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2016
.11.10

   「働き方改革実現会議」における 「同一労働同一資金」を考える

  平成28年10月24日、政府は「第2回働き方改革実現会議」を開催した。
  第1回では、「同一労働同一資金など非正規雇用の処遇改善」を1番目のテーマにあ
 げ、第2回目では、在宅勤務などの柔軟な働き方の在り方、多様な採用機会などについ
 て議論が行われた。
 「働き方改革」は、安倍総理が打ち出した、ニッポン一億総活躍プランの最重要課題で
 ある。
  先日、この会議の構成員である、東京大学教授 水町勇一朗氏の講演に参加した。内
 容はつぎのとおりである。

  今後の方向性

  「同一労働同一資金」とは、職務の内容が同じであれば、同じ賃金を払うべきという
 考え方である。
  フランスやドイツなどのヨーロッパでは、「客観的な理由のない不利益扱い(待遇格
 差)の禁止」という形で法律に規定されている。
  日本では職務そのものではなく、職能給(職務とキャリア展開)で賃金を考えるため
 「同一労働同一資金」を法律での導入するのは難しいという議論がある。
  しかしヨーロッパでの実際の運用例などを参考にすれば、待遇格差の合理的な理由に
 ついて、「ガイドライン(政府としての指針)」を示すことが有用と考えられ、内容の
 検討がされている・・・とのこだ。

  「均等」ルールか「均衡」ルールか

  均等ルールは、例えば通勤手当や食堂利用など、職務の内容に関係のしない給付は、
 正社員であってもパートタイムであっても同じ給付をすることが求められる。
  均衡ルールは、基本給や職務手当、教育訓練等の職務内容に関連する給付は、異なる
 ことが許容される。
  待遇格差の「合理的理由」には、この2つのルールが含まれると考えられる。

  待遇格差の合理的具体例とは・・・

  正規社員と非正規社員との間に、待遇格差があるとしても、その性質、目的に添って
 次のように個別具体的に判断されることが考えられる。

  ①基本給…職務内容、労働の質、経験、資格、学歴、勤続年数、採用の緊急性などの
       などの違い等

  ②退職金…勤続年数の違いのみ

  ③賞与 …一定期間の勤務や企業業績に応じて支給される性格があるならば、勤続期
       間の違いのみ

  参加者から質問が出た。
  「退職金をパートタイムにも支払うということですね。いっそのこと、退職金をなく
 してしまったら不利益変更になるでしょうか。」
  不利益変更に違いないが、有期雇用無期転換ルールに照らしあわせ5年以上で全員に
 支給といった制度変更など、今後は多様な対応が求められていくのだと実感した。

  待遇格差合理的理由の「ガイドライン」は、12月策定を目指しているとのこと。法
 改正は3年後の2019年を目指しているが、その後の運用による様々な事例のもと、
 本格的な効果がでるのは10年後かもしれない。


  


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  10月1日より、
従業員501人以上(※)の企業の社会保険加入条件が次のとおり
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 ③勤務期間1年以上

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  ※501人とは、10月1日前の適応対象者の数です。
                                   

           

(社会保険労務士・後藤田慶子)
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