■2009年1月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●アジア事情
●米国バイテク企業が新GM作物の導入先にフィリピンを狙う

 米国のバイテク企業アグロサイエンス社とモンサント社は、新しいタイプのGMトウモロコシの導入先としてフィリピンにターゲットを絞っているようだ。この新型GMトウモロコシは、従来より殺虫能力を強めたものだとされる。 〔ABC-CBN News 2008/11/4〕
 そのフィリピンでは、GM作物の一大拠点になることに警戒感が増している。このほどフィリピン・エコロジカル・ソサイエティは、政府に対して、GM作物・食品導入に対してより厳しい規制を行うよう求めた。とくに輸入作物や食品にGM原料が含まれているか否かの検査が行われていない実態を取り上げ、検査を行うよう求めた。 〔The Philippines Star 2008/11/2〕

●フィリピンでゴールデンライス実用化に

 国際イネ研究所(IRRI)が、2012年にフィリピンでゴールデンライスを実用化する予定である。これは同研究所主任研究員のロバート・ジーグラーが述べたもので、ゴールデンライスとは、ビタミンAの前駆体であるベータカロチンを多く含んだ栄養強化GMイネである。これまでIRRIでは10年間かけて試験栽培を行ってきたが、いよいよ商業化に向けて動きだしたといえる。〔The Philippines Star 2008/11/8〕
●南米事情
●アルゼンチンのGM大豆栽培が環境を破壊

 アルゼンチン政府による公式統計によると、2002年から2006年の間に、大豆畑開拓のために50万ha以上の森林が伐採された。また、大豆畑にGM大豆を栽培したため、生物多様性が破壊され、農民の生存基盤が奪われたことが判明した。〔Inter Press Service News Agency 2008 11/10〕
●アフリカ事情
●ナイジェリアがGM作物導入か

 ナイジェリアの農業・水資源大臣のサヤディ・ルマは、11月26日、2011年までにバイオテクノロジー部門を設立し発展させる、と述べた。これは米国政府が開催した、バイオテクノロジーと食料安全保障に関するワークショップで述べたもので、同国が米国との関係のもと、GM作物導入に向けて動きだしたものと思われる。〔African Press Agency 2008/11/27〕
●GMOフリー
●カナダのネルソン市、GMOフリーを宣言

 11月13日、カナダ・ネルソン市議会は、全会一致でGMOフリー都市宣言を採択した。これまで同国では、バンクーバー島がGMOフリー宣言し、ユーコンテリトリー(準州)とプリンスエドワード島(州)の2地域が、事実上のGMOフリー状態にある。〔Kootenay Coop Radio 2008/11/6〕
●遺伝子組み換え作物
●インドで改良Bt綿栽培が拡大

 インドではモンサント社のBt綿のみが栽培されているが、Bt綿でも「ボルガード2」の作付けが増えている。これは従来の「ボルガード」より殺虫能力を強めたタイプで、2006年に商業栽培が始まって以来、2008年10月現在では450万エーカー(180万ha)に達し、Bt綿全体1720万エーカー(688万ha)の4分の1強になった。〔The Hindu 2008/10/31〕

●GM植物開発相次いで失敗

 デンマークのアレサ社が実験を進めてきた、地雷探知目的のGM植物の実験が失敗したことが明らかになった。この植物は、地雷があると植物の色が変色するはずだったが、変化は起きなかった。 〔Aresa 2008/10/31〕
 また、ウガンダで進められていたGMバナナの野外実験も失敗した。このバナナは、ブラック・シンガトカ病への抵抗力を持つはずだったが、病気への抵抗性は低く、病気にかかって従来品種より収穫が半減してしまった。〔Africa Science News Service 2008/11/18〕

●企業動向
●中国で外資によるバイテク研究所オープン

 中国で初めて、外国の資本によるバイテク研究所がオープンした。設立されたのはシンジエンタ・バイオテクノロジー中国社で、北京にあるライフサイエンス・パーク内に作られた。目的は、大豆やトウモロコシの収量増や旱魃耐性をもたらす品種開発で、バイオ燃料用作物開発にものりだす予定だという。 〔Xinhua 2008/10/27〕

●シンジェンタ社がアルゼンチンの種子企業買収

 スイス・シンジェンタ社が、アルゼンチンの種子企業SPSアルゼンチン社を買収した。同社は、トウモロコシ、大豆、ヒマワリの種子を扱う企業で、アルゼンチンで栽培が拡大している大豆種子販売の有力な武器にするという。 〔ロイター 2008/11/10〕

●モンサント社がブラジルの企業を買収

 11月3日、モンサント社は、ブラジルでバイオ燃料開発にのりだすため、サトウキビからバイオ燃料を生産している2つの企業Cana VialisとAlellyxを傘下にもつ AlyParticipacoes社を買収した、と発表した。買収金額は2億9000万ドルに達するという。〔Biofuel Review 2008/11/3〕
●遺伝子汚染
●メキシコで遺伝子汚染拡大

 メキシコ各地で受け継がれてきた在来トウモロコシに、GMトウモロコシに導入された遺伝子の検出が相次いでいる。分析したのはメキシコシティにある国立Autonomous大学で、2001年に調査した23地点のうち3地点から、2004年には2地点から見つかった。〔Nature News 2008/11/12〕
●ES細胞
●万能細胞からの生殖細胞作製容認、受精は禁止

 人のES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)などの「万能細胞」から精子や卵子を作りだすことを認める方針が、11月27日の文科省の作業部会で検討された報告書のたたき台に盛り込まれた。文科省の現行指針では、万能細胞からの精子や卵子の作製および作りだした生殖細胞の受精、そしてその受精卵を子宮へ戻すことまで、すべてが禁止行為とされている。これのどこに線引きをするかが作業部会の議論の焦点となっていた。たたき台のまとめでは、「現時点においては、まずはヒトES
細胞等からの生殖細胞の作成までを容認する」とし、その生殖細胞を用いて受精卵を作り出すことは指針によって当面禁止することとしている。これによって、作業部会の上部委員会も含めると3年にわたって検討されてきた課題に、一定の方向性が示された。
 しかし、まだまだ課題は残っている。その1つに禁止行為を指針でどこまで担保できるのか、という点がある。作業部会では、早ければ09年3月末までに報告書をまとめるとしている。