■2008年1月号

今月の潮流
News
News2
今月のできごと


今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る






























バイオジャーナル

ニュース


●アフリカ事情
●ガーナが輸入した種子にGM種子が混入か?

 ガーナの農業専門家が、ブルキナ・ファソから輸入されたトマトにGM種子が含まれている可能性があると指摘した。同専門家によると、ブルキナ・ファソではGM綿の栽培が進み、それに刺激されてGMトマトの大規模栽培に向けた動きが始まっているという。〔The Stateman,Ghana 2007/11/21〕

●北米事情
●米国で殺虫性作物耐性害虫拡大に懸念

 全米トウモロコシ生産者協会が、殺虫性作物耐性害虫の拡大に懸念を示している。米国では、殺虫性作物耐性害虫の拡大を防ぐため、殺虫性トウモロコシ(Btコーン)を栽培する際、一定の割合で非組み換えトウモロコシの栽培を義務づけている。このところのバイオ燃料ブームでトウモロコシの生産が増加し、連作障害で害虫が増えたため、さらにBtコーンを栽培する農家が増えた。このまま行くと非組み換えトウモロコシが少なくなり、殺虫性作物耐性害虫がさらに増加することに懸念を表明したものである。 〔NCGA 2007/11/13〕

●GM食品表示
●カリフォルニア州知事がクローン表示で拒否権

 米国カリフォルニア州で、クローン動物由来食品に表示を義務づける法案が議会を通過したが、シュワルツネッガー知事が法案への署名を拒否した。このままでは表示がないままクローン牛肉などが店頭に登場することになる。消費者団体が行った調査では、消費者の86%が表示を求めている。 〔Consumers Union 2007/11/14〕

●ロシア上院、GM表示法案0.9%以上混入で可決

 ロシア議会上院は10月17 日、GM原材料が0.9%以上混入している場合、表示を義務づける法案を可決した。これはEUの基準と同じであり、日本の5%以上に比べてはるかに厳しいものの、これまで同国がとっていた0%混入政策からすると事実上の緩和となる。〔Just Food 2007/10/18〕

●ブラジル法廷がGM作物1%未満混入にも表示を命じる

 11月12日、ブラジル連邦裁判所の3人の判事が、GM食品表示で1%未満のGM 原材料混入にも表示を行うよう命じた。現在ブラジルでは、1%以上の混入に関して警告を意味する「T」表示を行うことが義務づけられているが、それを1%未満にも行うように求めたものである。 〔Latinamerica Press 2007/11/29〕

●遺伝子組み換え動物
●スーパーマウス開発される

 米国の研究グループが、とてつもない運動能力を持つGMマウスを開発した。分速20.で5時間(6q)以上走りつづけることができ、普通のマウスに比べて60%多く餌を食べるが体重は増えず、生命力も生殖能力も高く、活発で攻撃的だという。研究者は、人体への適用が目的ではないとしながら、将来は運動選手の能力アップや新薬の開発、治療法の開発などに応用される可能性はある、とコメントしている。〔Case Western Reserve University 2007/11/2〕

●産業動向
●クモの遺伝子を導入した絹糸開発される

 信州大学教授中雅雄が、クモの糸を作る遺伝子を蚕に導入して、10%程度クモの糸の成分が混ざった生糸を作り出した。ジョロウグモの糸の遺伝子を蚕の卵に注入したもので、通常の絹よりも強度や伸縮性に優れるとして、今後、靴下の製造会社岡本と共同で靴下などの製品化を目指す。 〔読売新聞2007/12/6〕

●GMOフリー
●米レストランチェーンがGMホルモン剤フリーへ

 米国のメキシコ料理チェーン店「Chipotle メキシカン・グリル」が、2007年末までにGM牛成長ホルモン剤をまったく使わないチーズを提供することになった。米国で最初のGMホルモン剤フリー・レストランチェーンの登場である。 〔Pittsburgh Post-Gazette 2007/11/28〕

●生殖補助医療
●日本学術会議、代理出産の議論本格化

 いよいよ代理出産の是非をめぐる本格的な議論が、日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」において始まった。11月28日に開かれた第11回会合では、厚労省が今年の2月から3月にかけて、20.69歳の一般の男女5000人を対象に実施した生殖補助技術に関するアンケート調査の集計結果(回収率62.2%)が公表された。それによれば、代理出産を本人が「利用したい」もしくは「配偶者が賛成したら利用したい」とする回答を合わせると全体のほぼ半数にのぼる。また、代理出産を一定の条件のもとで社会的に認めてもよいとする回答は54%に達している。これらの数字が今後の議論に与える影響は大きいと見られる。

●iPS細胞
●文科省、ヒトiPS細胞からの生殖細胞作成を議論

 現在、ヒトES細胞から精子や卵子(生殖細胞)を作り出すことは指針によって禁止されているが、文科省の専門委員会では2006年4月の時点で生殖細胞作成を認める方針を打ち出し、その条件について審議が続けられている。2007年12月7日に開かれた同委員会の会合では、ES細胞とほぼ同じ性質を持つ人工万能性幹細胞(induced pluripotent stem cell = iPS 細胞)からの生殖細胞の作成をどう扱うかが議論された。成人の皮膚細胞からヒトiPS細胞を作り出すことに成功したと、11月21日に論文発表したばかりの京都大学再生医科学研究所教授・山中伸弥のヒアリングが行われた。
 今回で2回目のヒアリングとなる山中は、「(iPS 細胞を)今のところは市販されている白人の皮膚細胞から作っているが、今後は実際に患者さんの細胞から作っていきたい」とこれからの抱負を述べ、生殖細胞の作成についても不妊治療への応用の道があり、研究の透明性を確保した上で行うべきと語った。これに対して専門委員会主査の理化学研究所研究顧問・豊島久真男は、「個人的な考えでは、受精卵を使わないiPS細胞からの生殖細胞の作成は、ローカルな倫理委員会で審査し、産科婦人科の先生方と相談の上、研究を進めていくのがいいと思う」と、あくまでも国の規制外にiPS細胞を置くとの考え方を示した。この意見に対し、他の委員から「子孫に受け継がれる生殖細胞は慎重に」などの発言があり、引き続き審議していくことになった。