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第93号 話法の転換 〜 人物・時制 〜

 Subject: 英語の文法と語法 093
    Date: Wed, 30 Jul 2008 09:10:00 +0900 (JST)
    From: Chick Tack
      To: Readers


=━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ English Grammar and Usage ━━━
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┛┛   英 語 の 文 法 と 語 法    No.093    20080730
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             ● 第 93 号 ●

………………
 Contents  (1)話法の転換 〜 人物・時制 〜
………………
       (2)前(第92)号の訂正

       (3)tell O from A


………………………………………………………………………………………………
(1)話法の転換 〜 人物・時制 〜
………………………………………………

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ・伝達動詞が〔現在形〕〔現在完了形〕(未来形)の時には
     〔間接話法〕の伝達される節の時制に変化はない。
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 (a) He says,“I don't want to play any more.”
 (b) He says he doesn't want to play any more.
   「彼は、もうこれ以上プレイしたくないと言っています」
  (“Practical English Usage 3rd Edition”by Michael Swan, 275-5)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#peu

  主節の動詞(伝達動詞)が現在・現在完了形のとき、伝達される節の動詞の
  時制は、〔直接話法〕と〔間接話法〕とでは変化しない。
  don't want → doesn't want。どちらも現在時制。変化しているのは、主語
  が下の理由により替わってしまったから。

  〔間接話法〕では、文全体の話者の立場から人物関係をつくる。(a)の I と
  は、“ ”の外では he のこと。(b)では、“ ”が無くなっているので、
  he に替えなければいけない。

  (×)he don't... は間違いなので he doesn't... にする。

  江川泰一郎著『英文法解説改訂3版』(金子書房)§307 によると、
  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#newguide
  「say が現在時制で使われるのは、次の3つの場合に限定される」という。

  ---------------上掲『英文法解説改訂3版』より-----------------------

  (ア) 人の発言を時間をおかずに他の人に伝えるとき
  (イ) 人が平生言っていることを他の人に伝えるとき
  (ウ) 手紙や掲示などの内容を尋ねたり、その場で人に伝えるとき

  -------------------------------------------------終わり-------------

  (ア)(イ)(ウ)は本来(a)(b)(c)で表示されていたが、本メルマガの例文記号
  と紛らわしいので変更した。

  (a)(b)の例は、(ア)か(イ)に当てはまると考えられる。


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  一般に say などの〔伝達動詞〕が過去形の場合、〔間接話法〕中の従属節
  の〔時制〕は、次のように変わる。時制の一致の原則による。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    (直接話の時制)→(間接話法の従属節の時制)
    (A) 現在形 → 過去形
    (B) 現在進行形 → 過去進行形
    (C) 現在完了形、過去形、過去完了形 → 過去完了形
    (D) 現在完了進行形、過去進行形、過去完了進行形
                      → 過去完了進行形
    (E) 助動詞 → 過去形の助動詞
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  例外等も紹介するつもりだが、試験対策として、ひとまずこれを納得して記
  憶しておくことを勧める。


 (A) 現在形 → 過去形  --------------------------------

 (c) Jenny said,“I want to buy a car.”
 (d) Jenny said that she wanted to buy a car.
   「ジェニーは、車を買いたいと言った」
 (“English Grammar in Use 3rd Edition”by Raymond Murphy, Unit 47-B)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#egu

  I want → she wanted。

  (c)の I は、Jenny のことだから、(d)では she に替える。that は省略可
  能。

 (e) Jenny said that she wants to buy a car.
   「(c)(d)例文の日本語訳と同じ」

  (e)は(A)の例外。現在形→現在形。

  (c)は(d)と転換すれば問題ないのだが、「Jenny は、現在でも買いたいと思
  っている」という状況ならば、(e)も可能である。この場合、理屈の上では
  (e)の方が正しそうだが、機械的に(d)とすることが多い。

  「ジェニーは車を買った」「ジェニーは車を買いたいという気が失せた」と
  いう状況ならば、(e)は使えない。


 (B) 現在進行形 → 過去進行形  ------------------------

 (f) Ken said,“My mother is cooking in the kitchen.”
 (g) Ken said his mother was cooking in the kitchen.
   「母親は台所で料理中だと、ケンは言った」

