Then I am quite certain that he put forth his definition as a riddle, thinking that no one would know the meaning of the words 'doing his own business.'
I dare say, he replied.
And what is the meaning of a man doing his own business? Can you tell me?
Indeed, I cannot; and I should not wonder if the man himself who used this phrase did not understand what he was saying.
Whereupon he laughed slyly, and looked at Critias.
Then I am quite certain that he put forth his definition as a riddle, thinking that no one would know the meaning of the words 'doing his own business.'
thinking that no one... は〔分詞構文〕であろう。ここで問題が生じる。thinking の〔主語〕は、I であろうか、それとも he であろうか。はじめ、当然のように I と考えていた。そうして意味を取ってみると、すっきりしない。ひょっとすると、he もあるかもと、ずいぶん後になって思いついた。すんなり意味が通るように思う。
“S+be+certain+that節”で「Sは、that節を確信している」。
“put forth”は「意見を出す」「発表する」。forth には、「前に」という意味がある。put forth で「前に置く」となり、ここから「意見を出す」というのができたのであろう。
the words と 'doing his own business'は〔同格〕。
「では、彼は『自分自身の仕事をする』という言葉の意味を誰も知らないだろうと思いながら、1つの謎として彼の定義を提示したと、私は全く確信している」
こう書いた後ではあるが、〔分詞構文〕の〔主語〕は、I かも知れないと思い直した。それに従うと、
「私は『自分自身の仕事をする』という言葉の意味が誰もわからないだろうと思うので、彼が自分の定義を、1つの謎として提示したのだと、完全に確信している」
むー、どうだろう。悩みながら、結論出ず。ひょっとすると、もうちょっと読み進めばわかるかも……。
I dare say, he replied.
I dare say は、慣用表現で「多分」「おそらく」。文頭や文末にくっついても使われる。イギリスでは I daresay ともつづられる。
「『おそらく』と彼は返答した」
And what is the meaning of a man doing his own business? Can you tell me?
“a man doing his own business”の部分については、前回(第48回)の該当部分で述べた。
「そして、人が自分自身の仕事をするというのはどういう意味かな? 私に教えてくれるかな?」
Indeed, I cannot; and I should not wonder if the man himself who used this phrase did not understand what he was saying.
“wonder if...”は、よく「……かしら?」と訳される。疑問詞を使わない〔間接疑問〕の形。
I should not wonder + Didn't the man himself who used this phrase understand what he was saying?
=上記のセミコロン以後の英文。
if は〔接続詞〕。if の代わりに whether も使える。ただし、間接疑問の節が、主節の〔主語〕〔補語〕になるときや〔前置詞の目的語〕となるときは、if は使えない。
「実際、私には教えることはできません。この言葉を使った人自身が、自分の言っていることを理解していなかったかどうかを、私が疑問に思うべきではないと思います」
Whereupon he laughed slyly, and looked at Critias.
whereupon は〔関係副詞〕で、“at which time”または“after which time”「その時」「それから」「そこで」。
「それから、彼はこっそりと笑って、クリティアスを見た」
ソクラテス:
「自分自身の仕事をする」という言葉の本当の意味を、誰もわからないことを承知で、一種の謎として彼の定義を示したと、私ははっきり自信をもって言えると思うよ。
カルミデス:
おそらく。
ソクラテス:
それでは、「人が自分自身の仕事をする」という言葉の意味は何だろう? 君には分かるかね?
カルミデス:
実際、私には分かりません。そして、この言葉を使った人自身が、自分の言っていることを理解していないなどとは、思いません。
ナレーター:
それから、彼はこっそりと笑って、クリティアスを見た。
う〜ん、怪しい。やっぱり、クリティアスが言ったのだろう。「節制とは自分自身の仕事をすることだ」と。