■2004年2月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●海外事情
タンザニア議会がGM作物拒否
 タンザニア議会は、政府が進めている 遺伝子組み換え種子・作物の認可に反対する決議を採択した。現在タンザニアは、35万トンの食料不足に陥っており、そのため政府は、それをおぎなうためにGM種子・作物の認可を検討していた。現在同国にはGM作物を規制する法律や指針がないため、いったん導入すると生態系の破壊を止めることができない、というのが決議理由である。〔SciDev.net 2003/11/28〕

中国でネッスル訴えられる
 中国・上海の女性がスイスの多国籍企業ネッスル社を訴えた。その理由は、同社が中国で販売しているチョコレート飲料「Nesqiok」の原料に、遺伝子組み換え作物を使用していることを表示しなかったというものである。ネッスル社は「使っていない」と主張したが、上海の裁判所が分析したところGM作物が検出された。〔Swiss news 2003/12/17〕

タイでGM作物実験解禁か
 タイで、遺伝子組み換え作物の野外実験解禁に向けた動きが強まっている。モンサント社の殺虫性(Bt)綿が遺伝子汚染を引き起こしたため、1999年以来、野外実験は禁止されている。ソムサック農業・協同組合相は、近々GMパパイアの野外実験を政府に要請する。
 この動きには、2006年までにタイをGM作物栽培のアジア拠点とする計画をもつモンサント社が関与している。生物多様性条約カルタヘナ議定書国内法制定に向けた審議が遅れている現在、制定前にGM作物栽培が解禁される可能性がでてきた。〔バンコク・ポスト 2003/12/14〕

米国で最初のGMフリー自治体?
 米カリフォルニア州メンドチノ郡で、GMフリー自治体採択を求めて住民投票が準備されている。それに対して、モンサント、ダウ・アグロサイエンス、バイエル・クロップサイエンス、ヘレナ・ケミカル、デュポンの各社は合同で、昨年12月19日に訴訟を起こした。
 以前にもバイテク企業団はオレゴン州で「GM表示」をさせないために、600万ドル以上を注ぐキャンペーンを繰り広げたことがある。今回は、住民投票そのものを阻止するための訴訟である。〔Laura Hamburg 2003/12/22〕

●遺伝子組み換え花卉
サントリーがGM花卉事業を強化
 サントリーは12月2日、オーストラリアのベンチャー企業フロリジーン社を買収すると発表した。両者はもともと共同で、青いカーネーションを開発した経緯がある。サントリーは2002年7月に花事業を分社化して、サントリーフラワーズを設立したが、遺伝子組み換え作物開発の基礎研究部門は本社に残していた。基礎研究の強化が 買収の目的とみられる。 〔日経バイオテク2003/12/8〕

●異種移植
ブタのGM腎臓をヒヒに実験移植
 米国マサチューセッツ総合病院のDavid Sachsらの研究チームは、人間に超急性拒絶反応が起きないように遺伝子組み換え技術で改造したブタの腎臓を、ヒヒに移植する実験を行った。8頭のヒヒに移植したところ、最大81日間生存し、組み換えを行わなかったブタの腎臓移植の場合の生存日数が30日だったことから、生存日数の延長に成功したことになる。しかし、まだヒヒの臓器を同種移植するよりは短いという。 〔Nature 2003/12/18〕

●ES細胞
ES細胞由来の精子で受精
 12月10日、米国ボストン小児病院の研究者らは、マウスのES細胞から精子を分化させ、それを卵子に受精させた。この精子には尾部がなく、自力では受精能力を持たない。受精は確認されたが、胚がそのまま育つか注目されている。 〔Nature 2003/12/10〕

ヒトES細胞研究指針改定の議論始まる
 ヒトES細胞は人の受精卵を壊して作られるため、その取扱いは2001年9月に文科省が運用を開始した「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針」(樹立とは、ES細胞を作製すること。使用とは、ES細胞を研究などに用いること)によって厳しく制限されている。しかし、ここにきて早くも規制緩和の動きが出てきた。2003年12月18日、特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会(文科相諮問機関、科学技術・学術審議会)が開かれ、指針改定に向けての議論が始まった。現在までに承認された研究計画は、樹立に関しては京都大学の1件、使用に関しては京都大学や田辺製薬、慶応大学などの8件である。この指針改定で審査が簡略化されれば、さらに件数は増加し、安易な使用につながるおそれがある。

●省庁動向
ヒト胚の取扱いに関する中間報告書案まとまる
 2003年12月12日、内閣府総合科学技術会議生命倫理専門調査会の第27回会合が開かれ、ヒト胚の取扱いに関する中間報告書案がまとめられた。前々回と前回の会合で紛糾した議論も(本誌2003年12月号参照)、各委員が個人的な考え方を述べた意見書を添えることで決着し、報告書案そのものの内容はほとんど変わっていない。今後、2月末までパブリックコメントが募集され、人クローン規制法の施行から3年目となる2004年6月までに、最終報告書がまとめられる。

厚労省、死亡胎児の取扱いでヒアリング
 2003年12月12日、ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会(厚労相諮問機関、厚生科学審議会)が開かれ、人工妊娠中絶で生じる死亡胎児の細胞利用に関するヒアリングが行われた。参考人として意見を述べ
たのは、齋藤有紀子・北里大学医学部専任講師、柘植あづみ・明治学院大学社会学部助教授、大濱眞・NPO法人日本せきずい基金理事長など6名。また、2003年4月に実施されたヒト幹細胞研究の現状に関するアンケート調査の結果も公表された。42%という低い回収率(送付総数1441、回収総数606)だが、ヒト胎児細胞を用いた基礎研究を行ったのが33件、さらに臨床応用を目指したのが11件あった。この数字が現状を捉えているわけではないが、死亡胎児の細胞が研究に使われていることだけは間違いない。

●生分解性プラスチック
生分解性プラスチックのGM依存増す
 現在、日本で製造されている生分解性プラスチック材料の主流は、ポリ乳酸で、そのすべてを米カーギル・ダウ社から輸入している。ポリ乳酸の原料は米国産トウモロコシである。2003年の米国における遺伝子組み換えトウモロコシ作付け割合は約40%に達しており、生分解性プラスチック原料に含まれるGMトウモロコシの割合が確実に高くなっている。
 ちなみに、トヨタ自動車がポリ乳酸製造プラント建設に着手した。当初はインドネシア産サツマイモを原料にする予定だったが、効率の点からブラジル産サトウキビへ転換を図っている。

●企業動向
モンサント社がGM種子で価格操作
 モンサント社は競争相手のパイオニア・ハイブレッド・インターナショナル社とGM種子価格の引上げを図った。法律家たちは、当局の調査がまもなく始まるだろうと予測している。同社はまた、ノバルティス社とマイコジェン社にも価格調整の圧力をかけたが、両社はいずれも拒否したことを明らかにした。これに対しモンサント社は、種子のライセンス協定の話し合いだと、反論している。 〔ガーディアン 2004/1/7〕