■2005年9月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●アジア事情
大幅減収をもたらしたインドBt綿

 インドでは、モンサント社のBt綿が20%程度しか発芽せず、大きな経済的打撃を受けたとして農家の怒りを買っている。カンマム地方では損害賠償を求める農家が5カ所の種子販売店に押しかけ、店内になだれ込み警察が介入するまでにいたった。種子会社はいったんは賠償に応じる姿勢を示したが、農民の数が多く撤回した。種子会社では、気候に合わなかったと説明している。このBt綿は地元で普及している品種を用いたとされているが、本当に地元の品種を用いたのか、農民の間では疑う声も出始めている。 〔The Hindu 2005/7/5〕

タイでGMパパイヤ違法栽培拡大

 タイでは、34県2600軒の農家によってGMパパイヤが違法栽培され、販売されたとする政府報告書が出た。GMパパイヤは欧州、中国、日本などに輸出されている可能性がある。
 またグリーンピースが、タイ農務省がコンケーンで試験栽培を進めているGMパパイヤを入手し、検査したところ、安全性に疑問のある抗生物質テトラサイクリン耐性遺伝子が見つかった。〔Greenpeace International 2005/7/5〕


●クローン
米国で酪農業界がクローン牛反対を表明


 現在、米国FDA(食品医薬品局)は体細胞クローン牛を食品として認可するかどうか検討中である。クローン牛の市場化に対しては、酪農業界が消費者の不安を理由に強く反対している。2002年のギャラップ調査では、クローン動物に「倫理的に問題を感じる」と答えた消費者が66%に達し、業界団体のIFIC(国際食品情報協議会)の今年3月の調査でも、63%が「買わない」としている。 クローン牛は1頭つくるのに約2万ドルかかり、牛肉として販売すると採算が取れないため、牛乳生産に用いる意向。今年初め、コネチカット大学の研究チームがクローン牛と非クローン牛の間に基本的な違いはないとする報告をまとめるなど、食品として認可する方向での動きが強まっているが、承認されたとしても市場化の目途は立っていない。 〔AP 2005/7/11〕


●バイオ医薬品
アルツハイマー病予防ピーマン

 東京大学大学院総合文化研究科教授・石浦章一らは、アルツハイマー病のワクチン開発を進めてきたが、並行して、徐々に効果を発揮する「食べるワクチン」GMピーマンを開発した。これはアルツハイマー病の原因と考えられているβ−アミロイドタンパク質にかかわる遺伝子をピーマンに導入したもので、ベクターにはタバコモザイクウイルスを使用した。ピーマンの葉1グラム当たり100マイクログラムのタンパク質が蓄積し、それをマウスに投与すると抗体が増えることが確認できたという。〔日経バイオテク 2005/7/18〕


食べるワクチン開発のプラント建設

 産業技術総合研究所は、「食べるワクチン」の本格的開発に向けて、日本製紙、北里研究所と共同で、6億円をかけてパイロット・プラントを建設する。イネ、タバコ、イチゴを用い、抗体やインターフェロンなどを生産するGM作物の開発に取り組む。 〔日経バイオテク 2005/07/18〕

●遺伝子組み換え樹木
筑波大学がGMユーカリの野外試験へ


 7月5日、茨城県つくば市にある筑波大学生命環境科学科教授・渡辺和男らは、9月からGMユーカリの栽培試験を同大学の圃場で行う、と発表した。このGMユーカリは、土壌細菌由来遺伝子を導入して、耐塩性を強化した。承認されればすぐに栽培試験に取りかかる。試験規模は最大20本を予定している。
 もし栽培が開始されると、日本で初めての野外でのGM樹木試験となる。 〔毎日新聞茨城版 2005/7/7〕


●自治体動向
上越のGMイネ試験栽培に新潟市長会が中止決議


 7月22日、新潟県市長会(会長・森民夫長岡市長)は、上越市にある中央農業研究センター・北陸研究センターで行われている、GMイネの野外栽培試験中止を求める決議を全会一致で可決した。理由には、研究センターによる説明責任が果たされたいないことと、消費者の反発が強く風評被害が懸念されることが上げられている。〔新潟日報 2005/7/22〕


●省庁動向
農水省、GM作物1品種4品目を承認


 7月21日、生物多様性影響評価検討会総合検討会(環境省との共催)が開かれ、モンサント社申請の除草剤耐性トウモロコシなど1品種4品目を第1種使用として承認した。第1種使用とは、カルタヘナ国内法に定められた野生生物への影響なしという評価で、野外栽培を許可したものである。承認された4品目のうち、掛け合わせたものは3品目にのぼり、今回初めてチョウ目殺虫性・コウチュウ目殺虫性・除草剤耐性の3つの性質を掛け合わせたものが承認された。


●ES細胞
文科省、ヒトES細胞研究2件を新たに承認


 7月15日、ヒトES細胞研究を審査する文科省の専門委員会が開かれ、岡山大学大学院と京都大学大学院がそれぞれ申請していた使用計画が承認された。使用計画とは、すでに作られたヒトES細胞を用いて分化誘導などの研究を行うことである。2機関が用いるのは京都大学再生医科学研究所が作成したヒトES細胞で、岡山大学は肝細胞、京都大学は網膜細胞への分化を目指した基礎研究を行う。またこの日、首都大学東京が申請していた使用計画も審査されたが、学内倫理委員会での議論が不十分との理由から承認は見送られた。


●生殖医療
文科省、人クローン胚で韓国から研究者招く


 7月25日、人クローン胚の作成に向けた検討を行っている文科省の作業部会が開かれ、科学技術文明研究所(川崎市)の洪賢秀(HONG Hyunsoo)研究員 と、世界で初めて人クローン胚からES細胞を作った研究チームの中心メンバーである韓国ソウル大学の文言容(MOON Shinyong)教授を招いてのヒアリングが行われた。最初に洪研究員が韓国の生命倫理に関する法制度を解説し、続いて文教授が研究の現状を報告した。洪研究員によれば、韓国では人クローン胚の作成は、難病治療目的の研究以外は法律で禁止しているという。だが、限定許容している難病の中には、ハンチントン病や先天性免疫不全症などの遺伝性疾患が多数含まれており、今後、人クローン胚研究に遺伝子治療が掛け合わされる可能性が高い。