“勤労と労働”今・・・・
 
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2015
. 9. 5


 日本国憲法には「すべて国民は勤労の権利を有し義務を負う」とあり、“勤労”と表現され
ています。それ以外の法律では”労働”と表現されているのがほとんどです。

 “労働”の意味を調べると、人間と自然との関係にかかわる、ある種の過程を「労働」と呼
ぶとされています。私達は“労働=その対価として賃金を受け取る”と考えがちですが、実は
“労働生産活動”という意味になります。

 漢字を分けて意味を調べると、“労”は本来「灯火のもとでの仕事」という意味であり、簡
単に言えば夜なべ仕事(夜間労働)のことになります。その結果“疲れる”といった意味や、
“くたびれる”といった意味を持つようになったという説があります。

 “働”は日本人が作った漢宇(国字)で、人が動いているという意味であり、これを合わせ
ると“労働”は“人が動いて疲れる”と直訳でき、労働という言葉からは余りよい響きを感じ
ることはできません。

 労働すれば賃金という対価がもらえる。これは資本主義経済の中で成熟してきた考え方であ
り、本来の意味から少し外れています。その典型ともいえる話が昔話によっても表現されてい
ます。それは「桃太郎」です。

 江戸時代までは「桃太郎さん、桃太良さん、お腰につけたものは何ですか」「日本一のきび
だんごだ」「一つください。家来になります」と言っていました。

 ところが明治時代以降は「桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけたものは何ですか」「日本
一のきびだんごだ」「一つください。
お供します」となっています。

 今、会社に雇用され、働くことによって賃金をうけています。まさに“労働=その対価とし
て賃金を受け取る”という考え方です。しかし、江戸時代には労働をして賃金をもらうという
のはほぼなかったようです。“奉公”という言葉でもわかるように、奉公という生産活動によ
って生活が守られていたのです。

 江戸時代までは主人と家来という身分関係(奉公という生産活動)のしるしとして、きびだ
んごが与えられたのに対して、明治時代になると労働の対価としてきびだんごを与えるように
なったことを意味しています。

 桃太良の話の一部が、江戸時代と明治時代とでこのように変わっているのです“勤労”から
実質“労働”となっていったのもこの頃からでしょうか。

 明治時代は富国強兵、近代化に伴って渦酷な労働が強いられてきた事実もあり、低賃金かつ
長時間労働が当然のように行われていました。1日16時間以上の労働もあったとされていま
す。まさに“労働”ですね。

 今は労働基準法等の労働者保護の法律によって、労働時間ーつをとっても成立当初の1日8
時間、週48時間から、それでは長いということで週44時間になり、今では原則週40時間
です。

 労働者保護の内容は大きく様変わりしてきています。

 労働基準法、そろそろ勤労基準法に改名しても問題ないのでは?そうすれば「労働=人が動
いて疲れる」という意味から「勤労=勤めて(頑張つて)疲れる」と言う意味になり、少しか
もしれませんが働く人のモチべーションに繋がるのではないでしょうか。

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(社会保険労務士・後藤田慶子)


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