■2008年8月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●北米事情
●米国大豆協会が食糧危機対策にGM作物を売り込むよう政府に要請

 米国大豆協会は6月11日、連邦議会に対して、現在起きている食糧危機に対して、各国にGM作物を売り込むよう要請した。その中で同協会は、今日の穀物価格高騰はバイオ燃料が原因ではなく、GM技術は解決の切り札であると述べている。〔American Soybean Association 2008/6/11〕

●ハワイ州議会GMタロイモ規制法否決

 ハワイでGMタロイモの研究・開発を10年間禁止する法案「SB-958」が、多数の市民の支持を背景に州議会に提出された。しかし、議会はこれを否決しただけでなく、各地域で独自の規制を行うことを禁止した。そのため市民の間で、州議会がバイテク企業に屈したと批判が強まっている。 〔The Molokai Times 2008/6/10〕

●中米事情
●中米でGM作物拡大

 モンサント社はGM作物を売り込むために種子企業買収を進めてきたが、新たに中米の種子企業Marmot S.A.を買収した。 〔Forbes 2008/6/19〕
 中米でモンサントのターゲットになった国の1つがホンジュラス共和国で、同国ではすでに、GMトウモロコシの栽培が拡大している。農業大臣へクトル・ヘルナンデスによると、今年は昨年に比べてさらに拡大する予定だという。昨年、12万2500ヘクタールにトウモロコシが作付けされたが、今年はそれに加えて14万ヘクタールのトウモロコシと1万4000ヘクタールのソルガムを新たに作付けする予定で、そのトウモロコシの多くがGMトウモロコシになる予定だという。〔CropLife Latin America 2008/6/16〕

●動物工場
●米国で動物工場用施設完成

 米国のヘマテク社が建設を進めていた、牛に人間の抗体をつくらせる「動物工場」用施設が完成した。同社がハドソンにもつ80エーカーの土地には、35〜40頭のGM動物とクローン動物が飼育されており、4〜6年以内にはその数を450頭にまで増やす計画だという。 〔Argus Leader 2008/5/27〕

●クローン
●論文捏造の黄元教授、クローンペットを商業化

 韓国で、クローン胚からES細胞をつくりだしたとする研究報告を捏造し、バイオ研究者に大きな衝撃をもたらした、元ソウル大学教授の黄禹錫が、今度はクローンペットの商業化に乗りだすことになった。同氏が設立したスアム生命工学研究院は6月19日、米国バイオ・アーツ社の依頼を受けて17匹のクローン犬を誕生させたと発表した。バイオ・アーツ社は米国でクローンペット事業を立ちあげたものの、失敗したとして事業から撤退していたが、再開した模様。 〔Technobahn 2008/6/25〕

●ヒト胚
●ヒト胚合同委員会、精子提供のボランティア認める

 研究用のヒト胚の作成・利用に関する指針作りを進めている文科・厚労の合同専門委員会は、精子の入手方法について無償ボランティアからの提供を認めることで合意した。卵子(未受精卵)の入手方法については、精子に比べて提供者の身体に与える負荷が大きいことから、当面は認めないとしている。卵子と違ってほとんど提供者にリスクがない精子に関しては、とくに反対意見もなく、「研究者が自分の精子を提供すればいい」などという意見も出てすんなりと決まった。
 しかし、卵子に関しては無償ボランティアを認めるべきとの意見が根強くあり、さらに一歩踏み込んだ有償まで認めるべきとの意見もあって議論は紛糾した。最終的には、現在の社会の倫理観では抵抗感があるなどとして、「当面は」認めないことで落ち着いた。

●遺伝子治療
●遺伝子治療、新たに2件の申請

 7月7日、厚労省の科学技術部会が開かれ、国立がんセンターと三重大学医学部付属病院の2施設からそれぞれ、遺伝子治療臨床実施計画の新規申請があったことが報告された。双方ともベクター(遺伝子の運び屋)として用いるのはレトロウイルスで、対象疾患は前者が白血病などの造血器悪性腫瘍、後者が食道がん。2件の申請は今後、がん遺伝子治療作業部会で審議される。
 また、パーキンソン病遺伝子治療を行っている自治医科大学付属病院から提出された計画変更報告書と、前立腺がん遺伝子治療を実施中の北里大学病院から提出された重大事態等報告書もそれぞれ公表された。自治医科大学では、昨年7月に脳内出血の副作用が発生したことを受け、当初予定していた高用量(600μl)のベクター投与を取り止め、6名の患者全員を低用量(200μl)にするとした。北里大学では、患者1名が両側肺動脈血栓塞栓症で死亡した。報告書では遺伝子治療との因果関係を否定しているが、末期の患者に対するベクターの安全性確認のための人体実験という遺伝子治療の負の側面が、改めて裏付けられた。


表1 GM作物野外栽培承認(第1種使用規定)一覧
生物多様性影響評価検討会総合検討会
作物 性質 申請(開発者) 名称 認可日*
大豆 高オイル性 日本モンサント株式会社 MON87754, OECD UI:MON-87754-1 2008年7月3日
トウモロコシ 2目の害虫抵抗性並びに除草剤耐性 日本モンサント株式会社 MON89034 × MON88017, OECD UI:MON-89034-3 × MON-88017-3 2008年7月3日
トウモロコシ 害虫抵抗性及び除草剤耐性 日本モンサント株式会社 MON89034 × NK603, OECD UI:MON-89034-3 × MON-00603-6 2008年7月3日
ワタ 害虫抵抗性 シンジェンタシード株式会社 MON87769, OECD UI:MON-87769-7 2008年7月3日

*正式にはパブリックコメントの後に認可される。