■2010年11月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●公開説明会で問題噴出、米国のGMサケの承認審査


 米国食品医薬品局(FDA)は、GM動物食品としては初めてとなるサケについて、9月19日から3日間、公開説明会を開催した。このまま進行すれば、承認され、北米内で生産・流通が始まり、日本に入ってくる可能性も出てくる。

 このGMサケは、通常のアトランティック・サーモンに、2メートル大と巨大になることから「キング・サーモン」と呼ばれるチヌーク・サーモンの成長ホルモン遺伝子を導入した。加えて、通常のサケは冬の間は成長せず、成魚になるまでに3年を要するが、寒くなってもホルモンを分泌し続けるように、ゲンゲと呼ばれるウナギに似た魚の遺伝子を導入している。その2つの遺伝子によって、通年で成長して通常の倍の18カ月で成魚になり、3年間養殖すると巨大なサケとなる。


 公開説明会では、さまざまな問題点が明らかになった。開発したアクアバウンティ・テクノロジー社は、繁殖不能にしてあるため、安全に養殖できると主張している。しかし、繁殖不能であっても、巨大な魚が環境中に逃げ出せば、魚類全体の生育環境に悪影響を及ぼす可能性がある。また、繁殖能力が回復する可能性があることを、開発した研究者も認めており、そうなると組み換え遺伝子の拡散が起きることになる。さらに同社は、魚そのものを販売するのではなく、卵を養殖場に販売する予定だと述べている。そうであれば、各地でGMサケが養殖されることになり、環境中に逃げ出す可能性がいっそう強まる。

 開発した企業や研究者は、食料生産に寄与すると主張しているが、1ポンドのサケが育つには2ポンドの魚を必要とするため、かえって食料不足を招くことになる。
 説明会では食品表示に関しても議論されたが、現状のGM作物同様に、表示されない可能性が大きいと見られている。

 説明会後に、当のFDAの科学者からも、データ不足が指摘された。さらには、アラスカ、カリフォルニアの両州から、反対が表明された。また、民主党の上下両院の議員有志が、FDAに対して承認しないよう求めるなど、批判が相次いでいる。 〔The Hill 2010/9/29ほか〕