■2008年7月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え動物
●疾患モデルGM猿作成を市民団体が批判

 英国でハンチントン舞踏病の疾患モデルのGM猿が開発された。この病気は、人間の場合30歳代後半から発病する致死性の優性遺伝病である。その病気の遺伝子を持った猿が5匹作られ、うち3匹が生後直後に死亡したが、その遺伝子の影響と考えられている。実験は動物虐待だとして市民団体から激しい批判が寄せられている。 〔The Times 2008/5/19〕
●遺伝子組み換え作物
●農業生物資源研でGMスギ花粉症イネ作付け

 茨城県つくば市にある独立行政法人・農業生物資源研究所が5月17日、GMスギ花粉ペプチド含有イネ作付けの説明会を開き、6月10日に田植えを行った。このイネは、徳島県小松島市にある日本製紙の工場敷地内にある温室でも栽培され、収穫された米を用いて動物実験や臨床試験が行われる。
●企業動向
●独BASF社が台湾の研究所と共同開発へ

 独BASFプラント・サイエンス社が、台湾の研究機関アカデミア・シニカとGM作物開発の協力関係を結ぶことで調印した。主なターゲットは、環境ストレス耐性関連遺伝子の発見と、それを利用した作物の開発である。アカデミア・シニカが遺伝子を探し、BASF社がそれを利用して作物を開発する。 〔Bayer Plant Science 2008/5/27〕

●バイテク企業による温暖化関連特許の取得合戦激化

 バイテク企業の間で、地球温暖化に絡んだ旱魃耐性や環境ストレス耐性のGM作物開発が過熱化し、遺伝子特許の争奪戦が起きている。すでに独BASF、スイス・シンジェンタ、米モンサントの各社によって、温暖化問題関連の遺伝子の3分の2がファイル化された、とカナダで持続可能な農業を目指す市民団体のETCグループは報告している。 〔The Washington Post 2008/5/13〕
●GM汚染
●ベルギーでGMナタネ汚染起きる

 ベルギーのナタネ畑が、ヨーロッパで栽培が認められていないGMナタネに汚染されていると、6月3日、同国公衆衛生局が発表した。バイエル・クロップサイエンス社が所有する、飼料、食用油、バイオ燃料用の15のナタネ畑で見つかり、種子の5%が汚染されていた。〔Agence France Press 2008/6/3〕

●ES細胞
●「万能細胞」からの生殖細胞作成に否定的意見

 5月20日、ヒトES細胞など、いわゆる「万能細胞」からの生殖細胞作成の是非を検討している文科省の作業部会が開かれ、東京農業大学応用生物科学部教授・河野友宏からのヒアリングが行われた。河野は、哺乳類の単為生殖とクローンを研究し、卵子のみから誕生させたマウス「かぐや」の論文を2004年4月に科学雑誌『ネイチャー』に発表している。ヒアリングの最後に河野は、ヒトES細胞などを用いて生殖細胞を作り出すことは、倫理的・社会的視点から多くの問題があり、「現時点ではマウスでの基礎研究段階と判断」すると締めくくった。

●ヒト胚
●ヒト胚合同委員会、ボランティアの卵子提供で議論

 6月2日、ヒト胚の作成・利用に関する指針作りを進めている文科・厚労の合同専門委員会が開催され、研究に用いられる卵子(未受精卵)の入手方法について、無償提供を原則とすることで合意がなされた。無償でのボランティアによる提供を認めるかどうかは、委員の間で意見が割れた。関係者の女性に未受精卵の提供が過大に期待され、本当の意味での「自由意志」からの提供にならない場合も考えられるとして、事務局が出してきたのは反対案だった。それに対し、委員からは「純然たるボランティアは認めるべき」との賛成意見が続出。慶応大学医学部教授・吉村泰典はさらに一歩踏み込んで、「無償ボランティアは非常に難しい。有償にして、金額などをきっちり決めたほうがよっぽどすっきりする。ボランティアをやるならば、有償でしか出来ないでしょう」と述べた。議論は平行線のまま時間切れとなり、結論は次回以降に持ち越されることとなった。

表2 GM作物野外栽培承認(第1種使用規定)一覧
生物多様性影響評価検討会総合検討会
作物 性質 申請(開発者) 名称 認可日*
大豆 除草剤耐性 BASFアグロ株式会社 OECD UI: BPS-CV127-9 2008年5月20日
大豆 ステアリドン酸産生 日本モンサント株式会社 MON87769, OECD UI: MON-87769-7 2008年5月20日
*正式にはパブリックコメントの後に認可される。