■2006年7月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●自治体動向
東京都がGM作物栽培指針を策定

 5月18日、東京都産業労働局は、GM作物栽培規制に関する都の方針を定めた「都内での遺伝子組換え作物の栽培に係る対応指針」を策定した。この指針の特徴の1つは、他の自治体の条例や指針にはない、経済的被害に対する対応が入ったことだが、しかし、注の中で「経済的被害には風評被害は含まれない」とあり、農家の被害を補償する中身にはならなかった。
●コーデック
コーデックス委バイテク作業部会開催

 GM動物食品の安全性評価基準づくりを進めているコーデックス委員会バイオテクノロジー応用食品特別部会のワーキンググループの会合が、5月末からブリュッセルで開催された。2月に東京で開かれた会合では、オーストラリアが既存のGM植物食品の指針を基に提案し、参加者からの意見を加え素案がまとめられた。ほとんどの字句が、植物を動物に置き換えただけのずさんな素案で、11月に開かれる本会議に提出できないという判断があったものと思われる。
●GMOフリーゾーン
韓国でGMOフリーゾーン運動スタート

 6月6日、韓国江原道原州テアンリ地区で、韓国で初めてのGMOフリーゾーン運動宣言集会が開催された。主催は、ソウル・ウリ農生協と同生協と取引のあるカトリック農民会のテアンリ分会で、原州協同組合運動協議会も加わって催された。例年この日は、有機農業を推進している同分会によって、ウリ農生協の消費者と一緒にアイガモを放つ行事が行われており、それに合わせて宣言の式典が行われた。
●欧州事情
ローマでGM小麦シンポジウム開催

 5月10日、イタリア・ローマでGM小麦に関するシンポジウムが開かれた。主催はCDG(遺伝子に関する権利評議会)で、GM小麦がイタリアにもたらす影響についての調査報告がまとまったことを受けて開催された。これまでイタリア政府はGM作物・食品に反対してきたが、今年4月の総選挙で僅差ながら中道右派のベルルスコーニ政権が不信任となり、中道左派への政権交代にともない、政策に変化が起きる可能性が出てきた。そこで、新政権に対して強く働きかけるために、今回のシンポジウムが企画された。海外からは、米国IATP(農業・貿易政策研究所)でGM小麦問題を担当しているデニス・オルソンと日本の消費者団体が招かれ、イタリア国内からは農業・食品関連団体の代表と新政権の農業問題担当者が招かれた。
●アジア事情
インドでモンサント社に高額特許料徴収禁止

 前号で、インド政府の調査委員会が、モンサント社のインド法人であるマヒコ・モンサント・バイオテク社に対して、Bt綿の種子独占によって高額の特許料を取っていることが独占禁止法に違反する可能性があるという警告を発した、と伝えた。さらに5月11日には、アンドラプラーデシュ州の訴えを受けて調査・検討を加えてきた、政府の独占的・制限的取引規制委員会が、同社に対して高額の特許料の徴収を禁止する暫定命令を下した。インドで高額な特許料を得てきたモンサント社の戦略が批判された形となったが、これに対する今後の出方が注目される。 〔Busines Line 2006/5/11〕

台湾でGMパパイヤ違法販売取り締まりへ

 台湾の農業委員会(Council of Agriculture)は、GMパパイヤが市場に出ないよう地方自治体に通達を出した。同委員会によると、台湾では耐病性パパイヤの試験栽培が2003年より行われてきた。しかし、このGMパパイヤは農業委員会の認可を受けておらず、市場に流せば、食品衛生法や種苗法違反で罰せられることになる、と警告した。日本で最近、台湾産パパイヤの品種が改善されたとして輸入を再開したことから、GMパパイヤの混入によって評価を下げ、損害を被らないようにするのが目的のようである。 〔Taiwan News 2006/05/25〕
●クローン
クローン競走ラバが登場

 米国ネバダ州の競馬場で、史上初めてクローン技術で誕生した2頭のラバが走ることになった。このクローン・ラバは、3年前にアイダホ大学のゴートン・ウッズらによって、チャンピオン・ラバの体細胞よりつくりだされた。ラバは雄ロバと雌馬との掛け合わせで繁殖力がないため、チャンピオン・ラバの次の世代を産ませることができない。2頭のラバは、遺伝的にはまったく同じだが、2年間異なった環境で育てられた。遺伝的要因・環境要因がどれだけ関与するかを見るのが目的だという。〔BBC NEWS 2006/5/22〕
●ヒトクローン胚
ヒトクローン胚、報告書たたき台まとまる

 6月6日、ヒトクローン胚の作成・利用に向けて検討している文科省の作業部会が開かれ、報告書のたたき台がまとめられた。この報告書を基に研究を解禁する指針が作成される。ヒトクローン胚の研究素材となる卵子(未受精卵)の入手方法は、不妊治療目的で採取され使用されなかったものや、性転換手術の際に摘出された卵巣などを用いることが認められた。ボランティアによる無償提供については、当面は禁止だが、認める方向で条件の検討を引き続き行っていく。ヒトクローン胚研究の実施機関については、サルのクローン胚での十分な研究実績がある機関に限定するとしている。
 また、本作業部会では2005年7月25日に開かれた第5回会合で、ヒトクローン胚からES細胞の作成に成功したという論文を捏造した韓国ソウル大学の黄禹錫研究チームの中心メンバー、同大学教授文言容を招いてヒアリングが行われたが、この件については、報告書のたたき台を作る際の参考にはしなかったとして、なかったことにしている。

今月のGMO承認情報
表2 GM作物野外栽培承認(第1種使用規定)一覧
生物多様性影響評価検討会総合検討会
作物 性質 申請(開発者) 名称 認可日*
セイヨウナタネ 除草剤耐性及び雄性不稔 バイエルクロップサイエンス MS8,OECD UI:ACSBN005-8 6月12日
*正式にはパブリックコメントの後に認可される。