■2008年5月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●南米事情
●ブラジル農民がモンサント社の圃場に抗議

 ブラジルで、300人の女性農民がモンサント社の試験圃場に侵入し、GMトウモロコシと養樹園を破壊した。 この行動は、今年2月にモンサント社のGMトウモロコシ「MON810」とバイエル・クロップサイエンス社の同「リバティ・リンク」栽培を同国が承認したことに抗議して行われた。 〔ロイター 2008/3/7〕

●オセアニア事情
●西オーストラリア州初のGMナタネ試験栽培断念

 種子企業エスペランス・ダウンズ研究所が準備していた、西オーストラリア州初のGMナタネ試験栽培は、州政府の強い拒否姿勢の前に行うことができなかった。この試験は、南東プレミアム小麦生産者協会(SEPWA)やKalyx Agricultureと共同で2.5haの土地で栽培する予定だった。もはや同州では試験を行うことは困難である、とSEPWAのスポークスマンは述べた。〔The West Australian 2008/3/18〕

●アジア事情
●中国政府がGM作物開発に巨額の投資

 GM作物大国への道を歩んでいる中国が、新たなGM作物開発計画に、さらに巨額の投資を行う。元中国農業科学アカデミー(CAAS)バイオテクノロジー研究所の責任者Huang Dafangによると、政府は、過去5年間に比べて約5倍にあたる100億元(1400億円)を投入する予定だという。 〔Royal Society of Chemistry,UK 2008/3/26〕

●GMOフリー
●スペイン・ポルトガルの島々がGMOフリー宣言

 スペインとポルトガルの大西洋にある島々が、相次いでGMOフリーを宣言した。3月17日に、ポルトガルのマデイラ諸島が宣言。次いで、島の面積の42%が自然保護区域のスペインのカナリア諸島が3月26日、GMOフリーを宣言した。 〔Ecologistas 2008/3/26ほか〕
●企業動向
●明治製菓がGM技術で製造したチョコレートなどを回収

 3月19日、明治製菓は「GF2」というオリゴ糖を用いたチョコレートなどの自主回収を発表した。このGF2は、製造する際にGM技術を応用した酵素を用いるが、その申請を怠っていたためである。回収対象商品は、市販品は「GF2チョコレート」5種類と「GF2顆粒」2種類。通販では「ダイエット&コラーゲン」「カラダナビ活性サプリ」など健康食品を中心に9種類、計16種類の商品。また、不二食品も原料の一部を明治フードマテリアルより購入していることから、葛湯9種類と豆乳3種類、計12種類の商品を回収した。

●植物工場
●カナダのバイテク企業がベニバナでインシュリン製造

 カナダのバイテク企業SemBioSys社が、ベニバナを用いてつくったインシュリンで、毒性評価の動物実験を行う、と発表した。植物に医薬品を作らせることを植物工場というが、まだ市場化した医薬品はない。同社は、この動物実験で安全性が確認された後、今年中には臨床実験に入りたいとしている。 〔SemBioSys 2008/3/26〕

●省庁動向
●農水省のGM食品成分分析が公開される

 独立行政法人・農研機構食品総合研究所が、農水省が監修した「遺伝子組換え体の産業利用における安全性確保総合研究」で行ってきた、GM作物の食品成分分析のデータベースを、ホームページで公開した。リンク先は、http://afdb.dc.affrc.go.jp/afdb/index.asp

●万能細胞
●「万能細胞」からの生殖細胞作成、議論再燃

 ヒトES細胞などの「万能細胞」から生殖細胞を作り出そうという動きが活発化してきた。3月26 日に開かれた文科省の専門委員会では、無精子症などの男性不妊を専門とする千葉大学大学院教授・市川智彦のヒアリングが行われた後、専門委員会の下に「生殖細胞作成・利用作業部会」を設置することが決まった。

●遺伝子治療
●東大医科研遺伝子治療、患者4名死亡

 3月13日、厚労省の科学技術部会(厚生科学審議会)が開かれ、腎臓がんに対する遺伝子治療を実施している東大医科学研究所講師・中岡隆志の研究グループ提出の「重大事態等報告書」が公表された。それによると、遺伝子治療を施した患者4名すべてが死亡し、臨床研究は実質的に終了した。死亡の原因については、腎臓がんの「悪化に伴うものと考えられる」として、遺伝子治療の安全性は「短期的のみならず長期的にも問題がない」と判断したという。以前から遺伝子治療は、治療効果が不明にもかかわらず、安全性を確認するために行われている人体実験と批判されてきた。今回、また新たに4名の患者が亡くなり、その批判が裏付けされたことになる。