  My mother は、「ケンの母親」のことだから、his mother に替える。


 (C-1) 現在完了形 → 過去完了形  ----------------------

 (h) Kate said,“You have done a good job.”
 (i) Kate said I had done a good job.
   「あなたはよくやったと、ケートは私に言ってくれた」

  You は「私」のことだから、I に替える。状況により、I ではなく 他の語
  に替わることもある。


 (C-2) 過去形 → 過去完了形  --------------------------

 (j) Paul said:‘I woke up feeling ill, so I didn't go to work.’
 (k) Paul said (that) he had woken up feeling ill, so he hadn't gone  
  to work.
  「起きたら気分が悪かったので、仕事に行かなかったと、ポールは言った」
 (“English Grammar in Use 3rd Edition”by Raymond Murphy, Unit 47-C)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#egu

  ただし、例文を採った EGU の該当箇所の説明には、「間接話法でも、通常
  同じ過去形のままでもよい」とある。(j)を間接話法にした(l)の文↓。

 (l) Paul said (that) he woke up feeling ill, so he didn't go to work.
    (↑EGU 3rd Ed. Unit 47-C)

  (C)の例外。過去形→過去形。試験ではこのやり方に従わない方が無難。


 (C-2,-3) 過去形 → 過去完了形。過去完了形 → 過去完了形

 (m) He said,“I arrived late because I had lost the address.”
 (n) He said he had arrived late because he had lost the address.
   「住所をなくしたので遅れ(て到着し)たと、彼は言った」
  (“Practical English Usage 3rd Edition”by Michael Swan, 275-2)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#peu

  arrived は過去形が過去完了形に替わっている。

  had lost という〔過去完了形〕は、これ以上古いときを表す時制がないの
  で、そのまま変わっていない。


 (D-1) 現在完了進行形 → 過去完了進行形  --------------

 (o) Mother said,“Peter has been studying in his room for three hours.”
 (p) Mother said Peter had been studying in his room for three hours.
   「ピーターは、3時間ずっと自分の部屋で勉強中だと、母は言った」


 (D-2) 過去進行形 → 過去完了進行形  ------------------

 (q) He said,‘I was thinking of getting my mum one for her birthday.’
 (r) He said he had been thinking of getting his mum one for her
  birthday.
  「ママの誕生日用にそれを1つ入手しようかと考えていた、と彼は言った」
 (“CAMBRIDGE GRAMMAR OF ENGLISH”Ronald Carter & Michael McCarthy  
   493b)http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#cge

  ただし、例文を採った CGE では、時制に変化のない次の例もあった。

 (s) He said he was thinking of getting his mum one for her birthday.
   (日本語訳は(r)下のものと同じ)(CGE 493b)

  (r)となることも(s)となることもあるようだ。(r)は前掲の原則。(s)は例外。

  think が進行形になる場合は、弊誌第5号(1)で紹介した。
  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/001-010/egu005.html


 (D-3) 過去完了進行形 → 過去完了進行形  --------------

 (t) She said,“The kettle had been boiling.”
 (u) She said the kettle had been boiling.
   「やかんのお湯が沸騰しっぱなしだったと、彼女は言った」
  (『ロイヤル英文法』旺文社刊 §348 時制の一致と話法の関係)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#royal

  変化していない。


 (E-1) 助動詞 → 助動詞過去形  ------------------------

 (v) She said,“John can't come to the meeting.”
 (w) She said John couldn't come to the meeting.
   「ジョンはその会合に来ることはできないと、彼女は言った」


 (E-2) 助動詞 → 助動詞過去形  ------------------------

 (x) He said,‘I used to take the dogs for a walk on the path there.’ 
 (y) He said he used to take the dogs for a walk on the path there.
  「そこにある小道に、よく犬を散歩に連れて行ったものだと、彼は言った」
 (“CAMBRIDGE GRAMMAR OF ENGLISH”Ronald Carter & Michael McCarthy
   493c Backshift and modal verbs)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#cge

