どのような会社であっても労働者を1人でも雇用すれば、労働者災害補償保険(以下労災保
険)に加入しなければなりません。もし会社が労災保険加入の手続きをしていなかったとして
も働く人が仕事中にケガをすれば、働く人を守るための保険ですので給付は受けることができ
ます。
(※未加入の場合は国が会社に求償します。)
そのしくみの中で保険料について少しばかり不思議な点もあります。労災保険料は概算払い
と言って、今年度働く人こ支払うであろう予定の賃金総額に業種による保険料率を掛けて保険
料を前払いすることになります。
概算なので、急に働く人が増えた場合であっても最後に精算をすれば良いだけです。極端な
話、加入の手続きをして労働保険番号さえ持っていれば、確定時に多少の保険料の違いがあっ
ても給付には何も問題はありません。
これは、保険料の徴収を簡易にするために考え出されたもので、労災保険の休業や障害など
給付と保険料の徴収に関しては別個の法律で規定されています。
この保検料は、原則として働く人の賃金総額に保険料一率をかけて保険料を算出します。
出向の場合、出向先で賃金が支払われているか否かにかかわらず、事業場単位ですので、働
く人の賃金総額に出向先の保険料率をかけて出向先が保険料を支払うことになります。
Aさんが、午前中はB社でアルバイトで月10万、午後はC社でアルバイトで月10万稼い
でいるとしましょう。ある日B社で働いている最中にケガをして、仕事を休むことになりまし
た。B社では、月10万円の労災保険料しか払っていませんので、Aさんは、収入が月20万
円からゼロ円になりますが、残念ながらB社での10万のお給料に対してしか補償がありませ
ん。
では、一人の人が、2つ以上の会社に出向している場合はどうなるのでしょう。
労働基準監督署は、出向先が2カ所ということは考えにくいという見解をもっているようで
すが、現実には2カ所出向ということは十分ありえます。
自分の判断でアルバイトを2つかけもちするAさんとは異なり、出向は会社命令ですから、
補償が半分になってしまってはあんまりですよね。
それを避けるポイントは、
① 出向契約書をきちんと結び、出向者の身分がどの会社にあるのかを明確にしておく。
② 労働保険料の申告は、身分のある会社で給与全額を申告する。
③ 労災が発生した場合は、身分のある会社で申請を行う・・です。これは、メインの出向
先(または出向元)を決め、他の出向先へは、「出張」として仕事をするという考え方か
らくる方法です。
出向の取り扱いについては様々なケースが考えられます。
労災発生時、本人は不安の真っ直中にいます。安心して補償が受けられるためにも、複数箇
所への出向がある場合は、今一度見直しをしてみましょう。
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地域別最低賃金が変わります!
(2015年度)
地 域 |
最低賃金時間額 |
発行年月日 |
大阪府 |
858円(838円) |
10月 1日 |
兵庫県 |
794円(776円) |
10月 1日 |
京都府 |
807円(789円) |
10月 7日 |
奈良県 |
740円(724円) |
10月 7日 |
※( )内は、昨年度の地域別最低賃金額です。
(社会保険労務士・後藤田慶子)