最近、労働法教育への関心が高まってきている。
労働法は、働くことに関するルールとそのルールを実現するための諸制度からなっており、
その意味で、労働法教育とは“ワークルール教育”であるといってもよい。
ではなぜ今、労働法教育なのだろう。
ーつは「プラック企業」間題に見られるように、近年、働く若者が深刻な労働実態-例えば
「長時間労働」「残業代不払い」「セクハラ・パワハラ」など-から発生する労働トラプルに
多く遭遇していることが報告されているが、彼ら・彼女らはそうした労働トラプルに適切に対
応する「術」を知らないという実態があることであり、もう一つは、非正規労働が広がり、リ
ストラや長時問労働が深刻化するなかで、男性・女性を問わず、中高年や壮年の労働者であっ
ても、自らの生活や権利をどう守つてよいのかについて途方に暮れるという事態があることで
ある。
労働法教育に関するこれまでの調査・研究においても、①本当にワークルールについての知
識を必要としている人と、実際に知っている人との間に「知識のミスマッチ」があること、②
ワークルールを知っていることがルールを守らせる行動に直結するとは限らないことなどの重
要な知見がすでに明らかにされている。
ワークルールが守られるためには、定められているだけでなく、まずは働いている人、これ
から働こうとする人がワークルールを理解し、実際ルール違反があった場合には、ルールを実
現する手段や制度を活用できなければならない。
誰が、識こ対して、どのような内容にっいて、どのような方法で教育を行うのかという、主
体、客体、内容、方法については、さまざまな角度からの検討が必要であろう。
注目を集めはじめた労働法教育には、その実施に当たって様々な課題があるが、そうした問
題を解決し、労働法教育を前に進めるための挑戦的な試みも現れている。「ワークルール検定
」がそれである。
「ワークルール検定」とは、北大名誉教授の道幸哲也氏が代表理事を務める「日本ワークル
ール検定協会」が実施する検定制度である。
直近(平成26年6月と11月)の初級検定には、全国で約1350名が受験している。
「ワークルール検定」には、労働法の知識獲得を検定制度に結びつけることによって、ワー
クルールの学習とそこから得られる知識を社会的に確認できる仕組みであるという特徴がある
ワークルールの学習には、それなりの動機付けと努力が必要とされるが、「ワークルール検
定」が、労働法を必要としている人たちにとって、学習への効果的な動機付けおよび知識獲得
手段となり、労働法教育を市民社会に定着させる一助となるこを大いに期待したい。
※労働判例 N01103 遊筆 早稲田大学大学院法務研究家教授 石田 眞より
(社会保険労務士・後藤田慶子)