロップサイエンス社の除草剤耐性と殺虫性の2つの性質を合わせ持つ綿2種類。
●政府動向
●日本政府、食料農業植物遺伝資源条約加盟へ

 今年10月に名古屋で開催される生物多様性条約締約国会議(COP10)では、遺伝資源の扱いをめぐる新たな枠組みが「名古屋議定書」としてまとめられる。これは先進国が、熱帯雨林などをもつ植物遺伝資源国から持ち出した資源から得た利益を、その資源国に還元する仕組みである。議定書成立ののち、各国で遺伝資源に関する新たな国内法制定が求められる。
 このため農水省は、食料農業植物遺伝資源国際条約(ITPGR)に加盟し、独自の規制を採用することになりそうだ。ITPGRは、FAO(国連食糧農業機関)が生物多様性条約の発効を受けて作ったもので、食料農業分野の遺伝子資源を対象としている。2004年6月29日に発効し、現在120ケ国以上が加盟しているが、米国と並び日本も未加盟だった。

●iPS細胞
●文科省、国内初の動物性集合胚を承認

 7月28日、文科省の専門委員会が開かれ、国内初となる動物性集合胚を作成する研究計画が承認された。申請していたのは東京大学医科学研究所教授・中内啓光らのグループ。動物性集合胚とは、動物の胚の中に人の細胞を移植し、一体化させて人工的に作りだす特殊な胚のこと。中内らのグループは今回、マウス胚、ブタ胚、鳥類胚に、それぞれヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)を移植して3種類の動物性集合胚を作成し、そのまま成長する能力(キメラ形成能)を持っているかを見極める基礎研究を行う。この研究が目指すのは、動物の体内で人の細胞を持った臓器を作らせ、それを移植用として用いることである。免疫拒絶反応やウイルスなど難問が多い異種移植だが、iPS細胞の登場によって移植用臓器を提供する動物の開発が再び勢いづいてきた。


●GMO承認情報
表1 GM作物野外栽培承認(第1種使用規定)一覧

生物多様性影響評価検討会総合検討会
作物 性質 申請(開発者) 名称 認可日*
ダイズ 除草剤アリルオキシアルカノエート系及びグルホシネート耐性ダイズ ダウ・ケミカル日本株式会社 DAS21606 OECD UI: DAS-21606-3 2010年7月6日

*正式にはパブリックコメントの後に認可される。