  (x)(y)では、used to の部分は変わっていない。しかし、矢印の発信元は
  〔助動詞〕に違いなく、矢印の向かう先も〔助動詞過去形〕である。(E)の
  原則は守られている。

  このほか、could, might, should, would, ought to, had better もこのま
  まである。

  “助動詞(過去形)→助動詞過去形”となるグループと考えてよいのではな
  いか。

  “助動詞過去形+have+過去分詞”という形もあるが、“助動詞過去形+動
  詞の原形”とは別の内容を伝えている。


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 (助動詞の例外)

 (z) She said,“I must leave by six o'clock.”
 (Z) She said she must leave by six o'clock.
 (Y) She said she had to leave by six o'clock.
  「6時までに出発しなければいけないと、彼女は言った」

  must, needn't は過去形がないので、そのままでよい。

  ただし、〔義務〕の意味を出すときの must は had to を使うことができる。


 (X) He said,“It must be hot there.”
 (W) He said it must be hot there.
   「そこは暑いに違いないと、彼は言った」

  「違いない」という〔推量〕の意味を表すとき、had to は使えないので、
  must のままにしておく。


………………………………………………………………………………………………
(2)前号の訂正
………………………

  前(第92)号に誤りがあった。三木さんからご指摘いただいた。
  お詫びして訂正する。

  (2)の例文(c)の her の日本語訳間違い。

 ▼[誤]第92号(2)--------------------------------------------

 (c) Her father often said to her, "Daughter, you owe me a son-in-law; 
  you owe me grandchildren." 
 「彼の父親はよく、彼女に言いました。『娘よ、お前は私に義理の息子をくれ
  る責任がある。私に孫をくれる責任がある』と」
 「彼の父親はよく、彼女に言いました。『娘よ、早く結婚して孫を(たくさん)
  産んでくれ』と」
   (“The Age of Fable”by Thomas Bulfinch)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer02.html#fable

 -----------------------------------------------------------------▲

 ▼[正]第92号(2)--------------------------------------------

 (c) Her father often said to her, "Daughter, you owe me a son-in-law; 
  you owe me grandchildren." 
 「彼女の父親はよく、彼女に言いました。『娘よ、お前は私に義理の息子をく
  れる責任がある。私に孫をくれる責任がある』と」
 「彼女の父親はよく、彼女に言いました。『娘よ、早く結婚して孫を(たくさ
  ん)産んでくれ』と」
   (“The Age of Fable”by Thomas Bulfinch)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer02.html#fable

 -----------------------------------------------------------------▲


………………………………………………………………………………………………
(3)tell O from A
……………………………

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ・tell O from A「AからOを区別する」
             「OとAとを見分ける」
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 (a) Most experts can tell an expensive diamond from a cheap one.
  「たいていの専門家は、高価なダイヤモンドと安いダイヤモンドを見分ける
   ことができる」
  (“LONGMAN Dictionary of Contemporary English 4th edition”
    CD-Rom中 Extra dictionary examplesより)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#ldoce

  tell には「区別して教える(ことができる)」→「わかる」という意味が
  ある。

  英語話者が持っている感覚はわからないが、「OとAを見分ける」でも「A
  とOを見分ける」でも変わりがないように感じる。


 (b) Can you tell Tom from his twin brother?
   「あなたは、トムと彼の双子の兄弟を見分けることができますか」
  (“Oxford ADVANCED LEARNER'S Dictionary 7th edition”)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#oald


 (c) They were able to tell the difference between the two books.
   「彼らはその2冊の本の違いがわかった」
  (『コリンズ英英辞典』秀文インターナショナル)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#collins

  tell the difference between... や tell the difference between A and
  B の形で「……の違いがわかる」「AとBの違いがわかる」という使い方
  ができる。


………………………………………………………………………………………………
 参考文献  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html
………………
       http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html


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● あとがき

 しばらくの間、配信間隔が開くと思います。あしからず。


・・・‥‥……──────────────────────……‥‥・・・
        (c) Matsumiya Institute of Thinking 2008
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