『用心棒日月抄』 藤沢周平
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 このシリーズは、まず『用心棒日月抄』に始まり、『孤剣』『刺客』そして『凶刃』で終わってます。

 最初の『用心棒日月抄』は、忠臣蔵ものといっても言いかも知れませんが、『孤剣』以降は、藩のごたごたに青江又八郎と女嗅足・佐知が立ち向かって行くことに重点が置かれます。
 藤沢ものによくあるように、お家騒動を物語の縦糸とするならば、横糸は、又八郎が江戸で用心棒稼業をして糊口を凌ぐ、その一つ一つのエピソードということになります。

 何度かTV化されてまして、NHKのでは、『腕に覚えあり』というタイトルで、又八郎が村上弘明、佐知が黒木瞳、由亀が清水美紗、細谷源太夫が渡辺徹、その妻が吹雪ジュン、口入れ屋の相模屋が坂上二郎、間宮中老が日下武史、谷口が蟹江敬三、寿庵保方が細川俊之、、、確か近藤正臣が刺客の誰かで出ていたような記憶があります。
 もっともこのシリーズでは、途中、同じ作者の『よろずや平四郎活人剣』のエピソードも使ってたりもしましたが(汗)

 民放のは、又八郎を杉良太郎が演じていました。詳しくは覚えてませんが、杉良がお米の残量を計っていたシーンを覚えてます(笑)
(もう一つ、あとで新聞に投書が載ってました。この時のは最初の『用心棒日月抄』だったのですが、「あそこで佐知が出ないのはけしからん」云々の内容でした(汗))

 私は何となく、この中では最後の『凶刃』がいちばん好きだったりします。長編で、ストーリーが縦糸に集中しているからでしょうか。う〜ん、細谷さんの身の上とか、ある意味でもっともシビアなんですけどねえ・・。
 『孤剣』の米坂八内、この人も好きなんですが、病気の妻の看病のため、遅くまで働かないなど、「たそがれ清兵衛」(新潮文庫・『たそがれ清兵衛』収録)を髣髴させます。
(ところで、『孤剣』の解説で、『立花登シリーズ』(講談社文庫)の登さんの従妹の名前を「美佐」(正確にはおちえ)としていたのはなんだったのだろう・・細谷の娘の名前と取り違えたのかな?)

用心棒日月抄 1978.8 新潮社/1981.3 新潮文庫 
孤剣     1980.1 新潮社/1984.9 新潮文庫 
刺客     1983.1 新潮社/1987.2 新潮文庫 
凶刃     1991.8 新潮社/1994.8 新潮文庫 
「用心棒日月抄」巻別あらすじ

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