年金情報流出問題を考える
 
| Back | Index | Next |
2015
. 7. 4


 日本年金機構は、外部からの不正アクセスによって流出した個人情報は125万件にも上ると
発表しました。
 被害を受けた人は47都道府県に及んでいて、なかでも大阪府がもっとも多く9万6884人
そのうち年金受給者は4万4833人です。
 6月中に対象者に対してお詫びとお願いの文章が発送されているそうです。

 今後の対策として、「情報流出した基礎年金番号はすべて変更する。」としており、基礎年金
番号の変更通知は文書で郵送して行うとしています。

 新しい基礎年金番号と年金証書の送付は9月には発送できるとしています。流出した情報は基
礎年金番号・氏名・生年月日・住所で、年金支給額や振込先のロ座番号など、支払に関する情報
は含まれていないと発表しています。

 現在はネット社会であり、インターネットのない環境では仕事はできないと言つても過言では
ありません。行政であっても例外ではなく、むしろ、行政にあっては国民の情報を取り扱う以上
最高レべルのセキュリティーやシステム、管理体制を構築しておく必要があります。

 にもかかわらず、日本年金機構が打ち出した対策は、流出した基礎年金番号の変更です。
 これに一体どのような意味があるのでしょうか。仮に流出した基礎年金番号を変更したとして
も、年齢を変更することはできませんし、氏名や住所を変更することは困難を極めます。

 基礎年金番号の変更はその場しのぎに過ぎず、その他の情報については流出したままです。
 変更にあたっても125万件という膨大な量です。流出してしまうようなセキュリティーやシ
ステム、管理体制の中で適正に基礎年金番号が変更されるのかについても不透明です。


 自分自身の基礎年金番号を把握している方がどれだけいるでしょうか。
 日本年金機構から通知がきても気がつかない、もしくは興味がなくスルーしてしまうケースも
想像できます。会社における資格取得時などの手続きにおいても混乱が予想されます。

 平成28年からマイナンバ一制度が始まります。国税関係やハローワーク関係の申告や届出な
どでマイナンバーを記載しなければなりませんが、システムが構築できていなかったのでしょう
か、当初から社会保険関係の届出等は平成29年からとなっており、今回の流出問題でさらに遅
れる可能性が示唆されています。

 このような中、マイナンバ一制度が始まっても大丈夫なのでしょうか。

 行政側のセキュリティーやシステム、管理体制がきっちりと整っていれば、個人情報を預かっ
ているわけですから、それをシステム上で統合すればいいだけで、わざわざ会社でマイナンバー
を取得して行政に届け出る必要もないと考えることもできます。

 行政はまず、セキュリティーを強固にし、しっかりとしたシステムの上で万全の管理体制を作
ることが大事です。会社にばかり面倒を押しっけないでほしいですね。




(社会保険労務士・後藤田慶子)


戻る

メールはこちらまで。