■2006年7月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
オーストラリアでGM小麦の試験栽培継続へ

 グレイン・バイオテク・オーストラリア社は、西オーストラリア州でのGM小麦試験栽培で効果があったと発表、今年もまた実験を継続することになった。このGM小麦は耐塩性で、乾燥して塩害が広がっている土壌での生育を目指したものである。日本でもアルカリ土壌に耐性をもった鉄欠乏耐性イネの開発が東北大で進められるなど、作物栽培に不適応な土壌に抵抗性をもつ作物の開発が広がっている。エジプトでも耐塩性小麦の試験栽培が行われている。 〔The Western Australia 2006/5/12〕

農環研によるGM大豆の交雑試験

 農業環境技術研究所は5月18日、昨年より開始したGM大豆とツルマメとの交雑に関する、今年の試験栽培計画を発表した。昨年行った実験は、GM大豆と非GM大豆の自然交雑試験と、GM大豆とツルマメの自然交雑試験だった。後者は、開花期や交雑種子の特性などの基礎調査であった。今年は、研究所内の一般圃場に、大豆から2メートルごとに10メートルまでツルマメを植え、ツルマメ中の遺伝子を解析する予定である。

続報・Bt綿による羊死亡

 前号でインド・アンドラプラーデシュ州ワカンガルにおける、Bt綿を収穫した後の畑の草や葉を食べた羊が死亡するケースについての第一報をお伝えした。その後、政府畜産局や専門家による調査が始まった。まだ結論は出ていないが、死んだ羊に病原性の微生物は検出されていないという。Bt綿は、農薬の使用量を減らすのが目的であり、農薬の影響は考え難い。調査に当たった「持続可能な農業のためのセンター」の研究チームは、Bt 綿による影響が有力だと考えている。 〔Hindu 2006/5/21〕

北陸研究センター、7月20日にGMイネの田植え

 中央農業総合研究センター・北陸研究センターで開発したGMイネの田植えが7月20日に行なわれる。4月20日、北陸研究センターは、300m以内の周辺住民に限定した説明会を開催した。参加者は13名だった。4月25日に予定していたより広い地域を対象とした説明会は、説明がないまま中止となった。
 研究センターによると今年は、複合耐病性イネの苗を1000本、2アールに作付けする予定である。昨年は、5月31日と6月29日の2回に分けて田植えが行なわれ、後者に関しては周囲のコシヒカリと開花時期が重ならないように配慮したが、結局うまくいかなかったため、今年は田植えを大幅に遅らせて1回だけ行う予定。

Bt作物の耐性害虫対策は無効か?

 フランス国立農業研究所(INRA)アンブロワーズ・ダレスキーらの研究チームは、米国で行われている殺虫性作物に対する耐性害虫防止策が無効である可能性がある、という研究結果をまとめた。米国ではBt毒素に対して耐性をもった害虫を増やさないために、非GM作物を交互に植えるなどの措置を取るよう指導している。この方法は、非GM作物で害虫を生かし、それと交雑させて耐性の広がりを防ぐというものである。今回の研究では、非GM作物にいる害虫との交雑がほとんどないという結果が出た。 〔PLoS Biology 2006/5/30〕


●遺伝子組み換え動物
動物産生の医薬品承認へ

 ヨーロッパ医薬品庁は、初めて遺伝子組み換え動物がつくりだす医薬品、すなわち動物工場医薬品の承認に向けて動きだした。2006年5月29日から6月1日にかけて開かれた同庁の人間用医薬品生産のための安全委員会は、米マサチューセッツ州にあるGTCバイオ・セラピューテックス社が開発したヤギのミルクを用いてつくりだすアンチトロンピンを承認するように求めた。アンチトロンピンは、抗血液凝固剤である。
 動物工場は、微生物を用いた生産と違い、大きなタンパク質を大量につくりだすことができる。しかし、臨床データが少ないことと、試験した医薬品と販売する医薬品との間で微妙に製造方法が異なること、動物の体を経るため従来の方法では考えられない危険性があること、などの問題があり、今年2月いったん否定的な見解がまとめられたが(2006年4月号参照)、それを覆す形となった。 〔EMEA 2006/6/2〕
●企業動向
独BASF社がGM作物の開発競争に参入

 ドイツの農薬メーカーBASF社は、GM作物開発に積極的に取り組み始めた。同社のアグリビジネス部門であるBASFプラント・サイエンス社が、4月10日にGM作物開発に3年間で3億2000万ドル投じると発表。さらに5月17日には、GMイネ開発などを推進しているベルギーのクロップ・デザイン社を買収したと発表した。これによって先行するモンサント社、バイエル社、シンジェンタ社などとの開発競争に参入することになりそうだ。〔日経バイオテク2006/5/22〕
●省庁動向
経産省がGM植物による医薬品生産などを支援

 経産省は、GM植物などを用いて付加価値の高い物質を生産させる計画の委託先を公募していたが、5月30日、委託先を発表した。GM作物にかかわる分野は次のとおり。ジャガイモを用いた家畜用経口ワクチン素材の開発(産業技術総合研究所など)、トマトを用いた糖尿病予防ミラクリン製造(筑波大学など)、レタスを用いた皮膚炎症薬チオレドキシン製造(奈良先端科学技術大学院大学など)、ミヤコグサ・ミニトマトを用いた抗腫瘍活性物質製造(京都大学など)などである。