今年の年金は、ニュース等では“実質目減り“と報道されていますね。なにか年金額が下が
ったようなニュアンスを受けがちです。
結論から言えば年金額は昨年度より上がります。ただ、その上がり方が、通常の上がり方よ
りも押さえられるしくみ(マクロ経済スライド)が発動したことと、これまで下げることがで
きなかった部分(特例水準)を下げたため、“実質目減り”と表現されています。
平成27年度の改定率に照らし合わせると、2.3%上がるはずでした。
しかし、これまでの年金額は“特例水準”と言って本来の給付水準よりも高めに支払われて
おり、その解消が二年間実施されました。今年は高めに支払われていた0.5%が解消されま
す。2.3%からこの0.5%を引いて1.8%になります。
さらにマクロ経済スライドといって、景気のよいときには年金額は上がるものの、その上げ
幅を押さえるしくみが発動されました。その押さえる程度が0.9%と言うことで、特例水準
解消部分を引いた1.8%から更に0.9%引くことになりますので0.9%だけが残ること
になります。よって、本当ならば2.3%上がるはずが0.9%しか上がらないため“実質目
減り”と報道されているわけです。
平成27年度改定率 ・・・・・・ 2.3%
特例水準解消 ・・・・・・ △0.5%
マクロ経済スライド ・・・・・・ △0.9%
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国民年金の老齢基礎年金額(満額)・・・・ 780,100円
国民年金の保険料(1ヶ月)・・・・・・・ 15,590円
厚生年金については、従来保障などがあり、年金によって少し異なってきます。
※マクロ経済スライドとは
年金額の改定ルールは新規裁定者については賃金変動で行い、既に年金を受けている者につ
いては物価変動で行うことになっています。
ただし、賃金変動率と物価変動率が共に上昇で物価変動率の方が高い場合は新規・既裁定者
とも賃金変動率での改定となります。
平成27年度の物価上昇は2.7%、賃金上昇は2.3%の為賃金変動率での改定となりま
した。「マクロ経済スライド」は被保険者の減少や、年金受給者余命の伸び等により将来、年
金が支払われない状況にならないように物価が上昇したときに調整して年金額をおさえるしく
みです。スライド調整は毎年算出されることになっています。今年のマクロ経済スライドの調
整は0.9% となっています
(社会保険労務士・後藤田慶子)